普段飲んでいるコーヒーが、風邪の症状を和らげてくれるらしいと、注目されています。風邪は原因となるウイルスが体内に侵入することによって起こる感染症です。
根本的な治療薬はなく、病院に行ってもらう薬も多くが熱や咽喉の痛み、咳や痰など風邪の症状を緩和する対処療法薬です。
つらい症状をやわらげながら、体の免疫が風邪を撃退するのを待つのが風邪への対処の基本ですが、軽い風邪ならコーヒーが役にたつかもしれません。
カフェインで風邪の症状が良くなる?
コーヒーに含まれる成分は300種類以上もあると言われています。中でも特に風邪の症状緩和に効果が期待されているのがカフェインです。
眠気を覚ましてくれる効果が知られていますが、その他にも多くの働きがあり、風邪のときのつらい症状をやわらげてくれます。
交感神経を活発にして体スッキリ
カフェインが眠気を覚ましてくれるのは、交感神経を活発にしてくれるためです。
交感神経は日中活動しているときに優位になるもので、夜間は副交感神経が活発になることで体をゆっくりと休めることができます。
交感神経が活発になると、血圧を上昇させて血流を促進し、頭をすっきりとさせます。風邪で体がだるいときは、カフェインの効果により、気力を出すことができます。
また、交感神経が活発になると代謝が促進されるので、風邪を早く治すことにもつながります。
利尿作用で熱を下げる
風邪をひいて熱があるとき、体は体内に侵入したウイルスなどを撃退している真っ最中です。むやみに熱を下げようとするとかえって発熱が長引くことがありますが、熱のピークを過ぎてからは、体も発汗などによって熱を下げようとします。
汗だけでなく、尿を出すことでも熱を下げることが出来るので、カフェインの利尿作用で熱が下がることになります。ただし、発熱時は水分がただでさえ不足しがちなので、スポーツドリンクなどで水分補給をしながらにしましょう。
また、尿は体の老廃物を体外に排出してくれるので、風邪の原因となったウイルスの排出を助けることが出来ます。
頭痛、咳や痰の緩和
カフェインには鎮痛効果があり、頭痛を緩和してくれる場合があります。
実は、市販の風邪薬にカフェインが入っているものが多くあり、これは風邪薬による眠気の防止と頭痛をやわらげる目的のためにカフェインが利用されているのです。
また、カフェインは、喘息などの治療薬としても効果が認められていたことがありました。これは気管支を拡張する作用があると考えられていたためで、風邪をひいたときにも咳や痰などの症状がある場合に緩和してくれます。
胃腸を活発にする
カフェインには胃腸を活発にする効果があります。風邪で食欲がないときは、コーヒーを飲むことで食欲が出て栄養を摂ることが出来るので、体力を回復させ風邪を早く治すことが出来ます。
コーヒーの薬効は?
詳しい仕組みがわかっていないところもありますが、風邪以外にも多くの病気や症状にコーヒーが持つ薬効が期待されています。
コーヒーには多くの成分が含まれますが、病気の予防や改善に効果がある期待される代表的なものに、カフェイン、クロロゲン酸、ニコチン酸などがあります。
カフェインに期待される薬効
カフェインは、コーヒーの他、紅茶や緑茶、ココアなどにも含まれます。眠気覚ましや利尿作用のほかにも、健康によい効果がわかってきました。
肥満予防
カフェインは体にたまった中性脂肪を分解し、脂肪酸として血中に放出する働きがあります。これは脂肪が燃焼されやすい状態になったということ。
コーヒーを飲んで、30分から1時間後に運動を行うと、コーヒーを飲まずに運動した人に比べてより多くの脂肪が分解されたというデータもあります。
肥満は糖尿病をはじめとする生活習慣病の原因となります。コーヒーを飲むことが、生活習慣病の予防につながります。
二日酔いの改善
吐き気や頭痛などの症状が出て、一刻も早く治したいと思う二日酔い。
二日酔いは、アルコールが分解される途中で出来るアセトアルデヒドという物質が原因です。カフェインには、肝臓を活動的にする作用があり、アセトアルデヒドの分解を早めてくれる作用があります。
利尿作用により、老廃物を排出もしてくれるので二日酔いを早く治すのに効果的です。
クロロゲン酸に期待される薬効
ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸は、コーヒーポリフェノールとも呼ばれ、コーヒーに欠かせない苦みや香りのもととなります。
コーヒー1杯にはカフェインよりもクロロゲン酸が多く含まれています。
活性酸素を抑え、アンチエイジング
活性酸素は、本来ウイルスや細菌などを攻撃して体を守ってくれますが、ストレスや食品添加物の摂取、飲酒や喫煙などにより増えすぎてしまうと、逆に健康な細胞に結びついて、老化などの原因になります。
クロロゲン酸は、その強い抗酸化作用により、体内で活性酸素が作られるのを防いでくれる働きがあります。
ガンを抑制
抗酸化作用により細胞や遺伝子が傷つくのを予防することで、発ガンのリスクが減ります。さらにクロロゲン酸には大腸ガンの発生を抑えるというデータもあります。
肥満予防
カフェインは、体内に蓄積された脂肪を燃焼させる手助けをしてくれますが、クロロゲン酸は体内に脂肪がたまるのを防ぎ、脂肪肝を予防してくれる働きがあります。
ニコチン酸に期待される薬効
あまり聞きなれないニコチン酸という成分ですが、たばこに含まれるニコチンとは異なります。別名ナイアシンとも呼ばれるビタミンB群の一種で、体にとってなくてはならないものです。
動脈硬化の予防
ニコチン酸にはコレステロールを下げる働きがあります。コレステロールには俗に悪玉コレステロールとよばれるLDL と善玉コレステロールとよばれるHDLの2種類があり、LDLが増えると、血管が硬くなり動脈硬化へとつながります。
ニコチン酸は善玉コレステロールのHDLを増やすことで、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化を予防してくれます。
カフェインの摂りすぎによって起こる問題
いいことづくめのように見えるカフェインですが、摂りすぎによって健康に悪影響を及ぼすことがあります。
健康な大人が1日にとってもよいとされるカフェインの量は250~300mg以下とされ、コーヒーに換算すると約2~3杯程度です。妊婦や授乳中の人はさらに少なく、100mg以上を摂取すると流産や早産、低体重児の原因になるともいわれています。
カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶(1杯に含まれるカフェイン量の目安30mg)や緑茶(30mg)、ココア(45mg)、などにも含まれていますので、いろいろな飲み物を飲む習慣のある人はさらに注意が必要です。
また、栄養ドリンクやエナジードリンクにも多量のカフェインが含まれています。以下、カフェインの摂りすぎによって起こるデメリットを見てみましょう。
貧血
カフェインは鉄分や亜鉛などのミネラルの吸収を阻害する働きがあります。貧血になりやすい若い女性や妊婦さんは、特に注意が必要です。
胃痛
カフェインは胃液の分泌を促す効果があります。そのため空腹時にカフェインを摂ると胃痛が起こることがあります。
睡眠障害
カフェインは交感神経を優位にする働きがあるので、夜寝る前に摂取すると眠りにつきにくくなるのはもちろんのこと、睡眠の質が低下し、眠っている間も体が休まらない状態になります。
自律神経の乱れ
カフェインを日常的に多く摂っていると、常に交感神経が優位な状態が続くので血圧や心拍数が上昇して、興奮状態が続きます。そのため自律神経が乱れ、不眠や気分がふさぐなどの症状が現れます。
中毒症
カフェインには中毒症があります。短時間に多量のカフェインを摂ると急性カフェイン中毒となり、落ち着きがなくなって興奮したり、胃痛や頭痛、吐き気などが起こることがあります。
また、普段日ごろから多く摂っている人がカフェインを摂らないと、頭痛やだるけ、嘔吐、ぼんやりして気分が落ち込むなどの禁断症状が起こることがあります。
カフェインは適度に摂取を
適正なカフェイン摂取量は、健康な大人でおおむね250~300mg程度といわれますが、体重や体質によっても異なり、過敏な人では100mgでも急性中毒が起こる場合もあります。カフェインフリーのデカフェやお茶などを利用して、日ごろから適量を心がけましょう。
万が一急性中毒の症状が出た場合、安静にしてカフェインが代謝されるのを待ちます。症状が重い場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
風邪薬とコーヒーの併用は避ける
通常、市販の風邪薬には、解熱鎮痛、咳止め、気管支拡張、去痰、抗炎症などの成分が含まれており、さらに薬によって、漢方やビタミン類、無水カフェインなどが配合されています。
無水カフェインは、眠気防止や鎮痛作用で薬の効果を高めるために加えられています。薬にもよりますが、風邪薬1回分に含まれるカフェインの量は、10~30mgのものが多く、風邪を早く治したいあまりに風邪薬とコーヒーを併用すると、カフェインの過剰摂取になってしまいます。
仕事中などに、風邪気味だからと薬局で買った風邪薬を飲み、その後打ち合わせでコーヒーを飲み、机に戻って栄養ドリンクを飲むといったことは、風邪が治るどころか副作用が出て、かって具合が悪くなる可能性もあります。
まとめ
コーヒーに含まれるカフェインは、頭をすっきりさせ、利尿作用で熱を下げ、咳や頭痛の緩和するなど、風邪の症状をラクにしてくれる効果がありますが、一方でカフェインの過剰摂取により、風邪以外の健康被害が起こることもあります。
薬を服用するほどでない軽い風邪の場合は、コーヒーで体調を整えるのもよいですが、飲みすぎにはくれぐれも注意しましょう。
特に、風邪薬や栄養ドリンクとの併用は絶対に避けるべきです。かえって症状が悪化したり、別のつらい症状が現れる可能性があります。