ほんの少し前までC型肝炎は有効な治療法がなく、完治が難しい病気とされていました。C型肝炎とはC型肝炎ウィルスにかかることによって徐々に肝臓の細胞が破壊され、肝臓の働きが悪くなるウィルス型肝炎のことです。
感染初期にはほぼ身体に異常が出ずに感染していることに気づかないまま生活している方がほとんどですが、進行してくるとだるさを感じたり、足のむくみや顔に血管が浮いてくる、足がつりやすくなるなどの症状があらわれ、最終的には肝硬変や肝臓癌などになってしまうという恐ろしい病気です。
しかし治りづらい病気といわれていたC型肝炎は医学の進歩により最新の治療を受けることでほぼ完治させることができるようなりました。今回はC型肝炎とはどういったものなのかのご説明と完治させるための治療方法についてお知らせします。
C型肝炎とは?
肝臓は我々の体内にある内臓の中でも特に大事な部位です。糖質や蛋白質、ビタミンや脂肪の生成、貯蔵、代謝を行うだけでなく血液中のホルモンや毒物、薬物などの解毒や代謝をしてくれる作用等があり、我々が日常生活を健康に送る上で肝臓が健康であることがとても大切な要素です。
しかしC型肝炎は肝臓の細胞を徐々に壊していく恐ろしい病気です。C型肝炎の原因や症状、感染経路はどのようなものなのでしょう。最近まで謎につつまれていたC型肝炎の詳しい説明をしていきます。
肝炎の特徴
ウィルス性肝炎にはA型、B型、C型やその他にもD型、E型など様々な種類がありますが日本で多いのはA型、B型、C型のウィルス性肝炎です。
A型肝炎は主に水や食べ物(生牡蠣など)から感染することが多く、ウィルスに感染した後は平均28日の期間を経てから症状があらわれます。急な発熱や全身のだるさ、吐き気や嘔吐があり数日経つと目の白い部分や肌に黄疸が表れます。これはどの肝炎にも言える特徴です。A型肝炎にはワクチンがあるためにワクチン接種で予防することができます。
B型肝炎はHIVやC型肝炎ウイルスよりも強力な感染力を持つB型肝炎ウイルスから発症します。アジアやアフリカでよく見られる肝炎で、海外で感染してしまい気づかないで日本に帰国してから発症するケースもあります。主に血液や体液によって感染しますが、症状が出てから安静にしていれば数カ月で治ります。ただし劇症化してしまうと肝細胞がすべて壊されてしまい、肝臓移植を行わなければ死亡してしまうケースもあります。
以前のB型肝炎の主な感染源としてはB型肝炎ウィルスを持った母親から生まれた子供が感染していることでしたが、1986年にB型肝炎キャリアの母親から生まれた子供に対しワクチン接種が開始されてから以後、母子感染は大きく減りました。
C型肝炎もB型肝炎と同じく、血液による感染です。C型肝炎はA型B型と比べて症状は軽いものの7割のキャリアが慢性化する危険性があり、慢性化してしまうと肝硬変や肝臓癌になる危険性があります。慢性化や劇症化しなければ治療により治りますがC型肝炎の特徴は慢性化しやすいということで初期感染のうち6割から8割近くは慢性化するとのことです。慢性化してしまうと自然治癒で治ることは稀なケースになってしまいます。慢性肝炎の6割がこのC型肝炎だと言われています。
感染初期には症状が出づらいために健康診断での血液検査や、献血時の血液検査で発見される場合が多数です。会社の社会保険に加入していて定期的に健康診断をしたり、献血によく行くという方は早期発見がされやすいですが、普段健康診断や血液検査を受ける機会がない人が気づかないでC型肝炎ウィルスに罹患してしまうと徐々に肝炎が慢性化してしまい、ゆっくりと肝臓が壊れていき肝硬変や肝臓癌などの重篤な症状をきたします。
C型肝炎ウィルスによる感染
今現在全国で100万人~200万人の人がC型肝炎のキャリアだと言われています。症状が出ない場合、自分がC型肝炎にかかっていることを知らないまま生活している人もいますので実際に調べたらもっと多くの方がC型肝炎にかかっているかもしれません。C型肝炎はC型肝炎キャリアの血液が何らかの方法で身体に入ってしまったことで原因でC型肝炎になっている場合が大多数で、血液が主な感染経路だということはわかっていましたが1989年にC型肝炎ウィルス(HCV)が発見されるまではC型肝炎は原因不明の病気の病気でした。
C型肝炎ウィルスは血液を介した感染によりC型肝炎を引き起こすウィルスで、感染すると6カ月以上肝臓の不調が続き、肝細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなります。またC型肝炎キャリアの7割以上が慢性化し、さらに一度慢性化してしまうと進行型になりやすく体調不良から最終的には肝硬変や肝臓癌になってしまいます。
C型肝炎の主な症状
症状の進行は比較的穏やかで、C型肝炎なっていることに気づかないで生活している人もいるぐらい自覚症状の乏しい疾患です。C型肝炎と診断されても約3割の人はウイルスが体から排除され、自然治癒されますが、残りの約7割の人が慢性肝炎に移行します。どうすれば自然に体外にウイルスが出ていくのかは謎のままです。
C型肝炎ウィルスにかかり、慢性化して症状が進行していくと、最初はだるさや発熱、嘔吐、足のむくみや食欲不振などが表れます。慢性C型肝炎のうち約25%が約20年後に肝硬変となり、さらにその大部分が肝臓癌になることがあるため今は自覚症状がなくても放置しておくと大変なことになります。
長期の慢性肝炎でC型肝炎ウィルスにより細胞が壊され続けると、それを何とかしようと肝臓の線維成分が蓄積していきます。これを肝臓の線維化といい、線維化が進行して肝臓が硬くなってしまった状態が肝硬変と呼ばれる病気です。肝硬変になると肝臓癌になりやすいだけではなく。肝性脳症食道静脈瘤破裂など命に関わる合併症が非常に起こりやすくなるようです。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、痛みを感じない臓器です。一般的に肝臓には生きていくのに必要な機能の3倍から4倍の力があり、この能力を予備能力を言いますが、その予備能力の高さゆえに肝炎に感染していても慢性化や重症化するまで自覚症状のないことが多い内臓なのです。そのためC型肝炎ウィルスに罹患していることが分かった場合、特に自覚症状がなくても医療機関で肝臓の状態を診察してもらい、必要に応じて治療をしていくことが大切です。
感染経路
主に注射針の使いまわしや輸血、血液製剤などによりC型肝炎ウィルスに感染するケースが多いとされています。基本的に出血を伴わない性行為では感染しませんし、母子感染するケースも4~10%程度です。
C型肝炎ウィルスに罹る確率が高い方は1992年以前に輸血を受けた方、大きな手術をした方、血液凝固因子製剤を投与された方、長期的な血液透析を受けている方、臓器移植を受けた方、薬物乱用者で覚せい剤などの注射の使いまわしをしている方や入れ墨をしている方、過去に健康診断で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらずそのまま放置している方がC型肝炎の慢性キャリアになりやすいとされています。
血液製剤の投与によるC型肝炎感染については、血友病患者以外に対する投与によりC型肝炎キャリアとなった人々が国と製薬会社を相手とする訴訟(薬害肝炎訴訟)を起こし、一時期メディアで話題にもなりました。
基本的にはC型肝炎ウィルス(HVC)キャリアの血液が体内に入らなければ感染しない病気ですので空気感染や接触感染することはありません。
C型肝炎の治療方法
今ではC型肝炎ウィルスに対する有効な治療法が確立されており、C型肝炎キャリアの9割以上が完治する時代になりました。治療方法は大きく分けて二つの方法があります。
インターフェロン治療
インターフェロンという抗ウィルス薬を注射します。この方法はインターフェロンを単独で使う療法か、インターフェロンとリバビリン、プロテアーゼ阻害剤(飲み薬の抗ウイルス薬)の併用療法が用いられます。どちらかといえば併用療法の方が確実にC型肝炎ウィルスを殲滅させることができますが、それはキャリアの個人差にもよります。
インターフェロンとはウィルスの増殖を防ぎ、体外にC型肝炎ウィルスを排出させることを目的とします。ウィルスを排出することによって肝炎から肝硬変になること確率を大幅に下げることができます。
少し前までのインターフェロン治療には少なくとも週3回の投与が必要で、悪寒や発熱などの副作用もありました。しかしインターフェロン治療は昔より大きく進歩しており、今現在では改良型のペグ・インターフェロンを用いた治療ができるようになりました。ペグ・インターフェロンを使った治療では従来の1/3である週1回の投与で副作用も大きく軽減されています。
またC型肝炎ウイルスの状態に応じて最適とされるインターフェロン治療の期間や種類が解明されてきたことによってインターフェロン治療がさらにC型肝炎に効果的なものとなってきました。また副作用が出た場合の効果的な対応策がわかってきたことで、副作用によってインターフェロン治療を中止することなく完治するまで治療できるようにもなりました。
ただしインターフェロン治療に適しているかどうかは全身の状態、C型肝炎の病期や進行度の他に、血液中に含まれているC型肝炎ウイルスの量やキャリア自身の遺伝子配列、またインターフェロンが効きやすい体質かによって左右されます。インターフェロンが効きやすい体質か効きにくい体質かは、キャリア自身の遺伝子タイプによるものが大きく、今現在ではインターフェロン治療の実施前に遺伝子検査を行います。
飲み薬での治療
慢性肝炎の進行を止めるにはインターフェロンを使った治療が一番ですが、個人の体質によりインターフェロン治療ができなかったり効果が期待できない場合があります。またすでに肝硬変になってしまっている場合にはインターフェロンを用いた治療は効果がありません。
その場合は肝機能の異常値をできるだけ正常値に近づけることを目指す投薬治療を行います。ウィルスを排出することができなくても、AST(GOT)値、 ALT(GPT)値を低い値に保つことができれば、肝硬変の進行や肝臓癌の発生リスクを大幅に軽減させることができます。
そのためにすでに肝硬変になっている方にはウルソデオキシコール酸などの肝庇護薬の飲み薬や、グリチルリチン配合剤の注射、少量のインターフェロンを使った長期的治療を行います。またC型肝炎の進行を促進させてしまう血液に含まれる鉄分を減らすため、瀉血療法といって200ml程度の血液を定期的に抜く治療がなされることもあります。
まとめ
C型肝炎は一人一人が自分のC型肝炎の状態を把握し、適切な治療を受けることが重要とされています。C型肝炎を防ぐため、またはC型肝炎の進行を止めるために厚生労働省でも様々な政策がなされています。そのうちの一つとして一部無料の住民基本検診があります。普段健康診断を受ける機会がない方でもお住いの地域で定期的に検診を受けることができます。また委託医療機関や保健所では肝炎ウイルス検査を無料で行なっています。
すでに肝炎に感染してしまった肝炎キャリアの方については医療費助成事業という取り組みもなされています。またメディアで取り上げられた薬害肝炎によってC型肝炎キャリアになってしまった方に関しても感染被害者救済給付金支給法という法律ができており、症状に応じて給付金が支給される制度があります。
C型肝炎を予防するワクチンは残念ながらまだありません。必要なのは国民一人一人が自分の健康に気を配り、定期的に健康診断を受けることです。C型肝炎に関わらず、いかなる病気も早期発見・早期治療が大切です。
初期のC型肝炎や慢性肝炎はほぼ100%に近い割合で完治することができます。C型肝炎と診断されたけれど特に日常生活や体調面に異常がないからといって放置せず、肝硬変や肝臓癌などの重大な病気になる前に適切な治療を受けましょう。