普段の生活の中で耳を掃除する機会ってそう多くはないですよね。それゆえに、耳が痒くなって綿棒とかで掃除しているときはなんともいえない気持ち良さがあります。
「ついグリグリと奥まで」なんて方も多いのでは?
ただ、頻繁に掃除するところではないからこそ耳掃除したときに耳垢が多いと、つい気になってしまうものだと思います。みなさんの中にも、耳垢が多いことを気にしている方も多いのではないでしょうか?
耳垢が多くなると、耳の中がガサガサして気が散ってしまったり、聞こえが悪くなってしまったり何かと悪影響がありますよね。
そこで今回は、なぜ耳垢が多くなってしまうのか。その原因と対策についてまとめていきます!
耳垢って?
さて、耳垢って聞くとどうしても汚いイメージですが耳垢ってなぜ出てくるのでしょうか。
まずは、耳垢の正体について紹介していきます。
乾性耳垢と湿性耳垢
耳垢にはそもそも、乾性耳垢と湿性耳垢の2種類あります。
乾性耳垢は、字の通りパサパサした耳垢なのですが、それに対して湿性耳垢はねっとりと水分を含んでいる耳垢のことをいいます。
ちなみに日本人の場合、耳垢のうち、前者の乾性耳垢が8割を占めているといわれています。風呂上がりの場合は耳垢が水分を含みネットリした湿性耳垢になることもありますが、風呂あがりでなくともネットリした耳垢の人が湿性耳垢で、この場合は耳かきでなく綿棒で取るのが一般的ですね。
ではこの耳垢は、何から出てきているのでしょうか?
耳垢の成分
耳垢は主に、剥離した角化表皮細胞・外から侵入してきたチリやホコリ・皮脂腺、耳垢線からの分泌液が混合したものなのです。
先ほど、湿性耳垢は水分を含んでいるものだといいましたが、この皮脂腺・耳垢線からの分泌液が多い場合、湿性耳垢が出てきてしまいます。空気中のほこりや塵が耳垢の成分になっているので、生活している環境によっては耳垢が黒くなることもあります。
黒土の上で激しく運動する高校球児なんかは、耳垢も鼻くそも真っ黒になるそうです。
こうやって解説していくと、耳垢はなんだか汚い感じがしますね。
みなさんもパッと聞くと、やっぱり耳掃除って大事なんだなって思いますよね?ただ、耳垢にも実は大事な役割があるんです。
耳垢はとればいいものでもない?
ここで「耳垢」の持つ大事な役割についてもお話ししておきます。耳垢には主に、粘膜の保護と抗菌作用の2つの役割があります。
耳垢には、「リゾチーム」という成分を含んでいるのですが、このリゾチームは主に抗菌作用を持っているもので、外から侵入してきたチリやホコリといった菌から守る作用があるのです。
また、保護の役割についてですが、耳の中の外耳道の表皮は細く薄い皮膚細胞でできています。よく「耳は敏感だから、刺激を強めていじるとすぐ傷める」っていいますよね。
それは、耳の中の表皮が薄くてかなり敏感だからなのです。
今お話ししたように、耳垢には表皮を保護し乾燥性の病気を防ぐ役割も持っています。そう。みなさんもお気づきだと思いますが、耳垢はとればいいというものではないのです。
耳掃除をしすぎてしまうと、簡単に皮膚を傷めてしまうので気をつけましょうね!
虫を侵入させない
上記の2つの役割の他にも、寝ている間などに耳の中に虫を侵入させないなどの役割もあります。これは、耳垢に含まれる成分が発する臭いや苦味などを発し、虫の嫌いとする特徴を持つことで、虫が侵入してこないように出来ています。
耳垢は弱酸性であり、若干の殺菌効果も含んでいます。特に虫の量が増える夏の季節には普通に耳の中に虫が侵入し病院に掛かる患者は居ます。その人達の共通点が耳垢が少ないということなのです。
なので、頻繁な耳掃除は虫の生息に適した環境を作り出す可能性もあるのであまり頻度を高く耳掃除を行うと逆効果を産んでしまう可能性もあります。
被害では蟻やコバエが最も多いですが中にはゴキブリが侵入したケースもあります。また蜘蛛が巣を張っていたという被害に合った女性も居ます。
耳垢と咳
耳掃除をしていると、かゆみが取れる感覚のせいでついつい深いとこまでグイグリやっちゃいますよね。
しかし、耳垢は耳の入り口から1cmのとこに多く存在しているといわれています。耳の奥には、実はほとんど耳垢はないのです。
にも関わらず奥の方までグリグリしてしまうと、耳の奥の方の迷走神経を傷つけることになってしまいます。そのとき、迷走神経まで届いてしまうと咳が出てしまう吐きそうになるなどの反応があると思います。
迷走神経には痰などの汚れを排出する役割があるので、刺激されることによって吐き出そうとする反応がでるため、それによって咳が出てしまうのです。
決して風邪をひいたわけではないので安心してほしいのですが、奥の方には耳垢はあまりないので、あまりグリグリしすぎないように注意しましょう。
変に奥まで掃除すると、神経を傷つけることにもなってしまいますよ!
体臭との関係性
湿ったネバネバした耳垢が出る人は体臭がきつくなる事がわかっています。これは汗をかくアポクリン腺が多いことが関係しています。
耳垢が湿ってしまう人は耳の中にアポクリン腺という皮脂腺が多いのでそこから分泌される汗で耳垢が湿ってしまいます。耳の中にアポクリン腺が多いだけで、体の皮脂腺の量と関連していない場合もありますが、耳垢が湿っている人は皮脂腺の量が多く、汗をかきやすい体質なために体臭がきつくなる可能性があります。
もちろん、これは一つの可能性の話であって耳垢が乾燥している人も体臭が臭い人はいるので、絶対的なものではありません。傾向としてそのような事が言われています。
なぜ耳垢は多くなってしまうのか
ではさっそく本題ですが、なぜ耳垢は多くなってしまうのでしょうか?
耳掃除をしすぎてしまっている
散々お話しした通り、耳掃除をしすぎてしまうことも耳垢を増やしてしまう一つの原因です。
先ほど「耳垢の正体は何?」のとこでもお話ししましたが、耳垢には表皮の保護や抗菌作用を発揮するといった役割があるのです。
耳掃除をしすぎると、簡単にいえば皮膚を傷つけてしまうのです。そうすると、傷ついた表皮細胞は新しい組織を作っていくため古い細胞を剥離していくのです。
そして、その際にできた耳垢が気になりまた耳掃除をして皮膚を傷つけてしまう。このような悪循環にはまり、同じことを繰り返してしまう恐れがあるのです。
つまり、耳掃除をしすぎてこれらの垢を排除してしまうと、保護する役割を持つものがなくなってしまうわけですから、当然耳垢が多く出てきてしまいます。
耳垢は皮膚を保護するためにも存在しているので、つい気になって取りすぎてしまうと、せっかく作られていた保護組織を自ら壊すことにもなってしまいます。
ですので、みなさんも耳掃除のしすぎには注意が必要です。
プールや食塩水などが耳に入ってしまう
よくプールや海に入ったときに、水が耳や口の中に入ってしまうことはよくある話ですよね。
みなさんもご存知かもしれませんが、食塩水などのプールに使用されている薬品はあまり体によくないといわれています。
しかし大きな問題は、耳掃除などをして、外耳道が傷つけられているときに、食塩水などの菌がついた水が侵入してしまうことなんです。
傷を負っているところにさらに細菌が入りこんでしまうわけですから、プールや海の水には要注意です。
それによって耳垢が増えてしまい、下手すると中耳炎などを患う可能性すらあります。
プールや海に行くなとはもちろんいいませんが、耳垢が多いことが気になっている方は、海水浴が終わったらすぐに中の水をしっかり抜くなどの対策をすることも大事なポイントですね!
ホコリや空気の汚いところに身をおく
筆者は、鼻炎の症状はないのですが、海外に旅行したときはなぜかよく耳が痒くなります。
未だに本当の原因はわかんないのですが、おそらくその原因は環境が変化し、空気が汚くホコリやチリが耳に入りこんでしまうからだと思います。
外部から侵入するチリやホコリが多いことによって、皮脂腺や耳垢線からの分泌量も増えてしまうので、それに比例して耳垢も増えてしまうんですね。
もしみなさんの中にもこのような反応があてはまる方がいらっしゃれば、耳あてなどをしてホコリの侵入を防ぐことを強くオススメします!
このような環境に身をおいたときは、外部からの細菌の侵入を防ぐことが一番重要になります。
ですので、ホコリが多いようなところに行くときはぜひ気をつけてください!
ちなみに日本で空気汚染での苦情件数が最も多いのは愛知県、東京、埼玉となっています。逆に少ないのは富山、石川です。やはり田舎に行くほど空気は綺麗になっていく様です。
さらに海外での空気汚染がひどい国は皆さんご存知「中国」が1番に挙げられます。また近年フランス、パリでも空気汚染がひどくなっていると報道されています。中国の上海の汚染値が172μg/m³だった同日パリでは110μg/m³の汚染値を観測しています。主に自動車や工場の排気ガスが大気汚染の大きな原因になっていますのこの排気量の多い地域では、特に気をつけたいですね。
脂漏性皮膚炎
「どうしても耳垢が多くて気になる。」あるいは、「耳垢が多い状態がかなり長く続いていて心配だ」という方もいらっしゃるでしょう。
脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔、胸などの汗が溜まりやすいところに炎症ができてフケや湿疹などの症状が出てしまうことをいうのですが、耳垢が多くなってしまうことも症状の一つであるのです。
ただ、脂漏性皮膚炎の場合、片耳ではなく両耳に垢が溜まりやすくなるという特徴があります。
もしも「毎日耳掃除しても耳垢が多い」という状態が続けば、脂漏性皮膚炎であることも十分に考えられます。中には炎症が起きないタイプの脂漏性皮膚炎も存在するため自覚症状が無く気づかない場合もあります。耳垢が多いなと感じるだけでも病気の可能性はあります。
特徴としては皮膚が剥がれたような耳垢や粘度の強いネチャネチャした耳垢や黄色い膿が固まって出来たような耳垢などの特徴があります。耳の穴は自分では見えない部分になりますが、耳孔付近がカサカサしていて、ところどころ皮膚が異常にめくれていたり、強く乾燥した様になっています。両耳に左右対称に症状が出ることが多いです。
そんなときは、放置せずになるべくいち早く耳鼻科で診てもらいましょう。「放置していたら症状がさらに悪くなった!」ってことは絶対に避けましょうね。
病院では抗真菌薬やステロイド外用薬やかゆみの症状がある場合は抗ヒスタミン薬などの薬での保存的治療法を行います。並行して食事法や睡眠や皮膚の清潔などのセルフケアが必要になりますのでそれら自己治療も普段から行っていきましょう。
耳自体に疾患がある
耳垢が多いことの原因の一つに、耳に疾患を持っていることも考えられます。主な疾患の代表例として、外鼻道炎と耳垢栓塞が考えられます。
外鼻道炎は、外耳炎の一つで、耳掃除のやりすぎによって発症してしまう病気の一つです。耳垢をとりすぎてしまうことによって、湿疹ができてしまい、耳の中にさらに痒みを感じてしまうという症状があります。さらに耳の穴から膿が出てくる事もあります。その膿が乾いて固まり、ポロポロと剥がれてきて気になるのでさらに耳掃除をすると言った悪循環も生まれてしまいます。
耳垢栓塞という疾患は、耳垢が大量に固まってしまい、耳の中に詰まってしまうものです。症状として、耳の中がこもったような感じになり、自分の声が頭の中で響くような感覚があります。また、耳垢が固まりとなってしまうことで、そこからカビや菌が繁殖し感染してしまうため、とても恐ろしい疾患です。
どちらも要注意です。
耳に疾患があるというと、中耳炎などがすぐに思い浮かぶかもしれませんが、その他の病気にも油断してはいけません。
これらの症状に当てはまり、気になる方はぜひ耳鼻科を受診してみてください。
正しい耳掃除のやり方
耳垢が増えてしまう原因についてまとめてきました。では一体、どうやって耳掃除をするのが正しいのでしょうか?
さっそく見ていきたいと思います。
ペースを守る
耳掃除の適度な周期は1~2週間に一度だといわれています。ですので、月に3,4回くらいが適当な回数だと思います。
毎日掃除する必要はなく、忘れていた頃に耳掃除するくらいの感覚がベストかもしれませんね。
ちなみに、よく綿棒と耳かきどっちを使えばいいのか?
という質問がありますが、筆者は綿棒を使うことをオススメします。綿棒は使い捨てのものなので、耳かきに比べて衛生面で安全であるからです。
そして耳かきはつっかえてしまったときに皮膚を傷めやすいです。そのリスクを防ぐためにも綿棒が最適であるといえます。
先ほども紹介したように耳垢は耳孔の1cm程の箇所に集中しており、そこまで深く耳かきを入れる必要はありません。綿棒の長さでも十分届く範囲に耳垢は存在しています。慣れてしまっていたり、好みの問題もあるかとは思いますが、綿棒を試したことのない人は一度試してみてはいかがでしょうか?
両手で優しく掃除する
耳掃除をするときはついつい、片手で綿棒をツっコんでグリグリやってしまいがちですが、オススメの掃除の仕方は
①掃除する方の耳に綿棒を少しだけ入れる
②綿棒を持っていない方の手で、掃除する方の耳タブを引っ張る
(このとき、掃除する範囲を広げるため)
③綿棒を軽く持ち、耳垢をすくい上げるような感じでソフトに掃除する
これを左右行うことで、耳を傷つけることなく綺麗にすることが可能です。
みなさんはどうですか?強く掃除しすぎていないですか?
もう一回自分のやり方を見直して、それが耳垢を増やすきっかけになってしまってないか振り返ってみましょう。
正しい耳掃除については、耳掃除のコツはある?頻度や正しいやり方について!を読んでおきましょう。
赤ちゃんや子供の耳かきはどうするの?
基本的に赤ちゃんの耳かきは耳孔の周辺を綿棒で軽く拭き取る程度で大丈夫です。耳垢は自然と耳孔付近に移動してくるようになっています。耳の奥にまで綿棒を突っ込んで耳掃除を行う必要はありません。さらに赤ちゃんの場合は皮脂の分泌が特に多くなっていますので、綿棒で行うことがベストでしょう。
風呂上がりなどの、耳が湿って柔らかくなったときが最も綺麗に取りやすいでしょう。耳全体をウェットティッシュで綺麗に拭き取り、綿棒を使って耳の穴の付近を綺麗に拭っていきます。耳の周辺や穴の周りを軽く拭き取るだけで構いません。
もし中に大きな耳垢や虫などが入ってしまった時は病院で取ってもらいましょう。
子供の耳かきは大人と同様に行っても問題ありません。しかし、子供の耳の奥行きは大人に比べて短くなっています。あまり奥まで耳掃除をしてしまうと鼓膜を傷つけてしまう可能性もあります。耳垢が耳の手前にまで来るのを待ちましょう。
もし奥に耳垢がある場合は病院で取ってもらうか、ピンセットを使って耳垢を取りましょう。綿棒で耳掃除を行う場合、逆に耳垢を奥に入れ込んでしまう可能性もあります。綿棒を使う場合は入口付近の耳垢を拭う程度に留めましょう。
まとめ
みなさんもつい耳掃除が癖になってしまい、かなり深くまでやってしまうこともあると思います。
しかし、一歩間違えると疾患や耳垢を増やす原因になってしまうので注意が必要です。
ただ掃除しているだけなのに、それが結果的に耳垢を増やし、外耳炎を招いてしまう恐れがあります。
そうならないためにも、耳掃除の適度なペースを守り、正しい方法で掃除することを常に心掛けましょう!
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