無気肺って何?原因・症状・治療法を知ろう!呼吸が乱れだしたら要注意?

急に胸が苦しくなって痛くなることや、呼吸が苦しくなったり熱を出すといった症状がみられる場合、それは「無気肺(atelectasis)」が疑われます。

突然発症し、早期に治療をしなければ予後が不良となる呼吸器疾患になります。では、無気肺とはどういった症状を引き起こすのか、原因は何なのか、対処法などについて詳しく説明をしていきます。

無気肺の原因と症状

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無気肺という診断がつく中で、その原因がとても重要となります。

無気肺は、気管・気管支・細胞が、粘液や異物、または機械的な圧迫により閉塞され、換気が行われず、肺内の空気(酸素)が血中に吸収された状態になる呼吸器疾患です。

簡単に言うと、これらの炎症によって胚胞などの組織が腫れ、閉塞したり痰が空気の通りを制御してしまうなどの反応が起こり、肺の容積が縮小してしまうといった状態になります。

このような様々な原因の内、単一的な原因によって発症する場合と、幾つかの原因が組み合わさって発症することがあります。その原因因子を下記に記します。わかりやすいように原因を、閉塞性、受動性、圧迫性、粘着性、瘢痕性と、5つに分類します。順に説明をしていきます。

閉塞性による原因

閉塞性は気道の閉塞によるものです。肺腫瘍や気管支結核、気道粘液、異物などが要因となって気道が閉塞します。

受動性による原因

受動性は、胸水、気胸、心肥大、胸膜・胸壁腫瘍、縦隔腫瘍など、肺の疾患以外の病気により末梢含気腔が圧排されて潰れされてしまうことにより発症するものです。

圧迫性による原因

圧迫性は、肺腫瘍、肺膿腫(はいのうしゅ)、Bullaなど。肺の中の疾患により抹消含気腔が圧迫され、潰されてしまい発症します。

粘着性による原因

粘着性は、ARDS、肺水腫、尿毒症性肺、放射性肺臓炎などの疾患が関与しています。

肺胞(肺の中に多数あり、血管が通り、酸素や二酸化炭素の出し入れをする袋)の表面活性物質が減少することによって、末梢含気腔の容積が減少して無気肺を発症します。

実は外科的手術の後に多い

発症する原因の多くは、外科的手術によるものです。これは、胸部および腹部の外科的手術の合併症により、術後早期に突然発症します。例えば、腹部手術後早期では、空気の出し入れにより肺の膨らみや引き戻るのを調整する横隔膜が機能不全を引き起こします。

これにより、肺活量が減少し、無気肺を発症します。更には、低酸素血症を引き起こしていわゆる酸欠状態に陥る可能性もあります。次いで、症状について説明をします。

無気肺の症状

特徴となる臨床症状は、気管支閉塞、胸痛、呼吸困難、発熱が挙げられます。この中でも特に問題視される症状は気管支閉塞です。これらのより、呼吸数や脈拍数が増加するなどバイタルが不安定になります。

また、酸素が行き届かないことで血液の循環が悪くなり血行不良を起こし手先や足先、顔などにチアノーゼが出現します。チアノーゼは、血行不良となった部位が青紫色になる症状のことを言います。進行すると壊死(えし/腐る)し、切断の必要性が迫られる恐ろしい症状です。

無気肺の検査・診断

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診断にはレントゲン検査や聴診など簡単な検査が行われます。これにより、肺の状態や血中の酸素濃度、呼吸状態の経過観察を行います。

それでは,これらの検査について説明をしていきます。

画像診断

胸部のX線(レントゲン)検査、胸部CT画像の所見により無気肺の診断が出されます。

肺のX線検査では肺炎様陰影の出現が所見としてみられます。この陰影は、太い気管支が閉塞し、聴診にて呼吸音の減弱と胸部X線写真上、明らかに空気を含まないために見られます。また、無気肺により、肺の細菌産生を促進します。

こうなることで、肺の透過性が亢進され、画像からこれが読み取られます。

血液ガス分析検査(動脈血)

肺の生理学的機構は、動脈血ガスの組成を正常に保つために作動しています。

血液ガス分析は、これに関与しており臨床では、ガス交換能や腎臓における酸・塩基の平衡調節を把握します。そして、換気から拡散に至るガス交換のさまざまな機能のうち、どのあたりに障害があるかを推定するために行います。

・動脈血中の酸素分圧(PaO2)の指標

動脈血中の酸素分圧(PaO2)には指標があります。これについて提示していきます。新生児ではPaO240~70torr、成人・小児はPaO297~95torr、60歳以上は平均PaO280torrと、PaO2は加齢と共に低下していきます。

重症度を示すと、PaO260~80torrは軽度低酸素血症、PaO240~60torrは中等度低酸素血症、PaO240torr以下は重度低酸素血症となります。個人差はありますが、平均的に加齢と共に酸素分圧は低下していくため、高齢者は特に注意が必要です。

・動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)の指標

動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)は、年齢は無関係であり、PaCO240torr前後となります。こちらも、重症度別に分類して提示します。PaCO245~50torrは軽度の換気不全、PaCO250~60torrは中等度換気不全、PaCO260~70torrは重度の換気不全となります。

なお、動脈血の血液ガス分析検査は、術前だけではなく、術後にも検査されます。術後に胸部のX線検査で細かに経過を観察し、変化に応じて必要な場合に検査が行われます。この検査結果とその他の検査を元に、治療の見直しをすることがあります。

聴診

聴診器を用いて,聴診にて呼吸の状態も確認します。正常な安静呼吸ではほとんど呼吸音は聞き取れません。聴診の際には、深く吸気(息を吸って)を行い、呼気(息を吐く)は受動的に呼出していきます。「ハア~」と息を出さないようにします。

もし、この時に肺胞呼吸音が減弱または消失している場合は、気胸、巨大ブラ、胸水、高度または慢性の肺気腫、肺炎、胸膜の肥厚、気管支の狭窄、胸膜滲出の可能性が考えられます。また、呼吸音が鋭く聞こえる場合は、細気管支と肺胞との間の通過障害によるもので気管支炎や気管支喘息を発症している可能性が想定されます。

無気肺の治療

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薬による治療が基本ですが、稀にリハビリが施行されます。痰が多い場合や、胸郭の動きが不良である場合に、医師が呼吸器のリハビリの指示を提示します。

少量でも喫煙の経験のある方は、呼吸器疾患に陥りやすいため、薬物のみでは治癒が困難であり、リハビリを必要とすることがあります。

薬物療法

基本的に、薬物療法によって治癒します。

術後の肺合併症の発症するリスクを検査し、服薬の投与を検討していきます。服薬中は、喫煙やアルコールの摂取は止めるようにしましょう。薬と、それらの相乗効果によって死に至る可能性があります。服薬管理は自己責任です。十分に気をつけましょう。

肺の細菌産生を抑制するPEEPの活用

PEEP(positive end expiratory pressure/呼気終末陽圧)をかける方法があります。これによって、細菌の増殖を抑制します。経過が良い方向へ進むと上皮内皮の透過性が正常に戻っていき、無気肺が減る可能性があります。

・PEEPとはどんな方法なのか

PEEPを簡単に説明しますと、呼気(息を吐き出した際)の終わりに空気を押し出す力を加える方法になります。これを施行することで、息を吐いた際に肺が虚脱して潰れたままにならないように、吐ききった頃に陽圧を加えてある程度は肺を膨らませます。

膨らますことは簡単であり、これを補助するということは、努力呼気量(頑張って吐き出す空気の量)も減ります。つまりは、肺の中の空気の量が増えるので、吐き出せる空気の量(予備呼気量)も増えるということです。即ち、PEEPを正しく活用することで罹患者の呼吸仕事量を軽減させることができます。

・PEEPの副作用

陽圧の加減が適切であれば、肺を保護することはできますが、副作用もあります。まず、肺に対する副作用は、PEEPの陽圧が過度にかかった場合に肺が膨れ上がり過ぎて肺の損傷が引き起こされることです。肺の損傷によって、肺胞の破裂や気胸・気腫などが引きこされる可能性があります。

その他、心拍出量が低下します。PEEPの陽圧をかけ続けることで気道内の圧が上昇し、胸腔内の圧も上昇します。こういった反応により心臓が圧迫されてしまい、心臓の血管が圧迫され、うっ血を引き起こし、心拍出量が低下します。

腎臓に対しては、尿量を減少させるといった副作用がみられます。尿は腎臓の糸球体での血液の圧力を動力として濾過(ろか)し、生成しています。つまり、心拍出量が低下することで血圧が低下するわけですが、圧力が低下するため、濾過するスピードが低下して尿の生成機能が低下してしまいます。腎臓の疾患を合併し得る状態を作ってしまいます。

その他、脳へも影響を与えます。PEEPの陽圧の圧力が強くなりすぎて胸腔の内圧が上昇すると、直接、脳内の圧も上昇させてしまいます。脳圧が上昇することで、脳の様々な部位が圧迫され、頭痛や嘔気・嘔吐といった症状を出現させてしまいます。これが重度である場合、脳ヘルニアを引き起こす危険性もあります。

無気肺のリハビリテーション

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無気肺のリハビリテーションを行う場合は、無気肺になった原因や、対象者の生活背景、既往歴(これまでにどういった疾患を患っていたか)、合併症や服用している薬など様々な情報を元にして検査と治療を施します。

リハビリテーション時に聞かれる質問には正しく情報を提供し、聞かれてもたらない情報に関しては患者自身からも情報を提供すると、より正しくよりスムーズにリハビリが進みます。

体位ドレナージ

これは、比較的取り入れやすく、よく使われる手法ですが、無気肺だから必ずしも行われるというわけではありません。

痰や異物による気道の閉塞や狭窄が生じている場合は、それらの異物を移動させなければならないので、こういった場合に施行されます。その治療として基本的に活用されるものが体位ドレナージになります。

・体位ドレナージの方法

次に、方法について説明をします。重力の力を利用した方法になり、肺のどこの部位が狭窄・閉塞しているかによって姿勢を変えていきます。

注意すべき点は、無気肺のどういった状態であってもこれが適応されるわけではなく、禁忌があるという点です。禁忌は、術後急性期、全身状態が不安定、頭蓋内圧が20mmhg以上、喀血(かくけつ/血を吐く)、膿胸(のうきょう/胸にウミがある状態)、気管支胸腔瘻(きかんしきょうくうろう)、肺塞栓、うっ血性心不全による肺水腫、大量の胸水などが挙げられます。

・体位ドレナージの効果

では、体位ドレナージの効果とは一体どういったものなのか、これについて述べます。無気肺の場合は、無気肺を呈している側の肺を上にして、酸素の通りを良くする方法をとります。これにより、重力を利用して痰や分泌物といった、通り道を閉塞する物質を気道の方へ移動させることができます。身体の向きを変えることで痰や異物を移動させることができるということです。

また、健康な肺へ血液の循環を促し、酸素を全身に循環させやすくすることができます。なお、体位ドレナージを行うことで、無気肺を呈している側の肺が上に位置するため、この肺には体圧という身体的な負荷がかかりにくくなります。

これによって、空気の出入りをする肺が拡張しやすくなり、呼吸を行いやすくします。つまり、努力呼吸量も軽減し、呼吸機能の改善を図ることができます。こちらも個人差があるため、全ての方が順調な経過を得ることができるわけではありません。

その他の治療法

体位ドレナージ以外にも、スクウィージング、深呼吸、呼吸介助や胸郭・頸部のリラクゼーションといった治療を行うこともあります。

痰の移動に関しては、体位ドレナージなどでは間に合わず、痰を気道の近くに自力で移動させることができても、それ以上喀痰(かくたん/痰を出す)することができず他の方法をとることがあります。それが、吸引になります。吸引を行えば、痰が吸痰され、気道の確保ができ、呼吸を安定させることができます。

無気肺の予防

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綿密な術前の指導と呼吸訓練が重要です。内容は、肺を再膨張させるために吸息を強調する、必要に応じて痰を喀出(かくしゅつ)させるためのFETを強調する、治療は常に肺を膨張させるような手段で終わり、最大限の肺容量を得る、といったものになります。

麻酔時の十分な気道内加圧と肺の膨張化、咳、深呼吸も大切です。

人工呼吸器の管理中に無気肺を予防する場合

術後やそうでない場合にも人工呼吸器を装着することがあります。人工呼吸器を装着している間に、無気肺を予防するには、3つの方法があります。それは、体位管理、呼吸筋のリラクゼーション、呼吸介助の3つになります。これらについて説明をします。

・体位管理

体位管理は、障害されて換気が悪い方の肺を上にすることで効果が得られやすいです。例えば、肺のお腹側が障害されている場合は、お腹側を上に、肺の背中側が障害されていれば背中を上に、肺の右側が障害されている場合は右側を上に、肺の左側が障害されている場合は左側を上にします。

しかし、お腹を下にすることは、それだけでとても体力がいり、力も必要となってとても辛い体勢になります。その点を考慮して違う体位にすることがあります。訴えがないとわからない場合があるため、このように辛い場合は、セラピストに遠慮なく辛いという思いを伝える必要があります。

・呼吸筋のリラクゼーション

呼吸筋のリラクゼーションは、腰方形筋にアプローチすることが特に効果的であるとされています。腰方形筋が活動して緊張することで下部胸郭が拡張することを制限し、横隔膜の背面の動きをも阻害してしまうため、腰方形筋のリラクゼーションを重点的に行われることがあります。

もちろん、そういったケースが多いというだけであり、その他に原因があった場合には、そちらを重点的にアプローチしていくことになります。

・呼吸介助

呼吸介助では、より効果を得るためには体位管理と呼吸筋のリラクゼーション後に行うことが最善と言われます。呼気(空気を吐く)をするタイミングで胸郭を圧迫するという方法をとることが多いです。これは、呼気をする量を多くすることが目的であると間違えられやすいですが、本来は吸気(空気を吸う)量を多くすることが目的とされています。

これにより、肺胞に空気が入りやすくなり、潰れている肺を拡張しやすくします。エアエントリーの改善とも言われています。この手法を用いることで呼吸がより楽に行いやすくする、という効果が得られます。

その他リハビリテーション

無気肺を早期発見するためにも、術前に理学療法といったリハビリテーションを行う場合があります。もちろん、上記の人工呼吸器の管理中に行う3つの方法もリハビリテーションにて行われます。

吸入器(ネブライザー)の利用

予防に理学療法を取り入れることと同様、無気肺の早期発見のために、術前に吸入器の処方がされることがあります。

その他、薬物の利用

無気肺では、肺炎も合併して発症する危険性が考えられます。これを考慮し、術前から抗生物質などの薬を複数併用して処方される場合があります。

喫煙は控えましょう

喫煙、特にヘビースモーカー (重喫煙者)の場合は、手術後に呼吸器疾患を併発する恐れがあります。全身麻酔では特に併発する可能性を高めます。

手術後、気道内の分泌物や血液、誤嚥物などの異物により、無気肺を呈するだけではなく、閉塞性肺炎をも発症する恐れがあります。それほどまでに、呼吸器の機能を弱めるため、喫煙はなるべく控えるようにしましょう。

アルコールは控えましょう

たしなみ程度のアルコール摂取は血液の循環を促進し、代謝を良くするといった良い面をもっています。しかし、多飲をするとアルコールによって身体を麻痺させてしまったり、関節に負担をかけてしまうことがあります。術前にアルコールを飲んでしまうとこういった状態で手術に挑むことになります。

つまり、手術後に合併症や後遺症を残しかねないということです。特に、全身麻酔を施行時する場合は高いリスクを伴います。手術前の注意事項の用紙を病院側から渡されることや、注意を促されることがあるでしょう。必ず、指示に従って行動するようにしましょう。

まとめ

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特に術後に発症し得るこの疾患は放置してしまうと極めて危険な病気になります。早期に対応していき、医師やセラピストに受ける指導をしっかり受けましょう。

また、喫煙やアルコールの多飲など呼吸器疾患を悪化させやすい生活は避けることが大切です。

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