ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)が、胃潰瘍や胃がんの原因の1つであることは、広く知られています。
一方、ヨーグルトが腸内細菌を整えることも、よく知られています。でも、ヨーグルトがピロリ菌を抑制し、胃炎や胃がんの予防効果を持つことは、初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、ピロリ菌の抑制でみられるヨーグルトの効果を中心に、ピロリ菌と胃の病気、ヨーグルトの効用などについて、一緒に見ていきましょう。
ピロリ菌って何?
ピロリ菌の正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)。
今はヘリコバクター・ピロリですが、発見当時はカンピロバクター属の仲間だと思われており、また、ピロリの部分は、胃の幽門(pylorus)付近から発見されたことにちなんで、最初の頃はカンピロバクター・ピロリと名前が付けられていました。
カンピロバクター属と別のグループとしてヘリコバクター属が設けられ、ヘリコバクター・ピロリと命名されたのは、1989年のことです。
ピロリ菌の発見でノーベル賞受賞
ピロリ菌は、オーストラリアのマーシャル(Marshall BJ)とウォレン(Warren)によって、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍の患者の胃の幽門付近から1983年に発見されました。
これに関する論文は、翌年の1984年のランセットという学術雑誌の6月号に掲載されています。論文のタイトルは「新種のらせん状桿菌、胃炎ならびに消化性潰瘍患者より:Unidentified curved bacilli in the stomach of patients with gastritis and peptic ulceration.」で、マーシャルとウォレンはこれらの研究により、2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
ピロリ菌の特徴
ウレアーゼ合成能
ピロリ菌の特徴は、何と言っても、ウレアーゼを作り出す能力にあるでしょう。
ウレアーゼは尿素を加水分解して、アンモニアと二酸化炭素にする酵素です。ピロリ菌はウレアーゼによって作り出したアンモニアを身にまとい、周辺の胃酸を中和して胃に棲みついているのです。胃の粘液には尿素が含まれますから、胃の中にアンモニアの材料はいくらでもあることになります。
胃粘膜にもぐる
胃は、胃が自ら作り出す酸やペプシンを分泌してタンパク質を分解します。ペプシンが働くためには、胃の中がpH1〜2の強酸性であることが必要で、そのままだと酸やペプシンの働きで、胃自体が溶けてしまいます。しかし、胃は同時に胃粘液も分泌し、粘膜上に薄い皮膜を作って胃自身を保護します。
ピロリ菌は、短時間なら強酸性にも耐えられますが、実は、さすがにpH1〜2の強酸性下に棲めるほど酸に強いわけではありません。
ですが、ピロリ菌は数本の鞭毛を持っており、自分で動くことができます。胃の中に中に入り込んだピロリ菌のは、胃粘液の下にもぐりこんで、胃酸やペプシンから逃れ、さらにウレアーゼを作って回りを中和し、生き延びるというわけです。
ウレアーゼやアンモニアは、胃の中の他のピロリ菌を引き寄せる働きがあるのもポイントで、一箇所にピロリ菌が定住すると、次から次へと同じ部位にピロリ菌が集まってきてしまいます。
ピロリ菌は血液型に合わせて性質を変える?
ピロリ菌は、宿主の血液型に合わせてその性質を変えながら、胃粘膜に棲みつきます。例えば「O型の胃粘膜にだけ棲む型(アメリカインディアンに多い型)」や「どの血液型の胃粘膜にも棲める型(日本や欧州の型)」などがあります。
胃粘膜の細胞は血液型によって付いている糖鎖の形が異なり、ピロリ菌は胃粘膜に棲みつくため、それぞれの血液型の糖鎖と結合するタンパク質を有するよう進化していったと考えられています。
ピロリ菌はあまり強くない?
ヒトの胃の中でしか増えることができません。また、大人に感染しても、急性胃炎を起こすのがやっとで、胃に定着できないまま排泄されます。ピロリ菌が感染するのは、まだ免疫力が弱い5歳くらいまでの子ども。
しかし、一旦胃に棲みつくのに成功すれば、除菌しない限り、ほぼ一生その人の胃に棲み続けます。胃に棲みついたピロリ菌は、宿主を慢性胃炎にし、萎縮性胃炎をつくりだし、胃がんを作り出します。ピロリ菌にすれば、あまり強くない自分のために、居住環境を整えているだけですが、迷惑な話ですね。
ピロリ菌については、ピロリ菌の症状って?悪化すると発生する病気や改善方法も紹介!を読んでおきましょう。
ピロリ菌が関係する病気・予防するかもしれない病気
ピロリ菌が発見されて以降、胃で起こるたいていの病気には、100%でないにしても、ほとんどピロリ菌が関係していることが分かってきました。
ピロリ菌が関係する病気
・急性胃炎:ピロリ菌が初感染した場合は、ほとんどの例で急性胃炎を起こします。
・慢性胃炎:ピロリ菌を持つ人の80%が慢性胃炎になります。
・胃潰瘍や十二指腸潰瘍:胃潰瘍を胃酸分泌抑制薬だけで治療した場合の再発率は25%。ピロリ菌を除菌した場合の再発率は2%です。
・胃がん:ピロリ菌を持つ人が全員胃がんになるわけではありませんが(ピロリ菌を持つ人の約3%にとどまります)、胃がんの人は100%ピロリ菌を保有しています。
・胃のMALTリンパ腫:胃のMALTリンパ腫の患者の90%がピロリ菌を持っています。
・血小板減少性紫斑病:除菌して抗ピロリ菌抗体が消えると、壊される血小板が減ります。胃の病気ではありませんが、以前からピロリ菌との関係が指摘されており、ピロリ菌除去療法の保険適応になっていました。
・胃の過形成ポリープ:ピロリ菌を除去すると他に治療をしなくても消えることがあります。
・慢性じんまじん:除菌に成功した65%で、じんましんも改善します。除菌でなかった例では改善も22%にとどまります。
・鉄欠之性貧血:小児の原因不明の鉄欠乏性貧血児の60%がピロリ菌をもち、ピロリ菌を除去すると、貧血が治癒して再発もありません。
その他、心血管疾患、自己免疫疾患、神経疾患、肝胆膵疾患などとピロリ菌との関連性も報告されています。
ピロリ菌が予防するかもしれない病気
・逆流性食道炎:ピロリ菌に感染している人が多い国では、食道性逆流炎に罹る人が少ないことが知られています。また、ピロリ菌が原因の胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者さんの除菌を行うと、消化性潰瘍は治りますが、逆流性食道炎が起こることがあります。これらのことから、ピロリ菌は逆流性食道炎のリスクを減らすと考えられています。
ただし、最近の研究では、ピロリ菌の除菌でおこる逆流性食道炎は、一時的かつ多くは軽症なので、除菌後に逆流性食道炎が起こったとしても、除菌治療は受けた方が良いという考えを持つ医師が多いようです。
・食道がん:逆流性食道炎を減らすことから、ピロリ菌は食道がんに対しては、予防的効果があるかもしれないと考えられています。
ピロリ菌を抑制する食品
ヨーグルト、ブロッコリーの新芽、緑茶、わさび、海藻ではヒトでのピロリ菌抑制効果が証明されています。
その他、動物実験でピロリ菌抑制効果が証明されているもの、生体外実験でピロリ菌抑制・除菌効果が見られるものもたくさん報告されており、今後の研究成果の発表が待たれます。これらの食品は普通の食品ですが、健康食品と言っても過言ではないでしょう。
ヒトでのピロリ菌抑制効果が見られる食品
ヨーグルト(乳酸菌)
数あるヨーグルトの中で、ピロリ菌抑制についての臨床研究が最も進み、抗菌剤との併用療法などにも用いられているのは、乳酸菌OLL2716株(LG21乳酸菌)を含むプロビオヨーグルトLG21です。
LG21乳酸菌ほど研究は進んでいませんが、その効果が研究で確認されている乳酸菌には、他に、BF-1株、SN13T株などがあります。乳酸菌ならびにヨーグルトについての詳細は後述します。
ヨーグルト(ラクトフェリン)
ヨーグルトの中には、ラクトフェリン鉄結合性の糖タンパクを含むものがあります。ラクトフェリンは、母乳や牛乳、汗などに含まれ、強力な抗菌活性を持っています。
ラクトフェリンはピロリ菌抑制と抗がん作用の両方を持っています。
ブロッコリーの新芽
ブロッコリーの新芽(スプラウト)には、高濃度のスルフォラファンが含まれ、抗生物質に耐性をもったピロリ菌に対しても殺菌効果がみられます。
キャベツ等のアブラナ科野菜は、多かれ少なかれスルフォラファンを持ちますが、3日目のブロッコリーの新芽はこの濃度が最も高く、成熟したブロッコリーの7〜8倍、品種によっては20倍にもなります。スルフォラファンはイソチオシアネートの一種で、イソチオシアネートは抗がん作用ももっています。
緑茶
もともとお茶の名所である静岡県では胃がんの発生が少ないことが知られていました。緑茶カテキンはピロリ菌の減少効果をもつことが証明されています。
また、緑茶自体に抗がん作用があることも知られています。
わさび
わさびの辛み成分であるアリルイソチオシアネートは、強い抗菌作用があることが知られていましたが、ピロリ菌に対してもその抗菌作用を発揮することが確認されています。
また、アリルイソチオシアネートは、スルフォラファンと同様、イソチオシアネートの一種で、イソチオシアネートは抗がん作用も持っています。
海藻
ワカメ、コンブ、ヒジキなどの海藻に含まれるフコイダンという多糖類(ネバネバ成分)は、ピロリ菌を呼び寄せ吸着して排泄します。
さらに、フコイダンには、がんを自殺に追い込む(アポトーシス)作用もあります。
動物でのピロリ菌抑制効果が見られる食品
梅・梅干し
動物研究でピロリ菌減少効果が見られています。ヒトに対する効果は不明ですが、たぶんありそうです。
梅干しのシガレシノールには抗酸化力があり、これがピロリ菌の運動能力をなくします。(ピロリ菌が泳ぎ回っているピロリ菌液に入れると、ピロリ菌の動きが止まります)。
ココア
動物研究でピロリ菌減少効果が見られています。
ヒトに対する効果は不明ですが、たぶんありそうです。ココアの遊離脂肪酸(カカオFFA)にピロリ菌を死滅させる作用があるようです。
生体外研究でピロリ菌殺菌効果が見られる食品
他に、マヌカハニー、シナモン、クランベリー、にんにく、しょうがなどにもピロリ菌殺菌作用があり、試験管内などの生体外研究では証明されています。
これらはヒトの胃潰瘍や胃炎(そして、おそらく胃がんにも)に対しても、適量の摂取で効果があることが経験的に分かっており、後はヒトでの研究を系統的に行えば良いところまではきています。
コーヒー、キムチにも生体外研究ではピロリ菌殺菌効果はありますが、今の所、胃粘膜の傷害も同時にしてしまうと考えられており、生体内で利用すると胃炎を起こしてしまうため、胃潰瘍や胃がんの予防に対しても実用的ではないと考えられています。ただ、コーヒー(新鮮なコーヒーでは肝がんの抑制効果あり)にもキムチ(腸内細菌を整える作用あり)にも、適量の摂取で他の病気を減らす効果はあります。
ピロリ菌を除菌しても、他の病気になっては意味がない
今の所、ヨーグルト、ブロッコリーの新芽、緑茶、わさび、海藻については、間違いなくピロリ菌抑制効果があり、美味しく適切な摂取量で食べる分には、胃がんの予防効果も期待できそうです。でも、胃がんを抑制するからと、「ばっかり食べ」して、他の病気になってしまうのは本末転倒。例えば、ヨーグルトに砂糖をたっぷり入れて食べて、ピロリ菌は減ったけれど糖尿病になりました、では、ちょっと悲しいです。
また、ピロリ菌だけでも胃炎や胃潰瘍になりますが、胃がんまで至るのは3%程度です。胃がんは正常なヒトにも毎日できているのですが、正常なヒトにはがんの自殺機能(アポトーシス)も備わっているので、毎日、できては消えできては消えしているのです。でも、高血糖や喫煙があれば、アポトーシスなどの自然の制がん機能が傷害されるため、胃がんをはじめ、がん全般になりやすくなります。
九州大学の医学研究院環境医学分野のグループによると、胃がんのなりやすさは、以下のようになります。
- ピロリ菌なし+血糖値異常なし:1倍
- ピロリ菌あり+血糖値異常なし:2.2倍
- ピロリ菌あり+血糖値異常あり:4倍
- ピロリ菌なし+喫煙なし:1倍
- ピロリ菌なし+喫煙なし:1.6倍
- ピロリ菌あり+喫煙あり:11倍
結局、ぜんぶひっくるめると、ヨーグルトと野菜と果物を適度に食べて、お茶かココアを飲み、血糖値をほど良く管理して禁煙すると、胃がんだけでなく、他の病気も予防できてお得な感じがします。
ピロリ菌を抑制することが証明されたヨーグルト
前述したように、ピロリ菌を抑制する食品はたくさんありますが、今回はヨーグルトに焦点を絞ります。
今回、ヨーグルトについての論文をかなりたくさん読みましたが、ピロリ菌とヨーグルトについては、日本が世界の一歩先を行っている感がありました。おそらく、日本は先進国の中では、ピロリ菌感染者が最も多い国(50歳以上の50%がピロリ菌感染者)であることも影響しているのでしょう。
別格! 乳酸菌OLL2716株
ヨーグルトには色々な種類があり、その働きは様々ですが、乳酸菌抑制について言えば、成分に乳酸菌OLL2716株を含む、株式会社明治のプロビオヨーグルトLG21は別格です。
乳酸菌OLL2716株の特徴
株式会社明治の公式ウェブサイト内の「明治ヨーグルトライブラリー ヨーグルトと美容・健康講座」では、 乳酸菌OLL2716株(LG21乳酸菌)の特徴を以下のように説明しています。
(1)胃酸にも強い
強力な酸性の世界でも生き残る力が強い。
(2)胃の中で活動ができる
大腸より栄養分が少ない胃で活動ができる。
(3)ピロリ菌を退治する乳酸菌をつくる
「乳酸菌OLL2716株」は胃の中でも乳酸を作り、ピロリ菌を弱体化します。
(4)ピロリ菌がいる胃の上皮細胞に定着できる
ピロリ菌がたくさんいる場所に付着できる。
上述の特徴に加え、乳酸菌OLL2716株は、定期的に摂取することで胃粘膜に定着して皮膜のように働き、胃粘膜を保護します。
また、通常の乳酸菌のように大腸においては、善玉菌として働き、便秘や下痢など、大腸のトラブルを予防します。
乳酸菌OLL2716株のピロリ菌抑制効果と胃粘膜改善効果
東海大学医学部感染症研究室のグループは、1999年、世界で最初に、臨床試験(動物や試験管ではなく、ヒトの体での試験)で、乳酸菌OLL2716株(LG21)入りのヨーグルトが、ピロリ菌抑制効果と胃粘膜改善効果の両方をもつことを、きちんと証明しました。
ピロリ菌感染者31人に1日2個の乳酸菌OLL2716株入りヨーグルトを摂取してもらい検査したところ、2ヵ月後には8割の人でピロリ菌の減少を確認でき、胃粘膜の炎症も改善したというものです。
その内容は、Journal of Antimicrobial Chemotherapyという学術雑誌の2001年5月号に、「乳酸菌OLL2716株(LG21)のピロリ菌抑制効果について:Suppressive effect of Lactobacillus gasseri OLL 2716 (LG21) on Helicobacter pylori infection in humans.」というタイトルで掲載されています。
ピロリ菌の3剤併用療法とクラリスロマイシン耐性型ピロリ菌
ピロリ菌除去には、通常、3剤併用療法(3剤を1日2回1週間内服)を用います。3剤とは、プロトンポンプ阻害薬と抗生物質2剤(アモキシシリン+クラリスロマイシン)です。一次除菌(一回目の治療)で効果がない場合は、クラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを使い二次除菌を行います。
ところが、クラリスロマイシンは、副作用が比較的少なく、幅広い菌に効くので、ピロリ菌除去だけではなく、小児科や耳鼻科、呼吸器領域の感染症にも使われます。クラリスロマイシンは使われすぎて、クラリスロマイシン耐性型のピロリ菌は全ピロリ菌の40%を占めるようになってしまいました。昔は一次除菌は9割成功していたのに、最近の成功率は7割です。
クラリスロマイシン耐性型ピロリ菌と乳酸菌OLL2716株入りヨーグルト
クラリスロマイシン耐性型ピロリ菌の存在は、近年、大きな問題となっていました。
そこで、東海大学医学部総合内科学のグループにより、3剤併用療法と乳酸菌OLL2716株入りヨーグルトの摂取を組み合わせた療法が考えられました。
具体的には、通常の3剤併用療法に加えて、明治プロビオヨーグルトLG21を毎日1日朝夕1個ずつ(112gx2)、除菌前3週間と除菌中1週間食べてもらうという方法です。結果は、
- 3剤併用療法のみ:69.3%で除菌成功
- 3剤併用+ヨーグルト療法:82.6%で除菌成功
でした。
この研究成果は、Journal of Gastroenterology and Hepatologyという雑誌の2012年5月号で、「ピロリ菌の一次除菌におけるOLL2716株の効果:Effect of pretreatment with Lactobacillus gasseri OLL2716 on first-line Helicobacter pylori eradication therapy.」というタイトルで発表されています。
ヨーグルトだけでピロリ菌は除去できるのか
ヨーグルト”だけ”によるピロリ菌抑制を目指すのであれば、この研究で行ったように、毎日、明治プロビオヨーグルトLG21を1日朝夕1個ずつ、摂取目安量は1日に朝夕1カップずつ(112g)とると、最大に近い効果が得られるかと思います。
しかし、ヨーグルトだけでは、たとえOLL2716株(LG21)を利用したとしても、除去は難しいかもしれません。でも、もし、ピロリ菌感染していることが確認され、通常の3剤併用療法でピロリ菌除去を試みるのであれば、明治プロビオヨーグルトLG21を上述の方法で、治療前3週間+治療中1週間、食事に取り入れるのが良いように思います。ヨーグルトは食品なので、担当医師の許可がなくても自分で勝手に取り入れて構いませんが、できれば一言相談するともっと良いでしょう。
なお、この方法のデメリットは、余計にカロリーを摂取してしまう点。カロリーはスタンダードのもので1カップあたり、89kcal、低脂肪のもので75kcal、砂糖0のもので56kcalです。朝夕2回ですから、1日に112kcal〜178kcal余計にとってしまうことになります。
ピロリ菌を抑制するその他のヨーグルト
乳酸菌OLL2716株ほど研究されているわけではありませんが、BF-1株、SN13T株などの乳酸菌を含むヨーグルトやラクトフェリンを添加したヨーグルトも、ピロリ菌を抑制することがわかっています。
BF-1株入りヨーグルト
BF-1株の正式名称はビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium Biffidum)BF-1で、OLL2716株(LG21株)がラクトバチルス菌であるのに対し、こちらはビフィズス菌です。
長年、ビフィズス菌は生きたまま腸に届くように研究開発されてきて、胃に定着させるための研究開発は少し遅れてしまいましたが、BF-1株はビフィズス菌の中でも、胃に定着しやすい菌です。BF-1はピロリ菌を抑制する効果があると同時に、一部は他のビフィズス菌のように大腸まで生きて届き、大腸フローラも整えます。
BF-1株入りヨーグルト株式会社ヤクルト本社より「BF-1」の商品名で販売中です。
SN13T株
SN13T株の正式名称は、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)SN13Tといい、梨や桃など植物由来の乳酸菌です。
植物由来の乳酸菌の増殖は難しく、ヨーグルトとして商品化することも難しかったのですが、パイナップルを培地にすることで、最近になって、やっとヨーグルトとしての販売が可能になりました。新しい菌ですので、まだ研究は進んでいませんが、SN13T株にもピロリ菌抑制効果があることが、広島大学大学院の報告で明らかになっています。
SN13T株を含むヨーグルトは、高原安瀬平乳業有限会社より「SN13T 植物乳酸菌ドリンクヨーグルト」として販売中です。
ラクトフェリン入りヨーグルト
ラクトフェリンは、母乳や牛乳、汗、唾液などに含まれる糖タンパクで、強力な抗菌活性を持っています。多くのバクテリアやウイルスは、増殖するために鉄が必要ですが、ラクトフェリンは鉄結合能が強く、鉄をがっちり掴んで離しません。ピロリ菌も増えるためには鉄が必要なため、ラクトフェリンが入ったヨーグルトはピロリ菌を減らします。ラクトフェリンはピロリ菌だけではなく、ロタウイルスやノロウイルス、C型肝炎などの予防効果があります。
ラクトフェリン入りヨーグルトは、森永乳業株式会社が「ラクトフェリンヨーグルト」の商品名で販売しています。
ピロリ菌抑制以外のヨーグルトの効果
上述のヨーグルトはピロリ菌を抑制して、慢性胃炎や胃がんを予防する効果があるものですが、ヨーグルトによっては、ピロリ菌抑制の働きはそれほどでもないものもあります。
しかし、例えば、乳酸菌R-1株はピロリ菌抑制はしなくても、インフルエンザ予防効果がありますし、ロイテリ菌や乳酸菌LS2は虫歯予防効果があります。
また、どのようなヨーグルトにも基本的な性質として、腸内細菌を整えて便秘・下痢の改善を促す、骨粗鬆症の予防、脂肪燃焼促進などの働きを持ち、ピロリ菌抑制以外のメリットもたくさんあります。
腸管免疫系は哺乳類の体の中で、最大の免疫系(免疫系細胞・抗体全体の60%が腸管に集中)です。したがってヨーグルトやその他の食品によって、腸内細菌を整えることは、最大の免疫系の免疫機能を整えることと繋がっているかもしれません。まだはっきりとは分かっていませんが、生まれたてのTリンパ細胞が手始めに腕試しやトレーニングのようなものを受ける場所が腸管であるとも考えられています。
ヨーグルトの摂取をはじめとして、美味しくきちんと食べることは健康に直結していると言えるでしょう。
まとめ
「美味しく食べて健康に!」
なんだか、特定の商品の広告みたいになってしまいましたが、この記事を書くに当たって真面目に、かつ、できるだけ公平な目で色々な文献を読んで、それ以外のまとめが思いつかなくなってしまいました。
今日も美味しいヨーグルトや食品が食べられるのは、これらの食品を作り、流通させている全ての方、それらの食品について真摯に研究していらっしゃる方々のお陰なのでしょう。
食事は美味しいことが一番大事だと考えている筆者ですが、美味しいものが体にも良く、それが研究によって解明されるというのはありがたいことですね。
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