腱鞘炎の治療方法を知ろう!保存療法と手術療法に着いて!症状や原因は?

腱鞘炎(けんしょうえん)という病気を聞いたことがあるでしょうか?以前は、手首や指を酷使する一部の職業における職業病として位置づけられることが多かった病気ですが、現在は普通の人にも良く発症する病気になってきています。

というのも、パソコンやスマートフォンなどテクノロジーが発展したことで、日常生活で手を酷使する場面が圧倒的に増えてきたからです。

パソコンやスマートフォンを長い時間使っていて、手首や指が思うように動かせなくなったり、手首や指を動かす際にだるく感じるような違和感を感じるのでしたら、それは腱鞘炎の前兆かもしれません。

そこで今回は、腱鞘炎の症状・原因・対処法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。

腱鞘炎とは?

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そもそも腱鞘炎とは、どのような病気なのでしょうか?

腱鞘炎の定義を確認するとともに、腱鞘炎という病気を理解するために必要な手の構造に関する基礎知識をおさらいしたいと思います。

腱鞘炎とは?

腱鞘炎は、腱の周りを覆っている腱鞘に生じる炎症のことを言います。腱鞘炎は、腱が存在する部位であれば、肘や足などでも発症する可能性がありますが、発症頻度は手首や手指などが圧倒的に多いので、一般的には手首や手指の病気として位置づけられます。

腱鞘炎は、主に手の酷使によって発症することが多いので、以前はコンピュータのキーボード操作を行うプログラマー、ビアニストや打楽器奏者などの演奏家、漫画家や作家などの文筆業といった手を酷使する職業の職業病として認識されていましたが、現在はパソコンやスマホの普及で誰にでも発症する病気へと変貌しています。

手首や手指の病気としての腱鞘炎は、主に「ばね指」と「ドケルバン病」に分類されます。

ばね指とは?

ばね指は、手指におきる腱鞘炎の一つで、弾撥指(だんばつし)とも呼ばれます。ばね指の病名は、手の指を曲げ伸ばしする際に抵抗感を感じたり、手指を伸ばす際にばねが弾けるように勢いよく伸びたりといった症状に由来します。

詳しくは、ばね指の治し方とは?原因や症状、手術の方法を知ろう!を参考にしてください。

ドケルバン病とは?

ドケルバン病(ド・ケルバン病)は、親指付け根の手首におきる腱鞘炎の一つで、狭窄性腱鞘炎とも呼ばれます。ドケルバン病の病名は、最初の症例報告者であるスイス人外科医フリッツ・ド・ケルバンに由来します。

詳しくは、ドケルバン病とは?症状や原因を知ろう!治療にはサポーターやテーピングなどの保存療法が有効?を読んでおきましょう。

手の腱と腱鞘

腱は、骨と骨格筋をつなぐ弾力性に富んだ強靭な線維質でできた結合組織のことで、手首や手指の関節を曲げ伸ばしするためには必要不可欠の存在です。このような腱は、腱鞘という組織に周囲を包まれています。

腱鞘は、腱の周囲を包んでいる組織のことで、いわば日本刀に対する鞘(さや)あるいは自転車などのブレーキケーブルを保護するパイプやトンネルのような存在で、腱を保護するとともにガイドレールのような役割を担います。

そして、腱鞘には滑膜性腱鞘と靭帯性腱鞘が存在します。腱そのものを直接包んでいるのが滑膜性腱鞘で、滑液包と呼ばれる袋状の組織で潤滑油のような役割を果たす滑液を含むことで腱を保護します。この滑膜性腱鞘を外側から包んでいるのが靭帯性腱鞘で、こちらは比較的硬めの組織で腱のガイドレールのような役割をしています。

ですから、腱は腱鞘の間を通り、通常ならば何の抵抗もなく動くので、手首や手指の関節はスムーズに動きます。しかし、何らかの理由で腱鞘に炎症が生じると、腱と腱鞘の間に抵抗や摩擦が発生してしまい、それが違和感や痛みとして現れるのが腱鞘炎なのです。

腱鞘炎の症状

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それでは、腱鞘炎になると、どのような症状が現れるのでしょうか?

腱鞘炎の症状については、いくつかのレベルが存在するので、ご紹介したいと思います。

腱鞘炎の前兆や初期症状

ばね指やドケルバン病のいずれの場合でも、腱鞘炎の発症には前兆や初期症状と言われる手の違和感が感じられます。その前兆や初期症状レベルの手の違和感は、具体的には次のような症状です。

  • 自分の意図通りに、手や指をうまく動かせない
  • 痛みはないものの、手首や手指にわずかな腫れが見られて患部がふっくらする
  • 手首や手指を動かすと、だるさや重たさのような違和感・不快感を感じる
  • 瞬間的に痛みや灼熱感が走るが、休んでしばらくすると消えている
  • 痛みが走っても、痛圧点が漠然としていて明確な痛みのポイントがわからない

ばね指の症状

ばね指は、前述のような前兆や初期症状を経て、手の指を曲げ伸ばしする際に抵抗感を感じたり、その抵抗に反して手指を伸ばす際にばねが弾けるように勢いよく伸びたりという症状が現れます。

また、手指を動かす際に連続的な痛みや灼熱感が現れ、手指を休ませても痛みや患部の熱っぽさが引かなくなるとともに、患部は明確に腫れを帯びてきます。痛みを感じる痛圧点も明確になります。

仕事や日常生活にも影響が出てくるので、通常の人ならば腱鞘炎あるいは何らかの病気を疑いますが、それでも治療せずに放置していると指の関節拘縮を引き起す危険性があります。

ちなみに、ばね指は親指・中指・薬指に多く発症する傾向がありますが、人差指・小指にも発症する可能性はあり、どの指に発症してもおかしくはありません。

関節拘縮(かんせつこうしゅく)

ばね指になると、曲げ伸ばしの抵抗感や痛みから指関節を動かしにくくなります。このような状態を放置していると、指関節が曲がったまま次第に固定化していき、指関節の曲げ伸ばしが完全にできなくなる状態のことを関節拘縮と言います。

一度関節拘縮になると治療は難しく、関節拘縮に至る前に腱鞘炎・ばね指の治療をする必要があります。

詳しくは、関節拘縮とは?症状や原因、発生しやすい部位を知っておこう!を読んでおきましょう。

ドケルバン病の症状

ドケルバン病の症状は、前述のような前兆や初期症状を経て、手首の親指側のだるさや重たさのような違和感が痛みへと変わってきます。

また、親指や手首を動かす際に連続的な痛みや灼熱感が現れ、親指や手首を安静にしても痛みや患部の熱っぽさが引かなくなるとともに、患部は明確に腫れを帯びてきます。痛みを感じる痛圧点も明確になります。

ちなみに、親指の動きに関与する腱は主に3本ありますが、うち2本が手首の親指付け根部分を走行しています。この2本の腱が長母指外転筋腱と短母指伸筋腱で、これらの腱の腱鞘が炎症を起こすと、ドケルバン病が発症します。

腱鞘炎の末期症状

ばね指やドケルバン病のいずれの場合でも、痛みや日常生活での不便さにもかかわらず腱鞘炎を治療せず放置していると、腱鞘炎は末期症状に至ります。

腱鞘炎の末期症状では、神経痛が生じたり、血行も悪くなり患部の栄養状態も悪化し、さらなる悪循環に陥ります。最終的には、痛みを感じる痛圧点の神経が麻痺状態になり、痛みを感じなくなることもあるとされています。

腱鞘炎の原因と発症メカニズム

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このように腱鞘炎は日常生活に影響を及ぼす症状が現れます。腱鞘炎は主に手の酷使が原因とされますが、具体的にはどのようなメカニズムで発症するのでしょうか?

そこで、腱鞘炎の原因と発症メカニズムを、ご紹介したいと思います。

腱鞘炎の発症メカニズム

前述したように、腱は滑膜性腱鞘と靭帯性腱鞘に覆われていて、その中を腱が通ることによって手首や手指が動きます。逆に言うと、手首や手指を頻繁に動かすと、それだけ腱は腱鞘の中を行き来することになります。

そして、腱が滑膜性腱鞘や靭帯性腱鞘の中を何度も行き来すると、それだけ腱と腱鞘の摩擦が繰り返され、その摩擦によって腱鞘に炎症が生じます。

腱鞘に炎症が生じると、痛みを発するとともに患部の腫れが現れます。また、その炎症部が厚みを増すことで、さらに腱と腱鞘の間に摩擦が生じやすくなるため抵抗感も生じることになります。

腱鞘炎の原因

腱鞘炎の原因は主に手の酷使ですが、その他にも腱鞘炎のリスクを高める要因が存在します。そこで、腱鞘炎の原因やリスク要因を、ご紹介したいと思います。

手の酷使

腱鞘炎の最大の原因は、手首や手指の酷使、つまり手の使い過ぎです。

手首や手指を頻繁に動かせば動かすほど、腱と腱鞘の間に摩擦が生じやすくなります。ですから、プログラマー、演奏家、文筆家など手を酷使する職業の人に発症しやすく、またラケットを使うようなスポーツでも発症しやすいのです。

そして、パソコンやスマホの普及で文字入力を大量に行うようになったため、現代人にも発症しやすくなったと言えます。

自律神経の乱れ

自律神経は、交感神経と副交感神経が交互に適切に働くことで、生命維持に必要な体の機能をコントロールしています。例えば、循環器である心臓や血管は、自律神経の支配下で24時間いつでも制御されています。

しかしながら、ストレスなどで自律神経が乱れると、体を休めるべき睡眠時に交感神経から副交感神経に上手く切り替わらないなど、弊害が生じます。交感神経が優位になると、筋肉は緊張し血管も収縮しますから、筋肉の緊張により腱と腱鞘の摩擦が生じやすく、血管の収縮により腱鞘の栄養状態が悪くなり腱鞘も収縮しやすくなります。

ですから、自律神経の乱れは、腱鞘炎のリスクを高めることになるのです。

女性のホルモンバランスの変化

女性の場合は、ホルモンバランスの変化によって腱鞘炎のリスクが高まります。というのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンのバランスが変化することで、様々な体の変化が生じるからです。

エストロゲンは、乳房の発達など女性らしさをもたらすホルモンですが、血管拡張作用や血管や腱など組織の柔軟性・伸縮性を維持する作用もあります。このエストロゲンは、妊娠初期や更年期を迎えると分泌が抑制されるため、血管の収縮により腱鞘が収縮したり、腱や腱鞘の柔軟性・伸縮性も低下します。そのため、この時期に手首や手指に負荷をかけると、腱鞘炎を発症しやすいのです。

一方で、プロゲステロンは、妊娠を維持するために必要不可欠なホルモンですが、出産後には子宮の収縮・回復を促進する作用があり、この作用が筋肉や腱鞘にも作用してしまい、腱鞘を狭くしてしまいます。また、プロゲステロンには、精神を不安定にする作用もあるため、ちょっとしたことでもストレスを感じてしまい、自律神経の乱れにも繋がります。そのため、この時期に手首や手指に負担をかけると、腱鞘炎を発症しやすいのです。

化膿性腱鞘炎

化膿性腱鞘炎とは、手首や手指の怪我などから細菌に感染して炎症が生じ、その炎症が腱や腱鞘に沿うような形で広がる腱鞘炎のことです。

細菌感染による発熱などのほかに、腱鞘炎と似たような症状が現れます。この化膿性腱鞘炎を招きやすい病気が、関節リウマチ・結核・糖尿病などの疾患です。

腱鞘炎の治療方法

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それでは、腱鞘炎と思われる症状が現れた場合、どのような治療がなされるのでしょうか?

腱鞘炎の治療法・対処法について、ご紹介したいと思います。

腱鞘炎の応急処置

腱鞘炎と思われる症状が現れた場合、まずは次のような応急処置を自分自身で施すと良いでしょう。

患部を安静にする

腱鞘炎の最大の原因は手首や手指の酷使ですから、違和感や痛みを感じたら患部を安静にすることが大切です。手に負担となる作業や家事なども含めて、なるべく手に負荷がかからないように安静を保つように心掛けましょう。

患部を固定する

患部の安静とも重なりますが、患部が動くと腱と腱鞘が摩擦を生みますので、患部の運動を制限する必要があります。ですから、サポーターやテーピングなどで、患部が動き過ぎないように、ある程度の固定をすると症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。

市販の湿布薬を貼る

病院に行くまで、市販の湿布薬を貼っておくことも、応急処置の一つになります。湿布薬には血行を促す効果がありますので、温湿布でも冷湿布のどちらでも大丈夫ですが、患部が腫れていたり熱を帯びている場合は冷湿布のほうが良いでしょう。

ただし、湿布薬は腱鞘炎を根本的に治療できるものではなく、血行を良くして痛みを緩和するにすぎませんから、その点を留意しておかなければなりません。

整形外科の受診

腱鞘炎は痛みを伴いますから、治療せずに放置する人は少ないと思いますが、症状が進むと関節拘縮や神経痛など重い症状を引き起こします。

ですから、腱鞘炎と思われる症状が現れた場合、速やかに整形外科の病院を受診して、医師の診断を仰ぐことが重要です。

腱鞘炎の治療法

腱鞘炎の治療法は、大きく保存療法と手術療法に分類されます。手術療法は文字通り手術によって治療をすることで、保存療法は外科手術を行わない治療を行う治療法のことです。

保存療法

腱鞘炎の治療では、症状が重度でない限り、基本的に保存療法が選択されます。保存療法には、いくつか種類があります。

患部の安静・固定

まず、応急処置と同様に、患部の安静・固定も保存療法の一つになります。患部の固定は、サポーターやテーピングの他に、医療用の装具で固定する場合もあります。

また、過度に患部を安静・固定していると、逆に血流の悪化を招きかねませんから、痛みが出ない範囲で適度なストレッチやマッサージを行い、血行の改善を図ります。

温熱療法・電気療法

温熱療法・電気療法とは、超音波やレーザー光線を発生させる専用の器具を使い、患部に対して電気的に温熱刺激を与えることで、血行促進を図り、筋肉や腱の緊張をほぐす治療法です。温熱療法では、患部を温めることで痛みをケアする効果も期待されます。

ただし、患部が腫れていたり、灼熱感を持っている場合には、炎症を悪化させてしまう危険性があるので注意を要します。

薬物療法

薬物療法では、痛み止めや抗炎症薬の内服薬・外用薬によって、炎症の鎮静化を図ります。

ステロイド注射

ステロイド注射とは、炎症鎮静作用のある副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)を患部に注射することによって、炎症の鎮静化を図るものです。ほとんどの場合に、局所麻酔薬を混合して注射しますので、比較的症状が重い場合に選択される治療法でもあります。

ただし、何度もステロイド注射を実施すると、反射性交感神経性萎縮症という血管収縮・筋肉拘縮・激痛を症状とする疾患を引き起こす危険性が高まるとされています。

手術療法

保存療法で症状の改善が見られない場合や腱鞘炎を何度も再発する場合は、手術による治療を検討しなければなりません。

手術方法は、切開手術(腱鞘切開術・皮下腱鞘切開手術)と内視鏡手術があります。腱鞘切開術は、患部を切開して医師が目で直視しながら施術するため、神経や血管を傷つけるリスクを低減できますが、傷口が大きくなるデメリットがあります。

皮下腱鞘切開手術は、専用のメスを用いて傷口を小さくすることができますが、医師の直視下でないため神経や血管を傷つけるリスクがやや大きくなります。

内視鏡手術は、傷口を極限まで小さくすることができますが、やはり神経や血管を傷つけるリスクも残ります。

いずれの手術方法でも、腱の近くを走行する感覚神経や血管が損傷するリスクはゼロにはならず、その損傷が起こると術後に痛みやしびれが生じる可能性を否定できません。

腱鞘炎の予防法

腱鞘炎の予防には、ストレッチをして疲労がたまらないようにすることが効果的です。ストレッチは、手首や手指だけでなく腕や肩も含めて実施すると、より効果的です。

まとめ

いかがでしたか?腱鞘炎の症状・原因・対処法などについて、ご理解いただけたでしょうか?

腱鞘炎は仕事や日常生活の忙しさから、ともすると多少の違和感は無視して仕事や家事を行うなど軽視しがちです。しかしながら、腱鞘炎の前兆や初期症状を軽視してしまうと、突然痛みに襲われて、日常生活を送るのにも不便が生じます。ですから、腱鞘炎は早期に気付いて、治療を行うことが大切なのです。

パソコンやスマホの普及で、現代人の手は自然と酷使されていますから、腱鞘炎に対する知識を深めて、腱鞘炎の予防や腱鞘炎の疑いに対して素早く対処できるようにしましょう。

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