精索静脈瘤を治療する手術について!原因や症状、検査方法も知ろう!自分でチェックできる?

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)という病気を知っていますか?不妊治療で悩んでいるご夫婦であれば、耳にしたことがあるかもしれません。この病気は男性不妊症の原因の1つです。約10人に1人の確率で発症すると言われているので、男性不妊症の原因の中でも頻度が高いものと言えます。

不妊症というと、どうしても原因が女性側にあるように思われますが、実際の不妊の原因は男性と女性で半分半分だと言われています。特に2人目の不妊で悩んでいる方の78%は精索静脈瘤が原因だと言われています。ここでは、精索静脈瘤の症状や原因、自己チェック方法、治療方法についてご紹介します。

精索静脈瘤について

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ここでは、精索静脈瘤の概要と、不妊治療の概要についてご紹介します。

精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤とは、男性の精巣(睾丸)にある、心臓に血液を戻す役目の静脈内(精索静脈)の血液が逆流を起こし、精巣の周りに瘤(こぶ)が出来る病気です。この精索静脈瘤は、一般男性の10~20%にみられるとも言われ、男性不妊症患者の40%が精索静脈瘤が原因であるという報告があり、高い頻度で発症する男性不妊症の原因となる病気の1つです。

通常、精巣にある精索静脈の血液は、心臓に血液を戻す為に、下から上に向かって血液が流れます。しかし、何かしらが原因となって、静脈が瘤のように膨れ上がり血流が滞ります。精索静脈は左右のどちらの睾丸にもある為、どちらにも発生しますが、左側に発生する率が高く、98%の確率と言われています。基本的には、左側の睾丸の方が右に比べて静脈が長く作られている為、逆流しやすいのではないかと考えられています。

精索静脈瘤は、精巣機能に影響を与え、精子を造る機能が低下したり、精子のDNAの損傷を招き、男性ホルモンの低下を引き起こします。「乏精子症・精子運動率低下」の35%の方が精索静脈瘤が原因で、2人目不妊の78%の原因が精索静脈瘤と言われています。

精索静脈瘤が見つかった場合、婦人科治療と平行して、精索静脈瘤を治療することで、精子のDNAへの影響を軽減し、人工授精、体外受精、顕微授精など様々な不妊治療の成績向上させることが期待できます。

不妊治療とは

不妊治療とは、自然妊娠しにくいと言われている夫婦を対象に、妊娠しにくい原因を治療し、妊娠の可能性を高める治療方法です。例えば、女性が排卵しにくい状況であれば、排卵誘発剤を使用したり、排卵日を特定するタイミング法や人工授精など、様々な方法で精子と卵子が出会う確率を高めます。

不妊治療は、多くの場合は女性側が婦人科を受診して、男性は精液検査しか行わない場合が多いと言われています。不妊症というと、どうしても原因が女性にあるように思われますが、実際の不妊の原因は男性と女性半分半分です。不妊治療を行う場合は、男性も適切な治療を同時にしないと女性の不妊治療の成績も低下します。

不妊治療は、婦人科治療も受け付けていますが、不妊治療専門クリニックの一般不妊治療外来を受診した方がより豊富で最新の不妊治療を受けることが出来ます。また、精索静脈瘤が見つかった場合は、泌尿器科クリニックや泌尿器科のある病院で検査を受けて手術するか検討します。

精索静脈瘤の症状について

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ここでは、精索静脈瘤の症状について詳しくご紹介します。

精巣萎縮

精巣の適切な温度は、34度から36度程度と言われ、精子が生存できる温度もまた35度~36度です。しかし、精索静脈瘤が現れると、精巣内の温度は37度異常の高温になる場合があり、これにより精巣萎縮が見られます。

精子は熱に弱い為、温度の高い精巣の中では生存する事ができません。これにより男性不妊の原因になります。

蔓状静脈叢の腫れ

蔓状静脈叢(つるじょう静脈そう)は、血管やリンパ管、神経を覆っている精索中にあります。精巣に入る血液精巣動脈と、精巣から出る血液である精巣静脈との間に位置し、細かく分岐して動脈に絡んでいます。

精索静脈瘤が起こると、陰嚢上部にある蔓状静脈叢の部分が、ミミズ腫れや腫れ、鬱血(うっけつ)を引き起こします。

男性不妊

精巣が萎縮し、血液が上手く循環しないことで血行障害が起き、持続性低酸素症を招いたり、精子をつくることを妨げたり、精子の質を低下させたり(DNAの損傷)、流産の確率が上がるなど、精子や精巣機能に障害をもつようになります。

陰嚢(いんのう)部に痛みがある場合がある

陰嚢とは、皮膚と筋肉から成る器官で、睾丸を包んでいる袋の部分のことを指します。この陰嚢部に、重圧感、不快感、鈍痛、違和感を感じます。

痛み方は、疼痛(とうつう)と呼ばれるズキズキ、ジンジン、チクチクしたような痛みだと言われています。しかし、多くの方の場合は痛みを感じません。

精巣や陰嚢に異常が見られる

上記で紹介した症状が現れたり、精巣や陰嚢に下記のような状態がみられた場合は、産婦人科を受診しましょう。下記の状態をチェックすることは、早期発見にも繋がります。

精巣や陰嚢の状態

  • 精巣サイズを確認すると左の方が小さい
  • 陰嚢サイズを確認すると、左が腫れている、大きい
  • 静脈瘤がある側の陰嚢が常に垂れ下がっている
  • 陰嚢の表面を触ると凸凹がある
  • 陰嚢の中に虫やうどん、みみずのような物がいるように見える

精索静脈瘤の原因について

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精巣(睾丸)内にある、静脈(精索静脈)の血液が逆流やうっ滞により、精巣の温度が上昇したり、低酸素状態を招き、精子の質を低下させたり、造精機能障害を引き起こすと言われています。

この血液が逆流、うっ滞を起こす原因として、「静脈弁の先天性不全」と「左腎性脈の圧迫」の2つが挙げられます。

静脈弁の先天性不全

血管には血液の逆流を防止する「弁」と呼ばれる機能があります。

この弁の機能は、精索静脈内にも存在します。この弁の機能が低下していたり、異常が現れることで、血液の逆流を引き起こします。

左腎性脈の圧迫

この精索静脈瘤は98%の確率で左側に現れます。左側にある、左内精索静脈は左腎静脈に合流します。

この左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)という血管に挟まれ、圧力がかかって、血液の流れを妨げることで血液の逆流を引き起こします。

精索静脈瘤の検査方法について

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精索静脈瘤を自宅で出来るチェック方法と、病院での検査方法についてご紹介します。

自宅で出来るチェック方法

精索静脈瘤になると、精巣のサイズや陰のうサイズに変化が見られます。精索静脈瘤になると、精巣のサイズは小さくなり、陰のうは大きくなります。その為、少しでも疑いがあるようであれば、自宅でチェックしてみましょう。

■精巣サイズのチェック

精索静脈瘤になると、精巣サイズが小さくなります。その為、精巣のサイズをチェックすることで、精索静脈瘤の疑いをもつことが出来ます。一般的には、精巣の容積は14ml以上が正常で、12ml以下が小さいと言われています。

精巣は卵形をしており、陰のうの中にあります。自宅で測定する場合、定規を用意し、精巣前面を可能な限り、陰のう皮膚に押しあてて、精巣の位置を明らかにします。定規を精巣にあてて縦の長さと横の長さを確認し、下記の計算式にあてはめることで、おおよその容積を算出することが出来ます。

■計算式:容積(ml)=0.7×縦(cm)×横(cm)×横(cm)

また、精巣の左右の大きさに差が見られ、片方が小さい場合、小さい方に精索静脈瘤の可能性があります。

■陰のうのチェック

陰のうの皮膚は寒いときに収縮して、暑い時には垂れ下がり温度調整を行う役割があります。常に陰のうが垂れ下がっている場合は、陰のうの温度が高く、精索静脈瘤が起きている可能性があります。

また、陰のうの左右の大きさに差が見られ、片方が大きい場合、大きい方に、精索静脈瘤の可能性があります。その他に、陰のう側の表面に凸凹が見られたり、袋の中に虫やミミズ、うどんのようなものが入っているように見える場合も、精索静脈瘤が起きている可能性があります。

■その他のチェック項目

  • 立ち上がった時に、精巣に鈍痛や違和感がある。
  • 精液の検査で異常所見が出ている。
  • 2人目不妊で悩んでいる。

上記の自己チェックから、精索静脈瘤が疑われる場合は、男性不妊専門医(泌尿器科専門医かつ生殖医療専門医)もしくは、泌尿器科クリニックを受診しましょう。

病院での検査方法

精索静脈瘤は簡単な検査方法ですぐに発見する事ができます。一般的には、エコーで陰嚢の状態を確認し、医師の触診により診断を行います。 静脈瘤は、症状の程度に合わせて3段階のグレードに分類されます。

グレードについて

  • グレード3:視診で確認できる状態
  • グレード2:患者が立った状態で、触診して診断が出来る状態
  • グレード1:立位で腹圧をかけると腫瘤が現れる状態

グレードが高いほど、症状が重い状態です。グレートが高い状態であると、自分で確認しても異常に気づくことが出来ます。お風呂上りなどの陰嚢の皮膚がたるんでいる状態のときに、確認するとより分かりやすいです。

精索静脈瘤の治療法について

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基本的には、外科的治療(手術)による治療方法が一般的です。手術の内容も大きく分けて3種類あり、入院の有無や精巣動脈を残すことができるか、合併症の確率、再発率などを考慮して手術方法を検討する必要があります。

中でも、精索静脈瘤高位結紮術と顕微鏡下精索静脈瘤低が一般的に行われています。

精索静脈瘤高位結紮術

精索静脈瘤高位結紮(せいさくじょうみゃくりゅう こういけっさつ)術とは、おへその脇付近を切開し、精巣静脈を縛る手術方法です。半身麻酔か全身麻で手術が行われる為、3泊4日程度の入院が必要になります。保険が適用される為、手術費用は7万円から10万円前後です。

精巣動脈を残す有無に関しては、バイパス動脈があるので残す必要はないと言われています。合併症の精巣水瘤発生率は、7%と言われていますが、東邦大学では、ルーペを用いてリンパ管を残すことで、精巣水瘤発生率を低い数値に抑えられていると報告があります。その他の重篤な合併症にかかる危険性はなく、この手術を行った後の精索静脈瘤の再発率は15%~25%です。

手術後は、比較的に安静に過ごす必要があり、腹筋を使うような作業や運動は、3週間ほど制限がかかります。

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(けんびきょうか せいさくじょうみゃくりゅう ていいけっさつ)は、精巣静脈を縛る手術方法で、これにより精巣への血液の逆流を改善します。局所麻酔を用いて行い、手術時間は1時間程度の為、日帰り手術が可能です。多くの細い静脈を顕微鏡を使用して、縛る必要がある為、複雑で高い外科技術が要求されます。

精巣動脈を残す有無に関しては、必ず残す必要があります。この手術方法では、リンパ管を残すことが可能なため、合併症の精巣水瘤発生率は、極めて低く0%以下と言われています。その他の重篤な合併症にかかる危険性はなく、精索静脈瘤の再発率は、1%と極めて低いです。

保険は基本的には適用外ですが、医療機関によっては適用される場合もあり、手術費用は20万~45万円前後と言われています。

腹腔鏡下精索静脈瘤

腹腔鏡下精索静脈瘤(ふくくうきょうか せいさくじょうみゃくりゅう)では、腹部に数箇所穴を開けて、スコープや鉗子を入れられるポートと呼ばれる筒を挿しこみ、スコープで観察しながら、精巣静脈にクリップを取りつける手術方法です。

全身麻酔をおこなう為、3泊4日~1週間程度の入院が必要になります。精巣動脈を残す有無に関しては、残す必要があります。合併症の精巣水瘤発生率は、12%程度と言われています。その他の重篤な合併症にかかる危険性もあり、精索静脈瘤の再発率は、5%~15%と極めて低いです。

上記で紹介した、これらの手術は、グレード2や3の方の場合には、手術での治療効果が見込めますが、グレード1の場合は、手術による不妊改善が見られない場合があるので、担当医と相談の上、手術をするか決定する必要があります。

保険適用に関しては、病院よって、対応が異なるので手術の費用も大きく異なります。詳しくは受診した医療機関に確認してください。

精索静脈瘤に効果的な漢方薬・サプリ

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症状が比較的に軽い方は、漢方薬やサプリを用いることで症状の緩和が期待できます。ここでは、精索静脈溜の不妊治療薬をご紹介します。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、体の血の滞りを改善する漢方薬です。東洋医学では、血行障害や鬱血を「お血」(おけつ)と呼びます。血のめぐりが悪く、ドロドロな血を改善するのに、桂枝茯苓丸が処方されます。

桂枝茯苓丸には、桂枝(けいし)、桃仁(とうにん)、芍薬(しゃくやく)、牡丹皮(ぼたんぴ)、茯苓(ぶくりょう)などが含まれ、精索静脈溜以外にも、下半身の冷え、子宮内膜症、月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、肩こり、めまい、打ち身、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびなどに効果的だと言われています。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

桃核承気湯もまた、「お血(おけつ)」を改善する漢方の一つで、血液不良を改善する他、ホルモンバランスを整える効果もあります。

桂枝(けいし)、桃仁(とうにん)、大黄(だいおう)芒硝(ボウショウ)、甘草(カンゾウ)などが含まれ、精索静脈溜以外にも、月経不順や月経痛などの月経困難症、月経時や産後の精神不安(うつ、イライラ、不眠など)や便秘の治療、腰痛、頭痛、めまい、肩こり、痔疾、打ち身にも効果的と言われています。

血府逐お丸(けっぷちくおがん)

血府逐お丸も他と同様に、血行不良を改善する漢方の一つです。

血府逐お丸には、桃仁(とうにん)、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川弓(せんきゅう)、柴胡(さいこ)、地黄(じおう)、甘草(かんぞう)、桔梗根(ききょう)、紅 花(こうか)、牛膝(ごしつ)枳実(きじつ)などが含まれており、精索静脈溜以外にも、頭痛、胸痛、胸脇部痛、腰痛、四肢痛、鼻出血、歯齦出血、吐血、喀血、血便、血尿、不正性器出血、皮下出血、腫瘤、肩こり、冷え、月経痛・月経遅延などにも効果的と言われています。

おわりに

精索静脈瘤は、男性不妊症の原因となる病気で、精巣にある静脈(精索静脈)の血が逆流をおこすことでコブや腫れが見られるようになります。これにより、精子を造る機能が低下したり、精子の質の低下が現れます。

不妊治療をされている方は、どうしても原因が女性にあるのではないかと思いがちですが、実際男性側に問題があることも多くあります。特に2人目不妊の原因の78%はこの精索静脈瘤です。

今回ご紹介した精索静脈瘤の自己チェック方法を試してみて疑いがあるようであれば、男性不妊専門医と相談の上、手術を検討しましょう。婦人科治療を行いつつ、平行して精索静脈瘤の手術をすることで不妊治療の成績向上が期待できます。

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