食物繊維は体に良いと言われますが、どうして体に良いのか具体的に言える人はいるでしょうか。
たとえば便秘がちで、お腹がいつも張ったような調子だと「食物繊維をとりなさい」と言われることが多いと思います。では、便秘を改善するための食物繊維はどれくらいが適量なのでしょう? もしも食物繊維を取りすぎてしまうと、どうなってしまうのでしょうか? そもそも食物繊維とは何でしょうか?
ここでは、もしも食物繊維を取りすぎてしまった場合どうなってしまうのかといったデメリット情報を中心に紹介しながら、食物繊維を適量取るには何を目安にすればいいのかといった基本的な情報について紹介します。
どうして食物繊維は良いと言われるのか?
まずは食物繊維が良いとされるメリットについてみてみましょう。
食物繊維が多く含まれている野菜や果物、海藻類には、以下の種類や働きがあることが分かっています。
アルギン酸
コレステロールや血糖値の上昇を抑えます。動脈硬化の予防にも役立つと言われています。
フコイダン
肝機能を正常に働かせます。血圧をほどよい値に整えます。
セルロース
腸内の有害物質を体外に排出します。
ヘミセルロース
腸内の善玉菌を増やします。
ペクチン
腸内の有害物質を排出し、大腸がんの予防効果があるとされます。
キチン・キトサン
血圧やコレステロールをほどよい値に抑制します。自然治癒力を高めるとも言われています。
よく噛むこと
食物繊維の多い食べ物はほどよく固いため、よく噛まなくてはなりません。回数多く噛むことで唾液の分泌を促します。虫歯の予防には口内の唾液の充実が大きく役立つことが分かっています。
また、よく噛むことで顎を動かすことが出来ます。顎は上半身のポンプ、足は下半身のポンプと言われることがありますが、よく噛むことで頭部と心臓、体全体への血流をよく循環させます。
善玉菌を増やす
さらに食物繊維の多い食べ物を体に取り込むことによって、腸内の運動を活発化させ、老廃物などを体外へ排出する作用を促すとされています。さらに、「善玉菌」と呼ばれる体に良く作用する菌を増やして、腸内環境を程良い環境に調整します。
満腹感を感じる
そうして腸内環境が整うことで、消化吸収作用がよく働くようになって、満腹感が増します。
つまり胃が膨らむわけですが、その効果で食べ過ぎを抑制することが出来ます。つまりダイエット効果が期待出来るし、便秘の改善にも役立つというわけです。
食物繊維が多く含まれている食物
食物繊維には水溶性と不溶性の二種類があります。
水溶性とは水に溶けやすい性質のものです。不溶性はその逆で、水に溶けにくい性質のものです。
それでは、それぞれについて代表的な食物をいくつか紹介します。
水溶性の食物繊維の特徴
水溶性の食物繊維の代表的なものは、海藻類や野菜や果物です。また、水溶性の食物繊維には、ペクチン、グルコマナン、アルギン酸などが多く含まれていることが分かっています。
水溶性の食物繊維は、大腸でほどよい水分を便に与えます。水分がまったくないカチカチに固い便は、動きが悪く便秘の原因になってしまいます。ですから便秘で悩む女性に、水溶性の食物繊維が勧められるわけです。
水溶性の食物繊維
水溶性の食物線を紹介します。
海藻類
昆布、わかめ、もずく、めかぶなど
野菜や果物
山芋、ごぼう、オクラ、アボカド
詳しくは、水溶性食物繊維の食品を紹介!便秘に効果的な理由は?を読んでおきましょう。
不溶性の食物繊維の特徴
不溶性の食物繊維の代表的なものは、野菜や玄米、大豆などがあります。野菜の中でも、とくに根菜類に分けられるものには多量に食物繊維が含まれています。
また、不溶性の食物繊維は噛む回数が自然と増えることもあり、ヒスタミンとセロトニンの分泌を促します。ヒスタミンとセロトニンは脳内で広がることで「お腹がいっぱいだよ」という信号を送る作用があることが分かっています。
また溶けにくい食物繊維をよく噛むことで、内蔵脂肪の分解を容易にし、勢いよく燃焼させる効果も期待出来ます。つまり、よくメタボと言われるような肥満体質傾向の人は、不溶性の食物繊維をできるだけ取るように心がけてみましょう。
さらに不溶性の食物繊維を消化吸収するのは大腸です。大腸に入った食物繊維は、胃や小腸を通って来たどろどろ状の柔らかい便をほどよく固めてます。そしてある程度の固さで大腸壁を刺激しながら、肛門へと便を排出させるように、大腸の運動を促す役目もあります。
不溶性の食物繊維
不溶性の食物繊維を紹介します
野菜(根菜類に多い)
切り干し大根、エリンギ、えのき、小麦
果物
干し柿。その他に玄米や大豆、いんげん豆、小豆などが不溶性の食物繊維を多く含んでいます。
食物繊維の取りすぎによって起こる問題
体に良いと思われる水溶性の食物繊維も不溶性の食物繊維も、過剰に取りすぎてしまえば、体に弊害があります。何ごとも偏らずバランスよく食べることが肝心だと言えます。
カロリー不足に陥る
ここまで紹介したように、食物繊維は体に良いものですが、だからといって過剰に取りすぎてしまうと、食物繊維だけで満腹感を感じてしまうことで、体の維持に必要なカロリーが不足しがちになります。
腸の状態は良い、満腹感もある。体型も肥満から解消されほどよく、便通も良い。爽快感はある。しかし、体が疲れやすくスタミナが続かない。
栄養不足になる
カロリー不足に陥ると、続いて栄養不足のサインも出てきます。とくに水溶性の食物繊維は、ビタミン類やミネラル分を取り込んでしまって、腸で消化吸収される前に、排泄してしまうことが分かっています。
そうなると、
- 体はすっきりしているはずなのにイライラする
- 怒りやすい
- 目も疲れやすくなる
- 皮膚がカサカサする
- 抜け毛が多くなったり、爪がガタガタして状態が悪くなる
- 多尿になったり逆に少尿になったりする。
次々と体調に異変が起きてしまいます。
しかし「野菜も果物もよく食べられているし、いつも満腹感もあるのに力が出ない。変だなぁ」といったように、体調が悪くなっているのが自分の食の取り方にあることに気がつきません。
脳から出る「善」のサインに注意
必要な栄養分を取る前に満腹になってしまっているために、気づかないうちに栄養不足になってしまう。
とくにダイエットの目的で食物繊維を多く取っている人は、体の線が細くなっていく自分の姿に満足感を覚えます。またカロリー摂取を控えるために、少ない食事で満腹感の信号が出ることも良しとします。
脳は、これら一連のサインを「善」と価値付けしてしまうために「食物繊維を取って満腹になる」ことを悪いことにせず、良いことと位置づけします。
「体調を管理するため、命を維持するために程良くカロリーを取る」ことに思考が巡らなくなってしまうわけです。脳から出る「善」のサインにストップをかけることが大切です。
危険な状態に気づかなくなる
「善」のサインをストップできずにいると、ますます体の異常が促進されていきます。カロリーも栄養分も足りていないのに「不食に満足する」信号が、常に脳内を満たすようになります。
カロリーや栄養が足りなくなってくると、「危機的状況に備えて」生まれながらに備えている蓄えていたカロリーや栄養分を「骨」や「随」などから削り取るようになります。
そうやって見えないところで体の状態を回復させようとして、体に蓄えられていたものを削り取っていくことで、骨粗鬆症をはじめ皮膚の状態の劣化や視力の低下、体の慢性的な疲労感、イライラ、不眠症などに悩まされるようになります。
人によっては、さらに症状が悪化していき、摂食障害や鬱などの精神的な疾患を抱える場合もあります。
食物繊維のほどよい取り方
体に良いことをしようとして、かえって悪くしてしまう。このように、食物繊維は過剰に取ってしまうとデメリットになることが分かりました。
それでは、悪影響がないように適度な量を取るには何を目安にすればいいのでしょうか。
バランスの良さを心がける
何よりバランスよく食べることでしょう。ダイエットや便秘の解消などを目標に食物繊維を取りたくても、他にも白米や味噌汁やお肉など、ひとつずつは少ない分量だとしても、品目を豊かにした食事を心がけましょう。
医食同源をうたう中華料理などでは、大きなテーブルに4~8種類ほどのバラエティに富んだ種類の料理を乗せて、家族全員で回し合いながらつつくとされています。こうしたことはまさに偏りを避け、バランスの良い食事を心がけることで、食物のもっている栄養素や役割を体に取り込もうとした、昔の人たちの知恵と言えるでしょう。
便秘解消で健康を保つ
食物繊維をほどよく取ることで、大腸の働きを整えて、便秘を解消することは健康的な生活をする上で大切だと分かりました。
実は多くの人が数日から一週間程度の便秘を放置しているとも言われています。とくに年齢が高くなっていくと、大腸の働きが悪くなって便秘で救急病院に運び込まれる人も後を絶ちません。「摘便」という処置をしてもらってこびりついた便を無理矢理排出することになります。
このように便秘を放置する習慣をつけてしまうと、悪いガスが体内に溜まってしまい、毒素が大腸から全身へ巡ることになります。最近では、大腸の状態で皮膚上のアレルギーの発生が変わるとも言われています。便秘が続くことで免疫力が落ちたり、大腸がんへのリスクも増してしまうかもしれません。
食べたら便をする。便秘を撃退するためにも、食物繊維をほどよく取ることを心がけて、健康的な生活を目指しましょう。
まとめ
便秘を解消したり過食を抑制する食物繊維。身近に手に入る野菜や海藻類から取れるため、毎日の食事で手軽に取ることが出来ます。しかしいくら手軽に取ることが出来るといっても、偏って過剰になってしまえば薬も毒となるように、体調不良を引き起こすきっかけになってしまいます。ダイエットや便秘解消などの目的があったとしても、何よりバランスの取れた食事を心がけたいものです。
- 食物繊維には水溶性と不溶性がある
- 食物繊維を取りすぎると満腹感が促されカロリー不足や栄養不足になることもある
- 過剰に食物繊維を取りすぎれば、皮膚がカサカサになったりイライラしたり摂食障害に至るケースもある
便秘解消で大腸を健康を保ちましょう。
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