皮膚がんの症状とは?種類や症状について知っておこう

「不治の病(ふじのやまい)」といわれている「がん」ですが、治療方法の進化により、種類や状態によっては「完全に治るがん」や「早期発見で治るがん」も増えてきました。

皮膚がんも、そのひとつといわれています。皮膚がんは、発症場所などにより種類が異なります。そこで、主な3種類の皮膚がんの症状をみてみましょう。

皮膚の基本

皮膚

さて、胃と大腸は、いずれも大きなくくりでは「消化器」です。しかし、「胃がん」と「大腸がん」が、ひとまとめに説明されることはあまりありません。それは、発生のメカニズムが異なるからです。

しかし、皮膚がんにはさまざまな種類があるにもかかわらず、ひとまとめに「皮膚がん」と呼ばれることが多いです。それは皮膚がんは、複数の種類があっても発生するメカニズムが似ているからです。

それでまずは皮膚がんを種類別に見る前に、「皮膚の基本」を知っておきましょう。

そもそも皮膚とは

「皮膚って何?」と聞かれたら、どのように答えたらよいでしょうか。まずは、「体の表面」とか「外の世界と触れる器官」といった回答が浮かびます。さらに、「内臓や骨や肉を包んでいるシート」ともいえます。「体の内側と、外の世界の境」という定義もあります。

皮膚のこれらの性質は、あるひとつの目的のために備わっていると考えられています。それは、体を守るという目的です。何から何を守っているのかというと、「外」の「攻撃」から、内臓や骨や肉を守っているのです。

例えば「野球のボールがぶつかる」という「攻撃」を考えてみます。皮膚がなかったら、内臓は簡単に破れ、骨も折れてしまいます。また、人は泥水を全身に浴びても、死ぬことはありません。しかし、もし泥水を直に内臓や骨などにかけたら、泥水に含まれる雑菌によって死んでしまいます。皮膚は、身をていして「内側」を守っているのです。

層の強さ

地層

皮膚は丈夫でなければなりません。そのため層構造になっています。「厚さ1センチの1層のシート」と「厚さ1ミリの層が10層重なっているシート」を想像してみてください。「厚さ1センチの1層のシート」は、確かに穴を開けるのは大変ですが、しかし少しでも亀裂を入れることができれば、その後は一気に全体を壊すことができます。

一方で「厚さ1ミリの層が10層重なっているシート」は、一番の上の層に亀裂が入っても、それだけで次の層が傷つくことはありません。第2層目を傷つけるには、もう一度攻撃しなければならないのです。

さらに、皮膚は「ターンオーバー」します。それは「古い層が剥がれ、新しい層を作り出す」機能です。化粧品のCMで使われることがあるので、聞いたことがある人もいると思います。

皮膚の層の名称

皮膚がんを知ろうとするとき、皮膚の層の名称を知ることは重要です。皮膚の層は、「大きく分けると2層あり、そのうち、外側の1層はさらに4層に分かれる」と覚えてください。これを、「6層ある」とは覚えないでください。その理由を説明します。

皮膚はまず、大きく「表皮(ひょうひ)」と「真皮(しんぴ)」の2層に分かれます。

外側にある表皮は、外部の攻撃や異物から体を守る役割があります。体の水分の蒸発を防ぐことも、表皮の大切な「仕事」です。

一方真皮は、「肌のハリ」や「肌のシワ」に関わります。真皮の下は脂肪の層になります。皮膚の厚さは場所や人によって異なりますが、一般的には顔の皮膚だと表皮が0.1ミリ程度、真皮が3ミリ程度です。

表皮は4層

外側にある「表皮」は、4層に分かれています。名称は「外側→内側」の順に「角質層(かくしつそう)→顆粒層(かりゅうそう)→有棘層(ゆうきょくそう)→基底層(きていそう)」といいます。

ターンオーバーは「表皮」の「4層」で起こっています。まずは最も内側の「基底層」が、新たに生まれてくるのです。「基底層」は時間の経過とともに外に追いやられていき、「有棘層」という名称に変わります。さらに外に追いやられると「顆粒層」という名称に変わり、最後に「角質層」になり、そこで表皮としての役目を終え、完全に人の体からはがれ落ちます。

つまり、「表皮」の下の「真皮」は、ターンオーバーには関わっていないのです。これが「6層ある」と覚えずに、「大きく分けると2層あり、そのうち、外側の1層はさらに4層に分かれる」と覚えてくださいとお願いした理由です。

皮膚がんの基本

闇

日本人の皮膚がんで最も多いのが基底層に発生するがんです。基底層は、表皮の一番内側にあり、真皮と接触している層です。次に多いのが、有棘層に発生するがんです。

この2つの皮膚がんに比べると発生頻度は低いのですが、悪性度がとても高いのが、「ほくろのがん」と呼ばれる、「メラノーマ」です。日本語名は「悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)」です。

この3つのがんは、この後で詳しく説明します。まずは、「皮膚がんの基本」をみてみます。

治りやすいがん

皮膚がんで亡くなる人は、皮膚がんを発症した人の1/5といわれています。一般の人は「そんなに多くの人が!?」と思われるかもしれません。しかし医師たち専門家は、この数値から、皮膚がんを、ほかの臓器のがんに比べて「治りやすいがん」と捉えています。

また、胃がんや膵臓がん、肺がんなどは、患者本人が日常生活の中で「見る」ことは不可能ですよね。しかし皮膚がんは、体の表面や表面近くに発生するので、その兆候が「見える」ことが多いのです。そして早期に発見できれば、先ほど示した「1/5に人が亡くなる」という数値は、さらに良くなるのです。

50歳以上が高リスク

皮膚がんの原因のひとつが、日光の紫外線と考えられています。紫外線によって皮膚の細胞が傷つき、がん化するのです。紫外線によるダメージの大きさは、浴びる時間が長いほど大きくなるので、歳を重ねるにつれ、皮膚がんのリスクが高まると考えられます。

「50歳以上」になると、皮膚がんの発症が増えるといわれています。

夏の日差し

基底細胞がんとは

それではまず、日本人に最も多い皮膚がん「基底細胞がん」についてみてみます。発症するのは顔面で、中でも鼻、まぶた、頬が特に多いです。これらの場所に、それまでなかった「黒色の盛り上がったできもの」が見つかったら、注意が必要です。大きさは、数ミリから1センチです。

この「できもの」に、血がにじんでいたら、すぐに皮膚科を受診してください。

基底細胞がんの症状

注意していただきたいのは、これらの状態が一般的な状態に過ぎないという点です。つまり、数多くの例外があります。

まず、この「できもの」が1個だけの場合もあるのですが、その周辺に「つぶつぶ」ができることがあります。さらに、盛り上がっているだけでなく、逆に「へこんでいるできもの」の場合もあります。色も、「黒でない」こともあります。

そしてこれらの条件がすべて揃っていても、がんでないことがあります。つまり「調べてみたら良性だった」という結果もあるのです。

「がん」であっても「単なるできもの」であっても、外見上は同じに見えるのが、基底細胞がんの特徴です。

基底細胞がんの検査

よって、検査が重要になります。検査は「生検」といい、「できもの」の一部を切り取って、顕微鏡で確認します。もしそこで「がん」と診断されると、次に、周囲に広がっているかどうかを調べます。

そのため、胸部レントゲンや超音波を使った検査や、「全身シンチグラム」という特殊な検査を行うこともあります。CTやMRIも必要に応じて実施します。

基底細胞がんのステージ

どのがんでも、進行度を示す「ステージ」が定められています。基底細胞がんを含む皮膚がんのステージは「0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ」の5期があります。

0期は、「できもの」が「悪性」であると診断されたものの、表皮の中にとどまっている場合です。この段階はあえて「皮膚がん」と呼ばずに、「表皮内がん」という名称が付けられています。細胞はがん化しているものの、「本物のがんではない」とされています。

「できもの」が2センチ以下にまで大きくなり、表皮だけにとどまらず、真皮にまで達していると、Ⅰ期と診断されます。

2センチを超えたものの、がんの進行が真皮と皮下組織でとどまっていると、Ⅱ期です。皮下組織を超えて、筋肉や骨まで及ぶとⅢ期です。リンパ節に転移している場合もⅢ期です。

がんが内臓にまで転移すると、Ⅳ期です。

基底細胞がんの治療

基底細胞がんの治療では、できものを切除する外科手術を行います。再発や転移を防ぐため、できものだけでなく、その周辺も大きくえぐり取ります。

そのため顔の手術では、大きな傷跡が残ることがあります。皮膚がんは、がんを取り除くだけでなく、見た目にも大きく影響するので、やはり、初期での発見、治療を心掛けたいです。

手術による治療という点では、ほかの皮膚がんも同様です

有棘細胞がんとは

おさらいすると、表皮は、外側から内側にかけて、「角質層→顆粒層→有棘(ゆうきょく)層→基底層」という4層に分かれています。有棘細胞がんは、有棘層にできるがんです。

有棘細胞がんの症状

皮膚の表面がかさかさして盛り上がっていたり、唇がただれていたりすることが、代表的な症状です。

そのほか、「傷ややけどが治りにくい」という状態も、有棘細胞がんの特徴です。この場合、「ただれ」や「できもの」があるわけではないので、発見は難しいといえます。

このがんが顔面に発症すると、巨大な腫瘍をつくることがあります。進行すると悪臭を発します。検査とステージと治療は、基底細胞がんと同じです。

メラノーマとは

ほくろ

皮膚がんの中でも最も深刻な事態を引き起こすのが、メラノーマ(悪性黒色腫)です。皮膚の色を決める「メラノサイト」という細胞が、がん化すると考えられています。

悪性度が高いことに加えてやっかいなのが、メラノサイトのがん化が、表面上は「ほくろができた」ぐらいにしか見えないことなのです。つまり、患者が油断しやすいがんなのです。

メラノーマの症状

メラノーマが最も発生しやすい場所は、足の裏です。メラノーマの兆候は「新しいほくろ」と申し上げました。しかし、何人の人が、自分の足の裏のほくろの位置や数を把握しているでしょうか。

足の裏の次に発症しやすいのは、体感、顔、爪です。「新しくできたほくろ」が「5ミリ以上」に成長していたら、迷わず皮膚科を受診してください。

メラノーマの変化

メラノーマの色は、褐色や黒です。褐色が時間の経過とともに黒に変化することもあります。1個のメラノーマの中に濃淡が現れたり、まだら模様になったりすることもあります。

大きさは、直径2ミリ程度のものが5ミリ程度にまで「成長」します。この「成長」は1~2年かかるとみられています。「ぎざぎざ」した形のほくろや、「硬い」ほくろも、メラノーマでよくみられる特徴です。

メラノーマの原因

メラノーマの発生原因は「不明」とされています。ただ、紫外線が有力視されています。また、遺伝の可能性も否定されていません。さらに、足の裏に発生することが多いことから、「外からの刺激」が原因と考えている専門家もいます。

検査や治療については、基底細胞がんの検査や治療と同様です。

まとめ

紫外線

20~30年前まで、日焼けは、健康の印としてみられていました。夏にはなるべく多く肌を露出して、褐色の肌を自慢しあっていました。

しかし、現代は、紫外線の危険性は、かなり認識されていると思います。「日光に当たり続けると皮膚がんになる」と考え、真夏でも長袖を着用したり、日傘を使ったりしています。

ただ、紫外線だけが、皮膚がんの原因だけではありません。まだまだよく分かっていない領域でもあります。ですから、なおさら、初期症状に注意して、早めの受診を心掛けたいものです。

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