食道裂孔ヘルニアとは?症状・原因・治療法を知ろう!予防するにはどうする?

食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアは、横隔膜(おうかくまく)ヘルニア(diaphragmatic hernia)の1種です。では、食道裂孔ヘルニアの症状や検査、治療について説明をしていきます。

食道裂孔ヘルニアの原因

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原因のほとんどは、先天性と後天性の2種類に分かれます。つまり、幼児期・小児、高齢者と全年齢に見られます。

これは、食道裂孔ヘルニアの特徴です。それでは、詳しく説明をしていきます。

先天性

遅発性とも言われます。生まれつき、食道裂孔の締め付ける力が虚弱している場合や、食道裂孔が元々緩い場合、食道裂孔の大きさが異常に大きいなどといったことがあります。すると、胃の噴門部(胃の上部の胃の入り口)の固定がうまくいかず、胃底部が食道裂孔という孔(あな)を容易に通り抜けることができてしまい、食道裂孔ヘルニアを発症します。

横隔膜の機能は、呼吸をするために必要な強力な力が作用しますが、こういった事が生じると、乳幼児期や、軽度の衝撃が起きた時に、胃底部が脱出してしまいます。

後天性

後天性は加齢によって発症します。加齢することで、食道や横隔膜周辺の靱帯が劣化します。また、横隔膜の機能・筋肉の力の虚弱化や、食道裂孔も緩みが生じます。食道が短縮することもあります。加齢に伴うもの以外にも、怪我やその他の損傷、胃石の出現によって筋肉の組織が虚弱化することも原因に挙げられます。

ちなみに、胃石とは、部分的に消化されている、あるいは全く消化されていない物質が集合して固まったものを言います。この胃石によって、嘔気・嘔吐・腹部膨満感・胃粘膜の損傷などを生じます。食道裂孔ヘルニアを発症するだけではなく、逆流性食道炎などの合併症を引き起こしやすくします。

以上のようなことが原因となって発症します。その他にも、様々な原因が挙げられます。以下に、簡単に説明をしていきます。

・腹腔内圧の上昇

肥満体型の方は動作の際に腹圧が強くかかり、喫煙者・喘息・慢性気管支炎などでは咳をすることにより腹圧が高まり、これらが原因となって発症します。また、加齢により脊椎が潰れて背骨が曲がると身体が前かがみになり腹圧がかかりやすくなります。すると、腹腔内圧が上昇し、胃底部が逸脱して発症します。

その他に、重い物を持ち上げたり、排便時にいきむことも、腹腔内圧が上昇する原因となります。腹圧が高くなりやすいのは、これらのように胃の周囲の筋肉を過剰に活用して筋線維に圧力をかけるためです。

・食事

油分の多い食事、香辛料などを用いた刺激の強い辛い食事、柑橘系の果物などの酸っぱい食べ物や飲み物を過剰に摂取することで、症状を悪化させます。食道裂孔ヘルニアの胃散の逆流によって逆流性食道炎を併発するわけですが、こういった食事を摂ると症状の悪循環を繰り返します。

これら以外にも、アルコールやコーヒー等のカフェインが多く含まれている物も刺激が強く、胃酸の分泌を促進するため、注意が必要です。

その他、チョコレート、トマト(トマトジュースや野菜ジュースなど、トマトが混入している物全て)、玉ねぎ、ココア、脂っこいものなども、胸焼けになる可能性や、症状が悪化する可能性を高めます。

・食べ方にも原因がある

食べ物だけではなく、食べ方にも原因があります。早食いや、暴飲暴食は症状を悪化させます。

食べ物が口の中に残留している状態で、飲み物で流しこんでしまう食べ方にも注意が必要です。噛み切れていないものを流し込むので、消化されにくく、症状の悪化や便秘、消化不良にもなり得ます。

食道裂孔ヘルニアの症状

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食道裂孔ヘルニアには基本的に、自覚症状はみられません。しかし、病気の前兆もしくは発症してしばらく経過した後にみられる症状があります。

食道裂孔ヘルニアには様々な種類があり、発症率や症状が少し異なります。これらについて説明をしていきます。

発症率

横隔膜ヘルニアの好発部位は、3種類のタイプに分かれます。ここで述べる食道裂孔ヘルニア(食道が横隔膜を貫通する部位)、ボホダレク(胸郭腹膜裂孔で横隔膜の後方に位置する)、モルガーニ孔(胸骨の裏に位置する)があります。

中でも、食道裂孔ヘルニアの発症率は横隔膜ヘルニアの約70%を占めています。日本全国の人口では、約10%の罹患率です。なお、男性よりも女性に発症しやすい傾向にあります。特に、加齢に伴って女性の発症率が高くなっていきます。

年齢は、全年齢に発症しやすいことが特徴です。先天性の場合は10歳未満、後天性の場合は成人に最も多いとされており、50歳以上に多く見られます。また、60歳になるまでに発症する方は約60%という報告がされています(食道がん啓発協会:ECAA)。

近年は、高齢化社会ということで加齢による後天性の食道裂孔ヘルニアが増加傾向にあり、注目されています。

食道裂孔ヘルニア4種類のタイプ

食道裂孔は胃底部のはみ出し方により、食道と胃の噴門部(食道と胃のつなぎ目)が胸腔(きょうくう/胸の中)にはみ出るタイプ・胃の一部が出ているタイプ・これら2タイプが混合しているタイプ、他の臓器も一緒にはみだしているタイプの、4種類のタイプに分かれます。それぞれのタイプとそれぞれの症状について説明をしていきます。

・滑脱型食道裂孔ヘルニア(病期分類:Ⅰ型)

食道裂孔ヘルニアの4タイプの中では最も発症率が高く、大半を占めます。胃は食道に比べ膨らんでおり、大きいため通常は食道裂孔からは突き出ません。しかし、食道裂孔の孔の状態によっては引っ張られてしまい、胃底部がはみ出します。食道の長さは正常のままか、短くなります。

このタイプのヘルニアは、胃底部がそのまま滑り出して真っ直ぐはみ出します。これは、食道と胃が裂孔を通して上部にある胸腔に滑り、出入りした際に生じます。はみ出た胃の大きさは小さいものがほとんどです。

発症後、通常何の症状もみられず、自覚症状もほぼありません。治療が不必要な場合もあります。但し、食道と胃のつなぎ目である噴門が、噴門の真上に位置する横隔膜を超えて胸腔に入るため、噴門の働きが阻害されます。つまり、横隔膜は、胃の入り口である噴門を横隔膜の締め付けによって塞ぐ働きがありますが、その働きも阻害されるということです。これらにより、前方にかがむ、前傾姿勢をとる、しゃがみこむといった行動をとった際に、胸焼けや息苦しさを感じることがあります。

このタイプで特に怖いのは併発されやすい合併症です。食道へ胃酸が逆流することを防ぐことができず、自身の胃酸で自身の食道を焼いてしまう可能性があります。食道や胃、小腸といった消化器官のpHは酸性ですが、胃液は食べ物を溶かすため、最も強力な酸性となっています。これが、食道の粘膜を溶かすのです。こういった症状により、逆流性食道炎や噴門癌、食道癌といった合併症を引き起こす原因となります。

・傍食道型食道裂孔ヘルニア(病期分類:Ⅱ型)

食道裂孔ヘルニアの全体の内、約1割と、割合としては少なく極めて発症率は低いです。滑脱型よりも厄介なタイプです。

これは、滑脱を伴わない食道裂孔ヘルニアであり、胃の一部が食道の脇を通って突き出た状態になります。胃底部が、食道の脇(食道裂孔)を通って横隔膜から飛び出し、この横隔膜がその脱出した胃底部を挟み、締め付けます。こうなることで、胃粘膜からの出血や、胃への血流が遮断され、血が循環しなくなって虚血状態となる可能性があります。

このタイプは滑脱型食道裂孔ヘルニアと同様の症状が見られますが、上記の様な状態になるため、症状の状態によっては滑脱型食道裂孔ヘルニアよりも重篤な合併症を引き起こす可能性があります。この合併症により手術が適応されることは多いです。手術の治癒率は高く、予後は良好です。

・混合型食道裂孔ヘルニア(病期分類:Ⅲ型)

別名、巨大食道裂孔ヘルニアとも言われます。傍食道型食道裂孔ヘルニアよりも更に発症率は低いです。滑脱型食道裂孔ヘルニアと傍食道型食道裂孔ヘルニアの両種類が混合されて生じ、症状も混合しています。胃の大部分が横隔膜よりも上にはみ出しています。

・複合型食道裂孔ヘルニア(病期分類:Ⅳ型)

実は、もう1タイプあり、これは胃底部と共に他の臓器も一緒に横隔膜よりも上にはみ出している状態を言います。あまり無いタイプになります。状態としては、中でも最も最悪のタイプです。

合併症

食道裂孔ヘルニアが生じるに当たり、合併症を併発する恐れがあります。合併する疾患は、主に、無気肺などの呼吸器疾患、逆流性食道炎、癒着性イレウス、迷走神経損傷、胆石症、食道癌や胃癌などが挙げられます。特に逆流性食道炎は多いです。

転移もするため、かなりの注意が必要です。定期的に検査をして早期発見に取り組みましょう。

初期症状

逆流性食道炎の助長から、胸焼けや胸痛、ゲップ、胸部につっかえる様な違和感、胸部の圧迫感、上腹部膨満感、食後の不快感、嘔気、嘔吐などが生じます。但し、無症状の方も多く、重篤な合併症を生じるまで自覚症状がないことも多いです。

なお、これらの症状が生じたとしても、必ずしも食道裂孔ヘルニアが生じているとは限らず、裂孔ヘルニアは生じていないが、消化性潰瘍や心疾患といった他の病気を発症していいるという可能性があります。

進行中の症状

初期症状に加えて、呼吸困難や頻脈、期外収縮などの症状が見られます。これは、心臓や肺が圧迫されることによって生じます。発症後、長期間の日時が経過した際に生じる典型的な症状は、逆流性食道炎様の症状が見られます。

乳幼児では嘔吐、成人では胃酸の逆流によって食道にビランが生じ、消化性潰瘍と、それに伴って出血が生じることがあります。特に、身体を横にして寝ている状態で症状が強く現れます。

食道裂孔ヘルニアの検査

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画像検査によって、食道裂孔ヘルニアの有無を確認します。画像検査にて分かることは、胃の逸脱、呼吸器系疾患の合併症の有無です。

X線(レントゲン)検査、CT検査、MRI検査、内視鏡検査(胃カメラ)などの様々な検査が行われます。下記に簡単に説明をします。

X線(レントゲン)検査

X線検査は画像検査です。検査前に、造影剤であるバリウムを含む液体を飲む必要があります。こうすることで、消化管上部のX線画像が明瞭な輪郭で映し出すことができます。

X線検査では、胃の位置の把握、横隔膜から胃が突き出しているか、合併症の有無を確認します。

内視鏡検査(胃カメラ)

こちらは確定診断に用いる画像検査です。細い管の先端に小型カメラが付いている内視鏡を口、または鼻から通し、食道・胃・腸まで挿入していきます。

胃の噴門部の絞扼(こうやく/締め付け)の有無と閉塞の有無を確認し、横隔膜から胃が突き出ているかを診ていきます。その他に、食道炎や食道の狭窄、潰瘍、ポリープ、その他の炎症などといった合併症の有無を確認します。

食道内圧の測定

X線検査や内視鏡検査とは異なり、下部食道括約筋の機能異常が軽症の場合にも発覚するため、検査の中では最も有効的とされています。

これにより病気の種類を確認します。鼻から細い管を通して食道の内圧を測定し、下部食道括約筋の働きや、発症している病気の運動障害の有無といった食道の運動機能を診ます。

検査に必要な時間は約20~30分間です。

24時間pH測定食道内モニタリング

これでは、疾患の重症度が確認できます。小型のpHが付いている細い管を鼻の中に通し、24時間持続してpHを測定します。

この検査は、カテーテルを入れた後の活動は制限されないため、通常の日常生活を過ごし、24時間検査を継続します。

食道裂孔ヘルニアの治療

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「食道裂孔ヘルニア」は、ほとんどの場合、自覚症状もなく治療が必要ありません。胃酸の逆流や胸焼け、逆流性食道炎といった合併症がみられた際に治療が施行されます。

内科的治療がメインとなっており、外科的手術(逆流防止手術)はほとんど施行されません。以下に、どういった治療を行うのか、紹介していきます。

薬物療法

一般的に、薬物療法といった内科的治療を優先に行われます。胃酸を中和するための制酸剤が処方されます。市販にも売られていますが、医師に処方された物を服用することが最も安全です。食道を治癒する時間を与えるための薬や、胃酸の生成を低下・抑制させる薬が適応されます。

例えば、胃酸を抑制するプロトンポンプ阻害剤(PPI)は作用が強力であり、劇的な効果が得られて症状が改善されやすいとされています。

逆流防止手術

薬物療法では効果が得られない場合や、仕事上または薬に対してアレルギーがある場合、患者さん自身が希望する場合など、若年発症により長期間の薬物療法が必要な場合、薬物を減量していくと再発するリスクのある場合など、何らかの条件で内服治療を行うことが困難な場合や、重症例、難治性の場合に逆流防止手術といった外科手術が行われます。

この手術の目的は、食道裂孔ヘルニアの修復及び、胃底部からの逆流防止の機能の強化です。

胃カメラによる切除術

検査を行いながら胃カメラの液晶画面で病変を確認することができます。

異常が見られた場合は、医師とその場で話し合い、そのまま胃カメラで確認をしながら細胞・組織の採取や、ポリープなどの病変の切除術を施行することが可能です。

食事療法

食道裂孔ヘルニアは、胃酸が逆流しやすく、これにより逆流性食道炎を併発します。この症状を緩和させる必要があり、胃酸の分泌が過剰にならないような消化の良い物を食べるように意識する必要があります。

また、食事を摂る際は、急いで食べず、ゆっくり、よく噛みましょう。食べる量も暴飲暴食しないようにしましょう。1日3回摂る食事で、1回1回の食事量を大量にすることは避けましょう。たくさん食べたいという場合は、少量を数回に分けて食べるようにすると効果的です。そうすることで、症状が徐々に改善されることが多いとされています。

なお、就寝の2~3時間前は、食事や軽食を摂らないようにしましょう。消化しきれない状態で眠ってしまうと腹部に入った物が消化されないまま残ります。また、胃にも負担がかかり腹圧が高くなる可能性もあります。

予後

手術を施行して効果が得られたとしても、再発する可能性があります。

以下で述べるような「予防」を行って、再発の防止に努めましょう。

食道裂孔ヘルニアの予防

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治療後には再発する可能性があります。

発症予防だけでなく、再発もしないように治療後は油断せず、予防を心がけることが大切です。

服装に気をつける

腹圧がかかることで発症する可能性があるため、腹部を圧迫しないような服装をするようにします。ベルトでしっかり縛ることや、ゴムがきついもの、締め付け感のあるズボンを履くことは避けましょう。

姿勢に注意

背中を丸める、猫背、前傾姿勢、前にかがむといった動作は腹圧が高くなる姿勢です。腹圧が高くなる姿勢は胃酸を逆流させて症状を悪化させます。特に、普段から猫背の方は意識して気を付けるようにしましょう。

体重管理

肥満により腹腔内圧が上昇しないように、体重を管理していく必要があります。

余分な体重は減らしていきましょう。

寝る時の注意

睡眠時に限らず、身体を横にする時にも要注意です。

上半身が高い位置にくるように寝ることで、胃の圧が食道や口腔の方にかからず、下方向にかかるため予防には効果的とされます。寝る場所の頭側の高さを少なくとも約15cm上げましょう。昇降式ベッドであれば、電気で頭側を上げます。

食後の注意

食後に直ぐに横に寝る方がいますが、これはやってはいけない事です。

食後直ぐに横に寝てしまうと、腹圧が上昇し、胃酸が逆流します。これによって、症状が悪化する可能性が高くなります。

禁煙

喫煙により、胃の活動が制御される可能性があります。

胃や食道の状態を健康に維持するためにも喫煙は避けましょう。

その他、生活上の注意点

腹部の筋肉に力が入りすぎるようなことをすると、腹圧が高くなるため、こういった動作は避けましょう。

例えば、重い物を持ち上げたり、排泄の際にいきみすぎたり、腹部の力を非常に必要とする運動など(楽器の演奏、ウインタースポーツ、バレーボール等)は避けましょう。

まとめ

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食道裂孔ヘルニアは自覚症状が感じられにくく、放置してしまいがちです。合併症が生じないように定期的に検査を行うようにしましょう。

もし、わずかでも胸痛や胸焼け、飲み込み時の違和感、異常なゲップが見られるようになった場合は、早急に消化器科・消化器内科に受診しましょう。

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