心にかかるストレスがきっかけとなって、体に様々な不調をきたしてしまう。人の体というのは不思議なもので、しばしばそういった症状を引き起こしてしまうことがあります。
心因性頻尿はそういった心のストレスがきっかけとなって、頻尿症状が起こる状態です。排尿の回数が多くなれば、いつどこで尿意を催すかわかりませんから、どこに行くにも不安になってしまうことがあります。
では、この心因性頻尿。どのような症状を発症させ、どのようなことが原因で起こるのでしょうか。また、治療法についてもみていくことにしましょう。
心因性頻尿の症状とは
冒頭でも述べたように、心因性頻尿は心の不安や緊張といった心理的負荷によって尿意が催され、頻尿となってしまう状態です。目安としては1日8回以上、トイレに行くようであれば頻尿と判断します。
心因性頻尿ではその背景に病的な原因がみつからないというのも特徴です。症例として、膀胱炎では膀胱内で繁殖した細菌によって膀胱が刺激され、頻尿症状を発症することがあります。そういった原因が心因性頻尿ではみられません。
このため、夜間頻尿といった就寝中の排尿行為も見られません。起きている時、特に心的なストレスを受けた時に尿意を催します。生活に支障をきたすこともあり、その人を苦しめてしまいます。
そのほかの症状
心因性頻尿ではストレスを受けた時に尿意を催します。反対にいえば、特にストレスを受けていない時は尿意を催すことがありません。先に述べた就寝中や何かに熱中している時などもトイレに行きたいという欲求は生まれないのです。
もちろん、発熱や倦怠感、排尿痛も感じません。これら症状があるケースでは泌尿器の病気を疑うことができます。泌尿器に異常はないものの、意識した時に尿意を催す。これが心因性頻尿の特徴といえるでしょう。
心因性頻尿の悩み
心のストレスが引き金となって尿意を催すため、しばし外出が億劫になるということがあります。トイレがないような環境では、突然の尿意に対応できないからですね。また、それがストレスとなることもあります。
「いきなりトイレに行きたくなったらどうしよう」…こういった考えが頭の中を巡り、より外出が難しくなります。近くのスーパーで買い物ぐらいなら大丈夫かもしれませんが、旅行となると消極的になってしまいます。
心因性頻尿の原因
心因性頻尿はその名の通り、心のストレスが引き金となって尿意を催します。
では、具体的にどのようなことが引き金となってしまうのでしょうか。以下のようなことが挙げられます。
緊張するシーン
会社のプレゼンや学術試験といった緊張感が伴うシーンでは、しばし心因性頻尿を発症することがあります。ストレスの度合いが大きいほど、症状も強くなるでしょう。
ただ、こういった場合では物事が過ぎてしまえば症状は自然に収まっていきます。このような心因性頻尿は誰しも一度は経験するもので、心配する必要のない症状といえるでしょう。
人に会うとき
緊張するシーンと似ていますが、人に会うときはストレスがかかりやすい環境といえるでしょう。特に苦手な人と会うときや、ぎゅうぎゅう詰め状態の通勤電車。こういった環境では尿意を催すことがあります。
厄介なのはこういった環境が繰り返されることで、頻尿が癖になってしまうということです。そして、一度症状を発症してしまうとなかなか改善ができないことがあります。こういったケースではしばし、治療が必要なこともあります。
深刻なストレスを抱えているとき
仕事の職場での過度なストレス、家庭内の不和。または、こういったことに関する重度のストレスを抱えていると、心因性頻尿を発症することがあります。継続的で強いストレスは症状の原因になってしまうのですね。
1日の中で心が休まることが少なく、いつも不安を感じている…こういったことを考えるようであれば、しばし注意が必要でしょう。症状が重くなり、治療も難しくなってしまうことがあります。
心因性頻尿と予期不安
心因性の病気には予期不安がきっかけとなることがあります。予期不安とはこれから起こりうることに対して、心配になり、症状を発症してしまうということです。
例えば「満員電車に乗ると私はいつもトイレに行きたくなる」ということを考え出してしまい、不安症になり、体に症状として現れてしまうのです。これが元になって精神が不安定になることもあります。
ある状況下に陥った時の反射的な反応といえますが、本人には辛いものがありますよね。心因性頻尿ではこの予期不安の解消法・対処法が重要な治療ポイントになります。
心因性頻尿の治療方法
日々の生活でトイレばかり意識して、行動が制限されてしまうのはとても辛いことです。
では、治療としてどのようなことを行なっていくのでしょうか。具体的には以下の治療法が挙げられます。
カウンセリング
症状の原因が心にあるとわかった場合、カウンセリングをすることがあります。カウンセリングでは専門の医師が患者の悩みを聞き、それに対してアドバイスをしていきます。
その中で排尿日記をつけることがあります。これは排尿時の状況を細かく記入するもので、尿量、時刻、排尿時の心境などを記録します。
例えばこういう時にこういう行動をしたら、こうなった。そういった記録を残しておくことで、次同じようなことが起きた時に改善することができます。このようなことを行動療法ともいいます。また、客観的なデータとして、カウンセリングの参考になることがあります。
もちろん、この日記をつけることに真面目になり過ぎて、それがまたストレスになってしまうなんてことは本末転倒です。細かく記入するというよりも、気軽に進めていくことが大切でしょう。
薬の服用
心が不安定であるようであれば、薬を処方することがあります。安定剤ですね。緊張したときに薬を服用することで、精神を落ち着けます。予期不安を感じた時など、その前に飲むと症状を抑えることができるでしょう。
一方で、薬を飲み続けても症状が改善されないことがあるようです。これは根本的なストレス解消ができていなかったり、継続的に心的負荷がかかっていることが予想されます。このようなケースは薬物療法と合わせて、カウンセリングの必要もあるでしょう。
膀胱訓練・膀胱トレーニング
心因性頻尿では膀胱の機能が低下していることがあります。膀胱容量が普通より小さくなり、尿量が少したまるだけで尿意を催してしまうことがあるのですね。その改善方法として膀胱訓練があります。
膀胱訓練では尿意を催したとき、あえて我慢することで、トイレの間隔を延ばしていくということをします。訓練を繰り返すことで、排尿の回数を減らすことが期待でき、症状改善に効果的でしょう。薬と同時進行で治療することもあります。
骨盤底筋体操
骨盤の周囲にある筋肉は排尿をコントロールする役割があります。この筋肉が衰えてしまうと、頻尿症状を悪化させてしまうことがあります。そこで、骨盤底筋体操というのを行います。方法は次の通りです。
- 肩幅大に脚を開き、立ちます。
- その状態から肛門、お腹に力を入れます。
- 2の後、力を緩めます。
- 2・3を繰り返します。
肛門や周囲の筋肉に意識して力を込めることで、筋肉を鍛えることができます。普段使わないことが多いですから、意識して体操をするようにしましょう。
オルゴール療法
オルゴールを用いて、自律神経の働きを整え、心因性頻尿を治療するという方法もあります。
スイスオルゴールから発せられる独特の波長は、研究機関の研究でも神経を鎮める効果が期待されていて、治癒例もあるようです。
安心することが大切
日常生活の中でストレスを感じ、心がどこか落ち着かない。そういったことが引き金となって尿意を催してしまうことがあります。なので、療法でもっとも大切なのは、安心できる環境を作ってあげることだと思います。
それは何かに没頭したり、気分転換となるようなことをする。反対に嫌なことばかり考えてしまうと、どうしても体に負担をかけてしまうかもしれませんね。これは癖のようなもので、日々意識して改善していく必要があるでしょう。
自分がリラックスすることを意識してみてください。それを続けることで、少しずつ体の状態が変わっていくと思います。
子供の頻尿
頻尿症状はしばし、子供にも見られることがあります。これは当然心因性のものもあります。学校の授業・環境変化なんかは特にストレスとして心に大きな負担を課してしまうことがあるでしょう。
一方で単なるジュースの飲みすぎということもあります。水分を摂り過ぎれば当然、尿の回数は増えます。こういったこともあるので、それほど心配する必要はないのかもしれませんね。
心因性頻尿と日常でできる克服方法
治療法と合わせて、症状を改善するために日常生活でできることにはどういったことがあるでしょうか。
なるべく心の安定を心がける、ということを軸に以下のことが考えられます。
ストレスを溜めない
基本的なことですが、ストレスを溜めないことは症状改善に効果的です。人はあらゆる環境や状況からストレスを受けていますが、それをきちんと発散できるかで症状の改善・悪化が決まります。
ストレスを溜めない、と言葉で言ってしまえば簡単ですが、それが難しいこともあります。ですが、生活の中で少しずつ改善できる部分があると思います。早めに寝る。夜はスマホを触らない。入浴をする。
こういったことでもストレスを発散のに十分な効果を発揮します。反対に、こういったことが習慣化されているようであれば、体に気づかないうちにストレスがかかっているのです。少しでも体の状態を良くするために、心がけるようにしてくださいね。
意識を他のことに集中させる
何か嫌なことがあったとき、ストレスがかかったとき。人はそのことばかりを考えてしまうものです。そして、ネガティブな思考がぐるぐると頭の中を巡り、それが症状となって現れてしまう。そういうこともあります。
そのような状況になったときは、なるべく他のことに意識を集中させるようにしましょう。室内で軽く体を動かしてみたり、読書をしたり、映画を見たり。脳は1つの物事にしか集中することができません。集中すればするほど、症状を緩和させることができます。ぜひ、実践してみてくださいね。
自己暗示を変える
例えば尿意を催した時、トイレに近くがなく、焦った経験・体験があったとします。この時、不安感が強くなり、パニックに近い感情・気持ちを抱くかもしれません。そして、心の中では「やばいやばい」という言葉が繰り返され、頻尿に対する印象が決定づけられてしまいます。
人はある意味では物事に反応していきています。物事に意味づけして、そう反応しているだけなのですね。尿意に関していえば、「尿意を感じる→トイレがないと不安」と潜在意識に強く紐づけられて、記憶されていることも心因性頻尿の原因なのかもしれません。
この紐付けを解くために自己に語りかける言葉を変えると、その認識を変えることができます。ポジティブな自己暗示をかけることで、行動を変えることをアファーメーションといいます。
これを続けることで、尿意を感じても「漏らすことはないから大丈夫!」と思うことができます。こんなこと?と思うかもしれませんが、安心を感じることができれば、症状を抑えることができます。
反対にいえば、尿意を催した時、「漏らしたらやばい!」「トイレはどこだ!」と強く不安な言葉を自己暗示するために、症状を発症します。そういう状況になったときは、目を閉じて、一度落ち着いてみることをおすすめします。
頻尿を招く病気
心因性頻尿はしばし精神的な負担を受けることで発症することがあります。心のストレスが身体に現れてしまうのですね。解決には根本原因の解決が必要かもしれません。
一方で他の病気・疾患との関連も考えられます。ストレスがなくとも、どうも尿の回数が多い。こういったときは何かしらの病気が考えられるかもしれません。検査をする必要もあるでしょう。具体的には以下のことが考えられます。
自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れてしまう自律神経失調症はしばし頻尿を引き起こすことがあります。症状としてはこの他、めまい、睡眠が浅くなる、不眠、イライラ、食欲不振、血流が悪くなり体が冷えるなどがみられることです。
頻尿以外で体に不自然な症状が起きているようであれば、自律神経失調を疑うことができるでしょう。放置してしまうと、日常生活を営むのが難しくなることもあるので早めに対処するようにしましょう。
過活動膀胱
過活動膀胱とは膀胱に尿を貯める機能が低下し、少しのことで尿意を催す病気です。50代以上の方によくみられる症状で、男性の方が多いようです。
心因性頻尿と同様、1日8回以上の排尿が起こります。また、実際にトイレに間に合わず失禁してしまうことがあります。これは心因性頻尿との相違点でしょう。
原因はよくわかっておらず、心因性、加齢、泌尿器の病気、神経性などが考えられます。症状が突発的に起こり、継続的に起こるようであれば、一度、病院へいくことをおすすめします。
前立腺肥大
男性にしばしば起こるのが前立腺肥大に伴う頻尿です。排尿機能の低下に伴い、尿が十分に排出されず、頻尿を発症します。この場合、きちんとした検査をしなければわかりません。
前立腺肥大は50代を過ぎた男性であれば、誰しも発症する可能性があります。特に生活習慣病との関連性も強く、高血圧や高脂血症などを発症している人はリスクが高まります。
会社の健康診断等で指摘さている人は、細かい検査を受けるようにしましょう。また、異常を感じた時は、早めに病院へ行くようにしましょう。
頻尿以外の症状が出ているときは注意
心因性頻尿は頻尿症状しか起こらないことが特徴です。それ以外に症状があるようであれば、また別の病気の可能性を考えることができます。その場合、深刻な病気が隠れていることもあるので、検査をしなければなりません。
主に泌尿器の病気であることが多いですが、そうではないこともあります。きちんとした検査をしないと病気は悪化していくばかりです。放置せず、病院へ行くようにしてくださいね。
まとめ
心因性頻尿は心に関係して症状を発症します。つまり、根本的な原因解決をしなければ、精神科に通っていても症状はいつまでも発症する可能性があるでしょう。精神安定剤を飲んだり、精神科クリニックの医師に相談しても治らないことがあるかもしれませんね。
日常生活の中で自分がどんなことに対してストレスを感じているのか。そして、そのことに対して、どうにか対処を変えることができないだろうか。そういったことを考えてみると症状が快方に向かうかもしれませんね。
精神的な負担を極力減らし、リラックスすること。そして、心を安定に保ち、自分を肯定すること。こういった対策が心のケア・病気の治療に必要なのだと思います。
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