クリプトスポリジウムに感染した時の症状は?予防法や感染経路を知ろう!

クリプトスポリジウムは、ヒトやウシ・ブタ・イヌ・ネコ・ネズミなど脊椎動物の消化管に寄生する病原性原虫です。

ウシやブタなど哺乳類の腸管に寄生する原生動物(原虫)と思われていましたが、1976年にヒトにも寄生することが確認されました。水様性下痢症・致死性下痢症を起こす病原体として注目され、現在では、最も一般的な水系感染症の原因として世界中に知られています。

日本では、2003年の感染症法の改定で、クリプトスポリジウムによる感染症(クリプトスポリジウム症)は、5類感染症に指定されました。

クリプトスポリジウムとはどのような寄生虫か、その感染症の症状と治療法、感染予防の対策についてお伝えしますね。

クリプトスポリジウムとは?

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クリプトスポリジウムとは、アピコンプレックス門(胞子虫類)に属する原虫です。ヒト・ウシ・ブタ・イヌ・ネコ・ネズミ・トカゲ・ヤモリなど脊椎動物の消化管に寄生します。

[クリプトスポリジウムの種類]

クリプトスポリジウムは、遺伝子によりヒト型・ウシ型・トリ型など遺伝子多型を示します。その種類と寄生宿主の組合せによっては、クリプトスポリジウム症を引き起こします。

ヒトに寄生するのは、クリプトスポリジウムの1種である「クリプトスポリジウム・パルバム」です。感染症法において「特定病原体等」に指定される唯一の病原性原虫です。

感染すれば、水様性下痢症、集団感染、最悪の場合は致死性下痢症を引き起こします。クリプトスポリジウム・パルバムは、このような感染症の病原体となる原虫類です。

ジアルジア

クリプトスポリジウムと同じように、ヒトをはじめ哺乳類に寄生して原虫感染症(寄生虫病)を引き起こす病原体原虫に、ジアルジアがあります。ジアルジアはランブル鞭毛虫です。

ヒトなど哺乳類の消化管に寄生して増殖します。ヒトが感染すると、「ジアルジア症」という激しい下痢性胃腸炎を引き起こします。クリプトスポリジウム症と同様に、感染症法により、5類感染症に指定されています。

[クリプトスポリジウムの宿主]

ヒトをはじめとする脊椎動物全般が宿主となります。そのため、クリプトスポリジウムは世界中に分布しています。

爬虫類が感染すると、慢性的な症状を呈し、衰弱します。鳥類は、野生・家禽・愛玩用など全般に寄生し、病原性を示すこともあります。哺乳類には、野生・家畜の別なく広い分野に蔓延しています。症状が出ない(不顕性)こともありますが、感染症を発症する場合もあります。

[クリプトスポリジウムの生態]

クリプトスポリジウムは、環境中では、オーシスト(接合子嚢)という環境耐性を持つ厚い被膜・被殻を形成して存在します。オーシストの中には、4つのスポロゾイトという種虫があります。

クリプトスポリジウムは、一宿主性で、媒介者や中間宿主を必要としません。クリプトスポリジウムのオーシストは、宿主の糞便とともに排出された時から、感染能力があります。

クリプトスポリジウムのオーシストは、ヒトの体内に経口摂取されると、小腸で脱嚢(だつのう)し、スポロゾイトを放出します。スボロゾイトは腸管上皮細胞の微絨毛に侵入して、寄生体胞を形成して、無性生殖を行い、メロゾイトを産生します。メロゾイトは寄生体胞という細胞の外に遊離して、再び微絨毛に侵入して増殖し、有性生殖に移行します。

有性生殖により、直径4~5μmのオーシストが生じます。オーシストの中で4個のスポロゾイトが発育し、感染性を有します。オーシストは微絨毛から離脱して、スポロゾイトを放出し、自家感染を繰り返します。あるいは、オーシストのまま、糞便とともに体外に排出されて、水(水道水を含む)や食品に混じり、新たな感染を起こします。感染者1人から排泄されるオーシストの数は、10億個と言われます。

[クリプトスポリジウムの耐性]

クリプトスポリジウムは、消毒用の塩素に対して、強い耐塩素性があります。通常の水道水の消毒に用いられる塩素濃度で不活化することはできません。高濃度の塩素で長時間処理をすると、不活化できます。

熱に対する耐性は、それほど強くありません。1分間ほど煮沸すると、クリプトスポリジウムのオーシストの感染力は失われます。

オーシストがとても頑丈なので、地表に存在することができます。冷凍されても死滅しません。水中で、数か月も生存することができます。紫外線処理をすると、クリプトスポリジウムを不活化できます。オゾン処理も消毒効果がありますが、水温が低いと、消毒効果が低下します。

クリプトスポリジウム症

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ヒトがクリプトスポリジウムという病原性原虫に感染すると、クリプトスポリジウム症という原虫感染症を発症します。クリプトスポリジウム症は、感染症法により5類感染症に指定されています。診断した医師には、届出の義務があります。

免疫機能が正常であれば、感染しても自然寛解する(自然に治る)ことが多いのですが、HIV(AIDS)など免疫不全の患者がクリプトスポリジウムに感染すると、死に至る可能性が極めて高くなります。

1976年に感染が確認されて以来、欧米において、1980年代中頃から水系汚染による集団感染が注目されています。日本でも、1990年代に入ってから、水道水や食品の汚染による集団感染が報告されています。町営水道などが汚染源になると、感染患者の数は膨れ上がります。

[クリプトスポリジウム症の症状・・・免疫機能正常者]

免疫力が正常であれば、クリプトスポリジウムに感染しても、脱水症と感染の広がりにさえ気をつければ、特に治療する必要もなく、自然に回復します。

感染してから発症するまでの潜伏期間は3~10日です。多くの人が、感染後9日以内に発症しています。感染部位は小腸付近に限られます。

突然、腹部に疝痛(発作性の痛み)が起きます。激しい水様性の下痢、嘔吐、吐き気、胃痛、倦怠感、筋力低下、軽い発熱が生じます。このような症状が、数日から2~3週間続きます。多くの人が、2週間以内で回復しています。

水様性下痢症は、個人差があり、軽度の1日数回程度から1日20回にも及ぶことがあります。1日平均3ℓ程度の下痢があるようです。

まれに重症化して、膵炎などの疾病が生じることがあります。

小児はクリプトスポリジウムに感染しやすく、特に2歳児以下の患者が多いようです。年齢が上がるにつれて、免疫機能が増強し、感染しにくくなったり、感染しても発症しにくくなったりします。

治療

クリプトスポリジウムによる腸炎の治療薬は特にありません。対症療法を行うだけです。下痢が激しい場合は止瀉剤(下痢・嘔吐止め)を使用することがあります。幼児・小児にはニタゾキサニドを投与して、回復を速めることもあります。

激しい水様性下痢による脱水症の対策として、補水を行います。たいていは経口補水ですが、点滴による水分投与が必要になることがあります。高齢者や幼児は、特に脱水症に注意する必要があります。

食事は、なるべく消化のいいものにします。

感染力

クリプトスポリジウムの感染力は極めて強いといえます。症状が治まっても、数週間は排便からオーシストが排出され、感染力がありますから、要注意です。

不顕性感染

免疫力が強いと、クリプトスポリジウムに感染しても症状が出ないことがあります。症状が出なくても、感染力はあります。

[クリプトスポリジウム症の症状・・・免疫不全の場合]

高齢者や幼児など、免疫機能が低下している人、免疫力が弱い人、また、HIV(AIDS)のような免疫不全の人が、クリプトスポリジウムに感染すると、重篤化する可能性が高くなります。

免疫力の弱い人や免疫不全の人の場合、クリプトスポリジウムに感染しやすくなります。クリプトスポリジウム症はゆっくりと発症し、進行します。慢性化・長期化します。難治性・再発性・致死性下痢症を発します。

慢性で劇症の水様性下痢が起こります。免疫不全の人は、1日に11~15ℓも水様便を排泄することがあります。非血性の下痢ですが、軟便・泥状便・水様便まで、個人によって状態が違います。

重篤化

慢性の水様性下痢症のため、腸管から栄養が吸収できなくなります。そのため、脱水症・電解質平衡異常・栄養不良・体力消耗が続いて起こります。最終的には、死に至ります。

免疫不全の進行とともに、クリプトスポリジウム症が重症化します。コレラと同じような大量の水様便や失禁が生じます。感染部位も、免疫機能が正常な人は小腸付近だけですが、免疫不全の人は、胆嚢・胆管・呼吸器系などにも広がります(異所寄生)。

治療

免疫不全の治療や免疫機能の増強が、治療の基本となります。

通常、抗生物質は役に立ちません。しかし、免疫不全の人には、止瀉剤(下痢・嘔吐止め)とともに、パロモマイシン・アトバコン・ニタゾキサニド・アジスロマイシンが投与されることが多いようです。

[感染経路]

クリプトスポリジウムは、経口感染です。米国の実験では、数十個から130個程度を経口投与することで、発症することが証明されています。クリプトスポリジウムは、株によって感染力が異なりますから、感染力が極めて強い株だと、10個以下でも感染症を発症します。

土壌や水、調理されていない汚染食物、感染者の排泄便・感染動物の糞便などに接触することにより二次的に汚染された食物を、口から摂取することで感染します。

国立感染症研究所の感染症情報センターによれば、クリプトスポリジウム感染は畜産分野では珍しいことではありません。ウシを調査すると、発症した患畜も含めて、感染牛の確率は極めて高くなっています。ウシ・ブタなどの家畜、イヌ・ネコなどのペットの糞便から、水汚染・食物汚染が起きます。

水から感染することが多く、汚染された水道水を飲料水として飲んだために集団感染が起きています。プールで感染することも多いようです。クリプトスポリジウムは塩素耐性が強いので、通常の水の塩素消毒では不活化できないのです。

[集団感染]

クリプトスポリジウム症は、散発感染より集団感染が注目されます。

海外の集団感染例

1993年、アメリカのミルウォーキーでは、水系汚染により403,000人が発症し、4,400人が入院しました。2001年、カナダのノースバトルフォードでは、浄水場の設備不良により、58,000~7,100人が下痢症状を起こし、その2,000人近くからクリプトスポリジウムが見つかりました。

アメリカ・カナダ・イギリス各地で、水源となる池や湖、水道がクリプトスポリジウムに汚染され、集団被害が続出しています。2010年には、スウェーデンのエステルスンドで、水道水を汚染源とする4,000人以上の感染症患者が報告されました。

日本における集団感染例

1994年、神奈川県平塚市の雑居ビルで、460人のクリプトスポリジウム症患者が出ました。1996年には、埼玉県越生市の町営水道が汚染され、町民の60%を超える8000人以上が発症しました。

2002年には、北海道室蘭市の宿泊施設で、2件連続して集団感染が起きました。2002年2月に兵庫県の高校と某団体が、スキー旅行から帰って来て、激しい下痢や発熱を生じ、検査の結果、クリプトスポリジウムの原虫による原虫症と判明しました。同年4月には、札幌の専門学校が室蘭でオリエンテーションを行い、半数以上の生徒がクリプトスポリジウム症を発症しました。

しかし、室蘭の宿泊施設の食物や使用水、室蘭の水道水・水道設備から病原であるクリプトスポリジウム原虫が発見されませんでした。

集団感染事故が起きやすい施設

集団感染が起こりやすい施設としては、プールの他に、保育所や高齢者の介護施設・デイケア施設があります。保育所や介護施設におけるオムツ交換により、クリプトスポリジウムの集団感染が起こる可能性があります。

保育所や介護施設・デイケア施設を利用しているのは、乳幼児や高齢者で、免疫力が弱く、感染しやすいのです。

[海外旅行に要注意]

クリプトスポリジウム症の散発例として旅行者下痢症があります。

海外旅行、特に、開発途上国に旅行して帰国した人が、激しい下痢や発熱を起こすことが多いのですが、その中にはクリプトスポリジウム症の患者が確認されています。

日本や欧米など先進国では、下痢症の2.1%がクリプトスポリジウムが病原体ですが、開発途上国では、下痢症の6.1%がクリプトスポリジウム症です。飲料水の原水となる川や池、湖がクリプトスポリジウムに汚染されていることも多いようです。

旅行者下痢症は、クリプトスポリジウムによく似たジアルジアの原虫に感染しても起こります。

[クリプトスポリジウム症の診断]

クリプトスポリジウム症の検査方法は、いくつかありますが、いずれも便のサンプルを採取して行います。

顕微鏡検査法では、採取した便サンプルを顕微鏡で調べ、オーシストの存在を確認します。クリプトスポリジウム症が発症した急性期の患者の便には、オーシストが多量に含まれているので、検査も容易です。

急性期の患者以外は、顕微鏡による検便では、オーシストを確認することが難しくなります。それで、便サンプルからクリプトスポリジウム原虫の放出するタンパク質を検査する抗原検査を行います。蛍光抗体染色法が最も感度の良い検査法と言われます。

クリプトスポリジウムの予防対策

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クリプトスポリジウムによる集団下痢症は、日本では、1996年の埼玉県越生町における発生以来、厚生労働省による対策が進められた結果、2002年北海道室蘭市の事例を最後にして、発生していません。

クリプトスポリジウムによる感染を予防する対策は、水道施設系の対策と、自宅等個人による対策があります。

[水道施設におけるクリプトスポリジウム等の対策]

クリプトスポリジウムの集団感染は、水道原水の汚染によることが多いので、「水道におけるクリプトスポリジウムの暫定対策指針」、ついで2007年に「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」が、厚生労働省によってとりまとめられました。

同時に水道施設における技術的基準に関する省令が改正されました。指標菌やクリプトスポリジウム等の検査方法なども、「健水発」により通知されています。

水道原水のクリプトスポリジウム等による汚染の可能性

(指標菌の検出)

水道の原水(河川や湖沼など地表水・伏流水・湧水・井戸水)から、大腸菌や嫌気性芽胞菌が検出された場合は、水道原水がクリプトスポリジウム等に汚染されている可能性があります。

大腸菌は、水道原水が糞便に汚染されている指標となります。嫌気性芽胞菌は塩素耐性があるので、同じように塩素に強い抵抗性を有するクリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫と相関があるとされています。そのため、大腸菌と嫌気性芽胞菌は、クリプトスポリジウム等原虫による汚染の「指標菌」となっています。

(糞便を処理する施設等排出源の存在)

水道の水源となる河川や湖沼などの地表水・伏流水・湧水などの取水施設の上流域、あるいは浅い井戸の周辺に、家畜など哺乳動物やヒトの糞便を処理する施設等排出源がある場合は、水道原水がクリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫に汚染されている可能性があります。

水源の種類に関係なく、水道原水の水質検査をして、指標菌の検出を確認する必要があります。

耐塩素性病原生物への対策

クリプトスポリジウム等耐塩素性病原生物は、通常の塩素消毒では不活化することはできません。そこで、厚生労働省は水道事業体等に対し、浄水施設にろ過などの設備を設置するように指導してきました。

(ろ過設備)

クリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫は耐塩素性は強いのですが、通常の浄水設備のろ過など物理的処理で、ほとんど除去できます。

ただし、水源で大量発生した場合は、除去しきれないことがあります。

(紫外線照射)

小規模な水道施設では、必要なろ過設備が設置されていないこともあります。そこで、耐塩素性病原生物対策を推進するために、紫外線照射する浄水処理が考えられています。

紫外線処理をすることで、クリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫を不活化できますし、紫外線照射はろ過装置よりも導入しやすいようです。

[個人のクリプトスポリジウム等感染予防対策]

クリプトスポリジウム等の寄生虫の予防対策は、個人的にも行う必要があります。

家族に乳幼児や高齢者など免疫力の弱い人・免疫機能が低下している人がいる場合、また、HIV(AIDS)など免疫不全の患者さんの場合は、感染すると重篤化し、死に至る危険性があるので、特に注意が必要です。

①手洗いの徹底

原虫・細菌・ウィルスなど病原体は異なっても、感染予防の基本は「手洗いの徹底」です。

クリプトスポリジウムは土壌にも、ペットの糞便にも存在するので、土いじりやペットの糞の始末をした後は、石鹸でよく手を洗います。流水で洗うようにします。

クリプトスポリジウム症を発症した人の下痢便の始末をした時、看病して接触した時は、念入りに流水で手を洗います。

②生水・生食品は食べない

地域で集団下痢症が発生した場合は、水道水が汚染されている可能性があります。生水は絶対に口にしないようにします。飲料水だけでなく、歯磨き・うがいなどの水も、沸騰させた水を使います。

集団下痢症の起きている地域のプールにおける水遊び・水泳は避けます。殺菌していない牛乳やジュースは、摂取しないようにします。加熱調理していない食物は食べないようにします。

以上のことは、集団感染が起こった時、公衆衛生局から指導されます。免疫不全の人は、日常的に生水を口にしないようにし、加熱調理していない食物を食べないようにします。

③浄水器

浄水器は、次のような製品であれば、予防効果があります。

逆浸透膜フィルターを使用している浄水器、1μ(ミクロン)の粒子を除去できる浄水器、クリプトスポリジウム等のシスト除去のレベルが、全米科学財団(NSF)が定めたNSF規格#35を満たしている浄水器・・・これらには、クリプトスポリジウム等の除去効果があるようです。

④疑わしい下痢症は、すぐ医師の診察を受ける

突然、激しい下痢や胃痛、発熱などが起きた時は、すぐに医師の診察を受けます。

細菌やウィルスによる感染検査、検便などで病原体が検出できなくても、下痢症が続く時は、再度、検便を受けることも必要です。

発展途上国だけでなく、欧米先進国に旅行して帰国した後に下痢症(旅行者下痢症)が起きた場合は、すぐに医師の診察を受ける必要があります。

早期にクリプトスポリジウム症が発見されれば、予防対策を取ることができ、感染が拡大しないですみます。

⑤免疫力を強くする

免疫機能が正常に働き、免疫力が強ければ、クリプトスポリジウムやジアルジアなど病原性原虫に感染しても、発症しないで済んだり、発症しても重篤化せず自然治癒したりします。

良質の睡眠・適度な運動・栄養バランスの良い食事・ストレス解消などが、免疫力増強に効果があります。

⑥寄生虫による感染症に関心を持つ

寄生虫による被害は、衛生環境が整うにつれて減少していますが、寄生虫が死滅してしまったわけではありません。むしろ、塩素消毒に耐性の強いクリプトスポリジウムやジアルジアなど、集団感染を引き起こす病原性原虫が注目されています。

厚生労働省HPや国立感染症研究所のサイトなどで、地域の集団感染症などを知ることができます。日頃からクリプトスポリジウム等に関心を持つことが、予防対策になります。

まとめ

クリプトスポリジウムは世界中に分布して、ヒトをはじめ脊椎動物の消化管に寄生する病原性原虫です。

クリプトスポリジウムは環境中ではオーシストという形態で存在します。オーシストは大変頑丈で、消毒用の塩素にも強い耐性があり、冷凍されても死滅しません。ただし、1分程度の煮沸で感染力を失います。

クリプトスポリジウムに感染して発症する原虫感染症をクリプトスポリジウム症といいます。感染力がとても強く、汚染された水や生食物などから経口感染します。激性の水様性下痢、腹部の疝痛、胃痛、嘔吐、発熱などが起きます。

クリプトスポリジウムは宿主の糞便から土壌や水に混入します。特に、水道水の原水となる河川・湖沼や伏流水、湧水、井戸水を汚染して、クリプトスポリジウム症の集団感染を引き起こします。現在、世界中で最も注目されている水系感染症です。

日本でも、埼玉県越生町の町営水道水の汚染により、町民の60%を超える集団感染が発生しました。そのため、厚生労働省は、水道事業体等に、浄水場にろ過施設を設置するように指導し、耐塩素性病原生物対策を推進しました。最近では、紫外線照射によるクリプトスポリジウム等の不活化も考えられています。

クリプトスポリジウムに感染しても、免疫機能が正常な人は、特に治療薬など必要とせず、自然に回復します。ただし、水様性下痢が激しいので、脱水症に要注意です。

乳幼児や高齢者など免疫力の弱い人や、HIV(AIDS)など免疫不全の人はクリプトスポリジウムに感染しやすく、重篤化します。免疫不全の人は致死性下痢を起こします。

発展途上国ではクリプトスポリジウムによる原水汚染が起きることが多く、しばしば旅行者が感染します。海外旅行から帰国して激性下痢症を発症した場合は、クリプトスポリジウム症の可能性があります。

地域で集団下痢症が発生した場合は、クリプトスポリジウムによる水道水汚染の可能性が高いので、手洗いを徹底し、生水や未調理の食物を摂らないようにします。プールに入ることも避けます。集団感染が拡大しないようにします。

少しでも疑わしい下痢症が起きた時は、すぐに医師の診察を受けます。特に、免疫不全の人は慢性的な下痢に注意して、医師の治療を受けるようにすることが大事です。

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