体のさまざまな状態や病態を知る上で、尿検査から分かることは少なくありません。
また血液検査のように特別な機械を設置し、検査技師の常駐している大きな病院だけでなく、個人開業医などの小さな病院でも検査が行えるため、健康診断や人間ドック以外の定期診察・検査などでも、尿検査を行う機会は増えています。
体の調子はそんなに悪くないのに、尿検査の結果が思いのほか悪かったという経験をした人は少なくないのではないでしょうか。
実は、尿検査をする前日の過ごし方で、その結果が大きく違ってしまうことが分かっています。再検査再検査で何度も病院に行かなくて良いようにしたいですよね。
では、明日検査があると分かっている時に、わたしたちはどのように検査までの時間を過ごせばいいでしょうか。尿検査前日の過ごし方について紹介します。
尿検査の基本
おそらく病院や検査機関の看護師やスタッフから説明がされると思いますが、尿検査に使う尿は、出始めのものを除いたものを採取します。また採取する量ですが、容器になみなみたっぷり入れるわけではなく、半分量ほどあれば足りることは多いようです。逆に微量だと検査結果がしっかり出ない場合があります。
女性で、生理などがある(数日以内にあった)という場合には、その旨をちゃんと伝えるようにしましょう。
病院や検査機関以外の、例えば自宅などで採取する場合には、採取後時間を置かず、できるだけ早めに提出するようにします。永く放置しまうと、不純物が混ざる可能性があり、内容が変化してしまいます。
当然のことですが、尿以外の余計な不純物を意図的に混ぜるようなことをしないようにします。もちろん自分以外の他人の尿を提出することも、自分の体の状況を診るわけですから、意味がありません。
尿検査で何が分かるのか?
尿検査で分かることは、肝臓の機能や状態、腎臓の機能や状態が分かります。そしてまた、その両方の臓器に関わる器官に炎症が起きているかどうかなども分かります。
具体的にどのような値で見分けるのでしょうか見てみましょう。
尿蛋白
平常時では、尿に含まれることはありません。
血液が腎臓で濾過される時に、再利用される血液と、不要物として排出される尿に分けられますが、蛋白質は必要なものとして再利用されるため、尿に出ないのです。
しかし、腎臓機能が低下したり、膀胱炎などがある場合には、血液に混ざっている蛋白質が尿に混じって排出されてしまうことがあります。そうなると陽性反応となり、尿蛋白が検出され再検査となります。
尿蛋白は一時的に発生している場合は、特に問題ないものになりますが継続して発生しているばあいは肝臓の以上の可能性が高まりますので、日にちを開けて再度検査をしてタンパクが含まれていないかどうかを検査する事となります。
尿酸値
尿酸値はアルコールの飲酒でその値がぐっと上がることが分かっています。
なかでもプリン体の摂取が多くなると上がるとされていますが、アルコールそのものの摂取で増加します。
この尿酸値が高い状態が続いていると、結石が発生しやすくなったり、血液中の尿酸値が上昇してると今日尿酸血症となり、その状態が長期間継続されると痛風などの問題が発生する原因となります。
尿酸値が上昇してしまうのは、腎臓で何かしらの障害が発生している事が考えられます。食事内容などを見直す必要があるでしょう。
γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)
肝臓の解毒能力やその働き具合をみます。おおよそ成人男性では50以下、成人女性では32以下が正常値とされています。
特にお酒などを多く飲んでいる人は、この数値が上昇しやすい傾向があります。飲酒などを行う事によって肝臓や胆管などの細胞が壊れてしまい、血液中に成分が流れ出て来るので数値が上昇するというメカニズムになります。
もし、検査でこの値が上昇している事が判明した場合は1週間程度はお酒をやめるなどすれば、簡単にこの数値は低下しますので、しばらくの間お酒を控えて対策するようにしましょう。
尿検査の前日にすること、してはいけないこと
尿検査はあくまでも体の様子を知るための検査です。なんとなくしてしまったことが、検査に悪影響を及ぼすこともあります。
では、検査の前日にすることやしてはいけないことを見てみましょう。
夜9時以降の飲食を控える
尿検査に限ったことではありませんが、健康診断を行う場合(なかでも胃透しなどを行う場合は厳守)夜9時以降の飲食を控えるように言われます。
これはもちろん検査結果に影響が出るからに他なりません。体の状態を知るための検査なので、普段通りに過ごしていていいわけですが、しかし飲食の有無で、普段とは違う偏った数値の上下になってしまえば、結果として自分のためにはならないのです。
日常的な食事だけではなく、例えば病気を治療している中で服用している薬や高カロリー食などによっても、検査結果に大きな偏りが出てしまう場合が分かっています。あらかじめ尿検査をすることが分かっている場合には、病院や検査機関に服用している薬や高カロリー食などを検査前にとってもいいかの相談をしておきましょう。
8時間程度しっかり睡眠をとる
検査前日は睡眠はちゃんととるようにします。睡眠不足で検査を受けてしまうと、尿蛋白が陽性反応になるとされています。尿蛋白が陽性反応になるということは、腎臓がちゃんと働いておらず、蛋白成分が濾過されずに尿に混ざって排出されたという意味です。
この陽性反応が、実際の体の具合が悪くもないのに出てしまう時は、睡眠不足や過労などの影響があるかもしれません。ですから、少なくとも検査の前日くらいはゆっくり休んで、睡眠も十分にとってから望むようにしましょう。夜勤明けに検査を受けるなどはもってのほかです。
ただし睡眠不足や過労などで尿蛋白に陽性反応が出たといっても、それがすぐに病気に繋がるというわけではないので心配はいりません。
しかし「再検査の必要がある」と病院や検査機関から言われ、別の日に再び検査をするように要請があるでしょうから、やはり余計な数値の偏りがないにこしたことはないのです。
激しい運動を控える
検査の前に激しい運動をしてしまうと、腎臓への負担が増してしまって、腎臓がしっかり働くために必要な血液量が足らず、腎臓機能が低下しているといった誤診になる可能性があります。そのため、検尿前日に激しい運動を行っていれば、数値の異常が発生しやすくなるでしょう。
場合によっては激しい運動で血尿が発生する場合もあります。できるだけ検査の前には体を休めるようにします。
甘いものを飲食しない
検査の前に甘いものを飲食してしまうと尿糖が出る場合があります。この尿糖の値が高すぎると、糖尿病が疑われることになります。もちろん、飲食をしたことで一時的に尿糖が出たことで、即糖尿病というわけにはなりません。しかし、誤診とならないように気をつけるためにも、検査の前にはなるべく甘いものを飲食することは避けましょう。
・ビールや焼酎などアルコールを飲まない
ビールだけでなく、アルコール全般が尿酸値を上げることが分かっていますから、ワインや焼酎などを含めて検査の前日は少なくともアルコールを避けます。可能ならば、二週間前後禁酒をすることで、ほとんどの人で肝臓の機能が回復してγ-GTPなどの数値が下がると言われています。
ほぼ毎日何かしらアルコールを飲んでおり、その状況が何ヶ月も続いているという場合には、すでに「アルコール性脂肪肝」になっていることも考えられます。もしもほとんど毎日お酒を飲むという人なら、三週間から四週間程度はアルコールの摂取を控えなければ、γ-GTPなどの数値は下がりにくくなります。
またアルコールを一度に多量摂取するとか、毎日のように飲んでいると体が脱水状態になります。脱水状態になると尿酸値が自然と高まっていきます。
ビタミン剤などを摂取しない
検査前日やその直前数時間前にビタミン剤などを摂取しないようにしましょう。特に水溶性のビタミンである、ビタミンCをは2〜3時間後には血中濃度が最大になり、尿から排出されます。
もし、尿検査で摂る検尿にこのビタミンCが大量に含まれていると、正確な成分検査が行えない問題が発生してしまいます。過剰摂取したビタミンCは24時間後でも排出されてしまう可能性がありますので、出来るだけビタミン剤は控えるようにしましょう。
ビタミンCはやビタミンBは過剰に摂取しても、過剰症となる副作用がないので、ついつい飲みすぎてしまう事も少なくありません。最近ではジュースなどにもビタミンCは多く含まれていますので、検査前にはこれらを少し意識して水やお茶など影響の少ないもので水分補給して再検査につながらないようにしましょう。
性行為をすると検査に引っかかる?
これは、男性にも女性にも言えることですが、検査前日に性行為や自慰行為、などを行った場合検査に引っかかる事はあるのでしょうか?
専門家の意見としては、オーソドックスなプレイに関しては問題に繋がることはないと言います。出血などが発生するようなものや性病に関わる問題につながっていなければOKということになります。
男性に於いては、もし仮に射精をしていたとしても十数時間の時間があいていれば問題ないとのことです。もし引っかかっても検査結果に精子などのように表記されることになるだけで済みます。
稀に尿蛋白と診断されることもありますが、これは射精が原因でない可能性も高くあります。ですが検査方法によっては射精後に尿道に残ってしまっている線液や精液などによって検査が行えずに再検査になってしまう可能性もあります。
専門家の先生に迷惑をかけないように、出来るだけ前日には性行為は控えたほうが良いでしょう。
尿検査で分かる病態
それでは次に尿検査を行った上で分かる体の異常とはどういったものがあるのでしょうか。代表的なものを紹介します。
腎炎(腎盂腎炎)
腎臓内の尿がたまる場所(腎盂)で細菌が繁殖してことによって、腎臓そのものにも炎症が広がってしまった状態を腎盂腎炎と呼びます。
平常時では、悪さをする細菌は排尿や免疫防御反応によって体外に排出されていくため、めったに腎盂腎炎には至りません。
しかし、尿管結石や前立腺肥大症などで排尿作用が低下していたり、糖尿病をはじめとして免疫が何らかの状況で低下していると、腎盂腎炎にかかりやすくなります。
腎盂腎炎は、尿検査をはじめとして、採血や下腹部のエコー検査を行って見つけます。とくに尿検査においては、細菌培養検査を行うのが重要となります。
ちなみに治療については、抗生物質の投与や内服によって治療します。順調に回復されればおよそ七日から十日程度で回復します。また一時的に回復しても、繰り返して炎症を起こすこともあるため、しっかり通院して医師の指導に従いましょう。状態が重たい場合には死に至る場合もあります。
ネフローゼ症候群
本来なら体内に残るはずのタンパク質が、どんどん尿から体外に排出され、体に水が溜まりむくみ「浮腫(ふしゅ)」が現れます。重度になっていくと、心臓や陰嚢などにも水が溜まっていき、腎不全、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞などを起こしやすくします。
尿検査と血液検査によって病態を発見します。浮腫があるか、高コレステロール血症を示唆する血液検査の値が見られるか、などが判断材料となります。
治療については、浮腫(むくみ)をなくすための体調管理、生活管理を積極的に行います。とくに休息すること、塩分の取りすぎや、アルコールなどの摂取制限を行います。また、患者の状態によってはステロイド剤などを投与します。
尿道炎
尿検査によって、白血球の値が高い場合には、尿道炎が疑われます。尿道が男性よりも短い女性の場合には、尿道炎という診断がされないことが多いようです。
また尿道炎と診断された場合には、原因としてほとんどの場合が性行為の結果発症した性感染症によるもので、クラミジアや淋菌性尿道炎である可能性が高いとされています。
治療については抗生剤を投与・内服することを基本とします。体の状態や感染した菌の種類によっては、半月以上の治療が必要となります。
また病院や検査機関で尿道炎だと診断された場合には、パートナーの方の検査も行うように指導されます。
膀胱炎
男性よりも女性に多いのが膀胱炎です。細菌が尿道から侵入して、膀胱で感染、拡大することによって発症します。
平常時には、体の排尿作用や免疫防御作業が働くために、細菌は体外に排出されやすいのですが、過労で疲れていたり、とくに下半身の冷えを長らく放置したり、尿を我慢しすぎたりするとかかりやすくなります。また性行為によっても感染しやすいことが分かっています。
主に尿検査と下腹部のエコー検査などによって異常がないか確認をします。尿検査については、とくに細菌培養検査を行って、より精密な検査を行います。
ちなみに治療は抗生物質を服用します。できるだけ早めの受診と治療を開始することで、抗生物質の服用から数日のうちには治ります。
尿管結石
尿管結石は「急性腹症」と呼ばれており、その痛みは「動脈乖離(どうみゃくかいり)」に並ぶほどの激痛だと言われています。痛みは同じでも、尿管結石はただちに命に関わることはありませんが、動脈乖離は死ぬ可能性の高い症状です。
脇腹付近の激しい痛みを確認したら、尿検査によって血尿の有無を調べます。尿管に詰まっている結石がごろごろと動くことで傷つき、出血があります。
またより精密な診断をくだすためにレントゲンを撮って、石を確認します。とくに腎臓付近、腎盂や尿管を観察します。
治療については、まずは何よりその激しい痛みを鎮痛剤にて緩和します。坐薬を使う場合が多いようです。そして水をできるだけ飲むように指導し、痛みの発症に併せて鎮痛剤を飲むを繰り返すことになります。
もしも結石が尿管などで完全に詰まってしまった場合、尿管スンテントを挿入したり、カテーテル留置などの処置を施します。それでもダメな場合には、レーザーによって粉砕することもあります。
まとめ
尿検査の前日には、なるだけ9時間以上は飲食を避けましょう。とくに尿の値に偏りのでてしまう甘いものやアルコールなどは制限します。
運動も控えて、なるだけ体を休め、睡眠時間もたっぷりととります。
またこれらが守られず、どうしても夜食を食べてしまった、朝ご飯をしっかり食べた、朝のジョギングなど運動をしてしまったという場合には、検査の前に病院や検査機関の看護師やスタッフに申し出ましょう。
尿検査によって見つかる病気が多いことも分かりました。設備のしっかりしている大きな病院だけでなく、町の開業医さんでも簡単に調べることの出来る検査ですので、定期的に検査をして日々の体調管理に役立てましょう。
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