みなさん器質性便秘をご存知ですか?普通の便秘と違って自己判断で下剤や薬を服用しても治らない便秘です。
器質性便秘は、他に疾患を抱えている場合に起こる便秘で大腸そのものの疾患や、大腸付近の疾患で起ります。治療法は病院で受診すること以外ありません。
普通の便秘と思って自己判断していると、症状が悪化することもありますので、もしかして器質性便秘かもと思った時は至急受診してください。
それでは、器質性便秘について詳しく見てみます。
便秘について
便秘には色々な便秘がありますが、大きく分けて急性便秘と慢性便秘に分けられます。急性便・秘慢性便秘の中で、また、小さく分かれています。
急性便秘
一過性の生活環境などが原因で起こる便秘と、器質性便秘があります。
慢性便秘
慢性便秘には器質性便秘と、機能性便秘の原因に分けられ、排便回数減少型と、排便困難型に症状として分けることができます。また、病態からは排便出障害・大腸通過遅延型・大腸通過正常型に病態分類されます。
器質性便秘は、他に疾患を抱えている人が起こす便秘で小腸・大腸・胃・肛門などの消化管の疾病を抱えている人です。
大腸や大腸周辺が疾患によって腸が狭くなったり、また、腸が変形したりして排便困難となって便秘になります。
機能性便秘は生活習慣の改善で治るのに対して、器質性便秘は病院で診てもらって治療をしないと治りません。
器質性便秘について
器質性便秘は重大な疾患を患っている場合があり、病院で受診して治療しないと生活改善などでは治りません。大腸内視鏡専門外来などで検査をしてもらうとよいでしょう。
器質性便秘によく似た便秘に症候性便秘がありますが、これは、全身性疾患や代謝疾患あるいは加齢など消化管以外の疾病で起こる便秘です。
器質性便秘には狭窄性便秘と非狭窄性便秘に分けられています。
器質性便秘の検査
器質性便秘の場合、まず原因である病気の検査を行います。便替検査、血液検査、腹部X線検査、大腸内視鏡検査、注腸造影検査、などがあります。
▼大腸内視鏡検査は大腸から内視鏡を肛門から侵入させて調べる検査です。
▼注腸造影検査は造影剤を腸に注入して、後からX線撮影をします。
狭窄性便秘
糞便の通過が狭窄によって物理的に障害されて起こる便秘で、腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患があります。検査方法は大腸内視鏡検査・注腸X線検査などの検査が行われます
腫瘍性疾患
腹腔内腫瘍・大腸ガンなどが原因で起こる壁外性圧迫による便秘です。
非腫瘍性疾患
クローン病や虚血性大腸炎などが原因で起こる便秘です。
非狭窄性
大腸の変形によって起こる便秘で狭窄はありません。先天的大腸過長症のように、大腸の長さや大きさが先天的に異常がある場合の便秘によるものなどがあります。
排便回数減少型
大腸が慢性的に明らかに大きくなって、大腸通過の糞便が遅延し排便量が減少したり、排便回数が減少したりする便秘です。
原因は巨大結腸症であり、腹部X線検査や、注腸X線検査などで大腸の慢性的な明らかな拡張を認め診断を下します。
排便困難型
排便困難型は器質性便排出障害ともいい、直腸の形態的変化に伴い、直腸にある糞便を快適にまた、十分量排便することができないので不完全排便や排便困難による残便感を抱く便秘です。
原因としてS状結腸瘤・直腸瘤・小腸瘤・直腸重積・巨大直腸症などがあり、バルーン排出検査や排便造影検査などで診断されます。
排便障害は軟便でも排便困難が生じる不完全排便です。器質性病態が原因なので器質性排便排出障害といわれています。
機能性便秘について
機能性便秘とは、大腸の形態的変化を伴わない便秘で生活習慣などで改善することもあります。機能低下により排便がスムーズにいかない便秘です。
排便回数減少型
結腸に排便回数や排便量が減少して、便が過剰に溜まるため腹痛や腹部膨満感の症状がでる便秘です。
糞便の結腸内での停滞時間が長いため、硬便化して硬便するので排便困難となります。また、専門的検査の大腸通過時間検査などによって、大腸通過遅延型と大腸通過正常型に分けられます。
大腸通過遅延型
大腸が糞便を運ぶ能力の低下により排便量や排便回数が減少する便秘です。薬剤性・症候性・特発性(原因不明)などの原因があり、大腸通過時間検査で大腸の運ぶ能力低下が分かり診断します。
大腸通過正常型
大腸が糞便を運ぶ能力が正常であるのに、排便量や排便回数が減少する便秘です。糞便の基となる食物繊維、食事摂取量などが少ないために糞便量が減って排便回数の減少になります。
また、硬便などにより排便困難などの便秘症状を呈し、大腸通過時間検査で大腸の運ぶ能力が正常であることが分かり診断されます。
しかし、大腸通過時間検査自体の偽陰性の診断能力で正常型と診断される可能性もあります。
▼偽陰性とは本当は遅延しているのに正常型と間違って診断されることです。
排便困難型
排便時に直腸内の糞便を快適に、また、十分の量を排出することができないで、不完全排便や排便困難などによって残便感を抱く便秘です。
大腸通過正常型
排便量や排便回数が減少していないにもかかわらず便が硬く、硬便によって排便困難や過度のいきみを生じる便秘です。
特徴としては酸化マグネシウムなどで軟便化すると排便困難症状がなくなって、排便造影検査を行うと疑似便を敏速に完全に排出できます。
機能性便排出障害
機能的な病態によって、便排出障害のため直腸にある糞便を快適に十分量排出することが不可能で、排便困難や不完全排便による残便感を感じる便秘です。
直腸収縮力低下・骨盤底筋協調運動障害・直腸感覚低下・腹圧(怒責力)低下などがあり、バルーン排出検査、排便造影検査などで診断されます。
便排出障害の軟便でも不完全排便や排便困難を生じ、原因が機能的病態であるため機能性便排出障害といわれています。
▼怒責力とは排便時に下腹部に力を入れるいきみなどです。
器質性便秘の症状
器質性便秘の場合、他の疾患が伴っていますので症状が便秘と共に次のような症状がでる場合があります。
- 激しい腹痛
- 発熱
- 嘔吐や吐き気
- 血や粘膜が便に混じる
- 急に心当たりがないのに便秘になる
便秘と共に上記の症状がでた場合は、医師に至急伝えて相談してください。自己判断は決してよくありません。
器質性便秘の症状の特徴は、お腹が張ったり・腹痛・嘔吐・食欲不振となり、他の便秘に比べて比べ物にならないほど苦しく自然と病院を受診する人が多いです。
器質性便秘の原因となる病気
器質性便秘の症状や原因が分かったところで、原因となる病気はどのような病気があるのか見てみました。
大腸がん
日本人に一番多いのはガンです。その中で大腸がんは死亡者数で上位を占めています。これは食の欧米化により、男女とも影響を受けています。
大腸がんは早期発見すれば、怖い病気ではなく早期の段階で治療すれば完治します。しかし、大腸がんは初期の段階で症状がでません。
大腸の長さは1.5~2mあります。小腸の太さの大きさが500円玉硬貨と同じぐらいなのに対して、大腸は2~3倍ぐらいの太さがあります。
早期の頃の大腸がんは症状がありません。しかし、大腸の壁の外側に向かっていくにつれて、症状が現われてきます。
症状は次のようなものがあります。
- 血便
- 肛門からの出血下血が起きる
- 下痢と便秘の繰り返し
- 残便感
- 便が細くなる
- お腹が張った感じ
- お腹にしこりがある
- 腹痛が起きる
- 貧血が起きる
- 嘔吐する
- 急に体重減少
最初に血便がでたら、痔だと思って対処しない方がおられますので血便がでたら、消化器や胃腸科、肛門科などできるだけ早く受診してください。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は難病です。先進国に多く日本でも急増する病気で、現在17万人がこの疾患を抱えています。米国ではもっと多く日本の10倍の発症率となっています。
原因はまだハッキリとは解っていませんが、免疫機能の不調、過剰な免疫反応が関係しているといわれ、食生活の欧米化や、清潔になり過ぎた環境因子、遺伝や人種などの遺伝的要因などが複合的に影響して発症すると考えられています。
肉体的、精神的ストレスによって悪化することがいわれています。また、近年若い世代の20代で発病することが多くなってきています。
下水道の整った先進国に多い疾患で、除菌がよいとされていますが学会などでは少しくらい汚い方がよいのではないかともいわれています。
症状は血便と下痢で粘膜のようなものがでたり、腹痛や発熱・関節の痛み・発疹などがでたりします。
大腸ポリープ
イボのような隆起性のある病変が大腸にできるのを大腸ポリープといいます。ポリープの種類には非腫瘍性と腫瘍性とがあります。
腫瘍性ポリープ(腺腫)が、徐々に数年かかって大きくなり大腸がんに移行するタイプが大腸がんの9割を占めています。
過形成ポリープの中でも10mmを超えるものはがんへの移行が高いといわれています。
▼過形成ポリープとは直腸の老化現象で起こるポリープです。
腸閉塞
急な腹痛が起こった場合、腸閉塞が原因として考えられます。腸の流れが滞ることで腹痛や吐き気、多様な症状が出てきます。
厚生労働省から先日「ロキソニン」の重大な副作用の項目に、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追記するように指示が出たとのことです。
腸閉塞は腸に何らかの理由により、食べ物や消化液の流れが滞った状態をいいます。詰まった個所より上は正常に働きますが、下の部分は食べ物や消化液が運ばれなくなり、腹痛や嘔吐などの症状が伴います。
そのままにしておくと腸が破裂して腹腔の炎症や感染症につながりますが、適正な治療が行われれば予後は良好です。
腸閉塞の原因には機能的閉塞と、機械的閉塞があります。
機能的閉塞
炎症性の腸疾患などが原因で、腸の運動を司る神経や腸管への血液の流れが異常をきたし蠕動運動(ぜんどううんどう)が行われなくなり、消化がスムーズにできなくなって肛門へ消化物が運ばれなくなった状態です。
▼蠕動運動とは腸が収縮を繰り返して中のものを運ぶ役目をしています。
機械的閉塞
腸閉塞の多くは機械的閉塞に分類されますが、ガンやヘルニアによる閉塞や開腹手術の腸管が癒着することで腸が塞がった状態になります。
腸閉塞の症状は原因によっても違いがあります。腸が完全に詰まった場合は重度の便秘が見られ、部分的に詰まった場合は下痢が起こります。
絞扼(こうやく)を起こした場合は休みなく激しい痛みが続き、放置しておくと腸が壊死してしまう危険な状態になり即手術となります。
▼絞扼とは腸の閉塞によるもので、腸の血流が経たれた状態をいいます。
腸捻転
腸捻転は腸閉塞の一種で、腸がねじれて腸の中の食べ物や消化物が肛門まで運ばれなくなった状態です。
血管も一緒にねじれているため血液の流れも止まっている可能性があります。そのまま放置していると、腸が壊死してしまいます。
腹痛
腹痛は、腸がねじれたためお腹全体に刺すような強い痛みが起こり、腸が詰まったため内容物を押し出そうと腸壁に圧力が強くかかります。このためお腹全体に強い激しい痛みが現れます。
嘔吐・むかつき
腸で詰まった内容物が胃に溜まって、最終的に口から出す嘔吐が始まります。嘔吐する前に胸のむかつきが起こります。
嘔吐の状態で詰まった場所がおおよそ特定され、腸の上部になるほど吐き気が強くなり、嘔吐の内容物の閉塞部が腸の上から下に行くに従い、胃液→胆汁→食べ物カス→便汁と変化してきます。
排便・排ガスの停止
腸が詰まったために、胃から腸に送り込まれた食べ物も動くことができなく、胃液や胆汁も食べ物に混ざったまま腸で停滞し、便もガスも出ない便秘状態になります。
他にお腹が膨れた感じの膨満感の症状がでます。
背中の痛み
背中に痛みがあり、強い腹痛があり、それがだんだん和らいだり、強くなったりと症状が重くなる場合は腸捻転の可能性があります。
関連痛が腸捻転の場合出ることがありますので、背中の痛みと強い腹痛は注意をすることが大切です。
▼関連痛とは関係のない部位が痛むことをいいます。
腹膜炎
腹膜炎は強い腹痛を引き起こすだけでなく、放置していいると死にも至ることがあります。私たちの内臓を覆っている膜を腹膜といいます。
私たちの身体の腹部内臓は、臓器を守るため腹壁に囲まれ保護されこの空間を腹腔といい、腹腔や腹腔の内臓を覆っている膜を腹膜といいます。
腹膜は内臓が擦れたり、ねじれたりしないように、薄い半透明の肝臓や胃といった腹部を覆っている膜で大きさは体表面積ぐらいあります。
この腹膜は普通は無菌状態ですが、外部から細菌が侵入すると腹膜炎を起こしてしまいます。腹膜炎は、単独で罹ることはなく原因は細菌因子と科学因子の2つがあります。
細菌因子の場合は、消化器官の炎症が波及することで急性虫垂炎(盲腸)が進行して腹膜炎を起こすことがあります。他には急性胆のう炎、急性膵炎などがあります。
また、科学因子の場合は、消化管に外傷や消化管疾患により消化管に穴が開いたときに腹膜へ胃液や胆汁などが漏出したりします。
胃潰瘍や胃がん、十二指腸潰瘍などの消化器官疾患を起こした場合、腹膜炎が併発される可能性がありますので注意が必要です。
急性腹膜炎
急性腹膜炎の原因は、主に細菌が体内に侵入することで発症し突然急激な痛みに襲われます。酷い腹痛が特徴で、吐き気や・発熱・嘔吐の症状も見られます。
症状が進行すると腹水が溜まり臓器の内容物が臓器に穴が開いて漏れ出します。
慢性腹膜炎
ほとんど発症の原因となるのが結核菌だといわれています。また、慢性腹膜炎の場合、ガンや手術により発症することもあり病気の進行がとてもゆっくりしているので発見した時は症状がかなり悪化していることもあります。
微熱や食欲不振・全身の倦怠感・腹水が溜まる・腹部の膨張感などがあり、急性腹膜炎に比べて症状は軽く生活に支障をきたすことはありませんが、自然治癒することは無いので病院を受診しましょう。
多くの場合肺結核や結核性胸膜炎などの疾患から血流、リンパ管に結核菌が腹膜に流れて発症したり、開腹手術後に癒着したりして発症します。
子宮筋腫
子宮筋腫は、良性の腫瘍ですからそれ自体命に関わるようなことはありませんが、放置していると、10kgも大きくなることもあり、女性ホルモンによって大きくなり閉経して小さくなります。
数や大きさはさまざまで、大きさやできた場所により症状が異なってきます。
- 子宮の内側・・・粘膜下筋腫
- 子宮の筋肉の中・筋層内筋腫
- 子宮の外側・・・漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
症状としては月経量が多く月経痛が強く、腰痛や頻尿、月経以外の出血があります。症状は子宮の内側にできた筋腫は小さくても月経量が多く月経痛が酷くなります。
また、子宮の外側にできた筋腫は大きくなっても症状が余りでません。大きな筋腫では0.5%が悪性の子宮筋腫が含まれています。
子宮筋腫は息切れや動悸のように更年期障害に似た症状があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?器質性便秘について見てきましたが、普通の便秘だと思って生活改善などしたり、下剤を飲んだりしていると益々悪化することもあります。
便意を催して中々でない便秘は、本当につらいものがありますので、もしかして器質性便秘ではと思った時は迷わず大腸内視鏡専門外来を受診することをおすすめします。
大腸疾患が早く見つかれば便秘の解消法もできますし、治療も早くできますので、早期発見早期治療するために検査を受けることが必要ではないでしょうか?
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