葉酸の取りすぎで起きる症状や副作用は?過剰摂取のリスクと適正量を紹介!

葉酸という栄養素について、聞いたことが無いという方は少ないのではないでしょうか?

妊娠中や妊活中には、葉酸を積極的に摂取すべきという話を聞いたことがある女性は多いでしょう。しかしながら、その一方でインターネットで葉酸について調べると、葉酸の取りすぎは良くないという検索結果が並んでいます。

そこで、葉酸の摂取にまつわるメリット・デメリットを広くまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。

葉酸とは?

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まずは、葉酸という栄養素について基本的な事項をおさらいしましょう。

葉酸とは?

葉酸は、水溶性ビタミンの一つであるビタミンB9のことです。また、ビタミンMやプテロイルモノグルタミン酸とも呼ばれます。

ちなみに、水溶性ビタミンとは、水に溶けやすいビタミンの総称です。

葉酸の働き

葉酸は、私達の生命を維持するために、次のような重要な役割を担っている栄養素です。

  • 核酸(DNAとRNA)の合成
  • 細胞分裂の促進
  • 造血作用

核酸の合成

核酸は、DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)で構成されています。

簡単に言いますと、DNAは遺伝子情報が書き込まれた設計図です。そして、DNAという設計図に基づいてRNAが細胞のもとになるアミノ酸(タンパク質)を生成しています。

核酸は、あらゆる組織の細胞に必要とされます。この核酸は肝臓によって、アミノ酸、葉酸(ビタミンB9)、ビタミンB12などから合成されます。

細胞分裂の促進

人は、細胞分裂によって成長します。そして、身体が完成すると新陳代謝により古い細胞を新しい細胞に交換します。この新陳代謝も細胞分裂であって、古い細胞のDNAのコピーが作成され新しい細胞に引き継がれます。

ですから、このDNAのコピーにもアミノ酸、葉酸(ビタミンB9)、ビタミンB12などが必要となります。

造血作用

血液(赤血球や白血球など)は、骨髄の中で造血幹細胞が細胞分裂を繰り返すことによって生成されます。

したがって、細胞分裂には上記のようにアミノ酸、葉酸、ビタミンB12などが必要ですから、造血作用にも葉酸が必要になるのです。

妊娠初期には葉酸が必要

妊娠とは、極論すれば受精卵の細胞分裂による胎児の発生と成長です。したがって、細胞分裂が数多く繰り替えされる妊娠には、葉酸が必須とされるのです。

ただし、注意が必要なのは、細胞分裂が多くなるのは妊娠4週目から7週目ですので、この時期について多くの葉酸摂取が推奨されているということです。これは、妊娠4週目から7週目が胎児の器官形成期だからです。

葉酸の過剰摂取のリスク

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このように葉酸がとても必要なことは分かりましたが、たくさん摂れば良いというわけでもありません。葉酸の過剰摂取には、次のような副作用やリスクがあることが判明しています。

葉酸の過剰摂取による副作用

葉酸を過剰に摂取してしてしまうと、次のような副作用が現れる場合があります。

  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • むくみ
  • 不眠症

葉酸過敏症

葉酸を過剰に摂取してしまうと、ごく稀に葉酸過敏症を引き起こす可能性があります。葉酸過敏症では、次のような症状が現れます。

  • 発熱
  • 蕁麻疹(じんましん)
  • 紅斑
  • かゆみ
  • 呼吸障害

ちなみに、葉酸過敏症が起きるメカニズムは解明されていません。

悪性貧血(ビタミンB12欠乏症)のマスキング効果

葉酸の過剰摂取は、悪性貧血の症状を一時的に隠してしまうことで、ビタミンB12欠乏症を見逃す結果になり、神経障害を引き起こす可能性があります。

悪性貧血とは?

悪性貧血は、胃粘膜の萎縮によってビタミンB12を吸収できなくなることで、ビタミンB12不足が生じて赤血球や白血球などを生み出すことができなくなり血液が薄くなった状態のことです。

悪性貧血の最初の症状は他の貧血と同様の症状ですが、進行するとビタミンB12の欠乏により神経障害が現れます。詳しくは、悪性貧血の症状とは?原因や治療方法も知っておこう!を読んでおきましょう。

悪性貧血のマスキング効果

葉酸(ビタミンB9)は、造血作用についてビタミンB12を補完する関係にあります。ビタミンB12が多少不足しても、葉酸が十分にあれば一時的にですが造血作用は維持されます。つまり、悪性貧血の状態にあっても、葉酸を過剰摂取していれば、一時的にせよ悪性貧血の症状は軽減されるのです。

このような意味で、葉酸の過剰摂取が悪性貧血の症状を一時的に隠してしまうことを、悪性貧血のマスキング効果と言います。

マスキング効果による影響

葉酸の過剰摂取による悪性貧血のマスキングは、深刻な症状をもたらします。それは、神経障害です。

造血作用においては一時的に葉酸がビタミンB12不足を補完しても、その他の細胞における核酸合成や細胞分裂にはビタミンB12が不足しています。そして最も影響を受けるのが、神経細胞です。ビタミンB12不足によって、神経伝達が上手くいかなくなり、さまざまな神経障害(記憶障害、うつ病、運動失調など)が現れることになります。

ちなみに、このような悪性貧血のマスキングが理由で、悪性貧血における治療のための葉酸投与は禁忌とされていますので、注意が必要です。

赤ちゃんの小児喘息

妊娠初期に葉酸が必須になることは、前述の通りです。

しかしながら、妊娠後期(妊娠30週目以降)に葉酸を過剰摂取すると、生まれてくる赤ちゃんの小児喘息を引き起こす可能性が高くなるという研究報告が発表されています。

葉酸の適正な摂取量は?

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このように葉酸は必要不可欠ですが、その一方で葉酸の摂りすぎも良くないとされています。それでは、どのくらいの量を摂取すればよいのでしょうか?

また、どのくらいの量を超えると過剰摂取になるのでしょうか?

厚生労働省の定める基準

厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」から、葉酸について定めた基準を抜粋すると次の通りです。

葉酸の1日の食事摂取基準

葉酸については男女関係なく、年齢によって次のような基準が定められています。

・1~2歳:(推定平均必要量)70㎍ 、(推奨量)90㎍ 、

(耐容上限量)200㎍

・3~5歳:(推定平均必要量)80㎍ 、(推奨量)100㎍ 、

(耐容上限量)300㎍

・6~7歳:(推定平均必要量)100㎍ 、(推奨量)130㎍ 、

(耐容上限量)400㎍

・8~9歳:(推定平均必要量)120㎍ 、(推奨量)150㎍ 、

(耐容上限量)500㎍

・10~11歳:(推定平均必要量)150㎍ 、(推奨量)180㎍ 、

(耐容上限量)700㎍

・12~14歳:(推定平均必要量)190㎍ 、(推奨量)230㎍ 、

(耐容上限量)900㎍

・15~17歳:(推定平均必要量)210㎍ 、(推奨量)250㎍ 、

(耐容上限量)900㎍

・18~29歳:(推定平均必要量)200㎍ 、(推奨量)240㎍ 、

(耐容上限量)900㎍

・30~69歳:(推定平均必要量)200㎍ 、(推奨量)240㎍ 、

(耐容上限量)1000㎍

・70歳以上:(推定平均必要量)200㎍ 、(推奨量)240㎍ 、

(耐容上限量)900㎍

引用元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」

過剰摂取の定義について

「推定平均必要量」は、半数の人が必要量を満たす量です。そして、「推奨量」は、ほとんどの人が必要量を満たす量と定義されています。

要するに、「推定平均必要量」は、この量を摂取しておけば間違いない量のことで、「推奨量」は、この量を摂取することが望ましい量と言えるでしょう。

これに対して、「耐容上限量」は、過剰摂取による健康被害を回避するための摂取上限量と定義されています。したがって、葉酸の過剰摂取とは、耐容上限量を超える葉酸の摂取ということになります。

ちなみに、㎍(マイクログラム)については、1000㎍が1㎎(ミリグラム)、1000㎎が1gです。たとえば、200㎍=0.2㎎=0.0002gとなります。

妊婦についての特別な基準

上記の食事摂取基準を前提に、妊婦については次のような特別な基準が付加されています。

・妊婦(付加量):(推定平均必要量)+200㎍ 、(推奨量)+240㎍

・授乳婦(付加量):(推定平均必要量)+80㎍ 、(推奨量)+100㎍

・妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性は、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、付加的に400㎍/日のプテロイルモノグルタミン酸の摂取が望まれる。

引用元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」

妊婦であっても耐容上限量は同じ

このように妊婦の場合、通常の人の推奨量に付加する形で葉酸の摂取が推奨されています。

たとえば、30代女性の妊婦の場合、(推奨量)240㎍に加えて(付加推奨量)+240㎍で、合計480㎍が推奨量となります。

また、妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性は、通常の推奨量に加えての付加推奨量が+400㎍(+0.4㎎)となっています。これは、妊娠4週目から7週目の胎児の器官形成期に葉酸不足に陥らないためで、この妊娠初期には多くの妊婦が未だ妊娠に気づいていないことが多いからです。

ただし、妊婦であっても耐容上限量は同じであって、900~1000㎍を超えるべきでないことには注意が必要です。

葉酸の摂取方法

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では葉酸は、どのようにして摂取すべきなのでしょうか?

葉酸の低い体内蓄積性

葉酸は、体内における蓄積性が低いとされています。それ故に、「日本人の食事摂取基準」では1日ごとの摂取量が定められ、葉酸を毎日摂取することが必要とされています。

この葉酸の低い体内蓄積性は、葉酸(ビタミンB9)が水溶性であることに起因しています。

というのも、水溶性ビタミンは体内の水分に溶けて体内で働き、余剰分は尿によって排出されてしまうからです。

食事による摂取

葉酸の摂取の基本は、食事による摂取です。

葉酸の多く含む食品

葉酸は、動物の肝臓(レバー)や肉、緑色野菜(ほうれん草・ブロッコリー・パセリ・レタス・キャベツ・インゲン豆など)、果物、豆類などに多く含まれています。

しかしながら、食事による葉酸の吸収率は50%程度とされています。その原因は、葉酸が熱に弱く、調理の際の加熱によって半分程度が分解してしまうからです。また、葉酸の水溶性のために、調理の際にゆで汁に溶けだすことも原因です。

ですから、調理によって失われる葉酸の量を念頭に置いて食事をする必要があるでしょう。

食品由来の葉酸の安全性

自然の食品に由来する葉酸を大量に摂取しても、それによって有害な影響は出ないと様々な国際機関が評価しています。

また、物理的にも通常の人が自然の食品で、耐容上限量を超える葉酸を摂取することは難しいと思われます。

したがって、自然の食品に由来する葉酸の過剰摂取については、それほど心配することは無いと言えます。

サプリメントによる摂取

妊娠などで付加的に摂取が必要な場合、食事だけで葉酸の必要量を賄うことは難しく、葉酸サプリメントによる摂取が行われます。

自然の食品に由来する葉酸に対して、強化食品としての葉酸、すなわち葉酸サプリメントについては、過剰摂取についてのリスクがあることを様々な国際機関が言及しています。特に化学的に合成された葉酸サプリメントの過剰摂取による有害な影響が言及されています。

ただし、有害な影響が現れるのは過剰摂取した場合であって、耐容上限量を守っていれば大きな影響は無いとされています。また、天然由来の葉酸サプリメントも登場しています。

したがって、葉酸のサプリメントを利用する際には、通常の食事による葉酸の摂取量も念頭に置きながら、葉酸サプリメントの過剰摂取に気を配る必要があると言えます。

葉酸の適正摂取のメリット

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このように葉酸の1日の必要量と摂取方法が分かったところで、葉酸の必要量を毎日摂取すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

葉酸の適正摂取のメリット

葉酸を毎日必要量を摂取することで、得られるメリットには次のようなものが挙げられます。

  • 貧血の予防(造血作用の維持強化)
  • シミやそばかすの改善、胃腸などの粘膜の維持強化(新陳代謝・細胞分裂の促進)
  • 免疫力の向上(造血作用による免疫細胞の白血球の維持強化)

胃腸などの粘膜について

胃や腸の内部は粘膜になっています。粘膜は最も細胞分裂が激しい部位で、絶えず新陳代謝が繰り返されています。特に胃や腸の粘膜は、24時間ごとに新陳代謝が行われています。

妊娠計画時から妊娠初期におけるメリット

妊娠計画時から妊娠初期については、葉酸の付加的摂取が推奨されています。この付加的摂取で得られるメリットには、次のようなものが挙げられます。

  • 子宮内膜が厚くなり、着床率が上がる
  • 妊娠を維持しやすくなる
  • 胎児の神経管閉鎖障害のリスクを軽減する

妊娠中期から授乳期におけるメリット

妊娠中や授乳期についても、葉酸の付加的摂取が推奨されています。この付加的摂取で得られるメリットには、次のようなものが挙げられます。

  • 胎児の発育不良のリスクを軽減する
  • 母体の貧血を軽減する
  • 出生後の赤ちゃんの発達障害のリスクを軽減する
  • 子宮の回復を助ける
  • 出産の影響による抜け毛を抑制する

葉酸が不足すると?

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では反対に、葉酸の摂取が不足すると、どういう影響があるのでしょうか?

葉酸の摂取不足の影響

葉酸の摂取不足による影響としては、次のようなものが挙げられます。

  • 貧血(造血作用の低下)
  • シミやそばかすの定着、胃潰瘍などの胃腸の不調(新陳代謝・細胞分裂の低下)
  • 免疫力の低下(造血作用の低下によって免疫細胞である白血球が減少)

妊娠計画時から妊娠初期における影響

妊娠計画時から妊娠初期については、葉酸の付加的摂取が推奨されています。この時期の葉酸不足による影響には、次のようなものが挙げられます。

  • 子宮内膜が厚くなりにくく、着床率が低下する
  • 妊娠を維持しにくくなる
  • 胎児の神経管閉鎖障害のリスクが上昇する

神経管閉鎖障害

妊娠初期に葉酸の摂取が推奨されているのは、この時期に胎児の器官が形成されるからでした。この妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の器官形成が上手くなされず、赤ちゃんに先天性異常を引き起こす可能性が高まります。

神経管閉鎖障害は、胎生期(妊娠初期)に脳や脊髄の元となる神経管という管状の細胞の一部が塞がることによって、脳や脊髄が正しく成長できずに現れる先天性異常です。代表的な神経管閉鎖障害は、二分脊椎症と無脳症です。

妊娠中期から授乳期における影響

妊娠中期から授乳期については、葉酸の付加的摂取が推奨されています。この時期の葉酸不足による影響には、次のようなものが挙げられます。

  • 胎児の発育不良のリスクが上昇する
  • 母体の貧血
  • 出生後の赤ちゃんの発達障害のリスクが上昇する

まとめ

いかがでしかた?

葉酸の摂取にまつわるメリットやデメリットをご理解いただけたでしょうか?

葉酸は、人が生命を維持していくのに欠かせない栄養素です。また、葉酸は胎児の成長に必要不可欠といえます。

しかし、サプリメントによる葉酸の摂取には、注意が必要です。1日の耐容上限量を超えて摂取していると、思わぬ副作用とリスクに直面する可能性があるからです。

そこで、葉酸のサプリメント摂取には、用量を適切にコントロールする必要があるのです。

妊娠している方も、そうでない方も、葉酸についての正しい知識を備えた上で葉酸を摂取するようにしてくださいね。

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