骨肉腫の初期症状とは?治療方法も合わせて紹介!

骨肉腫(こつにくしゅ)と聞くと、骨の癌で不治の病だと思っている人も多いのではないでしょうか。一昔前までは、ガンは不治の病でした。1990年以前は転移を防ぐため、発見された時点で手足の切断をするのが当たり前でしたし、治らない病気として認識してらっしゃる方も多いと覆います。

けれども、医学の進歩とともに、ガンが不治の病ではなくなったように、骨肉腫についても、早期発見や早期治療により治癒することができる病気になりました。ここでは、早期発見のための初期症状やサインを重点的に見てゆきます。

骨肉腫とは

スケルトン

簡単にいうと、骨に肉腫(腫瘍)が発生したものを言いますが、腫瘍には悪性のもの(癌)と良性のものがあります。ここでは悪性腫瘍の場合をとりあげてゆきます。

悪性骨肉腫は別名骨の癌とも言われ、悪性腫瘍によって骨が作られることが原因と言われています。骨に発症する悪性腫瘍のなかで一番多いのがこの骨肉腫で、進行のスピードが早く、転移もしやすいのが特徴です。また、比較的若い人に発症しやすく、若いうちに命を落とす危険のある病気です。

悪性腫瘍、俗に言う癌は、遺伝子が何らかの作用で変異し、通常ではない増殖の仕方をして、いろいろな身体の組織を蝕むように広がってゆくものです。この悪性腫瘍のうちの、肉腫というのは医学的な分け方で、特に筋肉や神経、骨などに発生するものを指します。このうち、骨の肉腫は、肉腫全体の25%を占めます。

骨肉腫の種類にもよりますが、進行が早く転移しやすいものが多いこと、また自身の健康にあまり危機感をもたない若い世代に多く発症するため、なるべく早い時期に発見することが大切になってきます。

骨肉腫の種類

骨の組織にできる癌には、発症の原因で大きく2つにわけられます。転移性骨腫瘍と、原発性骨悪性腫瘍です。

転移性骨腫瘍(てんいせい こつしゅよう)

別名、続発性悪性腫瘍ともいい、他の部位、臓器に発生した癌が、骨に転移してできるものをいいます。

こちらは原発性悪性骨肉腫に比べると発生頻度が高く、肺・腎臓・乳・前立腺・甲状腺の癌が特に骨に転移しやすく、中でも肺がんが一番転移しやすいといわれています。そのため、この病気は骨肉腫と他の部位の癌と同時にかかっている状態となります。

原発性骨悪性腫瘍

肉腫のほとんどがこれで、骨そのものから癌が発生したものを指し、10代から20代の若者に多いのが特徴です。

ただ、骨そのものから悪性腫瘍が発生することはとてもめずらしく、日本では、骨肉腫と診断される人は年間で200人程度なのですが、一方で進行がとても早く、きわめて悪性の癌でもあるのです。膝のまわりや肩のまわりに出来やすいといわれています。

骨肉腫のさらなる分類

発症のしかたで、さらに細かくわけられています。

骨肉腫

骨をつくる細胞が変異し悪性腫瘍となってしまうものです。いいかえれば、癌細胞が骨をつくってしまう状態です。原発性悪性腫瘍の中でもっとも多いタイプです。

若い人、特に男性に多く発症します。膝の関節やひじ、上腕骨のあたりに発症しやすく、治療は手術や抗がん剤治療など、病状によって使い分けられます。

軟骨肉腫

この病気は、若い人よりも40歳以上の人に発症率が高いものです。

骨肉腫の次に多い病気ですが、進行がゆるやかで、転移も少ないのが特徴です。大腿骨や骨盤、上腕骨に発症しやすく、主な治療は手術が中心で、抗がん剤や放射線治療の効果はあまりみられないことが分かっています。

ユーイング肉腫

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍と呼ばれています。この肉腫は骨以外でも、体中の軟部組織のどこにでも出来ることが知られている、痛みの強い症状をもつ骨肉腫です。20歳以下の若年層に多いのですが、高齢者でもかかります。

主に手足の付け根やろっ骨、大腿骨、骨盤、脊椎などに発生するのですが、進行が早く、かなり悪性といえるでしょう。しかし、最近ではとても特徴のある遺伝子をもつことから、診断しやすくなってきています。

治療には、抗がん剤と手術を組み合わせたものを中心とします。放射線に対する感受性も高めの腫瘍なので、発症部位によって手術ができない場合には、放射線治療をすることもあります。子供に発症することも多い肉腫です。

骨巨細胞種

正確には悪性骨肉腫ではないのですが、再発率の高さや、肺への転移を起こしやすいことなどから、WHO分類でも中間悪性腫瘍と位置づけられています。20代前後の人に発生しやすく、膝の周りに一番多く出来やすい腫瘍です。

治療は、これまでは手術が中心でしたが、手術が難しい場合に効果的なデノスマブという新薬が2014年から日本でも使えるようになり、手術と薬物療法とが使い分けられます。

骨肉腫ではない骨にかかわる癌

多発性骨髄種

骨がぼろぼろになってしまう病気です。そのため、骨の癌と思っている人もいるかもしれませんが、骨髄が悪性腫瘍に侵略される病気なので、血液の癌です。

どうして骨肉腫ができるのか

悪性腫瘍(癌)は、すべて通常の細胞が、何らかの原因により持っている遺伝子に異常をきたし、通常の細胞を侵して増殖してゆく病気です。

この異変してしまった細胞を腫瘍と呼びます。異変しても、増殖せず身体に害を与えないものはほとんど良性腫瘍ですが、異変して増殖し、まともな細胞を侵略してしまうものが悪性腫瘍です。

悪性腫瘍に侵略されることで、本来の細胞がその働きをすることができなくなってしまうのです。また、転移するという特徴がありますから、まさに「身体を蝕む」ものなのです。

骨だけではない

骨は、筋肉や脂肪と違って、別のものでできているイメージがありますが、実は骨も細胞から出来ています。

そして、新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨の細胞は捨てられ、あたらしく骨がつくられているのです。そうすることで、骨はわたしたちの身体を支え、複雑な動きにも対応する柔軟さと丈夫さを保っているわけです。しかし、骨肉腫の場合は、骨を作る細胞に異変がおき、骨そのものが癌になってしまうのです。

まれに、骨以外にもできることがあります。その場合は骨外性骨肉腫と呼びわけていますが、どちらも骨肉腫です。

骨肉腫の主な症状

ひざをかかえる

骨肉腫の種類や発生した部位によって症状は様々なのですが、特徴的なものを知っておきましょう。

痛みや動作でわかる場合

骨肉腫にかかると、ほとんどの場合痛みがあらわれます。しかし、骨折したような強い痛みではなく、なんとなく痛い(気がする)、または運動しているときや、運動の後などになんとなく痛い、と感じる程度です。ですから、筋肉痛と間違えてしまう人もいるようです。

進行してくると、はっきりとズキズキと痛むようになり、罹患した部位が腫れてきたり、熱を持ったりすることもあります。

子供、とくに小児の場合は、痛いとはっきり症状を訴えないことが多いものです。こういった場合、運動そのものを激しく嫌がる、手足を持たれるのを嫌がるなど、また特定の手足を動かす運動をさせられることを嫌がるなど、何らかの通常とは違う状態になるものです。また、患部をかばいながら動くこともあります。こうした場合は注意が必要です。

レントゲンでわかる場合

レントゲン写真で見ると、骨が破壊されているのが写ります。ただ、ごく初期では異常が見つからない場合もあります。そのため、診断をはっきりさせるためには、MRIや骨シンチグラフィーなどの画像検査などで疑いが見られた時には、病変部分の細胞を取り出して検査する細胞診を行うことが適切です。

転移性骨腫瘍の場合、他からの転移が原因の場合が多いため、癌にかかったことのある人でレントゲンなどの所見で疑いがあるときには、腫瘍マーカー測定(血液検査)も有効です。

外見でわかる場合

初期は痛みも少なく、レントゲンにも写らない場合もあるため、放置されてしまうことがあります。すると、骨にできた腫瘍は成長してきて、患部が晴れてくることで発見されることがあります。

また、骨がもろくなり骨折してしまうこともあるのですが、骨折してはじめて骨肉腫がわかったという例も少なくありません。

骨肉腫の種類によって進行速度はさまざまですが、中には進行がとても速い悪性のもので、2~4週間で腫瘍が倍の大きさにまで成長するものもあります。こういった骨肉腫は他の部位へ転移する場合も多く、肺、ほかの骨、肝臓、リンパ節などに転移するケースが多くみられます。

初期症状のサイン

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初期症状はわかりにくい

初期の段階では、痛みくらいしか、骨肉腫の症状はないものです。ですから、身体が痛むのか、骨が痛む(骨肉腫)なのかその判断は専門機関で検査してもらうしかありません。

病院に行って痛みを訴えても、初期症状だと発見されない場合も多いのです。けれども、初期症状を自覚することは、大きなリスク回避の大切なきっかけとなるのです。

痛みのサインをみのがさない(ごく初期の症状)

たとえば痛みは、身体が「どこか悪いよ」と教えてくれるサインなのです。骨肉腫の場合には、これはとても小さなサインなのですが、このサインを見逃さないようにしたいものです。

私自身はとても痛みを感じにくいタイプで、無痛症ではないのですが、いろいろな病気のサインを見逃しそうになりました。無痛症の人は、年に一度の健康診断はとても大切なことだと意識しましょう。また、痛みを感じる場合でも、骨肉腫の初期はそれがわかりにくいものであることが多いため、サインを見逃してしまいかねません。

この小さなサインを見逃さないためにも、以下の場合には一度、検査を受けてみるといいかもしれません。

サイン1 大人の場合

  • かすかに骨が痛む
  • 歩いていて骨のあたりが痛む
  • 運動中や、運動のあと、骨が痛む
  • 筋肉痛だと思ったがいつまでもぼんやりと痛みが続く
  • 膝に違和感がある
  • 膝をかばうため、太ももやアキレス腱など足の筋肉やすじが痛む
  • 腕をあげたときに肩に近い部分(上腕~肩まわり)がピキっと痛んだ
  • ぶつけた記憶はないのに痛みがある

これらのごくごく初期症状では、レントゲンで撮影しても肉腫は発見できない場合がほとんどです。大事なのは、このサインをみつけたら、日付と状態を記録しておき、自分で様子を見ることだと思います。そして、自己診断で「筋肉痛だったのだろう」「知らないうちにぶつけていたのだろう」と片付けてしまわないことが一番重要です。特に若い人でスポーツをする人は気づきにくいかも知れませんし、思春期だと家族に話したりしないものです。親御さんはこういう病気もあるのだということを、教えてあげるのも必要かもしれません。

自分自身で記録しておけば、経過がわかります。1週間で痛みが消えたとか、2週間たって別のところが痛んできた、などです。痛みがつづくようなら、検査を受けることをお勧めします。

サイン2 小児の場合

小児の場合、自分から「痛い」と言わない場合が多いものです。痛みというものがどういうものかはっきりわかっておらず、なんとなく違和感があったとしても、、自身が気づけないケースが多いのです。このような場合は、周りの大人が注意して見てあげることが必要となってきます。

  • 理由がないのに運動を嫌がる
  • 手足を持たれるのを嫌がる
  • 病理部分を意識せずかばうため、動作が少し変だ
  • 手を上にあげる動作、膝を曲げる動作を特に嫌がる

などです。

少し進行してからの症状(初期症状)

少し進行すると、症状もはっきり表れてくるものが多い病気です。中には軟骨腫瘍のように痛みを感じないものもありますが、まだこの段階では、それでも、他の病気と勘違いしてしまったりして、治療開始が遅れ、転移してしまい治癒できなくなる、最悪の場合は死を迎えるということになりかねません。ここでも、大事なサインがあります。このサインがでたら、自身で経過を把握、記録しておきましょう。

  • 骨がもろくなってゆくため、運動をしたときに骨折したのかと思うような痛みを感じることがある

ごく初期のぼんやりした痛みとは違って、強い痛みを感じるケースがみられてきます。しかし、これらは、筋肉痛、ねんざ、単なる骨折と間違いやすく、整形外科に行く人が多いと思われます。しかし、まだこの段階ではレントゲンにうつらない場合も多く、発見されずに病気が進行してしまうこともあるのです。手遅れにならないためには、こういった症状の経過を自身で見ること、そして専門医に相談することです。

病気が進行すると

骨肉腫が進行すると、はっきりとした痛みなどわかりやすい症状も出るようになり、また、レントゲンやMRIなどで異常がみられるようになります。自覚症状としては、

  • 骨折しやすくなった
  • 関節を曲げにくくなった
  • 歩くだけで痛みがおきる
  • 患部の骨のまわりが腫れる
  • 腫れた部分が熱をもつ

などです。

専門医に診断をあおぎ、どの骨肉腫なのか明確にし、それぞれに合った治療法を相談することになります。

骨肉腫の治療

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以前は骨肉腫は不治の病といわれ、発見されてからは1年~2年しか生きられないものと思われていました。しかし、現在では抗がん剤なども発明され、遺伝子学も進むなど、さまざまな医学の進歩によって、2/3は治癒できるとされています。

また、人工骨を埋め込んだり、骨の移植手術などの手法も確立されつつあり、手足を切断せずとも、罹患した部分だけを切除し、手足を残す方法がとられています。

治療法は、種類のところでも少し述べましたが、手術、服薬、放射線治療などが主となります。骨肉腫の種類によって、異なってきます。また、転移しやすい癌であるため、他に転移している場合は特に、長期にわたりいくつかの治療法を併用することとなります。そのため、早期発見が治療の重要なカギとなります。

まとめ

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骨肉腫は、かかると死亡すると言われてきましたが、現在では生存率はかなり高くなり、2/3は治癒できる病気となりました。しかし、他の癌と同じように、転移するとそれだけ治療が難しくなります。それだけに、他の癌にも言えますが、早期発見と早期治療開始がとても大事なことなのです。

特に重要視していただきたいのは、早期発見は検査だけでするものではない、ということです。自分で気づくことが早期発見の第一歩なのです。検査は、発見の手助けと病気の確定のためにあります。毎日の生活の中にある小さなサインをどうぞ、見逃さないでくださいね。

  
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