私たちの身の周りには様々な細菌が存在しています。テーブルやコップ、スマホなんかにも存在しますし、身近なところでは腸内にも数多くの細菌が存在します。これら細菌は普段は悪さをすることがありません。
一方で、感染すると強い症状を発症させる細菌もいます。サルモネラ菌はその代表的な細菌の1つでしょう。では、サルモネラ菌とはどういった細菌なのか。詳しくみていくことにしましょう。
サルモネラ菌とは
サルモネラという名前を聞いたことがあるという人は多いかもしれませんね。サルモネラ食中毒・サルモネラ感染症の原因となる細菌で、人間をはじめ家畜の腸内や犬などのペットといった動物に生息していることがあります。腸内細菌科サルモネラ属に属します。
サルモネラ属菌は特に家畜の腸、ペット、その他ネズミやハエなどの衛生環境が悪い場所に住む生物が持っている可能性があります。下水・河川にも存在するので注意が必要です。
生物以外では細菌に汚染された生の肉、卵などにも存在することがあります。肉を生で食べることは場合によっては非常に危険なことであり、サルモネラ症にならないためにも、なるべく避ける必要があります。
食中毒性サルモネラとチフス性サルモネラ
サルモネラには大きく分けて食中毒性とチフス性があります。
前者はその名の通り、食中毒を引き起こすもの。後者は腸チフスなどの消化器系に影響を与えるタイプのものです。高熱を伴うことが特徴です。
サルモネラ菌に感染するとどんな症状が出る?
細菌性食中毒の原因となるサルモネラ菌は、感染するとどういった症状を発症するのでしょうか。場合によっては命の危険もあるサルモネラ菌の感染。具体的には以下の症状を発症します。
- 吐き気
- 腹痛
- 38度以上の高熱
- 下痢
サルモネラ菌の潜伏期間はおよそ2日。その後、上記の症状を発症し、感染者を苦しめます。特に腹痛や下痢などの胃腸炎の症状が強く、かなりの痛みを伴います。下痢も水に近いような便が出ます。サルモネラ腸炎の症状は約1週間続きます。
症状が悪化すると
免疫力の弱い子供や高齢者がサルモネラ菌に感染し、細菌性胃腸炎を発症すると、腸炎の症状は快方に向かわず、病状が悪化することがあります。具体的には以下の急性胃腸炎の症状を発症することがあります。
脱水症
サルモネラ菌の感染によって下痢、嘔吐が続くと脱水症を招くことがあります。体内の水分量が減り、危険な状態になることもあります。水分補給や点滴処置など、早急な対応が必要です。
血便
便に血液が混じる血便を発症することがあります。下痢の回数が多かったり、嘔吐が認められるようであれば、サルモネラ菌感染の可能性が高いでしょう。早急な対応が必要です。
菌血症
血液に細菌が侵入している状態です。身体中に細菌が拡散する恐れがあり、特に注意が必要な状態といえるでしょう。細菌性髄膜炎などの他の病気を合併することもあり、早急に処置しなければなりません。
サルモネラ菌の感染原因
テレビでたまに放送される集団食中毒にはサルモネラ菌が関わっていることがあります。食事を提供するお店にとっても、サルモネラ菌は身近な細菌で厄介な存在なのです。
では、サルモネラ菌はどういった経路で私たちの体を侵してしまうのでしょうか。外食に限らず、家での調理や生活環境によっても感染することがあり、注意を払う必要があります。
食事からの感染
サルモネラ菌の感染が多いのは食事からです。細菌に汚染された食べ物を直接食べてしまう。そうすることで、容易にサルモネラ感染してしまうのです。原因食品には普段から特に気をつける必要があるでしょう。
注意が必要な食品としては卵、生の肉です。卵は殻やその中にも細菌が存在することがあります。卵を生で食べる文化がある日本では、注意する必要があります。
生の肉は豚、牛、鶏全てに注意が必要でしょう。汚染されていれば、どの肉も食べるのは危険であり、きちんと殺菌する必要があります。生の肉を食べるときは注意しましょう。食中毒事例として発生してしまう原因の1つといえるでしょう。
ちなみに生肉を調理したとき、まな板や包丁などの調理器具からも感染することがあります。その生肉が汚染されていれば、それに触れた食器や器具も同様に感染源となることがあります。
接触感染
サルモネラ菌を保菌するペットや、衛生環境の悪い場所に住むネズミやゴキブリの糞尿。こういったものから細菌感染することがあります。糞尿の処理には特に注意が必要です。
接触感染というのは、こういった生き物の糞尿を触った手で他のものを触り、そこから口の中に入ってしまうというケースです。そのまま料理をしてしまえば、容易に感染してしまうでしょう。
ペットを飼っていたり、部屋の掃除をあまりしない。こういった生活面において衛生環境が悪いようであれば、細菌には注意する必要があります。こまめな掃除を心がけるようにしましょう。
気温が高い時期は注意
細菌は6月〜9月の高温多湿の時期に繁殖が活発になります。そのため、この時期の調理等には一段と注意を払う必要があるでしょう。感染症が広がってしまうこともあるからです。
同様に生の食べ物なんかもきちんとした管理が必要です。生の食べ物は早く食べるようにしましょう。それが例え賞味期限まで期間があったとしてもです。細菌繁殖の恐れがあるので注意してください。
サルモネラ菌と治療法
サルモネラ菌に感染し、症状を発症したとき、どういった治療が行われるのでしょうか。基本的には症状を抑える対症療法がメインとなってきます。
では、具体的にどのようなことをしていくのでしょうか。
脱水症状の警戒
下痢や嘔吐を繰り返すと、体の水分が排出されていきます。それに伴い、脱水症状を招き、人によっては危険な状態になることがあります。そのため、治療ではまず脱水症状を予防するために水分摂取がポイントになるでしょう。
体の水分量の減少は自分が思っているよりも多いことがあります。めまいやたちくらみ、意識混濁などの症状が脱水症状によって起こるので、患者はこれらが起こり始めたら要注意でしょう。
また、サルモネラ菌感染に伴って下剤等の使用は控えなければなりません。下剤によって下痢症状が悪化し、伴って脱水が進行することがあるからです。この辺りは医師と十分相談するようにしましょう。
基本的には安静にする
サルモネラ菌に感染したとき、基本的には安静にし、体力の回復を待つというのが治療法のポイントになります。発症してから一週間ほど症状が続くこともありますが、それからは快方に向かいます。
その間は先に述べたように水分摂取に気を配ること。また、服用して良い薬、悪い薬、抗菌薬については医師に相談の上、服用すること。下痢を促進したりする薬は危険なので服用しないほうがいいでしょう。また、耐性菌を誘発する可能性があるため注意が必要です。
市販薬を飲みたくなる…
下痢にしても嘔吐にしても、症状が続くととても辛いものです。そういったとき、市販の下痢止め・嘔吐止めを買って飲むことがあるかもしれませんね。一見して効果のある方法のように思えます。
しかし、こと食中毒に関してはこういった薬の服用は控えたほうがいいです。というのも嘔吐や下痢は体外へ細菌を排出する体の生理現象だからです。この流れを止めてしまうと反対に症状が悪化してしまうことがあります。易感染性を高める可能性もあり注意が必要です。
また、細菌を体内に長く滞在させてしまうと、繁殖し症状が悪化することがあります。なるべく体外へ排出するように促す。そのためには、薬を服用せず、体の機能に任せるというのが、早く回復するポイントなのです。もちろん、水分摂取は忘れないようにしましょう。
腸内環境は一定のバランスが保たれています。このバランスを腸内細菌叢といいます。薬によってこのバランスが崩されてしまうことがあるため、極力薬の使用は避けたほうがいいでしょう。
重症例の治療
一方で症状が重症化しているケースでは、ニューキノロン系の薬を服用することで治療していきます。体への負担が少なく、かつ除菌する効果の高い薬を服用し、病気を治していきます。
サルモネラ菌の感染予防
では、サルモネラ菌に感染しないためには、普段からどういったことに気を配れば良いのでしょうか。
辛い下痢・嘔吐症状にならないために、以下のことに気をつけてみてください。
基本は加熱処理を行う
サルモネラ菌の感染経路として、まず第一に気をつけなければならないのは食べ物からの感染です。腸炎菌の汚染を遠ざけ、安全に食べ物を食べるためには、きちんと加熱して料理をするというのが基本的な対策法になります。
鶏卵や精肉は炒めたり焼いたりして、十分火を通すこと。こうすることで殺菌でき、安全に食べることができます。どんな料理でも一度火を通すことを意識してください。
反対に生で食べるようであれば、早めに食べるようにしましょう。例えば卵かけご飯なんかも、卵を割ったら早めに食べること。外に出していたり、時間が経ったものは食べないようにしてください。
調理器具も綺麗にする
生肉を調理したまな板に、しばし菌が付着していることがあります。このため、まな板やその他調理器具に関しても、こまめに綺麗にするように心がけましょう。
お肉を切ったら一度洗う。調理後はよく洗ってお日様の日に当てる。また、サルモネラ菌は消毒薬への抵抗性が低いので市販のもので十分な消毒することができます。こういったことをするだけでも十分な殺菌効果があり、細菌感染のリスクを下げることができます。
糞尿の処理後はきちんと手を洗う
ペットの糞尿、家庭環境によっては家畜の糞尿の処理のあとはきちんと手を洗う。これもサルモネラ菌感染を防ぐために重要なことです。原因菌は手に付着し、色々なものを介して体に入り込むことがあるので注意が必要です。
また、手を洗うことに関して言えば、生肉などを触った後も同様のことが言えます。肉を触った手でそのまま調理してしまうことでも、細菌は感染することがあるので注意が必要です。
手洗いは石鹸等できちんと洗う必要があります。手のひらだけではなく、爪の間、指の間、爪のくぼみ、手首など全体を細かく洗うようにしましょう。さらに心配であれば体の状態を診断するためにも、検査をすることも検討してみましょう。
体力の維持も予防には必要
細菌などの病原体は弱った体に感染すると、爆発的に繁殖することがあります。そのため、普段から体力を維持しておくというのも、重要なポイントです。
そのためには食事をきちんと食べたり、睡眠時間をきちんと取るなど基本的な生活習慣が感染症対策の鍵になります。普段から元気な体づくりを意識すれば、仮に感染したとしても重症化することは少ないでしょう。
有名な食中毒の病原菌
サルモネラ菌は食中毒を起こす有名な細菌ですが、これ以外にも食中毒菌は存在します。病原菌によって性質や症状が異なることがあります。では、食中毒を起こす病原菌は他に何があるのでしょうか。
腸炎ビブリオ感染症
腸炎ビブリオ菌という細菌に感染することで起こる感染症です。汚染された魚介類を食べることで起こります。潜伏期間は比較的短く12時間ほど。主症状としては強い腹痛、下痢症状です。下痢症状は日に数十回と起こることもあります。その他、発熱や嘔吐を起こします。
サルモネラ菌と同様、治療中は下剤などの服用は控えます。数日程度で快方に向かいますが、水分摂取を怠らないようにしましょう。体力の弱い人は飲食物の誤嚥に気をつける必要があります。
日本人は魚をよく食べることから、サルモネラ菌と同様に感染・発症が多い病気とされています。魚を生で食べることも多いですが、加熱処理が一番の予防法といえるでしょう。
ノロウイルス
夏場ではなく冬場に流行するのがノロウイルスです。ウイルスに汚染された食べ物、特にカキなどに多いといわれています。冬にカキを食べたくなりますが、同時にノロウイルス感染症を警戒する必要があります。
主な症状は腹痛、下痢、嘔吐、発熱です。これら症状は24時間〜48時間の潜伏期間を経て発症します。発症後、数日程度で症状は快方へ向かいますが、抵抗力の弱い高齢者や小児は注意が必要です。
ノロウイルスは感染者の吐瀉物によっても感染することがあります。そのため、感染者との十分な距離を保ちながら治療をする必要があります。二次感染拡大を防ぐためにも十分注意するようにしましょう。
腸管出血性大腸菌O
感染ののち、腸出血症状を引き起こす細菌です。O-157といった名前を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。重症化しやすく注意が必要な病原菌です。
飲食物から感染することが多く、特にO-157は感染力が強いといわれています。潜伏期間は数日から一週間程度。発症ののち腹痛、下痢、時として血便症状を発症させます。これは強い毒素を産生するために起こります。
治療では抗生物質の投与、その他水分摂取、安静がポイントになります。点滴により脱水症状を回避するよう努めます。感染しないためにも、食べ物を加熱するなどの意識を普段から持つことが大切です。
ウェルシュ菌
サルモネラ菌と同様に家畜の便に存在していることがあります。酸素を嫌う嫌気性菌という細菌です。熱に強いため、高温でも生き残ります。そのため、感染経路としては肉・魚介・野菜などの煮込み料理、具体的にはカレーが多いといいます。
症状としては下痢と腹痛が主な症状です。集団で煮込み料理を作るようなケースでは集団食中毒となるケースがあります。特に給食など、大量の料理を作るケースではウェルシュ菌の繁殖が起こりやすいといわれています。
ボツリヌス菌
非常に強い毒性を持つ細菌です。酸素を嫌う嫌気性菌の一種で、低酸素状態になると毒素を産生します。ボツリヌス食中毒では、毒素に汚染された食品を食べることで発症します。潜伏期間は8〜36時間程度。その後、吐き気や嘔吐などの症状を発症します。
ボツリヌス菌は時として命を奪うことがあります。特にその犠牲となりやすいのが乳幼児。これは蜂蜜を介してボツリヌス菌に感染することがあります。ボツリヌス菌に汚染された蜂蜜を乳幼児に与えてしまうと、乳児ボツリヌスを発症。抵抗力の弱い乳幼児では重症、もしくは死亡してしまうことがあるので注意が必要です。
まとめ
サルモネラ菌をはじめとする菌は、目には見えません。しかし、私たちのとても身近に存在し、感染を待ち受けています。そして、感染してしまうと発症し、一気に体調が悪くなるということがあります。
そうならないためには、普段から清潔を意識すること。掃除をしたり、調理の際にはきちんと加熱処理をするなど、すぐにできることをこまめに行うことが大切です。
細菌から体を守るためにも、そういった部分に意識を配るようにしてみてください。特に夏場・冬場の時期にはいつもより警戒するようにしてくださいね。
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