自傷癖が現在は社会風潮にも、なろうとしています。小学生、中学生、高校生の子供たちまで、怒りや悲しみを外に向けることができず、自分に向けて自傷をしているとは、この世の生きづらさを物語っているようにみえます。
本来なら学生時代は、友達と楽しくできるはずなのに、それがこのような自傷癖やいじめ、自殺など子供の苦労がみてとれます。そして若い大人たちまでも、自傷癖が治らない社会になりつつあります。
自傷癖についてみてみました。
自傷癖について
自傷癖とは自分の体を自分で、意識、無意識のうちに傷をつけることで、自分の爪を噛んだり、髪の毛を抜いたり、リストカットをしたりして、自分の体に傷をつける癖のある人です。
自傷癖は死ぬ可能性のある方法を、とることは余りありませんが、予期せぬことで死に至ることもあります。
自傷癖の行動
自傷とは刃物で自分の皮膚を切ったり、コンパスなどで肌を突き刺したり、たばこの火などで自分にやけどさせたり、死なないことを意識しながら、頭を壁にぶつけたり、身体を噛んだりして、自分の体を傷つけるのが特徴的な行動です。
同時に薬物依存やアルコールや、摂食障害なども抱えていることが多いです。また記憶が落ちて自分が、自分であるという感覚が一時的に失われる、解離性障害を抱えている人もいます。
お酒や薬物乱用で酩酊状態に、なっている人の自傷行為は、自分の気持ちを上手にコントロールできないため、自傷行為に走り易いです。
小・中・高校生
自傷の経験を中高生の1割が経験しています。自傷することでエスカレートして、自殺の危険性を高めて、一人で悩み苦しんでいます。
1990年代後半から、小学生、中学生、高校生の学校から、リスカッティングの報告がされるようになり、社会現象化の傾向が見受けられるようになりました。はじめは好奇心でやる子もいます。
また学校の授業などで、算数ができなくて叱られたときに、自分の皮膚を活を入れるため、シャープペンシルなどで傷をつけたりして、小学生の頃から自傷の芽生えの行動の子や、誰かが自傷している場面を偶然目撃し、その影響で自分も自傷を始める子もいます。
不快な感情の緊張、恐怖、絶望などを和らげるため自傷行為をしていると、若者のリストカット経験のある6割が答えています。
死ぬほどつらい思いをしているため、自傷行為に走る人が多く、自傷に心の痛みの鎮痛効果があるため、自傷行為を繰り返してしまいます。
自傷癖がエスカレートすることで、自殺の可能性もでてきます。
自傷癖の人との接し方
いままで自傷癖について本人から打ち明けられて、周りの人たちがどの様な態度をとっているかといいますと
- 頭ごなしに叱責する
- 母親の場合はどのように、言葉をかけてよいか分からず、見てみぬふりをしています
- 親は自分が心が弱かったから子供もこうなったと、自責の念が強くて言葉がでません
家族やパートナーが本人の治療に関わる事は、とても良い事ですが、とても難しい所があります。本人につかれ離れずの関係で、適度な自由を与えて静かに見守る事が大切です。
どうしても家族やパートナーのような、身近な人の場合は自傷されると、自分が攻撃されてるように、錯覚を起こすことがあって、話がややこしくなることがあります。
家族やパートナーに理解を求めるのは、慎重に行うことが必要で、家族やパートナーが自傷の人に接する時は、
- 頭ごなしに叱責してはいけません。
- 本人を責めてはいけません。本人は自分が悪いと思って自分を傷つけているのです。
- 本人を24時間体制で、監視しないようにします。
- 程よい距離でそっと後ろから見守り、適度に本人を自由にさせます。
家族やパートナーが本人を傷つける人なら、逃げる事も必要です。虐待にしても本人が成長して、そのことをいって親が土下座して謝っても、自傷が直ることは無いので、兎に角身近な人から逃げる事も大切です。
離れてたまに会う関係ができると、良い関係性が生まれることもあるのです。
自傷癖の患者へ
自傷は今を生き延びるために、行っている行為ですが、そのような行為が長い人生、続けることはできません。なぜなら自傷行為は一時しのぎの、逃避の行為だからです。
ですから周りの人がこの行為を、叱責するのも間違いです。今を生き延びようとしてやっている行為ですから、それを受け止めてあげることです。
自傷の原因となる人間関係を、根本的に解決しない限り、深刻化、複雑化していく可能性があり、繰り返しやっていくうちに、度合いがひどくなって死に、至るようになるという事です。
自傷癖の原因と症状
なぜ自分の体を自分で傷をつけるのか、自分でも分からないうちに、傷を付けている人もいます。自分もこのような癖をなくしたい、と考えている人もいます。
自傷癖は初めは故意で、自傷していたものが、無意識のうちに自傷するように、なっているのです。怒りや悲しみを外に向けることができず、自分にぶつけた状態の一つです。
この自傷癖を治すには、原因を突き止めなければ、治すこともできません。そこで自傷癖が何故起こるのか、原因についてみてみました。
- 性格的なものがあります。
- 感情のコントロールが下手です。
- 周囲の人の注目を集めたいためです。
性格
性格的には強い責任感と、完璧主義の性格で、人の目を必要以上に気にします。責任感がありすぎて、生真面目な性格で、目的が達成できないと、必要以上に自分を評価できなく、自責にかられまた他人の評価をとても気にするため、評価が下がるのをとても辛く感じます。
現実からの逃避
判断が極端すぎるため、自分の存在価値がないと思い、そのために現実から逃れたい気持ちで、自分の体を傷つけてしまいます。
自己否定が強い
自傷癖の人は性格的に、とても自己否定が強く、自分のことが好きではなく、存在自体なくなってしまいたいと思っています。
自分は本当はこのような人間になりたいのに、全然違っていると思うようなことがあると、自己嫌悪や自己否定の気持ちが起き、自傷癖が出てくるのです。
「現実の自我と理想の自我のかい離」は多くの人が持っている気持ちですが、それを受け止めきれないのは、本人のメンタルの弱さに繋がっています。
感情のコントロールが下手
自傷癖の人は感情の、コントロールを上手くできなくて、気持ちを落ち着かせるためにやっている人もいます。自傷をやると後気持ちが良いという、感情を抱く人もいます。
そのため自傷癖が治らなくて、気持ちが良いからやる人もいます。自傷癖の人は、辛いことがあると、外に発散させることができなくて、全て自分で受け止め処理しようとしますが、その処理の仕方が、自傷という自分に痛みを向けてしまいます。
精神的ショックや辛いことがあると、感情が乱れて自分を傷つける行為で、気持ちを落ち着かせようとします。
周囲の人の注目を集めたいため
自分の苦しみを誰かに分かって、もらいたいと思う気持ちがあって、それを周囲の人に分かってもらいたいと思う場合に、自傷行為をすることがあります。
自分が今危機的な状況で、自分の苦しみや感情を周囲の人に伝えたいと、自傷を繰返すことをクライシス・コールと言いますが、本人はそのことを自覚していなくて行うのです。
深層心理に自分を誰かに助けて、貰いたい気持ちがあって行ったり、また復讐のために行うこともあり、また攻撃する気持ちがあるときにも、自傷行為をやることがあるのです。
松本先生が言われるには?
国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本先生は、「周囲の人の注目を集めたい」という行動について「精神科医療の先生も、誤解されている人もいますが、このような感情をもって行っている人はいないはずです」といわれています。
96%の人が一人ぽっちの状況で自傷をしていて、周囲には隠しています。アピールする行動とは正反対で、むしろ自分で何とかしなければ、と考えて行っている人が多いです。
本人さえも「自分の精神が弱いから、周囲の気を引こうとしているのかもしれない」といっている人もいます。
しかし実際に誰もいないところで切っていて、周囲には隠していますから、誰かがまたはネットなどで「人の関心や注目を集めたいのでは」というようなことを見聞きするので、患者自身もそう思って自分は精神の弱いダメな人間だと、駄目出し悪循環に陥っている、というのが本当のところのようです。
自傷する人は自分で我慢に我慢して、それでも我慢して限界を超えると大爆発します。我慢する分爆発が大きいので、こんどはギャーギャーいいだすと、誰も相手にしなくなるので、行き場が自傷する人はなくなるのです。ですから自傷を繰り返す人には
- 辛い事から逃げる
- 愚痴をいう
ということを勧めることが必要なようです。
要因
自傷の行為の背景には、次の要因が複雑に重なり合っています。
- 自分に対する親からの虐待があります。
- 家庭内暴力や間接的に暴力を、受けたのをみたりしています。
- 親の離婚や親のアルコール・薬物問題など不適切な養育環境が悪いです。
- 生まれつき奇形・病気などがあります。
- 周りに自傷する人がいて、それを学んでしまった場合です。
- インターネットなどで自傷を、肯定しているサイトを楽しんでいます。
- 親やパートナーや親友関係で、葛藤関係があるとしやすくなります。
自傷癖の症状
自傷癖の症状は爪を噛んだり、髪の毛を抜いたり、リスカットをしたり、壁に自分の体をぶつけて傷めたり、傷が治りかけているのにカサブタをはがしたり、することもエスカレートすれば自傷癖になります。
また血が出る程かんだり、熱湯をかけたり、タバコの火を自分の肌に押し当てたり、えぐるなど、どんどんエスカレートして死に、至るような行為になることもあります。
自傷癖の治療
自傷癖を治す方法として、爪を噛む癖の人は、指が唇に近づいたらハンドクリームを塗ったり、髪を抜きたくなったら、頭をなでるなど自傷癖に近い行為を、普通に思える行為に変化させていくことがよいです。
周りの人ができる手助けとしては、存在感を認めてあげて、声をかけたり寄り添ったりして「理解と援助」が必要で、プロの専門医やカウンセラーなどに相談して、歪んだ精神構造から一日も、早く脱することが大切です。
精神科や心療内科にて家族療法や、薬物治療、認知行動療法など沢山あり、健康な精神構造が育める環境に身を置くことが大切で、本人が自傷行為を自覚することが必要です。
自傷癖の治療と解決法
国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦先生は、佐賀医大卒業の精神科医として薬物依存症や自傷行為に苦しむ患者と向き合って、この分野の第一人者で自殺予防総合対策センター副センター長です。
先生は支援者向け、当事者向けの本を書いてられます。岩波書店「アルコールとうつ・『死のトライアングル』を防ぐために」
専門家が読む専門書が多く出版されていましたが、当事者の人たちが読んでくれていたので、当事者に直接届くように書けば、救われる人が増えるのではないかとの思いで、当事者向けの本が出版されています。
「自傷行為の理解と援助」(日本評論社)
「自分を傷つけられるずにはいられないー自傷から回復するためのヒント」(講談社出版)
先生からのメッセージ
「人なんかもう信じないと思っているかもしれないけれど、あきらめずに、いろんな人にアタックしてみてほしい」
解決法
- 自傷日誌を付けてみる
- 誰といた時に自傷しているのか記憶して丁寧に記録する
- そうすることで自分は何が原因で自傷しているのか見えてきます
- その原因が分かれば、その原因から避けることをします
- 運悪くその原因に出くわしたら、自傷の代わりに置き換えスキルを身に着けることです
置き換え法
刺激的な方法
- 大声でさけぶ
- 氷をつかむ
- 手首にはめた輪ゴムを引っ張って刺激を与えます
- 紙をやぶります
- 腕を赤く塗りつぶす(血を見ると安心する人)
- タップを踏む(嫌なものを踏みつけてるイメージ)
鎮静的な方法
- ゆっくり筋トレをしながら呼吸を整えます
- 深呼吸しながら瞑想します
- 気持ちをノートに書きます
- 絵を描いたり、音楽をきいたりします
- 信頼できる人にはなします
ここで信頼できる人とは、自傷癖を打ち明けた時に、説教したり、叱ったり、悲しげにしたり、不機嫌になったりしない人のことをいいます。
支援者はこの場合どうしたら良いのでしょう
支援者
自傷癖の人が傷を見せてくれたり、告白してくれた時は
▼まず「打ち明けてくれてありがとう」といいます。
▼「次に切りたくなったら、連絡くれないかな?」「間に合わなかった時でも、報告してほしいいな」といいます。
▼どうしたら彼らを救えるか考えて「一緒に病院にいこうか」といって病院に付き添ってその病院が、彼らに合わないように感じたら「今度はべつのところにいこうか」とつないでいって、良いカウンセラーの人に巡り合えるよう、一緒に付き合ってみます。
▼専門家に頼んでも、時々見守って気にかけてるメッセージをおくります。
気づき、つなぎ、見守りを行うことが大切です。
- 自傷癖の人をみつけたら気付いてあげる事です。
- つなぎは専門家に見てもらうよう、アドバイスをして一緒に行動します。
- 専門家につないでも時々見守って、気にかけていることが大切です。
結論は自傷する人がリアルな世界で体験する出会いで、自傷が解決されることが多く感じられるので、そのような出会いの場を速く見つけて、取り次ぎをすることが大切です。
良い所の援助機関、支援機関は、自分にあうあわないがあるから、自分の合うところをみつけることが必要です。
また誰にも相談できない人は、子供SOSダイヤルがあります。一人で苦しまないで、まず電話をかけて相談してみるのも、良いのではないでしょうか?
子供SOSダイヤル 0120-0-78310(なやみいおう) 24時間体制で行っています。
虐待かも?と思ったら 189(いちはやく)(児童相談所)
まとめ
いかがでしたか?自分の体を痛めてまで、どうしてそんなことをするのか、私には分かりませんでしたが、松本先生のお話をみていると、自傷する人の気持ちが何となく分かるような想いです。
今まで色眼鏡で見ていた人も、いたかも知れませんが、やはり現代の競争社会で、気の強い人ばかりが、弱いものを支配しようとする構造が、このような精神の歪んだ人たちを、作っているように思えてなりません。
自傷する人たちはきっと、悲しみのどん底の中から、その行為をやるのでしょう。いくら自分が正しい事をしていても、それが間違いであると指摘されたりしたら、反撃ができなくて結局自傷行為をしてしまうのかも分かりません。この人たちは心根の優しい人たちなのでしょう。
この様な人たちを作らないためにも、もっと何でも言える社会であってほしいですね。空気が読めないという前に、その人が何をいおうとしているのか、きちんと聞いてあげられる社会をつくることが大切です。
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