世界保健機関:World Health Organization (WHO)は、2016年2月1日に、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態としてのジカウイルス感染症宣言:the declaration of Zika as a public health emergency of international concern」を行いました。
厚生労働省では、2016年2月5日に、ジカウイルス感染症を「感染症法上の四類感染症」に指定し、注意を呼びかけています。どうしてジカウイルスは、こんなに騒がれているのでしょうか?
理由の一つは、妊婦がジカウイルスに感染すると生まれてくる子供が小頭症など先天性の脳障害を持つ可能性があることと、稀にギラン・バレー症候群を起こす可能性ががあることです。でも、小頭症って、風疹やサイトメガロウイルスでも起こるし、ギラン・バレー症候群だってサイトメガロウイルスやEBウイルス、マイコプラズマでも起こります。
この記事では、ジカウイルスが騒がれる理由、検査法、治療法、合併症である小頭症について、情報をまとめました。一緒に見ていただければ幸いです。
この記事の目次
ジカウイルスが騒がれる5つの理由
ジカウイルスは症状も大したことがないし、合併症である胎児の小頭症や、ギラン・バレー症候群は他のウイルスでも起こります。
でも、緊急事態宣言が出されるほど、国際的に問題視されています。これはどうしてでしょうか?
1. 新興感染症だから
ジカウイルスが初めて見つかったのは、1947年。ウガンダのジカ森(Zika forest)のアカゲザルから分離されました。1952年にはウガンダとタンザニアでヒトへの感染も確認されています。
ウイルスの発見が1935年、B型インフルエンザウイルスが見つかったのが1940年、C型インフルエンザウイルスが見つかったのが1946年ですから、ジカウイルスは、インフルエンザウイルスと比べても、そんなに発見が遅れたわけではありません。
初めてのジカウイルス感染症流行は、2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で報告されました。それまで、ジカ熱の病気自体の存在は知られていましたが、取るに足りない病気と考えられ、騒がれることはありませんでした。
しかし、その後、流行報告が続々となされ、2014年からは中南米を中心に、2016年8月にはシンガポールで、9月にはマレーシア、フィリピンなどアジアでもジカウイルス感染症が見つかっています。
つまり、ジカウイルスは、存在は昔から知られていたけれど、流行が確認されたのは、とっても新しいのです。このような感染症のことを新興感染症と呼びます。
「新興感染症=流行が確認されたのが、最近」ということは、研究の蓄積がないということ。つまり、誰にも本当のことが、まだはっきりとは分からないということです。
2. ヒトー蚊ーヒトの感染経路があるから
ジカウイルスは、主に、蚊が媒介します。媒介蚊は、ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカです。
デング熱のデングウイルズ、チクングニア熱のチクングニアウイルス、そしてジカウイルスの蚊媒介感染症3種は、どれも発熱と全身の発疹を特徴とし、ヤブカ属の蚊によって媒介される感染症です。これら3種の感染症は、ヒトー蚊ーヒトの感染形式で広がります。
つまり、家族や同じ部屋にいる誰かがジカウイルス(蚊媒介感染症3種のどれでも)に感染しており、その血液を吸った蚊が別の人を吸血すれば、感染が起こる可能性があります。
シマカ属の蚊の生息地域は、世界人口のほぼ半分が住む地域にあると推定されており、感染リスクは高いと推測されています。むしろ、蚊がたくさんいるところに1人でも感染者がいる場合、感染しない方が難しいと言えるかもしれません。
3. 性交で感染するから
ジカウイルスは性行為感染事例が報告されています。デング熱とチクングニア熱は人から人への直接感染はありませんが、3つの蚊媒介感染症の中で、ジカウイルスだけは性交によるヒトーヒト感染があるということになります。
梅毒からヒトパピローマウイルスに至るまで、性交で感染する病気というのは、なかなか無くなりません。これに加えて、ヒトー蚊ーヒトの感染経路もあるジカウイルスは、大流行してもおかしくないのです。実際、2007年のミクロネシア連邦のヤップ島の流行では、島民の66%が感染しました。
4. 妊婦が感染すると生まれてくる子に小頭症などを生じるから
ジカウイルス感染妊婦の子の小頭症を発症率は1%
ジカウイルス感染症が直接の死因になったケースは、今の所1つもありません。
しかし、妊婦のジカウイルス感染症は、胎児の小頭症や脳の先天線疾患を、約50倍に増やします。小頭症の発生率は、何事もなく妊娠期間を過ごした場合の発症は10,000に2人(約0.02%)で、ジカウイルスに感染があった場合は、100人に1人(約1%)です。
妊娠初期にジカウイルスに感染した場合は14.0~46.7%
東京大学の宮松雄一郎先生たちのグループは、ジカウイルスに、妊娠初期に感染した場合の小頭症の発症率は、14.0~46.7%と発表しています。
この研究と、上の研究を組み合わせて考えると、「妊娠初期にジカウイルスの感染した場合の小頭症の発症率は14.0~46.7%だが、それ以外の期間での感染しても発症率はゼロに近いか、あまり高くなく」、結果として、全妊娠期間中に一度でもジカウイルス感染した妊婦から生まれてくる子どもの小頭症発症率は約1%なのだろう、と推測できます。
ただし、この1%という数字は小頭症だけの数字で、眼など小頭症以外の異常や、胎児死亡などは含まれていません。小頭症に比べると非常に少数ですが、小頭症はないのに脳に器質的異常が認められた症例や、脳幹機能に異常が認められた症例が報告されています。
また、生まれた時には小頭症も神経学的な異常もなかったのに、生後しばらくしてから神経障害が出てきた症例もあります。脳の異常全体で見たら、もう少し多いのかもしれません。
妊娠に気づかないうちに、感染に気づかない人から移る可能性も
日本国内では、ジカウイルス感染者は2017年2月時点で7例で、全て旅行者による輸入症例です。つまり、日本で、渡航歴のない妊婦がジカウイルス感染する確率は非常に低いです。
けれども、蚊の多い地域でのジカウイルス感染症は大問題です。自覚症状がない人が8割もいるジカウイルス感染症が大流行し、運動会などで人が集まるようなことがあれば、妊娠兆候に気がつかないことが多い妊娠初期の女性が、ジカウイルスに感染することは十分にあり得ます。しかも、妊婦も感染自体に気づず、プレママ・プレパパ教室などで他の妊婦に移す危険性もあります。
近年、海外駐在の日本人家庭も多く、この記事をお読みの方の中にも、流行地域で妊娠生活を送る方がいらっしゃることでしょう。後述しますが、流行地では、妊娠中には蚊に刺されないことはもちろん、パートナーにジカ熱の症状がなくても、妊娠中の性交時にはコンドームを利用して自衛してください。
5. まだワクチンがないから
ジカウイルスが胎児の小頭症と関係すると聞いた時に、風疹のことを思い出した医療従事者は多いと思います。1962年より前に生まれた世代では、風疹ワクチンが一般的ではなく、風疹の流行は時々見られていました。
風疹ウイルスは、妊婦が感染すると、程度の差こそあれ、高確率で生まれた赤ちゃんに先天性風疹症候群(小頭症や白内障などが起こります)という障害を引き起こします。特に10週までなら90%の胎児になんらかの障害が起こります。
蚊や性交によって感染するジカウイルスと違って、風疹ウイルスは、咳やくしゃみなどの飛沫で感染する、非常にうつりやすいウイルスです。また、風疹ウイルス感染症になっても症状が出るのは半分くらい。症状が出たとしてもやはり「風邪かな?」くらいで自然治癒してしまいます。
つまり、風疹ウイルスは、感染してもあまり分からない上に、うつりやすく、赤ちゃんの合併症発生率はジカウイルスよりも高いということが言えます。
しかし、風疹は一回罹ると10年〜20年くらいは罹らない上に、ワクチンによる予防も有効です。現在、有効な予防法が「蚊に刺されないこと」以外にないジカウイルスは、ここが決定的に違います。
ジカウイルス感染症ってどんな病気なの?
ジカウイルス感染症と連呼しておいて今更ですが、ジカウイルス感染症は、ジカウイルスに感染した状態のこと。8割は無症状で、残りの2割には症状が現れ、症状が現れた場合は、ジカ熱あるいはジカウイルス病と呼びます。
症状の出方は大きく分けて3つある
ジカウイルス感染症の症状の出方は大きく分けて3つあります。
一つは無症状。不顕性ジカウイルス感染症です。これが8割を占めます。本人は無症状で、いたって元気ですが、蚊を媒介したり性交などで、他人に病気を移す可能性があります。
二つ目は、痒みのある発疹、軽度(38.5℃以下)の発熱、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛など、「発疹+風邪」の症状。これらの症状があるジカウイルス感染症が、ジカ熱(ジカウイルス病)です。ジカ熱はジカウイルス感染症の2割に出現しますが、殆どのケースで、自然治癒します。例外的にギラン・バレー症候群を合併症として起こすケースもあります。
三つ目は、母体から胎児へ垂直感染を起こした先天性ジカウイルス感染症としての症状。先天性ジカウイルス感染症では、小頭症などの先天性障害を起こす可能性が1%ほどあります。
ジカ熱(ジカウイルス病)の症状は?
ジカ熱の症状は、38.5℃以下の軽度の発熱、発疹(痒みのある斑丘疹が多い)、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛など「風邪+発疹」です。あまり多くはありませんが、血小板減少などが認められることもあります。
発疹はジカ熱患者の97%にみられます。痒みも一緒に出現(79%)することが多いです。発熱は意外に少なく、ジカ熱患者の半分以下でみられます。
ジカウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は2日〜12日ほど。治療薬はありませんが、殆どのケースで症状は軽く、症状が出てから2日〜7日ほどで、自然に回復します。
ジカ熱はデング熱やチクングニア熱と比較して軽度のことが多いのですが、稀にギラン・バレー症候群を合併症として起こすケースもあります。また、母体から胎児に垂直感染し、先天性ジカウイルス感染症を引き起こす危険性があります。
先天性ジカウイルス感染症の症状は?
先天性ジカウイルス感染症の症状の中では、小頭症が最も有名かつ重症ですが、その他にも、以下のような様々な重症度の先天奇形が報告されています。
- 頭部の奇形(小頭症もこれに入ります)
- 脳の神経細胞の障害(小頭症もこれに入ります)
- CTやMRI上での、頭蓋内石灰化、脳室拡大、神経細胞移動障害(小頭症もこれに入ります)
- 痙攣・てんかん
- 嚥下障害
- 聴覚異常
- 視覚の異常
- 先天性内反足
- 関節拘縮
- 流産や死産
どんな経路で感染するの?
ジカウイルス感染症は、ヤブカ属のヒトスジシマカやネッタイシマカなどがウイルスを媒介することによって、ヒトー蚊ーヒト経路で感染拡大します。日本にはネッタイシマカは生息していませんが、本州以南にはヒトスジシマカは生息しています。
日本では、ヒトスジシマカは5月~10月に活動し、冬は成虫はいません。したがって、日本では冬をまたぐ大規模な流行は今後も起こりにくいと考えられます。
なお、デングウイルスやチクングニアウイルスも同じように、ヒトー蚊ーヒト経路で感染しますので、蚊を駆除することは、ジカウイルス感染症だけでなく、デング熱やチクングニア熱を感染予防する上でも有効です。
ただし、先述したように、ジカウイルスは、デングウイルスやチクングニアウイルスと異なり、性行為を通じてヒトーヒト感染することもあります。
治療薬は?
ありません。
熱があれば解熱剤、痒みがあれば痒み止めを使います。殆どのケースで、風邪と同じように自然回復します。
稀にギラン・バレー症候群を起こしますが、ギラン・バレー症候群は、ジカウイルスが原因であっても、サイトメガロウイルスやEBウイルスやマイコプラズマが原因であっても、治療法は同じです。
ジカウイルス感染症を防ごう!
先述したように、ジカウイルス感染症の治療薬はありません。
今の所、予防ワクチンもありません。ジカウイルスをはじめ蚊媒介性ウイルスの感染を防ぐためには、蚊に刺されないことと、蚊の発生を抑えることが重要です。
蚊に刺されないためには
蚊媒介感染症対策の基本は、蚊に刺されないようにすることです。これは、自分が感染しないためにも、他の人に感染させないためにも、重要な対策です。特に妊娠中の女性は、要注意です。
蚊が活動的な時間はあるが、基本的に24時間いつでも刺されると考える
ヒトスジシマカが活動するのは、比較的涼しい明け方と夕暮れ時〜日没後1~2 時間ですが、昼間でも木陰や藪では活動し、吸血します。特に、雨上がりは、活動的になります。家の中に入り込んで夜間に吸血もします。
ネッタイシマカは日本にはいませんが、暑い時間帯でも木陰や藪で活発に活動して吸血します。家の中に入り込めば、夜間にも吸血するのは同じです。
蚊のいる場所に行く時の注意事項
肌を露出しない、虫除けスプレーや蚊取り線香の使用などが挙げられます。以下に対策法を列記します。
- 肌を露出しない、白い服を着る
- 足全体を覆う靴(素足を避ける)
- 長袖、長ズボンを着る(素肌を出さない)
- 白など薄い色の衣類を着る(蚊は色の濃いものに近づく傾向がある、蜂避けにも有効)
- 蚊帳の利用
- 虫除けスプレー、蚊取り線香の利用
- 虫除けスプレー(ディート(deet)やイカリジン(icaridin)等の有効成分のうちの1つを含むものを定期的にスプレーし直す、衣類や帽子にもふりかける)
- 蚊取り線香(風上に全体用におく他、個人でも携帯)
蚊の発生を抑え、駆除する
ヤブカ属は、藪や草むら、墓地、公園、畑など、雑草のある場所を好みます。産卵は水中にしますが、狭くて水の流れない水たまりや、沼や池でも水の流れの淀んだ場所を好みます。特に雨の上がった直後、明け方や夕暮れ時は、産卵目的の蚊が栄養を求めて吸血します。
産卵場所の除去
ヤブカ属は、旅行者の体に付いて飛行機などに乗らない限り、通常の活動範囲は半径10mくらいです。自宅の周りの産卵場所を減らすだけでも、かなりの効果があります。
以下に具体的な対策法を列記します
- 家の周りの雑草は刈りとる
- 小さな水たまりの除去(以下は、水たまりの例)
- 空き缶やペットボトルに溜まった水
- 植木鉢の受け皿の水
- 野積みされた古タイヤに溜まった水
- 投棄された器具や家具などに溜まった水
ヤブカ属の卵やボウフラは、意外に乾燥に強い
ヤブカ属の卵やボウフラは意外に乾燥に強く、卵は乾燥したところに放置しても死滅しません。また、ボウフラも落ち葉や苔の上では何時までも生き続けます。卵やボウフラが一旦発生したら、ボウフラは食用油などで死滅させてから処分。卵も一旦ボウフラに孵化させてから食用油などで死滅させて処分しなければ、蚊は発生します。
雑草を刈り取ったり、水たまりを除去するなどして、蚊が産卵できないようにするのはもちろんですが、卵やボウフラの入った水をそのままそこら辺に捨てて「乾燥しているから安心」としてしまうと、効果が半減しますので、ご注意ください。
ジカウイルス感染症の流行地域へ行く場合の注意点
世界保健機関 (WHO)が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態としてのジカウイルス感染症宣言を行ってから、1年以上経過しました。
ジカウイルス感染症は、ブラジルなど中南米とカリブ海地域ならびにその周辺に大規模な流行が続き、感染者数は約1,500,000人にのぼると推測されています。オセアニア太平洋諸国、東南アジア等でも発生がみられており、シンガポールでは、国内感染者数460人以上にまで拡大し、一応収束しましたが、2017年2月現在、まだ、国内感染者が散発しています。
ここでは流行地域に渡航するする場合の注意点や対処法をまとめました。
妊娠中、または妊娠の可能性のある人はどうしたらいいの?
できれば行かない!
世界保健機関(WHO)は、2016年3月8日、妊婦は流行地域への渡航をすべきでないと勧告し、取り消していません。
行くのなら主治医と相談の上で
どうしても感染地域に行くのなら、主治医と相談の上で行くことになります。
- 妊娠初期を過ぎてから渡航する
- 流行地ではコンドーム使用した上(妊娠していてもしてなくても)で、さらに蚊に刺されないようにする
などの対策をとることになるでしょう。
滞在中は?
上述の「ジカウイルス感染症を防ごう!」を参考に、肌の露出を控えたり、虫除けスプレーを使うなどの対策をしてください。
流行地域からの帰国後は?
- 帰国後6ヶ月は、症状がなくても、性行為の際はコンドームを使用
- 帰国時に発疹+発熱、ジカウイルス感染症を疑う症状がみられた場合には(デング熱の場合もある)、空港や港の検疫官に相談
- 帰国後2週間は、症状がなくても蚊に刺されないように注意
流行地域渡航前に読んでおきたい厳選ウェブサイト6つ+1つ
ジカウイルスについては、2017年3月現在、このページだけ読めば、ジカウイルス感染症については殆どわかるように書いたつもりですが、感染事情が明らかになるにつれ、情報は日々変わります。流行地域に行く前/滞在中に読んでおきたいウェブサイトを厳選して6つ+1つご紹介します。
政府広報オンライン 何が危ない?どう防ぐ? ジカウイルス感染症(ジカ熱)予防のポイント:絵や図も豊富で、一番わかりやすい。1つだけ選ぶのならここ
厚生労働省ホームページ ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて:コンパクトにまとまっている。一般向けと医療機関向けが同じページに載っているので、自分の理解に合わせて読める。時間がない場合は予防法だけでも
厚生労働省検疫所FORTH 感染症情報 海外で健康に過ごすために ジカウイルス感染症:ジカウイルスについてだけでなく、他のページには国別、病気別に役立つ情報が満載
一般社団法人 日本感染症学会 蚊媒介感染症 :「一般の方へ」と「医療機関の方へ」と分れており、どちらも読みやすい。蚊媒介感染症専門医療機関ネットワークに参加しているジカウイルスなど蚊媒介感染症協力医療機関を一般公表している
NIID 国立感染症研究所 ジカウイルス関連情報:リスクアセスメントから診療ガイドライン、検疫所による情報、医師向けQ&Aまで、内容は幅広く、更新も早く、詳しいが、ちょっと読みにくい
MOFA 外務省 感染症危険情報:ジカウイルスだけでなくインフルエンザなどの情報についても最新情報を入手できる。また、リンクをたどれば、テロ情報などについての最新情報も
World Health Organization Zika virus:英語だが、無視できないほどおすすめなので、+1として紹介。同ウェブページ内右側に小頭症やギランバレー症候群、流行地域情報へのリンクがあり、このページだけで全てを網羅している
小頭症って出生前診断できるの?治療は?予後は?
世界中のお母さんたちが心を痛めている先天性ジカウイルス感染症による小頭症。小頭症の診断や治療、予後などについて、情報を集めました。
小頭症の発生率
小頭症の発生率は、何事もなく妊娠期間を過ごした場合の10,000に2人(約0.02%)です。今の所、ジカウイルスに感染があった場合は、約50倍の、100人に1人(約1%)程度と考えられています。
小頭症の原因となる感染症は、ジカウイルスの他に、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、風疹、水痘、梅毒などがあります。
小頭症の出生前診断
小頭症は、胎児の超音波検査で出生前診断ができることがあります。小頭症の発生自体は妊娠初期に起こってしまいますが、出生前診断できたものは、全例が27週以降です。
ただ、日本では比較的頻繁に行う胎児の超音波検査ですが、ブラジルなどでは通常27週以降の1回だけ、感染地域ではありませんがカナダやアメリカでも全妊娠期間中多くて2回(高齢出産などの理由がなければ、通常1回)など、妊婦検診事情が違うので、本当はいつ頃、小頭症がわかるのかは不明です。
また、28週以降の超音波でも出生前には診断しきれず、成長過程で診断される例も少なくありません。
小頭症の診断
生まれてきた赤ちゃんは、通常どの国でも、24時間以内に、身長、体重、頭囲、胸囲を測定します。この際、身長や体重の割に頭囲が小さい場合は、脳の画像診断が行われ、(産婦人科医ではなく)小児科医によって診断が行われます。
また、出生時に異常がなくても、乳児期早期には、頭囲が毎月測定されます。この際、頭囲についても、毎回身長や体重と成長基準と比較し、身長や体重の割に頭囲が小さい場合は、同様に脳の画像診断が行われ、小児科医によって診断が行われます。
小頭症の治療
根本的な治療法はありません。
頭蓋骨早期癒合症によって小頭症が起こっている場合(頭蓋骨早期癒合症によるものは本来は狭頭症ですが、脳の障害が軽度の場合は、小頭症と区別がつきにくいことがあります)は、脳の成長を妨げないように、手術によって、頭蓋内のスペースを拡大することもあります。
小頭症の予後
脳の障害の程度により異なります。ごく一部は全く正常に成長します。軽度の精神運動発達不全があるものの、ランドセルを背負って小学校に行ける子供はかなりいます。重度の精神運動発達不全のため、車椅子での移動やチューブを使った経管栄養が必要な場合もあります。
いずれにせよ、医療支援による刺激や遊びを使った早期介入により、知能の発達に良い影響を与えると考えられています。
まとめ
今回は、ジカウイルスについての情報をできるだけ沢山集めました。この記事は2017年3月現在、最新であると自負していますが、1年経てば、もう古くなるでしょう。
今回の記事をまとめると以下のようになります。
- ジカウイルス感染症は新興感染症であり、まだ分からないことが多い。他の病気と違って、情報が常に変わるので、信頼出来る機関のウェブサイトなどで最新情報を集める必要がある。
- ジカウイルスに感染したからといって小頭症の子供が生まれるとは限らないが(現時点でジカウイルス感染症妊婦の1%くらいの発生率)、わざわざ流行地域に行くのは避けたほうがよい。
- 蚊の駆除と蚊に刺されない工夫は、ジカウイルス感染症の予防だけでなく、デング熱やチクングニア熱の予防にも有効。
この記事が、流行地域へ渡航される方のお役に立てば幸いです。
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