一般的にダイエットの主な目的といえば体重を落とすことですが、減量と同時に注目すべきは体脂肪率を抑えることでしょう。
脂肪はたんぱく質・炭水化物と共に3大栄養素と呼ばれており、人の身体にとってはとても重要な栄養成分です。体内の体脂肪率を如何にコントロールするかはダイエット成功のカギになると言っても過言ではありません。
我々は普段『体脂肪=良くないもの』と見る傾向が強く、体脂肪の本当の役割やその重要性についてはあまり知ることはありません。体脂肪率を下げるためには体脂肪の特性をしっかりと理解した上で上手に付き合っていく必要があるのです。
本稿では体脂肪と日常生活との関わりについて検証し、体脂肪率を上手に下げる方法について迫ります。最後までお読みいただければ体脂肪率についての理解が深まり、無理をすることなく綺麗に痩せるダイエット法のヒントが見つかるはずです。
体脂肪について知っておこう!
いざ体脂肪率を下げようと思ってはみたものの『体脂肪率っていったいなんだろ?』と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
なんらかの行動をとる前に体脂肪の特性を知っておけば改善がさらにしやすくなるはずです。
体内脂肪の役割
体には脂肪があります。その割合は成人男性であれば15~20%、成人女性では20~28%と言われています。大雑把にいえば自分の体重の20%前後が脂肪だよと言う意味であり、こうした体に占める脂肪の割合(量)を体脂肪率と呼んでいます。
体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分けられますが、実は食べ物を摂取した際に体内で余ってしまった糖や脂肪はそのほとんどが中性脂肪(トリグリセリド TG:Triglyceride)です。こうした栄養素は通常エネルギー源として使用されますが、余剰分は肝臓や脂肪組織に蓄えられて内臓・皮下脂肪になるわけです。
中性脂肪の最も大きな役割は身体を動かすためのエネルギー源として使われることです。体内エネルギー源としてはまず血液中の糖分ですが、なくなると中性脂肪がその役割を引き継ぐわけです。中性脂肪はエネルギー源としてだけでなく、寒暖の環境に関わらず体内体温を一定に保ったり、骨や内臓を守るクッションとしての働きがあります。
脂肪組織には中性脂肪の他にあらゆる細胞の膜を作る成分となるコレステロールやリン酸、他の脂肪成分と結合し新たな脂肪合成の材料となる脂肪酸もあります。脂肪酸にはさらに飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸があり、体内で合成できないものを必須脂肪酸(リノール酸・EPA・DHA)があります。
脂肪細胞の特徴
脂質は体内に入ると各々の臓器が吸収しやすいように分解・合成を繰り返して蓄積されます。こうした一連の分解・合成・蓄積作業によって脂肪細胞となり必要な器官へ必要なだけ血液を通して届けられるのです。
脂肪細胞の蓄積量が増える、つまり余剰となると体重増加と共に体脂肪率も上昇します。脂肪細胞は特に乳児期と思春期に増えることがわかっていますが、不規則な生活・過食過飲・寝不足等の環境要因によっても増加します。
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞
脂肪細胞には2つの種類があります。ひとつは皮下脂肪になりやすい中性脂肪を中心とした白色脂肪細胞、そして余ったエネルギーを熱として体外に放出する働きをもつ褐色脂肪細胞です。
白色脂肪細胞は炭水化物や動物性脂肪を摂りこみ肝臓で中性脂肪をエネルギーとして体内に大量に蓄えることができます。褐色脂肪細胞はその組織を積極的にエネルギー源として使えるため活性化できれば、当然太りにくい身体になり体脂肪率を効果的に減らすことが可能です。
脂肪の特性に着目
体脂肪率を上手にコントロールするためにも、脂肪の特性を上手く利用した方法を選択する必要があります。ポイントは褐色脂肪細胞を活性化させることです。どうすればこの褐色脂肪細胞を活発に働かせることができるのでしょう?
白色脂肪細胞は全身に万遍なくあるのに対し、褐色脂肪細胞はその存在場所が限定されています。特に多いのが肩甲骨周り、脇、首周りといった上背部です。この辺りの部位を積極的に動かすことで褐色脂肪細胞は活性化します。
さらに褐色脂肪細胞は寒くなると体温の低下を防ぐためにその働きを高めます。そこで体温より低い水温環境で、酸素も効果的に摂りこめる運動としてスイミングや水中ウォーキング等が推奨されます。
水泳は前進する際、特に腕を連続して大きく搔くという動作にも繋がるため肩甲骨付近をより使いやすくし、結果として脂肪燃焼効率を高め代謝を促進し消費カロリーを高めてくれます。
体脂肪率が高まる要因
単純に言ってしまえば摂取カロリーが余りにも多く、消費カロリーが少なければ余剰カロリーは体脂肪(中性脂肪)として内臓や皮下に蓄えられてしまします。
なので程々のカロリー摂取を心がけることが必要ですが、そこには様々が弊害があり現実的に難しい状況を作り上げているのです。
日々のストレス
日々の生活をしていると自分の思い通りにならないこと、嫌なこと・嫌いなこと・悲しいこと・楽しいこと・嬉しいこと等、様々な感情や想いがでてくるでしょう。こうした心の状態を人はストレスとして認識します。
ストレスはマイナス要素だけでなく『好き・嬉しい』といったプラス要素等、人間が脳で考えるすべての思考はストレスとなります。ストレスにはストレス因子と呼ばれるいわば原因があります。
例えば「嫌いな上司と話さなければならない」というのは“その上司を好きじゃない”ことがストレス因子であり、「話さなければいけない」というのがストレスになるわけです。
ストレスとセロトニン
人はこうしたストレスを抱えると脳内の神経伝達物質(ホルモン)である「セロトニン」分泌が減少します。セロトニンはやる気を引き出す脳内ホルモン「ドーパミン」や、不安に働く「ノルアドレナリン」をコントロールし、精神を安定させ食欲をコントロールする役割を担っています。
セロトニンはストレスや疲労によって減少することが明らかにされています。日々のストレスがセロトニンを減少させ、そうなると精神不安定感が一層高まりセロトニンはさらに減少、結果的に食欲をコントロールできず過食に繋がるというわけです。
ストレスによって脳が様々なホルモンに影響を与えるのは身体の自然な作用です。その時の身体の状態に合わせて各種ホルモンがその機能を最大限に高めることを知っておくことは過食を抑える意味において非常に大切です。
ストレスとコルチゾール&インスリン
コルチゾールや成長ホルモンは睡眠時に分泌されます。寝ている間、特に夜明け頃にその働きが活発化しエネルギーを新たに作り出すのがコルチゾールです。コルチゾールは睡眠が妨げられる状態では脂肪を分解できなくなります。
一方、古くなったり傷ついた細胞を修復する成長ホルモンも適切な睡眠時間を得られない場合、細胞の活性化は起こりません。睡眠時に脂肪細胞をエネルギーに変えたり、代謝が促されないことが体脂肪率へ悪影響を与える原因のひとつとされています。
睡眠時間が5時間未満であれば満腹中枢の担い手である「レプチン」が減り、摂食(食欲)中枢を司る「グレリン」が活性するとの報告があります。睡眠不足だと甘い物や脂っこい食べ物が欲しくなるのはこうした食欲と睡眠をコントロールするホルモンたちのバランスというわけです。
日常のゴタゴタで時間がない、心に余裕がないといった状態であれば早食いやドカ食いの類もあるはずです。そうした状況では血糖値の急激な上昇を招き、すい臓からでるインスリンの過剰分泌が高まり、糖が脂肪に変わり体内に蓄積されやすくなるのです。脂肪蓄積にはこうした各種ホルモン働きが深く関わっていることを認識しておくべきでしょう。
食事の質・量と運動不足
人が過食に傾く根本的な原因はストレスにあるといえそうですが、実質的にはどんなものをどれだけ食べてしまうか、そして日常的な運動不足もその要因となります。
お菓子類は間食やちょっと小腹がすいたときに食べるものとしては最適かもしれませんが、高カロリーで止め時を間違えると肥満に繋がる大きな要因となります。日に3食で満足できないのはストレスが原因としても、その状態を解消しない限り体脂肪率を下げることはむずかしいでしょう。
また運動不足は肥満を引き起こす大きな要因の一つでもあります。身体を動かさないでいると消費するエネルギーが減るばかりか、筋肉は徐々に伸び縮みしなくなります。
すると筋肉量も減り、安静時にもカロリーを消費できる基礎代謝量減って代謝が高まりません。それだけ脂肪を燃やす機能が衰えてしまうということであり、結果は推して知るべしとなってしまいます。
体脂肪率の改善法
体脂肪率が高まる要因を理解したところで、今度はその改善法を探っていきましょう。
食事改善や効果的な運動方法への積極的な取り組みが大切ですが、今迄の考え方を少しだけ変えてみるということも新たな視点として良いかもしれません。
生活習慣を見直す
人は習慣化したものについては中々やめることができません。いわゆる趣味・趣向があり食生活や運動もその範疇に入るものです。体重が増えて体型が変わった理由はストレスをその根本原因として、こうした生活習慣の変化があげられます。
従って食事・運動などを含めた全体的な生活習慣の見直しが、減量し体脂肪率を下げる理想的かつ唯一の方法と考えていいでしょう。最も大切なことは日々の生活環境が肥満のサイクルに陥らないようにすることかもしれません。
毎日、数分でも良いので自分を見つめなおす時間を作れるよう工夫をしてみてはいかがでしょう。家で誰もいない空間となればおそらくはトイレしかないかもしれません。そこで用を足す以外に1~3分程、自分を見つめ直す意味で心をリセットするだけでもストレス因子に対する受け止め方は変わっていくでしょう。
その日のストレスはその日に解消!
ストレスは知らず知らずのうちにその人の心を蝕んでいきます。不安感や焦燥感、恐怖感や諦める感覚等はより大きな“うねり”となって心の中に留まります。「あ~すればよかった、こうすればよかった」といった後悔も実はストレスが解消されない状態なのです。
ストレスは決して悪者ではありません。上手く付き合っていけばあなた自身をさらに強くする“スパイス”ともなり得るのです。肝心なことは「今ストレスを感じているな」と自分を客観視できる心の状態です。そうすれば「いま感じたストレスをどうやって解消しようか」といった対策や改善法を考えやすくなるのです。
それこそどんな方法でも良いでしょう。自分にあった方法を探すため色々な解消法を試してみましょう。その試す過程さえも楽しめれば、それだけでストレスを軽減できる素養があなたの心に生まれた証拠です。例えば呼吸法もそのひとつです。
ヨガや瞑想などの特別な運動とは違い、ゆっくりと長い呼吸を少しの時間心がけることで、心の整理がついてその日あったモヤモヤも解消されていきます。ダイエットに直接つながらずともそうした日々の行動変容が考え方に変化を与え、少しずつあなた自身がプラス思考になることを実感できるはずです。
食事習慣
食事制限や食事量を減らすのであれば根本的な問題の解決にはなり得ません。ポイントは如何にその食事(内容・質)を習慣化するかにあります。趣味や趣向に基づいたあなた自身が一生かけて続けられそうな慣習にしていく必要があるのです。
そうでなければ続けることは難しいでしょうし、リバウンドといった招かざる結果となることが予想されます。内容としては食物繊維を食卓に加えることを心がけてみては如何でしょう。食物繊維は野菜・果物・きのこ・豆類等に含まれる栄養成分です。
食物繊維を摂ると例えば胃や腸で水分を吸収して膨らんだり、多少噛みにくく噛む回数が必然的に増えるといった働きがあります。食卓に一品加えるだけで噛む回数を増やし満腹中枢を刺激して満腹感を得やすくする効果があります。
こういった食事内容の工夫には食材選びも大切で、如何に上手に食物繊維やたんぱく質をバランス良く摂取できるかを考えることが、楽しみにも繋がり食事に対する積極的な姿勢を生む要因となるはずです。
運動習慣
体脂肪率を下げるダイエット方法で最も有効と考えられるのは筋トレに有酸素運動を加える方法です。筋トレをメインとするダイエット法では筋肉の特性である伸びる・縮むという機能を高めるため、適度な刺激を得られるようなウエイトの選択とフォームの確立を目指すと良いでしょう。
筋トレは重量だけでなくどこを鍛えるかも大切です。大胸筋・広背筋・脊柱起立筋・臀筋・ハムストリングといった大筋群だけでなく、お腹の奥にあるインナーマッスルも積極的に刺激してあげるメニューを取り入れることを推奨します。
ただ専門的な内容を伴うため自分でイチから学ぶのは非常に手間がかかります。ジムなどでインストラクターに相談したりネット等でそうしたサービスを利用するなど、必要に応じて専門家に相談することも得策です。
有酸素運動はジョギングやウォーキング等のゆっくりとある程度(例えば15分以上)の時間をかけて行うことが望ましいでしょう。活動のエネルギー源が糖質から脂肪に切り変わる時間は、最近の研究ではあまり重要視されませんが、やはりある程度の時間は必要となります。
有酸素運動よりさらに強度を高めたインターバルトレーニングも筋肉や心筋のへの刺激という点でおすすめします。有酸素運動とは異なり高負荷・低負荷を繰り返すため、最大心拍数も上昇しかなりの疲労が予想されますが、『やった感』や筋肉へのより高い刺激を求めたいなら是非ためしてみるとよいでしょう。
様々なダイエット法
情報化社会の現代においてダイエット方法も多様性があり、選択には事欠きません。時にはどんなダイエットが自分に合うかを試してみるのも楽しいかもしれません。
炭水化物ダイエット、正確には低炭水化物ダイエットと呼んだりもします。一日一食のみ炭水化物を摂らないので一日に食べる炭水化物の総摂取量を抑えることが可能です。
酵素には体内で免疫力を高めたり、各器官の活動を活発化させて痩せやすい体にする効果があります。皮膚組織の活性化にも関わるため見た目の肌艶にも大きく影響します。こうした酵素の働きを最大限に生かすダイエット法が昨今流行の酵素ダイエットです。
ウォーキングダイエットはその名の通り歩くだけのダイエットですが、長期的視点で観れば最も効果の高い方法かもしれません。歩く時間は20分程度、週3回を目安とするのがいいでしょう。
筋トレは特に初心者であれば筋肉痛が出やすいのですが、スロートレーニングダイエットではゆっくりした動作で重りを挙げたり自重運動のため比較的筋肉への負担がありません。また基礎代謝も高まりやすく効果を実感しやすいのも特徴です。
まとめ:体脂肪率を下げる
体脂肪率とは身体に占める脂肪の割合で加齢や生活習慣、そして身体の機能変化によりその比率が増加することが知られています。脂肪は3大栄養素のひとつで人が活動していく上でのエネルギー源となるため、なくてはならない大切な要素です。
体脂肪は炭水化物や脂質を過度に摂取した場合、余剰分として身体に蓄えられるため、体内で体脂肪を燃やせる身体の機能を高めておく必要があります。
精神的・肉体的ストレスは人の不安感を高めることで、食欲抑制効果の高い「セロトニン」の体内分泌が低下します。食事・運動ダイエットも含めいかなる場合においても、それがストレスとなるような体脂肪率改善対策はダイエット効果として意味がありません。
ダイエットは長期的に行いその行動や考え方を習慣化すべきもので、だからこそ自分ができるトレーニングや食事法を試しながら、じっくりと選択していく必要があるのです。短期間で効果を出そうと無理をすることは、後々の身体に影響するため回避しなくてはなりません。
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