日本の隠れた国民病とも言われている「痔」ですが、初期の痔であればセルフケアで治すことができるようです。しかし、重症化すると手術を要する場合もありますので、本記事を読んで試す場合には、あくまでも自己責任でお願いします。
それでは、なぜ痔にオロナインが効果があるのか?どのような痔に対して効果があるのか?まずは痔の種類から確認していきましょう。
痔の三大疾患
まずは痔について知っておきましょう。
いぼ痔(痔核)
肛門にいぼ状の腫れができた状態です。
排便時のいきみや便秘、重い物を持つなどの肛門に負荷のかかる行為により、肛門部にある毛細血管の集まっている部分の血液循環が悪化します。それによりうっ血(静脈をうまく血が流れずに滞留すること)して腫れあがります。肛門入り口から2cm付近のところにある、腸と肛門の境界となる歯状線を境として、内側の腸側にできたものを内痔核、外側の肛門側にできたものを外痔核として区別します。
・内痔核
痛みが少ないため自覚症状があまりなく、出血によって気が付くケースが多い。症状が進行すると、内痔核が肛門の外に飛び出してしまうことがあります(脱肛)。脱肛してしまうと手術が必要になる場合があります。内痔核は、小さな静脈瘤と言えます。
・外痔核
痛みが強く、腫れあがることもあります。血栓性のしこりで、重症になると破裂して出血することもあります。安静にすれば1~2週間程度で腫れが引きますが、血栓を覆っていた皮が余って残ってしまうことがあります。
これを皮垂(ひすい)と呼びます。特に問題があるわけではありませんが、排便後に不潔になることが多いため、他の病気を引き起こすことがあるので注意が必要です。
切れ痔(裂肛)
肛門の上皮部分が裂けてしまった状態です。
激しい下痢による勢いや、硬い便が通過することが原因となります。女性に多い病態として知られていますが、それは食事制限によって便の量が減少すると、腸が刺激されずに排便されなくなるからです。また、水分摂取量が足りずに便秘になり、硬化した便を無理に排便することにより肛門の上皮を傷つけてしまうこともあります。
一度切れ痔になると、その激しい痛みから避けるために排便を我慢してしまい、便秘を悪化させ、さらに肛門上皮を傷つけるという、負のサイクルに陥ってしまうこともあります。
慢性化すると、裂けた部分が治癒し肥厚化します。それを繰り返すことによって肛門が狭くなっていきます。狭くなるので、また裂けます。この状況まで悪化してしまうと、手術で肛門を広くすることが必要になります。
痔瘻(痔ろう)
便を排泄しやすいように粘液を分泌している肛門腺という腺があります。その肛門腺に便から細菌が侵入すると、炎症を起こすことがあります。このとき、抵抗力が弱っていたり、肛門腺付近に傷があったりすると細菌感染によって化膿して肛門周囲膿瘍となります。
肛門周囲膿瘍が大きくなると、皮膚の表面まで達することがあります。膿瘍が皮膚の表面まで達すると、膿が排出されるトンネルができあがります。この肛門内部と皮膚表面がトンネル状に繋がった状態を痔瘻と呼びます。治療せずに放置して治ることは稀で、トンネルがどんどん大きくなっていったり、1本だったトンネルが複数できたりします。
早期に治療を受けることをお勧めします。
痔を簡単にまとめてしまうと
- 内痔核は静脈が瘤になったもの。(毛細血管瘤)
- 外痔核は肛門にできた血豆のようなもの。
- 裂肛は切り傷のようなもの。
- 痔瘻は細菌感染症による化膿がひどくなったもの。
この中でセルフケアが可能となるのは、外痔核と裂肛です。痔については、痔の原因や種類について!ストレスや食べ物が関係している?
オロナインとは
1953年に大塚製薬が販売開始した、「オロナイン軟膏」のことです。主剤の変化によって1969年に「オロナインD軟膏」、1972年に現在も販売している「オロナインH軟膏」となりました。このHは有効成分のクロルヘキシジングルコン酸塩のヘキシジン(Hexidine)に由来します。
オロナインH軟膏の効果・効能は、以下の通りです。
- にきび
- 吹出物
- はたけ
- やけど(かるいもの)
- ひび
- しもやけ
- あかぎれ
- きず
- 水虫(じゅくじゅくしていないもの)
- たむし
- いんきん
- しらくも
オロナインの成分は?
主剤: クロルヘキシジングルコン酸塩液
添加剤: ラウロマクロゴール・ポリソルベート80・硫酸Al/K・マクロゴール・グリセリン・オリブ油・ステアリルアルコール・サラシミツロウ・ワセリン・自己乳化型ステアリン酸グリセリル・香料・精製水
まとめると、主剤の殺菌・消毒薬であるクロルヘキシジングルコン酸塩液、止血剤として硫酸Al/K(硫酸アルミニウムカリウム、一般的にはミョウバンと呼ばれることが多い)、ベースとなる油剤としてグリセリン・オリブ油・ステアアリルアルコール・サラシミツロウ・自己乳化型ステアリン酸グリセリル、保湿・皮膚の保護成分としてワセリンが配合されています。
痔には効果があるの?
痔に対して直接の効果はありませんが、殺菌消毒成分が細菌の繁殖を抑え、止血成分が出血を抑え、保湿・皮膚の保護をすることは可能です。
よって、外痔核と裂肛には対処療法的(治療効果は少ないが、痛みなどの症状を軽減させる)に使用することは可能だと考えられます。初期段階では、オロナインで治癒したという声もあるようです。
痔専用の薬とは何が違うの?
痔専用の薬も数多くありますが、主として4種類の成分が入っています。
抗炎症成分: ステロイド(プレドニゾロンなど)と非ステロイド性(グリチルリチン酸など)があります。
・鎮痛消炎成分: リドカインなどがあります
・組織修復効果: アラントインなどがあります
・血行促進効果: 酢酸トコフェロールやヘパリン類似物質などがあります
つまり、炎症やかゆみを抑えて傷ついた組織を修復し血流を改善させます。オロナインと比較してみると、痔に特化していることがわかります。オロナインは多くの効果・効能がありますが、痔の薬は「肛門部にのみ使用すること」と注意書きがあります。
そもそも痔にならないためには
痔は、車やトラックに長時間乗るドライバー、机に座りっぱなしのオフィスワーカー、便秘がちな女性などに多く見られます。痔の大敵は大きく2つあります。
肛門への負荷(血行不良・いきみなどによるうっ血)
お尻を冷やしたり、長時間同じ姿勢を取り続けると肛門の血行も悪くなります。肛門の血行が悪くなると、うっ血して痔核になりやすくなります。入浴や運動によって血流は改善されますので、ストレッチや軽い運動を心がけてください。
重い荷物も持ったり、歯を食いしばるような激しい運動、トイレでの長居や過度にいきむことも肛門に負荷をかけることになるので避けることがよいでしょう。
排便トラブル
便秘や下痢などの排便異常から痔になるケースが多くあります。まずは正常に排便することが、痔の予防になります。
便秘予防
- 水分をこまめに補給して、脱水状態にならないよう気を付ける
- 食生活を改善する(食物繊維を多く含む食品、ヨーグルトや納豆など整腸効果のある食品などを積極的に取るようにする。 逆に、アルコール、刺激物を控える。)
- 排便を我慢しない
- 軽い運動をすることで腸を刺激する(筋トレのような肛門に負荷をかけるような運動ではなく、適度に汗をかくくらいの運動を週2回・30分以上行うと効果的です)
下痢予防
- 暴飲暴食をしない
- ストレスをため込まない
- 冷たい食べ物を避ける(冷たい食べ物による刺激で、腸のぜん動運動が活発になります。そうすると、食品の水分吸収に十分な時間を取ることができずに下痢を起こします)
痔になってしまったら
残念ながら痔になってしまったら、早めに診察を受ける事をお勧めします。
痔の市販薬もオロナインも初期段階では効果が望めますが、一旦重症化してしまったらそれ以上の回復は望めません。
緊急対応法
もしどうしても痔で病院に行きたくない場合、お勧めはしませんが、温存することで悪化するまでの期間を引き延ばすことはできます。少ない確率ではありますが、そのまま回復することもゼロではありません。
1)とにかく肛門を清潔に保つ
ウォシュレットは当然ですが、入浴の際にも優しく丁寧に洗浄する(自宅であれば、排便の度に、体温より少し高めのお湯を洗面器に入れ肛門を洗浄・加温すると血行もよくなり効果的です)
2)アルコール・刺激物を断つ
酒、タバコ、トウガラシ、コショウ、コーヒーなどの刺激物を避ける
3)肛門の保護
乾燥や刺激から守るために、軟膏(痔の薬が望ましいですが、オロナインでも効果あり)をこまめに塗る
4)太い便を排出しない
排便時に危険を感じたら、肛門括約筋を絞めたり緩めたりして細い便を出すようにします(こうすることで排便も楽になり、痛みも少なくて済みます)
5)排便の時間を短くする
排便を我慢することはよくありませんが、便意がないのにトイレに座って待つことはしない
6)いきまない
いきむことが痔の一番の原因です
まとめ
万能薬というのはないものです。市販薬は万人向けのため、多くの成分が配合されています。そのため、ひとつひとつの効き目よりも総合的に効果があることが重要視されています。一方処方薬は単味といって、単一の成分のみで薬剤になっていることがほとんどです。多くの効果を望むのであれば、それぞれの処方薬を使用する必要があります。
痔に対してオロナインを使用する場合には、切り傷(裂肛)や擦り傷(外痔核)と同じように使用することによりその症状には効果があります。しかし、痔の薬の様に特化していないので、自分自身で効果を判断する必要があります。可能であれば痔の薬を使用することが望ましいと考えます。
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