ベロ毒素とは?何から検出される?症状や治療法、予防法を紹介!

水のような下痢が頻繁に起こり、続いて血便と激しい腹痛が生じれば、腸管出血性大腸菌の感染による出血性大腸炎の可能性があります。

「ベロ毒素」とは、腸管出血性大腸菌が産生する毒素タンパク質です。「ベロ毒素が12gあれば、日本人全員を殺せる」というほど、強い毒性を有しています。ベロ毒素は、大腸・脳・腎臓に多大な悪影響を及ぼします。最悪の場合、死に至ることもあります。

ベロ毒素の作用、ベロ毒素を産生する大腸菌とその感染症症状や治療法、予防法についてお伝えしますね。

ベロ毒素とは?

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ベロ毒素は、腸管出血性大腸菌が産生し、菌体外に分泌する毒性タンパク質のことです。赤痢菌が産生する志賀毒素(シガトキシン)と同じものです。「志賀様毒素」とも呼ばれます。

ベロ毒素は、大腸をただれさせ、大腸の血管壁を破壊して出血させます。腎臓に障害をおこし、脳や神経にも作用します。発症後、短時間で死に至ることもあります。

ちなみに、ベロ毒素(Verp Toxin)=シガトキシン(Shiga Toxin)は、シガテラ食中毒を起こすシガトキシンとは、全く違うものです。

[ベロ毒素を産生する大腸菌]

大腸菌はヒトの体内に常在する細菌です。大腸菌は無害のものが多いのですが、中には、下痢や腹痛など胃腸炎や他の疾患を引き起こすものがあります。疾患を引き起こす大腸菌を「病原性大腸菌」といいます。

病原性大腸菌は5種類あります。腸管出血性大腸菌は、その1つです。

腸管出血性大腸菌

この病原性大腸菌は、感染すると出血性の下痢を起こすので、腸管出血性大腸菌(EHEC)と呼ばれます。ベロ毒素という強い毒性タンパク質を産生するため「ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)」とも呼ばれます。

[ベロ毒素の種類]

ベロ毒素(Vero Toxin)には、ベロ毒素1(VT1)とベロ毒素2(VT2)があります。構造はよく似ているのですが、毒素の産生時期と菌体の外へ分泌するタイミングが異なります。

なぜ、ベロ毒素というのか?

アフリカのミドリザルの腎臓に由来する培養細胞ベロ細胞に対し、強い毒性を発揮して死に至らせるため、「ベロ毒素」と呼ぶようになりました。

ベロ毒素1とベロ毒素2

ベロ毒素1は、志賀赤痢菌が産生する志賀毒素と同じものです。

ベロ毒素2は、55%が志賀毒素と同じです。ベロ毒素1より毒性が強いと言われ、重症化させます。

[ベロ毒素のメカニズム]

ベロ毒素の構造

ベロ毒素は、毒性活性を持つAサブユニットと、細胞との結合活性を持つBサブユニットから構成されています。

ベロ毒素のBサブユニットが細胞の細胞膜の糖脂質(ベロ毒素受容体)と結びつき、細胞内にAサブユニットを送りこみます。Aサブユニットは真核細胞のリボソームに作用して、タンパク質の合成を阻害します。タンパク質の合成ができなくなると、細胞は死滅します。

ベロ毒素受容体(レセプター)は、大腸・心筋・大動脈壁・腎臓・脾臓・大脳・小脳・脊髄に多く存在します。ベロ毒素受容体が多いほど、毒素の影響を受けやすくなります。

ベロ毒素の作用

①腸管粘膜上皮細胞や腸管血管内皮細胞を破壊して、下痢や出血性下痢を引き起こします。

②腎臓の血管内皮細胞が傷害され、微小血栓が形成されます。そのため、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」が起きます。溶血性尿毒症症候群を起こすには、ベロ毒素2が作用します。

③尿細管上皮細胞を傷害して、ベロ毒素受容体を増やします。

④腸管内から血液中に侵出して、血管内皮細胞を傷害します。微小循環障害が起き、いろいろな組織が虚血(血液が十分にいきわたらない)状態になります。いろいろな臓器に機能不全が起こります。

ベロ毒素と遺伝子

ベロ毒素の遺伝子は、細菌細胞に感染するウィルス(ファージ)の遺伝子中にあります。そのため、ベロ毒素遺伝子を持つファージが、無害の大腸菌や赤痢菌に感染すると、その大腸菌もベロ毒素を産生するようになります。

ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌が体内に侵入すると、ベロ毒素を産生する大腸菌が増えてしまう危険性が高いのです。

ベロ毒素は病原因子

細菌には、感染に積極的に働く攻撃的病原因子と、防御機構に対して働くエスケープ病原因子があります。

ベロ毒素は菌体の外に分泌される強力な毒性タンパク質で、細菌が死滅する時にベロ毒素が放出されます。毒素は、攻撃的病原因子で、感染症を引き起こしたり、重症化させます。

腸管出血性大腸菌による感染症

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腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)は、病原性大腸菌の1種です。病原性大腸菌に感染すると、腸管感染症や消化器感染症を発症することがあります。

中でも、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌の感染症は、死に至る危険性のある食中毒です。感染症法により、「3類感染症」と指定され、腸管出血性大腸菌感染症を確認した医師は、所轄の保健所に届け出なくてはなりません。

腸管出血性大腸菌で、よく知られているのがO-157ですね。

[病原性大腸菌]

大腸菌は通性嫌気性菌で、ヒトの大腸に常在する腸内細菌です。無害なものが多いのですが、血液中や尿路系に感染すると、病原体となります。

腸管感染症を起こす強い病原性のある大腸菌を、「病原性大腸菌」といいます。食中毒や感染症を引き起こす細菌ですから、サルモネラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じ「原因菌」です。

病原性大腸菌は5種類あります。①病原血清大腸菌・②腸管侵入性大腸菌・③腸管毒素原性大腸菌・④腸管凝集接着性大腸菌・⑤腸管出血性大腸菌 です。

病原性大腸菌感染症は、幼児以下に起きやすいようです。

①病原血清大腸菌(腸管病原性大腸菌)

腸管病原性大腸菌は、小腸の粘膜細胞にしっかりと接着して、粘膜細胞上にある微絨毛を破壊して、下痢を起こします。小腸の微絨毛には、栄養を吸収する働きがあります。

2歳以下の乳幼児の感染が多いようです。潜伏期間は12~24時間です。

粘液便や水様性の便を多量に排出し、脱水症状を起こします。軽い発熱や全身のだるさがあります。乳幼児の脱水症状は、極めて危険で、重篤化する可能性があり、要注意です。

乳幼児は約1週間、成人ならば1~3日で回復します。

②腸管侵入性大腸菌(腸管侵襲性大腸菌)

腸管侵入性大腸菌は、腸管粘膜組織の上皮細胞の中に侵入し、増殖しながら周囲の細胞に広がっていきます。大腸や直腸に、潰瘍性の炎症が起きます。

乳幼児の感染や集団感染は、あまり起きないようで、散発型の傾向があります。

潜伏期間は3日前後で、粘液・血液・膿の混じった便が出ます。しぶり腹で、何度もトイレに通います。吐き気・嘔吐・発熱・痙攣(けいれん)・悪寒・頭痛などを伴います。

③腸管毒素原生大腸菌

腸管毒素原性大腸菌は、下痢を起こす原因となる毒素を産生する病原大腸菌です。

上下水道の発達していない地域で、生水・生野菜・果物を飲食して感染します。

水様性の激しい下痢を起こし、重症化すると、米のとぎ汁のような便が出ます。脱水症を起こしやすく、腹痛と嘔吐を伴います。

たいていは1~3日で回復しますが、長引くこともあります。長引くと、回復するまでに10日以上かかることもあります。

④腸管凝集性接着大腸菌

この病原性大腸菌は、菌が集まって(凝集して)長官に接着します。

発展途上国の乳幼児に感染することが多く、日本国内では、東南アジア・アフリカ・南米などからの帰国者が発症することが多いようです。しかし、国内でも、乳幼児の感染や集団感染が起きることもあります。

潜伏期間は7時間~2日です。粘液の混じった水様性の下痢便が出ます。時には、血便や緑便が出ます。腹痛・嘔吐・38℃台の発熱が起こります。

3~7日で回復する場合が多いのですが、乳幼児や免疫力が低下している人(病人・高齢者)は長引きやすく、下痢が2週間以上続くことがあります。

⑤腸管出血性大腸菌

ベロ毒素を産生し、出血性の大腸炎を起こす病原性大腸菌の1種です。略して出血性大腸菌といったり、EHECと表記したりします。

感染しても、ほとんど無症状だったり、軽い下痢で済んだり、あるいは、真っ赤な水のような血便が出て、重篤な症状を呈したり、腸管出血性大腸菌にも、いろいろあります。

[腸管出血性大腸菌感染の症状]

腸管出血性大腸菌はベロ毒素を産生するため、感染すると出血性大腸炎を起こす上に、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症など重篤な合併症が生じる危険性があります。

出血性大腸炎

腸管出血性大腸菌に感染すると、3~8日の潜伏期間の後、粘液の混じった水様性下痢便が頻繁に出るようになります。粘液成分は少ないのが特徴です。

ベロ毒素が腸管血管内皮細胞を破壊して、出血性大腸炎が起きます。水様性下痢が始まってから1~2日後に、下痢便に鮮血が混じるようになり、やがて便成分が減少して、水分の多い真っ赤な便が出るようになります。「赤ワインのような便」と表現する人もいます。

激しい腹痛が生じます。発熱する患者さんもいますが、一過性で長く続くことはありません。吐き気や嘔吐を伴うことがありますが、軽いようです。

この時期に、白血球数やCRP(炎症・感染症を調べる指標)が高いと、溶血性尿毒症症候群を発症する可能性が高くなります。

下痢症を発して2週間ほど経ち、下痢が治まってから、便培養の検査をして、腸管出血性大腸菌が検出されなければ、この後に溶血性尿毒症症候群や脳症を発症する可能性はありません。

溶血性尿毒症症候群

水様性の下痢が始まって、5~7日すると、溶血性尿毒症症候群を発症します。ベロ毒素が腎臓の糸球体血管内皮細胞を損傷して、血栓性微小血管症が起きます。そのため、溶血性貧血(赤血球が破壊されて起きる貧血)・血小板の減少・急性腎不全(腎機能の著しい低下)が起きます。

尿毒症(症候群)とは、腎機能が著しく低下して、身体の老廃物や有害物を体外に排出できず、体内に溜まってしまい、臓器・組織・細胞の機能が悪くなり、体液異常を起こすことです。

尿量が少なくなり(乏尿)、浮腫(ふしゅ=むくみ)が生じます。

肝機能障害を起こすこともあります。

脳を侵して、痙攣(けいれん)や意識障害を起こします。

溶血性尿毒症症候群を発症した患者さんの致死率は、1~5です。

溶血性尿毒症症候群が起きるのは、下痢が始まってから5日~2週間以内です。2週間以上経ってから発症することは、ほとんどありません。

脳症

溶血性尿毒症症候群とほとんど同時期に、脳症が発症します。大脳や小脳、脊髄にも、ベロ毒素受容体が多く存在するためです。

まず、頭痛・傾眠(何の刺激も与えなければ、すぐに眠り込んでしまう)・不穏・多弁・幻覚などが起きます。その後、数時間~12時間で、痙攣や昏睡の重篤な脳神経合併症に進行する危険性があります。

脳症を発症した患者さんの10~20%が死に至ります。

[O-157]

大腸菌は、血清型によって分類されます。耐熱性菌体抗原のO抗原約180種類と、易熱性鞭毛抗原のH抗原約70種類以上により、分類されています。

O抗原は大腸菌の表面、細胞壁の糖脂質の抗原性のことです。Oは「オー」と読みます。

病原性大腸菌Oにも、いろいろ種類があるということです。O-157とは、「O抗原としては157番目に発見されたものを持つ菌」という意味です。

ベロ毒素を産生するO抗原とH抗原

腸管出血性大腸菌Oの代表的な菌が「O-157」なのです。

ベロ毒素を産生するO抗原は、O-1、O-26、O-157、O-172など25種類以上あります。そのうち、80%がO-157です。

ただ、ベロ毒素を産生するO抗原であっても、H抗原によっては、毒素を産生しないことがあります。

そのため、正確には、O-157H-7、O-26H-11 のように表記します。

O-157による腸管感染症

O-157は、ベロ毒素1とベロ毒素2を産生する他、細胞を障害するインテイミンというタンパク質を産生します。

O-157は、毒性が強いので、出血性の大腸炎を起こすだけでなく、溶血性尿毒症症候群や脳症を引き起こす可能性が高いと言われます。

O-157は、乳幼児から高齢者まで広い年齢層に感染します。最も感染・発症しやすいのは、0~4歳児です。免疫力の低下している高齢者も、発症しやすくなります。

他の食中毒と同様に、気温の高い時期に感染が起きやすいのですが、冬場でも感染・発症します。

腸管出血性大腸菌感染症の治療と予防

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腸管出血性大腸菌感染症の治療は、産生するベロ毒素を減らすことが第一になります。腸管出血性大腸菌は、死滅するする時に大量のベロ毒素を放出しますから、抗生剤の使用には注意が必要です。

[感染経路]

他の食中毒と同じように、主として口から感染します。腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)に汚染された食物を食べると、感染・発症します。感染源は出血性大腸菌を保持する肉や魚、出血性大腸菌に汚染された野菜や果物です。

ヒトに感染して発症させるのに必要な菌数は、たった50~100個です。それほど毒性が強いので、感染力も強く、二次感染の危険性が高くなります。発症した子供の糞便の始末をした親が感染することが少なくありません。

腸管出血性大腸菌は耐酸性があり、胃酸で死滅することなく、腸管に到達します。

[診断]

症状に関係なく、患者さんの糞便から病原体を分離し、分離した菌株の毒素産生性や毒素遺伝子を確認します。培養便の腸管出血性大腸菌が陽性となれば、腸管出血性大腸菌感染症と診断します。

検査で毒素型や抗体型を確認して、治療を効果的に行います。

[治療]

症状・年齢・持病の有無・季節など、いろいろな要素を考慮して、対症療法を行います。

①水分補給

比較的軽症で、激しい水様性の便が頻繁に出る場合は、脱水症状にならないように、水分を補給し、消化のいい食事を摂らせます。水分補給や食事は、年齢に応じて調整します。

安静にします。

②輸液

激しい腹痛があり、赤ワインのような血便が出る時は、水分を経口摂取することができません。輸液を行います。

溶血性尿毒症症候群を発症し、腎機能障害・腎不全が起きていないか、乏尿や浮腫に注意します。

③下痢止め薬は使用しない

下痢止め薬を使うと、腸管内容物が停滞して、ベロ毒素を吸収を助ける可能性があります。腸管運動を抑制する止痢剤は、使用しません。

これは、普通の下痢症の場合にも通用します。脱水症状を起こさないように注意して、下痢止め薬を安易に使わないようにします。悪い物は、排出してしまいのが、いいのです。

④鎮痛剤投与

激しい腹痛に苦しむようならば、ペンタゾシンの皮下注射または筋肉注射を行います。スコポラミン系の鎮痛剤は、腸管運動を抑制するので、使用しません。

⑤抗生剤

細菌を死滅させる殺菌系の抗生剤は、腸管出血性大腸菌が死ぬ時にベロ毒素を大量に放出するので、溶血性尿毒症症候群など重篤な合併症が起きる危険性があります。腸管出血性大腸菌に静菌的に作用するホスホマイシンなどが、よく投与されます。

(経口投与)

ホスホマイシンなど抗生剤の投与は、必ず経口投与、薬を内服します。静脈注射・点滴では、抗生剤は消化管に届きません。

(抗生剤の早期投与)

抗生剤は早期に使用する方が良いと言われます。腸管出血性大腸菌は、腸管粘膜上皮に付着して増殖しますが、早期に抗生剤を投与すると、菌の増殖やベロ毒素産生を抑制できるようです。また、抗生剤の投与が遅くなると、菌を消失させることはできても、損傷された粘膜上皮細胞を修復することができません。

(抗生剤の投与は3~5日)

抗生剤の投与は、3~5日です。腸管出血性大腸菌は消失しますが、下痢などの症状がすぐに収まるわけではありません。抗生剤投与後に、溶血性尿毒症症候群を発症することもあります。

抗生剤をだらだらと長期間使用すると、菌に耐性ができる可能性があります。

⑥乳酸菌製剤の投与

乳酸菌製剤は、抗生剤の使用・非使用にかかわらず、効果があります。

[宮入菌]

宮入菌は、芽胞を有する偏性嫌気性菌で、酸素のない大腸で増殖し、酪酸や酢酸を産生します。腸内細菌として定着することはありません。

宮入菌は、コレラ菌・赤痢菌・腸管ビブリオ菌・サルモネラ菌・腸管毒素原性大腸菌・腸管出血性大腸菌などの腸管病原菌の増殖を抑制します。

宮入菌が産生する酪酸は、腸管毒素原性大腸菌や腸管出血性大腸菌が毒素を産生するのを抑制します。

宮入菌製剤(ミヤリサン)

宮入菌製剤は腸管出血性大腸菌の増殖とベロ毒素の産生を抑えます。

宮入菌製剤は芽胞ですから、宮入菌が安定して存在でき、働くことができます。

腸管出血性大腸菌感染症、特にO-157の感染症に、宮入菌製剤は治療効果があります。

[腸管出血性大腸菌感染の予防]

予防の原則は、菌に汚染されている食品や食器(箸やスプーン・フォークなど)を口に入れないことです。

手洗いの徹底

腸管出血性大腸菌はわずかな菌量で発症させることができる、極めて感染力の強い菌です。

菌のついた手で食器や食物に触れれば、口から感染します。人から人へも感染します。腸管出血性大腸菌感染症の子供や、高齢者の排泄物を処理した人から、感染することが多くなります。

石鹸・除菌性ハンドソープなどでよく手指を洗い、流水でしっかり洗い流します。

調理に気をつける

腸管出血性大腸菌は耐熱性があるといっても、70℃以上で死滅します。

食中毒が多い夏場などは、肉や魚の生食をできるだけ控えます。肉や魚は、必ず75℃で1分以上加熱します。出血性大腸菌が完全に死滅します。

よく焼いたハンバーグから感染することがあるので、「加熱しても菌が死なない」と思いがちですが、それは間違いです。感染の原因は、加熱する前に、汚染された肉に触れた手で食べたり、汚染された肉に触れた食器を使ったりすることです。

肉を調理する時は、まな板をよく消毒するか、肉専用のまな板を使うようにします。包丁や調理器具も、肉を扱った時は、徹底的に消毒するようにします。

日本の乳製品や牛肉は腸管出血性大腸菌に汚染されている確率が高いと言われます。PCR法で検査した結果、ほとんどの乳牛が腸管出血性大腸菌を保菌しているそうです。しぼりたての牛乳を飲むのは、危険ですね。

肉や乳製品を調理した時は、必ず、よく手を洗うようにします。肉や乳製品を扱ったままの手で野菜や果物、食器類に触れるのは、危険です。

調理する時は、大量の水を使って、こまめに手や調理器具、食器を洗うことが、感染予防になります。

消毒

手の消毒は、逆性石鹸か消毒用アルコールを用います。

腸管出血性大腸菌に感染した患者が出た場合、トイレや洗面所は、逆性石鹸か、適正濃度の両性界面活性剤に布を浸して拭きます。

患者の寝具(シーツ類)や寝間着が糞便で汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウムの消毒用薬液に浸けておいてから、洗濯します。患者の衣類やタオルなども、次亜塩素酸ナトリウム液に浸けてから洗濯するようにします。

患者さんが入浴する時は、浴槽に入らず、シャワーを使用するだけにします。

まな板など調理器具の消毒は、70℃のお湯に1分以上浸します。これで、菌が完全に死滅します。次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤に1分以上浸けておくのも効果的ですが、菌が完全に死滅するわけではありません。また、まな板や調理器具に汚れが付着していると、塩素系漂白剤(家庭用漂白剤)の殺菌効果が低下します。浸す前に、よく水洗いして、汚れを落とします。

免疫力を高める

腸管出血性大腸菌は毒性も感染力も強いのですが、感染した人が全員発症することはありません。免疫システムの未熟な乳幼児、持病や過労、ストレス過多、高齢で免疫力が低下している人が発症しやすいようです。

日頃から栄養バランスの良い食事や乳酸菌を摂取したり、十分な休息や良質な睡眠を取ったりして、免疫力を高めれば、感染しても発症しないですみます。

まとめ ベロ毒素は致死性の毒性タンパク質です

ベロ毒素とは、腸管出血性大腸菌が産生する強い毒性タンパク質です。

大腸菌にはいろいろな種類がありますが、たいていは無害です。その中で、腸管感染症を引き起こす大腸菌を病原性大腸菌といいます。腸管出血性大腸菌は病原性大腸菌の1種で、感染すると、出血性大腸炎を発症します。

ベロ毒素という強い毒性タンパク質を産生し、菌体の外に分泌するので、「ベロ毒素産生性大腸菌」ともいいます。ベロ毒素は腸血管内皮細胞を破壊して出血性の大腸炎を引き起こし、さらに腎臓の血管内皮細胞を傷害して溶血性尿毒症症候群や脳症を起こします。

ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌に感染すると、頻回の水様性下痢症になり、その後、赤ワインのような血便が出ます。感染症が進行すると、急性腎不全や溶血性貧血など、溶血性尿毒症症候群が発症し、意識障害などの脳症が併発します。脳症を発症した患者さんの致死率は高くなります。

腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法により3類感染症に指定されているので、確認した医師は所轄の保健所に届ける必要があります。O-157は、典型的な腸管出血性大腸菌です。毒性が極めて強く、集団感染を起こすこともあり、致死率も高いと言えます。

治療法は、患者さんの状態に応じた対症療法です。下痢症が激しいので、脱水症状に注意して水分を補います。出血性大腸菌は死滅する時にベロ毒素を放出して、症状を悪化させる危険性があるので、抗菌剤は殺菌より静菌を使用します。抗菌剤は早期に投与する方が効果的です。宮入菌製剤や乳酸菌製剤にも、治療効果があります。

発症したら、症状の軽いうちに治療を始めることが大事です。すぐに医者の診察を受けるようにしてください。

予防法は、汚染された食物・食器・調理器具などを口に入れないことです。少しの菌量で発症するので、患者から看護する人に感染するなど、人から人へうつります。手洗いと消毒を徹底します。70℃で1分以上加熱すれば、菌は完全に死滅しますから、調理器具の消毒は、薬用消毒剤より熱湯に浸す方が有効です。肉を調理する時は、大量の流れる水で手や調理器具を洗いながらすることを、オススメします。

過労や睡眠不足、ストレス過多を解消して免疫力を高めるのも、感染予防の良い方法です。

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