健康診査の尿検査で「尿蛋白」にチェックが入って再検査を求められた人も少なくないのではないでしょうか。尿蛋白は健康な人でも陽性を表すことがあります。しかし、泌尿器科系の炎症、腎臓の病気や腎臓機能の障害や妊娠のサインの可能性もあるので油断は禁物です。
可能性のある病名としては腎臓の病気では「急性腎臓」「急性腎炎」「急性腎不全」「慢性腎炎」「慢性糸球体腎炎」「腎盂腎炎」「腎硬化症」「腎不全」「腎臓がん」「ネフローゼ症候群」およびその原因になる糖尿病、泌尿器科系の病気では「膀胱炎」「膀胱結石」「膀胱がん」「前立腺炎」「前立腺がん」「尿道炎」「尿管結石」「尿管がん」妊娠中の場合は「子癇・子癇前症(妊娠中毒症)」など多くの病気の可能性が考えられます。
では、どのような数値の異常が見つかった場合にこれらの病気の可能性があるのでしょうか?尿蛋白の異常な陽性反応と病気の可能性のある場合の自覚症状について紹介します。
尿検査で尿蛋白に引っかかったら危ない?
尿検査で蛋白をとる意味は、スクリーニング検査としての役割を持ちます。
スクリーニング検査とは、必ずしも病気の原因となるかどうかわからないにせよ、疑いのある疾患になる特徴を洗いざらい調べて、検査に引っかかったらより精密な検査をするというものです。
尿蛋白の陽性反応は健康な人でもでることがあり、陽性を示したからと言ってすぐさま何かの病気にかかっていることがわかる、というものではありません。
健康な状態でも尿蛋白がでるケース
尿蛋白は通常でも1日で40~120mlほど排出されています。健康診断1回の検査では基準値が15mg/dL未満で陰性、15~30mg/dLで擬陽性、30mg/dL以上で陽性(+)と診断されます。
健康な場合では、蛋白質を多くとる、激しい運動をする、熱がでる、入浴することで尿蛋白で陽性反応がでる場合があります。
女性の場合生理や妊娠によって蛋白がでるので、尿検査の際に生理中、あるいは妊娠の可能性がある場合は医療機関に事前に告げておくと再検査の手間が省けます。
特にストレスが溜まっている、風邪をひいた直後は腎機能が弱まって蛋白がでることがあります。
他には子供に多い尿蛋白ではずっと立った姿勢をとっていることで尿蛋白がでることがあります。朝早く取った尿で陰性がでることで判別できます。
再検査がメンドクサイ方のために
健康なのにわざわざ再検査しに行くのは嫌だ!という人は健康なときに尿蛋白がでないようにある程度調節することもできます。
よくある例では、検査前にプロテインを飲んで運動したりすると尿蛋白検査で陽性がでやすいので避けましょう。また風邪をひかないように注意し、生理周期が重なってしまったら事前に検査者や医師に告げて別の日に検査しましょう。
いくら再検査がめんどうからといって放置してしまうと、腎不全になったらめんどうどころの話ではありません。人工透析はもっとめんどくさいです。陽性がでたらおとなしく検査しましょう。
尿蛋白で陽性反応が出たときに疑われる病気
腎臓、膀胱、尿路に疾患がある可能性があります。
腎臓の病気では「急性腎臓」「急性腎不全」「急性腎炎」「慢性腎炎」「慢性糸球体腎炎」「腎盂腎炎」「腎硬化症」「腎不全」「腎臓がん」「腎結石」「慢性腎臓病」「尿細管間質性腎炎」
また腎臓に異常をきたす原因となる生活習慣病である「糖尿病」
膀胱や尿路など泌尿器科系の病気では「膀胱炎」「膀胱結石」「膀胱がん」「前立腺炎」「前立腺がん」「尿道炎」「尿管結石」「尿管がん」
妊娠中の場合は「子癇前症(妊娠中毒症)」が考えられます。
再検査で腎臓に異常があったら?
腎生検という検査を受けると詳しい腎臓の疾患を見つけることができます。エコーで腎臓を見ながら、腎臓のほんの一部だけを採取します。
腎臓の疾患にも種類があり、治療すれば完治する急性糸球体腎炎、腎不全に慢性腎炎症候群、急速に症状が進む急速進行性腎炎症候群など、程度によって治療法や後遺症の有無が異なります。
腎不全になった場合、尿毒症などを起こして生命を維持することができなくなるため人工透析や腎臓移植をすることで対処することになります。
腎不全になる前に、早期の治療をすることが望ましいです。尿蛋白の陽性反応がでたら念のため腎臓の検査をすることが大切です。
再検査で泌尿器科系の異常があったら?
膀胱炎も放置すると腎不全につながることがあります。結石やがんがある可能性もあるのでたかが膀胱炎と放置することのないようにしましょう。
妊娠中の尿蛋白と子癇について
妊娠して婦人科に行くとだいたい妊娠中の検査で尿検査をとって尿蛋白を調べます。
妊娠中は胎児のために母親の腎臓に負担がかかりやすい状況ですが、尿蛋白の陽性反応があるときは「子癇前症」の可能性があるため症状を調べるのです。
子癇前症は尿蛋白が見られると同時に高血圧になり、妊婦の手足がむくむことが特徴です。妊娠して20週期してから発症しますが、はっきりした原因は定かでありません。
重度になると。頭痛、視野障害、錯乱、呼吸困難、上腹部の痛み、嘔吐などの発作や脳、肝臓、腎臓、肺などの臓器に障害を起こし、さらに重症化すると、HELLP症候群という摂家級が壊れ、肝障害を起こし、血小板の数が減ってしまう危険な疾患を起こす場合があります。
さらに子癇前症は、常位胎盤早期剥離を起こしやすくなります。正常より小さめの未熟児がうまれ、通常の4倍ほど新生児に問題が起こる可能性が上がってしまいます。
妊娠中の尿蛋白の原因が子癇前症(妊娠中毒症)である場合は軽度であれば安静にしていればよいですが、悪化すると母子ともに危険な状態です。
原因は定かではありませんが、肥満や高血圧、血液凝固疾患など血管に異常がある場合に発症するリスクが高いようです。また初回の妊娠、多児妊娠、若すぎる、あるいは年を取り過ぎている適齢期でない年齢での妊娠でも発症リスクが高まるといわれています。
尿蛋白と合わせて起こると危険な症状
尿蛋白の陽性反応と同時にその他の腎臓などの障害と関係する病気の症状を併発している人は、病気の可能性が高まります。
以下のような症状に心当たりのある人はしっかり検査を受けて病気の早期発見をして治療を行うようにしましょう。
貧血
まず、腎臓の病気の自覚症状はほとんど確認することが出来ず、発見しづらいということを知っておきましょう。
その上で貧血という症状は比較的軽い症状に思えるのですが、貧血は体のSOSの信号であり重大な病気の初期症状の現れの可能性があります。
腎臓には血液を作るための重要な役割を担っています。その為、腎臓の機能が弱まると血液量が十分確保できなくなり貧血になりやすくなります。その他にも疲れやすくなった、めまいがするなどの症状があればさらに可能性は高まります。
むくみ
朝起きた時に足がむくんでいる、顔がむくんでいるなどの症状はないでしょうか?朝に靴が履きにくかったりしていませんか?心当たりがなくても、今スネの骨の皮膚の薄い部分を押してみてその凹みがなかなか治らない様でしたらむくむがある証拠です。
これも腎臓の働きで、細胞内の水分量を調節している機能を持っている腎臓の機能が低下するとむくみなどの症状が出やすくなります。ひどいむくみの症状がある人は腎臓の病気かもしれません。
尿の異常
尿が毎回泡立ってその泡がなかなか消えない、色の付いた尿、白っぽい色もしくは赤茶色と言った尿がでる、頻尿になった、尿の回数が減った、残尿感が強いなどの症状がある場合も病気の可能性があります。一過性でなく継続的にこれらの尿が確認できる場合は特に問題があります。
膀胱、腎臓などの器官に病気の症状が現れていることが原因でこれらの症状と共に尿蛋白の症状が出ている可能性があるでしょう。
尿の異常は特に病気の症状として代表的なものなのでこのような症状が確認された場合は、しっかり病院で検査を行いましょう。
腎臓・膀胱に負担をかけないようにするには
尿蛋白の陽性反応で腎臓や膀胱に異常があった人もない人も、自分の腎臓に負担をかけていないかどうか振り返ってみましょう。
腎臓が悪くなるとどうなる?
腎臓は様々な働きをしています。悪化すると治療しなければ生命を維持できなくなります。腎臓の機能には大きく分けて老廃物を排出する働き、血圧を正常にする働き、血液を作る働き、体液量のバランスを取る働き、骨を作る働きなどがあります。
もし腎臓に異常が発生した場合に起こりうる不調について見ていきましょう。
老廃物、毒素をこしとって排出できなくなる
腎臓は毒素を無毒化する働きがあり、腎臓が機能しなくなると人工透析をしないと生きられない体になります。毒素以外にも塩分などのミネラルや老廃物を排出します。通常は腎臓の働きによって体内の毒素をふるいにかけて尿に変えて体外に排出しているのが、腎臓の働きが悪くなると毒素が蓄積してしまうため、尿毒症などの症状を引き起こす可能性がります。
偏食をするとそれだけ腎臓に負担をかけることになります。
血圧を調節できなくなる・高血圧になる
血圧を調節する機関でもあります。妊娠中毒症で異様に血圧が上がるのもこのためです。
身体に老廃物や毒素がたまり続けると血管が傷ついてしまい様々な合併症を起こす危険があります。腎臓は血圧の高い時は、塩分と水分の濃度を調節し血圧を下げて、逆に血圧の低い時は塩分と水分の濃度を上げて血圧を上げます。
高血圧の状態が続くとそれだけ腎臓に負担をかけることになります。
血液をつくらせるホルモンを分泌できなくなる
赤血球は骨髄(稀に肝臓)で作られますが、赤血球をつくる命令を出すホルモンは腎臓から生成されます。このエリスロポエチンというホルモンが骨髄の細胞に働きかけることで血液は生成されます。
なので腎臓の働きが弱まると貧血などの症状を引き起こしやすくなります。
体液量・ミネラルバランスの調節ができなくなる・むくむ
ミネラルとは、神経や筋肉の働きに使われる、カリウムやマグネシウム、ナトリウムなどのことを指します。このミネラルバランスが崩れると細胞と血管との浸透圧が崩れ、細胞に水分が入り過ぎてむくみを起こしてしまうことがあります。
その他にも疲れやすくなったり、めまいなどの症状が現れやすくなります。
腎臓に負担をかけないようにするには
腎臓は血液や細胞の栄養分のバランスをとり、老廃物を排出しています。
腎臓病の話がでるとよく言われるのがカリウムとたんぱく質の食事制限です。
カリウムもたんぱく質も体に必要な養分ですが、過剰にとると身体に使われることなく排出されてしまい、腎臓に無駄な負担をかけて終わります。
暴飲暴食は百害あって一利もないので避けましょう。また暴飲暴食でなくても、一種類の食品しか食べないことでミネラルが偏って負担がかかることもあります。バランスの良い食生活をすることが大事です。
風邪をひいているときは特に腎臓に負担がかかっています。食中毒や感染症でも打撃を受けやすい部分です。薬を飲むことで腎臓をよわあせる働きもあるので特に注意しましょう。
むくみや脱水があったときは腎臓が悪くなっていることが原因ということもあります。尿蛋白の陽性反応がでたら、心当たりのある
健康食品と腎臓
ゲルマニウムを含有した食品がありますが、腎臓に負担をかけることで知られています。無機ゲルマニウムを使った健康グッズなどでも登場したことで有名になったこともあるので知っている人も多いかと思いますが、このゲルマニウムを摂りすぎてしまうと体に良くありません。
経口摂取できる有機ゲルマニウムを含む食品としてはにんにくや高麗人参やはちみつや海藻のスピルリナなどがあります。
動物実験などで行われたデータでは腎臓病を患ったマウスに酸化ゲルマニウムを与えたところ病気の症状が悪化したとの報告があります。その他に人間でも同食品を継続的に長期間摂取した人の中に腎臓の健康障害を引き起こした人が多く存在しこの成分の含有されたものの長期間の摂取には注意するよう厚生労働省が呼びかけています。
加齢と腎臓
腎機能は加齢とともに衰えていきます。年をとったら若いころのような食事はとれなくなっていきます。自分の腎臓の限界を知りながら食事をとるようにしましょう。
塩分を摂りすぎることや、老廃物を多く生産するタンパク質の摂取の制限や加工食品を避けるなどの食事制限を上手に行い、ストレス無く続けることが重要です。
膀胱に負担をかけないようにするには
膀胱に尿をためすぎていると起こるので、尿が濃くならないようによく水分をとり、排出を我慢しすぎないことが大切です。またストレスや寝不足、過労、下半身の冷えによって免疫力を下げないように注意しましょう。
膀胱炎は、尿道が膀胱から近い女性に起こりやすい病気です。肛門と近いので便にいる菌が尿道から入り込むことがあります。(たとえふき取ったように見えても菌が付着していることがあります)排尿・排便をしたあとは、トイレットペーパーを前から後ろに使うとよいでしょう。生理期間中は感染症になりやすいので特に陰部を清潔に保ちましょう。
また性交渉中に尿意を我慢していると膀胱炎になりやすいようです。事前に排尿を行い、直後にもできたら排尿し、シャワーを浴びてよく陰部を洗いましょう。
治療
普通、抗生剤をのんで安静にしていれば膀胱炎は治っていきますが、放置すると最悪の場合は腎不全になるので治療しましょう。
腎臓・膀胱の結石を防ぐには
結石ができるとすさまじい痛みがでるほか、体液の入り口をふさぐことで障害を引き起こします。結石の原因は八割がたシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのカルシウム結石です。リン酸マグネシウムアンモニウム結石の場合もあります。
シュウ酸は肉類に含まれ、カルシウムなどのミネラルと結びつき、体内に硬い石を生成します。水分が不足すると結合しやすいので、よく水分をとるように心掛けましょう。
日本人の場合、カルシウムが不足しているのにたんぱく質をとり過ぎるせいで結石ができやすいといわれています。
ほうれん草やタケノコなどの灰汁がでる野菜にも含まれますが、水に溶けやすいので茹でれば抜けていきます。また脂肪分と一緒に取ると吸収される前に結びつくので結石のリスクを下げられます。
ほうれん草なんかより尿酸の元であるプリン体を多量に含むレバーや牛肉を食べ過ぎることが主な原因です。
またビタミンCは体内で代謝されるうちにシュウ酸をつくります。かといって、直接結石の原因になっているかどうかは定かではありません。
毎日摂取する必要がある栄養分ですが、取り過ぎても吸収されずに排出されます。腎臓に負担をかけるかも知れませんが、恐らく直接は結石に関係ないのではないかともいわれています。サプリメントなどで大量にとったりせず、一日の摂取量を守りましょう。推奨は100mgです。
治療
治療は小さければ自然に排出されるのを待ちます。大きければ外から砕いて小さくしてから排出します。放置すると尿道が塞がれて腎臓が働けなくなることもあります。すごく痛いので放置することもないかもしれませんが、泌尿器科へ行きましょう。
まとめ
尿蛋白の陽性反応はそれ自体が疾患というわけではなく、健康な時にも出ることがあります。そのため健康診断で尿蛋白に引っかかっても問題がない場合もあります。
運動をしたり、生理中だったり、蛋白質をとり過ぎたり、風邪や発熱があると腎臓や膀胱、尿路に疾患がなくても尿蛋白がでます。
仮に腎臓や膀胱の疾患だったとしたら、放置すると重い疾患を患うことがあります。医師の判断を仰ぎ、再検査を受けてください。
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