朝起きた時にコーヒーを飲む、食後にコーヒーを飲む、リラックスしたり集中したい時にコーヒーを飲むなど、現代の日本ではコーヒーを飲む機会がとても多くなっています。また、日本人はコーヒーを好む傾向があり、コーヒーの消費量も世界でトップクラスです。
しかし、コーヒーが好きでよく飲むけれど、下痢になってしまうことがある、という方も少なくありません。
ここでは、コーヒーで下痢が起こる原因についてご紹介します。
コーヒーでの下痢の原因
コーヒーで下痢が起きてしまう原因には、次のようなものがあります。
ブラックコーヒーでの下痢
コーヒーに含まれている代表的な成分が「カフェイン」です。
カフェインは、胃や腸を刺激する作用を持っていて、コーヒーを飲むことで腸が刺激され、腸のぜん動運動が活発になり、下痢の原因になります。ぜん動運動が活発になるので、少しのコーヒーは便通をよくするという良い効果も持っているということになります。
また、コーヒーの香りにはリラックス効果があり、脳の自律神経のひとつである副交感神経の働きを活発にします。副交感神経には胃腸の働きを促進する作用があるので、コーヒーの香りが腸の働きをよくして、便が出やすくなっていると考えられます。
コーヒーをブラックで飲むときに胃腸の状態が良くなかったり、腸内環境が悪かったりするときは、コーヒーによる刺激が強くなり、下痢につながっているとも考えられます。
砂糖での下痢
コーヒーに砂糖を入れるという人は、それが下痢の原因になっているのかもしれません。
飲食物の中の糖類が吸収されないまま血液中に残ると浸透圧を上昇させ、腸が浸透圧を一定にしようとするために腸粘膜から水分を引き出し、腸内の浸透圧を下げようとします。こうして腸の中に水分が多くなり、下痢になってしまうことを「浸透圧性下痢」と呼びます。
砂糖には浸透圧を上昇させる働きがあるので、「浸透圧性下痢」を引き起こしているのかもしれません。
また、砂糖は、体をミネラル不足・ビタミン不足の状態にしやすく、体に様々な悪影響を与えます。その結果、腸内環境が悪くなり、砂糖を入れたコーヒーを飲んだときに下痢につながるということもあります。
最近では、白砂糖の代わりに低カロリーの人工甘味料を入れる機会も多くなってきました。砂糖の2分の1のカロリー、などと表示されているものです。人工甘味料には、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなどがあり、これらは「糖アルコール」に分類される糖類です。これらが下痢の原因になっていることもあります。
人工甘味料は体に吸収されにくいために栄養になりにくく、そのために「低カロリー」という表示があります。しかし、吸収されにくいということは、そのぶん血液中に多く残り、白砂糖と同じように「浸透圧性下痢」を引き起こしやすくなるのです。
人工甘味料が下痢の原因になっているかどうかは、キシリトールが配合されたガムなどを食べたときにも下痢が起こるかどうかで見分けることができます。
ミルクでの下痢
コーヒーにミルクを入れて飲んでいるときは、それが下痢の原因になっているのかもしれません。
牛乳の中には、乳糖(ラクトース)という成分が含まれています。その乳糖を分解する「ラクターゼ」という酵素があるのですが、この酵素が体に少ない「乳糖不耐症」の人は、コーヒーにミルクを入れて飲んだときに下痢をしてしまいます。
分解されなかった乳糖は、大腸の中で腸内細菌によって発酵します。発酵した乳糖は脂肪酸と炭酸ガスと水になります。脂肪酸と炭酸ガスは、腸を刺激してぜん動運動を活発にし、分解されてできた水分によって腸内の水分量が多くなるため、下痢につながってしまいます。また、分解されなかった乳糖は、大腸の浸透圧を高くするので、前述の「浸透圧性下痢」を引き起こしやすくもなります。
遺伝的に乳糖を分解する酵素をまったく持っていない人は「先天性乳糖不耐症」で、病気をした後などに分解する酵素が作られにくくなった人は「後天性乳糖不耐症」です。また、乳糖を分解する酵素は年齢を重ねるごとに分泌量が少なくなっていきますので、昔は牛乳で下痢をしなかったのに、大人になってくると下痢をする、ということもあります。
喫茶店などによく置いてある小さな白い容器に入っている「コーヒーフレッシュ」は、植物油と水を乳化剤という添加物で混ぜ、さらに添加物を加えてとろみをつけたり白く色付けをしているもので、牛乳や生クリームから作られているものではありません。コーヒーフレッシュは乳糖不耐症とは関係がありませんが、中に含まれた添加物で下痢を引き起こしている可能性もあります。
缶コーヒーでの下痢
缶コーヒーは、ブラックでも加糖でもカフェオレでも、様々な添加物が入っています。添加物の中には体にとって悪影響を及ぼすものがありますので、缶コーヒーで下痢を起こすことがあります。
しかし、缶コーヒーでの下痢は、どの成分が下痢の原因になっているのかを突き止めるのが大変難しくなります。
体の冷えによる下痢
コーヒーには体を冷やす作用があり、体が冷えることで下痢をしやすくなります。また、コーヒーをアイスで飲む場合は、さらに体を冷やしてしまうことになり、下痢をしやすくなると言えるでしょう。
変質したコーヒーでの下痢
コーヒー豆に含まれている油脂分は焙煎することで酸化しやすくなり、3週間後にはひどく酸化した状態になっている、と言われます。スーパーの棚に並んでいるコーヒー豆やインスタントコーヒーなどのほとんどは、すでに酸化した状態なのだそうです。酸化した豆を使ったコーヒーを飲むのは、古くなった食品を食べるようなもので、お腹を壊す原因になります。
コーヒーは、常温だと豆のままで2週間後、粉の状態では2~3日後には酸化するといわれています。コーヒー豆は冷凍庫で保存するのが望ましく、豆のままなら約2か月、粉の状態なら2~3週間は酸化しないとされています。
コーヒーメーカーなどでたくさんのコーヒーを一度に作り、それを少しずつ飲む場合には、保存している間にコーヒーが変質してしまい、下痢の原因になっているとも考えられます。
また、ミルクを入れた場合、コーヒーを飲み終わるまでに時間を空けてしまうと、カップの中でミルクが変質してしまい、下痢の原因になることもあります。
賞味期限が近い缶コーヒーなどは、中の成分が変質してしまっていて、下痢の原因になると考えられます。
パッケージに書いてある賞味期限は、あくまで「飲める期限」で、新鮮な期限ではありません。できるだけ古いコーヒーを飲まないようにすることで、下痢の予防になると考えられます。
飲み過ぎでの下痢
どんな飲み方をしても、コーヒーを飲み過ぎているのなら、下痢の原因は飲み過ぎにあると考えられます。
人によって腸の状態は異なり、乳糖の分解酵素の量にも違いがあるため一概には言えませんが、コーヒーは1日に3杯までにとどめておくのが良いとされています。
コーヒーアレルギー
ごくまれに、コーヒーアレルギーの人がいます。
コーヒーアレルギーの人は、コーヒーを飲むと下痢になったり、吐き気がしたり、頭痛が起きたり、手足がしびれたり、動悸が激しくなるなどの症状が出るといいます。コーヒーの香りを嗅いだだけで症状が出る人もいます。
アレルギーの検査キットには、コーヒーアレルギーを検査できるものもありますが、コーヒーアレルギーそのものの認知度がまだ低く、周囲にはなかなか理解してもらえないということもあります。
コーヒーアレルギーの疑いがあるときには、検査をする前に次のようなことを試してみましょう。
砂糖やミルクを入れずに飲んで具合が悪くなるか
ブラックで飲んで具合が悪くなれば、砂糖やミルクではなくコーヒーそのものに原因があると考えられます。
紅茶やコーラなどを飲んだ時に具合が悪くなるか
コーヒー以外のカフェインを含んだ飲み物でも具合が悪くなるかを見ます。他の飲み物では具合が悪くならないのに、コーヒーでは悪くなるという場合は、カフェインではなくコーヒーそのものが原因と考えられます。
カフェインを含んだ飲み物には、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ココア、コーラ、栄養ドリンク、などがあります。
どんな飲み方をしても具合が悪くなるか
ホットで飲んでもアイスで飲んでも、コーヒーならどんな飲み方をしても具合が悪くなるのなら、コーヒーアレルギーの可能性があります。
コーヒーでの下痢の予防について
まずは自分の下痢の原因がどこにあるのかを突き止め、原因となっているものを避けることで下痢を引き起こさないようにすることができます。
どうしてもコーヒーを飲みたい、という人は、カフェインレスコーヒーやたんぽぽコーヒーなどで代用するのも一つの方法です。カフェインレスコーヒーはデカフェとも呼ばれています。また、コーヒーを薄めて飲むことも下痢の予防になるかもしれません。
空腹時は体が食物を吸収しやすくなっているため、空腹時にコーヒーを飲むとカフェインの影響が強く出てしまいます。空腹時を避けて飲むことも下痢の予防になるでしょう。
胃腸が弱い人は、腸内環境を整えることも下痢の予防につながります。腸内環境を整えるヨーグルトなどが広く売られています。
まとめ
コーヒーで下痢を起こしてしまうときは、コーヒーそのものの他に、砂糖やミルクが原因になっている場合があります。飲み方を変えてみて、自分の下痢が何から来ているのかを突き止めることが必要になってきます。砂糖やミルク、コーヒーそのものに原因がなくても、コーヒーの変質やコーヒーの飲み過ぎでも下痢が起こることがあります。自分の習慣を見直してみることが必要になるでしょう。まれに、コーヒーにアレルギーを持っているために下痢を起こしてしまう人もいます。
下痢の原因を突き止め、飲み方の工夫をすることで、下痢の心配をすることなくコーヒーを楽しめるようになるでしょう。
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