「所存でございます」「所存です」の言葉の意味と使い方、注意点を紹介!

日常会話では使われることが少なくても、ビジネスシーンになると頻繁に使われる言葉やフレーズがあります。そのような言葉やフレーズの中でも、代表的なのが「所存です」や「所存でございます」という言葉遣いでしょう。

しかしながら、この「所存です」や「所存でございます」はビジネスシーンで頻繁に用いられる一方で、とても間違った使い方が多いことでも知られています。言葉の誤用はビジネスマナー以前の問題ですから、「所存です」や「所存でございます」を用いる場合には注意が必要です。

そこで今回は、「所存です」や「所存でございます」の意味を再確認した上で、用法上の注意すべきポイントについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。

「所存です」・「所存でございます」の意味

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そもそも「所存です」や「所存でございます」という言葉は、どのような意味を有する日本語なのでしょうか?「所存です」や「所存でございます」の用法に気を付けるにしても、言葉の意味を知らなくては注意しようがないでしょう。そこで、まずは「所存です」や「所存でございます」という言葉の意味について再確認しておきたいと思います。

「所存」という言葉の意味

「所存」という言葉の意味について複数の国語辞書を調べてみると、主に次のような意味があることがわかります。

  • 心に思うところ。
  • 考え。
  • 思惑。

「所存です」という言葉の意味

このように「所存」という言葉には、「心に思うところ・考え・思惑」といった意味があります。そのため、「所存」と丁寧語の「です」で構成される「所存です」という言葉は、「思います」や「~という考えです」といった意味を有することになります。

そして、そもそも「所存」は「存ずる所」の漢語表現であり、「存ずる」は「思う」や「考える」の謙譲語・謙譲表現である「存じる」のサ行(ザ行)変格活用の連体形です。それゆえ、「所存です」が「思う」や「考える」の謙譲語であるとする見解が多いようです。言葉の成り立ちから考えれば、「所存」や「所存です」に謙譲的なニュアンスが含まれるのは当然なのかもしれませんね。

ただし、複数の国語辞書で「所存」や「所存です」の意味を調べても、「思う」・「考える」の謙譲語・謙譲表現であると記載しているものはないことを付記しておきます。

「所存でございます」という言葉の意味

もともと「所存です」という言葉は、「所存」に丁寧語の「です」を組み合わせて敬語表現となっています。そして、「所存でございます」という表現も、「所存」に丁寧語の「ございます」を組み合わせた敬語表現です。

ですから、「所存です」と「所存でございます」のいずれも意味は基本的に同じであり、前述のように「思います」や「~という考えです」という意味です。

「所存です」と「所存でございます」の使い分け

このように「所存です」と「所存でございます」という言葉が意味するところは基本的に同じです。どちらも自分の思いや考えを表明する際に用いられます。例えば、ビジネスメールやビジネス文書において、自分の上司や取引先といった相手側に自分の意見を表明する場面で使われます。

とはいえ、敢えて「所存です」と「所存でございます」の違いを見い出すとすれば、それは丁寧語の「です」と「ございます」のニュアンスの違いにあると言えるでしょう。丁寧語の「ございます」は、同じ丁寧語の「です」よりもかしこまったニュアンスや意味合いを持っています。それゆえ、「所存です」と「所存でございます」の違いはというと、「所存でございます」のほうが丁寧さの度合いが強い表現であると言えるのです。

ですから、「所存です」と「所存でございます」を使い分けるには、「所存でございます」のほうがフォーマルで堅苦しい表現である、という点を意識しておくと良いでしょう。

「所存です」・「所存でございます」の用法上の注意点

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それでは、このような「所存です」や「所存でございます」の意味を踏まえた上で、いずれの表現もどのような点に注意して使わなければならないのでしょうか?そこで、「所存です」や「所存でございます」の用法上の注意すべきポイントについて、ご紹介したいと思います。

二重表現

「所存です」や「所存でございます」の使い方で最大の注意点が、二重表現だと言えるでしょう。

二重表現とは?

二重表現とは、重言(じゅうげん)や重複表現とも呼ばれ、同じ意味の言葉を繰り返す表現のことを言います。

二重表現は、場合によっては意味を強調するための修辞技法ともなりますが、基本的には文章や言い方が回りくどく冗長になって相手方に違和感を与えるので避けるべき表現だとされます。

例えば、結果的に許容された二重表現として、長嶋茂雄氏の引退スピーチである「我が巨人軍は永遠に不滅です」が有名です。この場合、「永遠」と「不滅」は、いずれも「永久に変わらない・永久に無くならない」という意味で重なります。

逆に避けるべき間違った二重表現として、「頭痛が痛い」や「犯罪を犯す」などが挙げられます。「頭痛」は「頭が痛いこと」を意味し、「犯罪」は「罪を犯すこと」を意味しますから、それぞれ「痛い」と「犯す」が意味として重なってしまっているわけです。

「所存です」・「所存でございます」の二重表現

「所存です」や「所存でございます」の二重表現として、よくある間違いは主に次のようなパターンです。

・「~と思う所存です」、「~と思う所存でございます」

・「~と考える所存です」、「~と考える所存でございます」

前述のように「所存です」と「所存でございます」は、「思います」や「~という考えです」という意味です。つまり、「思う」や「考える」の後に「所存」を使ってしまうと、意味が重なってしまうわけです。

ですから、「所存です」や「所存でございます」を使うにあたっては、相手方に変な印象を与えないためにも、二重表現とならないように注意をしなければならないのです。

主語になるのは自分・自分側のみ

次に「所存です」や「所存でございます」の使い方として注意しなければならないのが、「所存です」や「所存でございます」の主語です。

謙譲表現と主語の関係性

そもそも謙譲語とは、動作の主体であり話し手である自分側がへりくだることで、動作の相手方や聞き手に対して敬意を示す敬語表現です。それゆえ、謙譲語を用いる場合には、主語が自分あるいは自分側である必要があります。

そして、前述のように、そもそも「所存」は「存ずる所」の漢語表現であり、「存ずる」は「思う」や「考える」の謙譲語・謙譲表現である「存じる」のサ行(ザ行)変格活用の連体形です。そのため、「所存です」は「思う」や「考える」の謙譲語であるとする見解が多いようです。

ですから、「所存です」を謙譲語・謙譲表現として捉えると、「所存です」の主語は自分あるいは自分側でなければならないわけです。つまり、「所存です」や「所存でございます」は、どちらも自分の思いや考えを表明する際に用いられ、主語が自分あるいは自分側である必要があるのです。

主語は自分側でなければならない

このように「所存です」や「所存でございます」を含めた「所存」という言葉を使う場合は、自分の思いや考えを表明する際に用いられ、主語が自分あるいは自分側である必要があります。

ですから、例えば、「〇〇さんが責任の所在について話す所存です」や「お客様の所存をお聞かせください」といった言い方や文章は、主語が自分側でないために間違ったものだと言えるでしょう。

ちなみに、このような例文では、「〇〇さんが責任の所在について話す意向です」や「お客様のご意向をお聞かせください」と言い換えると適切な表現となります。

「ご所存」は敬語として適切ではない

社会人になるとビジネスマナーの一つとして、敬語表現を身につける必要があります。すると良くありがちなのが、過剰敬語の問題です。過剰敬語とは、物事を丁寧に表現しようとするあまりに、敬語表現を重ねて二重敬語となったり、何にでも「お」や「ご」をつけてしまうことです。

この点、二重敬語とは、尊敬語と尊敬語あるいは謙譲語と謙譲語といった同じ種類の敬語が重なることを言いますから、厳密な意味で「ご所存」や「ご所存です」は二重敬語には該当しません。となると、「ご所存」は許容されるかに思えます。しかし、前述のように「所存」には謙譲的なニュアンスが含まれ、謙譲表現だという見解もあります。とすると、謙譲表現は自分側がへりくだることで相手側を立てる表現ですから、謙譲表現の「所存」に丁寧語や尊敬語の「ご」をつけることは適当ではないのです。

また、もう少し単純な理由もあります。その理由とは、前述のように「所存」が自分の思いや考えを表明する際に用いられ、主語が自分あるいは自分側である必要があり、自分が主体となる「思う」・「考える」という行為に丁寧語あるいは尊敬語の「お」や「ご」をつけるのは適当でないからです。

このように、いずれの理由にしても、「所存」に「ご」をつけた「ご所存」は過剰敬語であり、間違った使い方となるのです。

まとめ

いかがでしたか?「所存です」や「所存でございます」の意味を再確認した上で、用法上の注意すべきポイントについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?

たしかに、「所存です」や「所存でございます」はビジネスシーンで頻繁に用いられる一方で、とても間違った使い方が多いことでも知られています。しかしながら、二重表現、主語、過剰敬語の3点について、しっかりと押さえておけば問題となることはありません。

言葉の誤用はビジネスマナー以前の問題ですから、「所存です」や「所存でございます」を用いる場合には注意が必要ですが、気持ち良く仕事に邁進するためにも、押さえるべき注意点はしっかりと把握しておきましょう。本記事が、その参考となれば幸いです。

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