普通に寝ていて、起きたときに頭がグルグルした。そんな経験は誰もが一度はあるのではないでしょうか?またこのような状態が何回も続いたりすると何か病気ではないのか?と不安になりますよね。
実はこのようなめまいは、耳石が関係する、良性発作性頭位眩暈症であることが多いといわれています。でも原因である耳石って何なのでしょう?耳石やめまいについてまとめてみました。
耳の構造と耳石
耳石とは何なのか?その基本的な情報を紹介します。
耳石とは
耳石とは炭酸カルシウムの結晶からできている組織で、小さな砂粒のような状態のものです。平衡石とも呼ばれます。
私たちの耳には音を聞く器官と、平衡感覚を司る器官の2つの役割があります。平衡感覚を司る器官は、一般的に三半規管と呼ばれています。
三半規管は、身体を傾けたり、回るときに常に身体がどのような位置にあるかを脳に伝える器官です。三半規管の中にはリンパ液が溜まっていて、人が身体や頭を動かすたびにそのリンパ液が揺れます。また三半規管の隣でつながっている耳石器の中には、感覚毛という毛のようなお皿の土台の部分があり、そこに小さな砂粒のような数万個の耳石があります。
耳石は三半規管のリンパ液の流れを感じ取り、水平や上下、左右の動きを保ち、私たちの平衡感覚を保つ役割を持っています。
しかしこの耳石が何らかの原因で、土台からはがれてしまうようなことがあると、そのはがれた耳石が三半規管に入り込むことがあります。そのような状態になると、耳石が動くたびリンパ液が動かされ、平衡感覚がきちんと保たれなくなり、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。
耳石が原因!良性発作性頭位めまい症
一般的な耳鼻咽喉科でめまいの症状があり受診した人の約40%はこの良性発作性頭位めまい症(BPPV)だといわれています。その疾患は、主に更年期の女性に多く発症しています。深夜のトイレに起きたときや明け方近くに寝ながら発症することもあるそうです。
その症状は1分ほど安静にしていれば治まって、また頭を動かしたりすることでめまいが起きるといった具合に、動作を起こすことで発作的に発症するため、本人はとてもつらい思いをします。
良性発作性頭位めまい症の症状
よくいわれている症状には、起床した時、または就寝するとき、寝返りしたときなどに数秒から1分程度で天井などがグルグル回るような感覚におそわれる、またどんどん下に落ちていくような感覚を覚える。
起きているときには、トイレや髪の毛、顔などを洗うとき、前屈姿勢から起き上がるときに、ふわっとした感覚になる。また歩くたびに足もとがふわふわして歩行自体が苦痛に感じたり、症状が出るときには吐き気や嘔吐などの症状が同時に出たりするなどがあげられています。またこのような症状は、
一回だけでなく、複数回不定期に起こり、日常生活に支障をきたすことが多いそうです。
この疾患の特徴として、以下のような症状があります。
- めまいは頭部を動かしたり、寝返りなどを打ったりすることによって発作的に起こるグルグル回転するようなつよいめまい
- めまいの起こるときには、耳鳴りや難聴などの症状はない
- 一回のめまいの時間は長くて1分ほど。
- 同じような症状を繰り返す
- 吐き気や嘔吐などの症状を伴うこともある
このような症状に心当たりがある場合は、良性発作性頭位めまい症かもしれません。最も強くめまいを感じるのは一番最初に症状が現れた時であるといいます。再発したときもしばらくはめまいが続きますが、同じように再発はじめの最初が一番めまいが強く現れます。
原因
この良性発作性頭位めまい症の原因として考えられているのは、耳石が何らかの原因で剥がれ落ち、それが三半規管に入り込んで、平衡感覚がきちんと保たれなくなったことだといわれています。
耳石の剥がれ落ちてしまう原因については、交通事故や過度な運動やけんかなどで頭部や耳付近を強く打ち付けたときや慢性中耳炎などの内耳の感染症などにかかった人に多く見られますが、患者の多くは何かしらの複数のことが原因で起こるものと見られています。
また発症する人の生活習慣などを見ると下記のような生活習慣を持つ人に発症する確立が高いといわれています。
- 運動をしない
- 寝るときは同じ姿勢が多い、また寝返りなどが少ない
- 低い枕を愛用している
- 日頃から横になる習慣がある
- 長時間同じ姿勢でのデスクワークをしている
- 腰痛持ちである
- 不眠症である
このような生活習慣や症状に思い当たることがあれば、いつ耳石が剥がれ落ちてもおかしくないといえるかもしれません。ですが、この剥がれ落ちた耳石は、いつまでもそのままであるわけではありません。
剥がれ落ちた耳石は時間がたつと内耳の中の細胞に吸収されるので、実は症状がでても、通常は数週間程度で自然に治癒します。問題は再発することが多いということです。
病院はどこに行けば良いのか
めまいの症状が出た時、脳に以上があるのかな、と不安に思うかもしれません。確かに高血圧脳症や脳出血や脳梗塞やメニエール病など、めまいが脳の病気から来る危険な場合もあります。
しかし、そのような場合にはめまいの他に神経の麻痺や、嘔吐、痺れ、言語障害、歩行困難、唾が飲み込みづらい、顔面の痛み、耳鳴りなどの症状が併発して現れます。さらにこれらの症状は時間経過とともに収まることはなく、次第に強くなっていきます。
もし、少し時間をおいて、軽減するようなめまいの場合は良性発作性頭位めまい症である可能性が高いでしょう。安心してまずは耳鼻科での検診を受けましょう。
良性発作性頭位めまい症の治療法
では、この耳石が原因の良性発作性頭位めまい症に治療法はあるのでしょうか?
この良性発作性頭位めまい症は、はがれた耳石が細胞に吸収されるまでの間に起こります。なので、期間的に短期間で自然治癒されることが多いのですが、この疾患は再発する可能性が高いので注意が必要です。
そのため、まずは発症してしまったら、めまいなどの発作が起きにくいように予防していくことや、再発しないように予防していくことが大切です。
治療方法としては頭位治療や薬を使っての治療になります。頭位治療とは、患者にフェンツェル眼鏡という分厚い眼鏡をかけて、患者を寝かせ頭を右、左に傾けることでメガネから映し出された目の動きを観察し、どこでめまいが起こっているのかを確認します。
次に頭位変換眼振検査を行い、同じように次は頭を上下に傾けて、目の動きを観察します。これらでの目の動きを観察し、三半規管に入り込んだ石の位置を探りながら動かし続けて石を取り除きます。頭を動かすことで、自然と石が排出されるので、皮膚を切ったりする必要はなく傷も残りません。
その後安定剤、抗不安薬、血流を良くする薬、めまいを軽減する薬などの処方が行われ治療は完了となります。
発症してしまった場合の発作の予防法
めまいが続く場合にそのめまいを予防する方法を紹介します。
頭の動かし方に注意する。
症状のあるほうの耳は上にして横になる。起床時などはゆっくりと起き上がる。頭を下げるような行為はできるだけしない。などの日常の動作に注意する。
また、頭を大きく振ったり小刻みに動かすなどすると石のかけらが三半規管に入り込みやすくなり、入ってしまった石が動き、めまいの症状が強く現れます。一定方向に頭を傾けるとめまいが強くなるなどの事もめまいの具合によって探れるので、めまいが起こりやすい方向には出来るだけ頭を傾けないようにしましょう。
運動療法を行う。
めまいがしても、じっと安静にしているより、運動したほうが症状の改善につながるといわれています。症状が安定しているなら、積極的に身体を動かしたり、ヨガやウォーキングなどの運動をするように心がけましょう。また運動することで、脳や三半規管を刺激し、めまいの発症予防にもなります。
ただ、運動する際に注意することは、
- 発症していてめまいの可能性がある場合には、運動中めまいで倒れないように下に座った状態、もしくはいすに座った状態で行うこと
- 高齢者が行う場合は、無理しない程度で行うこと
- 運動中にめまいが起こった場合は、様子を見て、軽いものであればそのまま無理のない程度で続けてもよいが、そうでない場合はすぐに中止すること
枕の高さを変えてみる
低い枕を使用している人は、少し高めの枕に変えることで発症を予防できるといわれています。これは、寝ている間の寝返り運動で三半規管に耳石が入りにくくするもので、耳石のかけらがある位置よりも三半規管を高い位置に置くことで重力によって耳石の移動を防ぎます。
めまいが起こっているときも有効なのでめまいが酷い人は枕の高さを変えてみましょう。
薬物療法
発作の症状を和らげる薬物療法が行われることがあります。
内耳の血流を改善するための薬や、めまいを抑える抗めまい薬、また何度も発症している場合に精神的な不安やストレスがあるときは、抗不安薬など、そのときの症状の強弱によっても違いますが、薬により症状を緩和することができます。
自分でできる改善方法
一部では、自律神経の乱れから耳石がはがれてしまうのではないかと考えられています。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、この2つのバランスがうまく均等になることで、心身や身体のバランスをとり、私たちの健康を維持する大切な役割があるといわれています。そのため、普段から自律神経のバランスを保ち、心身ともに健康であることが良性発作性頭位めまい症の予防や再発防止にもつながります。
下記のような自律神経のみだれに思い当たることはありますか?
自律神経チェック
- よく頭痛がする
- 常に疲れを感じる
- 体調が悪いと感じる
- イライラする
- よく肩がこる
- めまいや立ちくらみがする
- のぼせる
- 暑いところで寒く感じたり、涼しいところで暑く感じたりする
- 耳鳴りがする
- 便秘や下痢が多い
- 吐き気がする
- 朝気分がふさぐことが多い
- 息切れがする
- 眠れないことが多かったり、反対に眠りすぎたりすることがある
このような症状は、自律神経が乱れているときに起こりやすいものです。日頃から自分の生活習慣や体調などに気を配ることで、予防につながります。
耳石を耳石器に戻す運動
はがれた耳石を三半規管の耳石器に戻す運動もあるそうです。
- あおむけに寝て顔を右側に向け10秒静止
- 正面に向けて10秒静止
- 左側に向けて10秒静止
このような運動を朝晩10回程度行うことで、三半規管に入り込んだ耳石が元に戻る機会が増え、早期回復が望めるということです。
良性発作性頭位めまい症になりやすい人
良性発作性頭位めまい症は40〜50代またはそれ以降になった人に特に多く症状の発症が診られます。耳石が老化によって欠けやすく、剥がれやすくなることも一つの原因です。
耳石が剥がれやすくなるのは、カルシウム不足が関係している可能性があります。特にめまいの症状が女性に多いのは、貧血による場合もあるのと、ホルモンバランスが崩れることが原因でカルシウム不足や鉄分不足になりやすいという特徴があるからです。
耳石の成分は炭酸カルシウムから出来ているので、カルシウムが不足することで、これが欠けやすく、剥がれやすくなる事が考えられます。しかし研究ではっきりカルシウム不足が直接換気していることが明らかにされている訳ではありません。のではっきりこれが原因とは言えませんが、老化による事は確かなので、栄養のバランスには気をつけましょう。
さらに運動をしない人になりやすいという傾向があるようなので適度な運動を忘れないようにしましょう。
良性発作性頭位めまい症の予防のためによい食材など
良性発作性頭位めまい症は、耳石が剥がれ落ち、三半規管に入り込んだことが原因で起きます。その症状は、耳石が細胞に吸収されるまで発症しますが、割と短期間です。しかし、この疾患は、その後何度も起こる可能性のあるもので、根本的な治療には、まず耳石が剥がれ落ちないようにすることが一番です。そのためには、どんな方法があるのでしょうか?
実は発症した患者さんに共通していることに、骨粗しょう症があります。骨粗しょう症の薬を用いた患者さんにこの良性発作性頭位めまい症の再発が70%も抑制されたそうです。このことから、カルシウム不足も原因のひとつだと考えられるようになりました。では、カルシウム不足を補うにはどのようにしたらよいのでしょうか?
カルシウムを身体に補うには、牛乳などの食材が思い浮かぶと思いますが、もっとも身体に吸収されやすいといわれている牛乳でさえも、飲食して体内に吸収されるのは、約4割程度だといわれています。また年齢を重ねるにつれ、その吸収率は下がります。カルシウムを効果的に摂取し、体内の吸収を上げる方法としてよいのは、カルシウムとビタミンKとビタミンDと一緒に摂取することです。これらのビタミンとともにカルシウムを摂取することで、体内吸収率を上げ、骨粗しょう症の予防につながります。
ビタミンDが多く含まれる食材には、魚やきのこ。ビタミンKが多く含まれるのは、葉物野菜や納豆です。
これらの食材とカルシウムを含む、小魚や牛乳、チーズなどの食材を上手に組み合わせることで、日頃から不足しがちなカルシウムを効果的に補いましょう。また規則正しい生活習慣や食生活をすることで、自律神経も整います。そうすれば、耳石のはがれや良性発作性頭位めまい症の予防にもつながります。
まとめ
いかがでしたか?起き上がったときのめまいや発作的に起こる短時間のめまいは耳石がはがれることで起きる良性発作性頭位めまい症でした。
重大な病気であった場合は見逃さないようにしたいめまいですが、病気の早期発見のために、まずはしっかり病院での検査を忘れないようにしましょう。
検査で良性発作性頭位めまい症と判明した際は、原因となる耳石がはがれないように心身ともに健康な身体を作り、保つことが重要です。また年を重ねることで不足しがちなカルシウムを上手に補うことで、その予防が可能です。
良性発作性頭位めまい症は繰り返す事がある病気なので、自己治療方法もしっかり把握しておき、もしもの時や病院に行く時間のない時は、自分で症状を和らげられるようにしておくと良いでしょう。
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