低ナトリウム血症と言う言葉を、ご存知だと思います。熱中症が起こった時などに、良く使われています。身体の中のナトリウムは、血液中または細胞の周囲の体液中に存在しています。
正常な体液のバランスを、保つための働きがナトリウムにはあり、神経と筋肉の正常な機能を保つため、重要な働きをしています。
低ナトリウム血症とは血液中のナトリウムの濃度が低くなる症状です。低ナトリウム血症が起こると水中毒などが起こって、死に至ることもあります。低ナトリウム血症について詳しく調べてみました。
低ナトリウム血症とは
低ナトリウム血症とは何らかの理由によって、血液の中のナトリウムの濃度が、136mEq/lに低下してしまう、電解質代謝の異常によるものです。つまり体内の水分量が過剰にある状態で、水中毒になる可能性があります。
低ナトリウム血症とは、血管内(細胞外液)のNa量が、血管内水分量(細胞外液量)に比べて少ないと言うことなのです。
ナトリウムについて
電解質のチェック
体は常に体の血液量とナトリウムや、他の電解質の濃度を見守っています。血液中の水分量や細胞の周囲にある体液量は、ナトリウムの身体の中にある総量に影響を与えます。
どちらか一方が高くなりすぎると、心臓、血管、腎臓にある感覚器官が腎臓を刺激して、ナトリウム量を増やすように働きかけ、それにより血液量が正常に戻るのです。
血液量の増加
体の中のナトリウムの血液量の調節は、アルドステロンというホルモンを分泌させるため腎臓が副腎を刺激します。腎臓にアルドステロンは働きかけて、カリウムを排泄し、ナトリウムを貯留させます。尿量は少なくなってナトリウム量が保持されるために、血液量が次第に増加してくるわけです。
また下垂体が抗利尿ホルモンを分泌し、腎臓に抗利尿ホルモンは水分を貯留させるために、血液量が増加してきます。
総ナトリウム量
低ナトリウム血症は体内の総ナトリウム量に対して、体内総水分量が過剰だと、示しだされていて低ナトリウム血症では、体液の状態も考慮しなければなりません。
ECF量(細胞外液量)の状態が、体内の総ナトリウム量を反映しています。
浸透圧の低下
低ナトリウム血症では、血液の細胞外液の浸透圧が低下するために、水は浸透圧を一定にしようとして、浸透圧の低いところ(血液)から浸透圧の高い所へ移動します。低ナトリウム血症では、血液中のナトリウム濃度が低下して、血液中の浸透圧が低下します。
つまり低ナトリウム血症では、血液中から水は細胞内に流れるので、水が細胞内に入り細胞内浮腫の状態となるわけです。
低ナトリウム血症の分類
欠乏性低ナトリウム血症
欠乏性低ナトリウム血症は、細胞外液不足によるもので、水の減少が起こる以上に、ナトリウム欠乏が起こっている状態です。腎性体液喪失として嘔吐や下痢が起こり、尿細管障害や利尿薬の投与などで発症します。
熱疲労の様な大量の発汗によって、体液が失われたときに、水分だけ補給してNaを補給しない場合に起こりやすいです。腎臓への細胞外不測の為、血の流が極度に低下するために、腎前性腎不全になります。
正常循環血液量性低ナトリウム血症
正常循環血液量性低ナトリウム血症は水過剰とも言われ、高齢者の抗利尿ホルモン不適合分泌症候群などですが、尿の中のナトリウム濃度が20mEq/lを超えています。
希釈性低ナトリウム血症
希釈性低ナトリウム血症は細胞外液過剰ともいわれ、ナトリウム過剰を上回る水の過剰があります。腎機能低下による腎不全や浮腫や鬱血性心不全があります。
希釈性低ナトリウム血症は、過剰な水分摂取に原因がある、粘膜水腫、アジソン病、非浸透圧性ADH分泌などのもとで、ナトリウムを補給しないで水分のみの補給で起こります。
偽性
高脂血症や高血糖でみられる、脂肪などの増加による見せかけの水過剰を偽性と言います。
鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症
高齢者鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症とは、加齢による血圧や細胞外容量の調節に関わるホルモンの、レニン・アルドステロン系の反応性の低下により、Naの保持機能が低下して代わりにADH(抗利尿ホルモン)が分泌される病状です。
低ナトリウム血症の原因
体液の大量消費、腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用などによりナトリウム濃度が低下します。
ナトリウム濃度の減少
低ナトリウム血症は含まれるナトリウムが体液量に対して、少なすぎる場合に発生します。ナトリウムが希薄になる場合は、体液量が多すぎる場合や少なすぎる場合、また正常な場合でも起こりえます。
たとえば重度の下痢嘔吐などでは、ナトリウムが失われ、その失われた体液の内、水分だけ水分補給がなされる場合、ナトリウム濃度は減少します。
病気によるNa濃度低下
また肝硬変や心不全などになると、体は体液とナトリウムを保持するようになって、ナトリウムよりも体液を保持する働きの方が強くなり、Na濃度が低下することが起こるのです。
一般的な原因は利尿薬の使用、下痢、心不全、腎疾患などで熱中症などによって起こることもあります。細胞外液の喪失も、ADH抗利尿ホルモンの放出を引き起こして、腎臓に水分貯留が起こり低ナトリウム血症が、持続または悪化する場合があります。
高齢者の低ナトリウム血症の原因
高齢者が低ナトリウム血症のリスクを高めるのは、入院中や手術前に輸血を受けたりすることや、また液体の栄養補助剤も原因となることがあります。
高齢者が多量の水分を摂取することで、低ナトリウム血症の血液中の、ナトリウム濃度の低下を招きます。
加齢
歳を重ねると身体の水分とナトリウムのバランスが以下の理由で崩れてしまいます。
喉の渇き
加齢になると身体が水分を要求している感覚が鈍くなって、必要な時に水分補給できなくなることがあります。
腎臓
加齢になると腎機能が衰えて、尿を濃縮する働きが低下して、より多くの水分が尿中に排泄されるようになります。
体液量の減少
加齢になると身体の水分量が少なくなります。若者で体重の60%が水分に対して、健康な高齢者は45%です。ですから発熱が早くなってしまいます。そして頻繁な呼吸によってナトリウムと水分を少しだけ失っただけでも、危険性が伴うのです。
水分が摂取できない
認知症など身体に障害がある高齢者は、必要な時に水分補給できない場合があります。喉が渇いても気が付かない人などがいます。
低ナトリウム血症の症状
低Na血症の症状は一般的には
- 血清Na濃度が120~130mEq/l・・・軽度の疲労感が見られます。
- 血清Na濃度が120mEq/l以下 ・・・頭痛や嘔吐、食欲不振、精神症状が加わります。
- 血清Na濃度が110mEq/l低下 ・・・昏睡や痙攣などの症状を起こします。
初期症状
低ナトリウム血症の症状は最初に動作や反応が、ゆったりしてテンポが遅くなり、錯乱が見られることもあって、低ナトリウム血症が悪化するにつれて、筋肉の発作やけいれんが起こって、無反応状態になり意識障害を、起こすことがあります。
脳の症状
血中のナトリウム濃度の変化に、脳は特に敏感に反応します。脳機能障害の症状の不活発や、錯乱と言った意識障害の症状が最初に出てきます。
心臓の症状
低ナトリウム血症の場合血中の水分が不足するため、喉が渇き水分摂取をしたくなり、血中のナトリウムは低下します。腎臓のろ過機能が低下するため浮腫の症状が出ます。浮腫が進と心不全を起こす危険性も高くなります。
ナトリウム濃度の急低下
血中のナトリウム濃度が急低下することで、突然状態が変化し症状が急激に重症化します。特に高齢者の患者などは、生命に危険が及ぶこともあります。高齢者は低ナトリウム血症の場合、重症化になりやすく、低ナトリウム血症が重症化すると、筋肉の発作や痙攣などが起こり、やがて無反応状態になってしまいます。
無反応状態になってしまうと、強い刺激を与えないと目を、覚まさなくなり昏迷状態に入ってしまいます。そして反応性が完全になくなって、反応できない昏睡状態に陥って、死に至る可能性も出てくるのです。
低ナトリウム血症の高齢者の場合、せん妄を引き起こし、錯乱、興奮、嗜眠などの症状が出ます。心不全や腎臓疾患など、水分とナトリウムのバランスが崩れるリスクが、高齢者には高くなる傾向があります。
低ナトリウム血症の診断
低ナトリウム血症の診断には、血漿浸透圧と尿浸透圧を知ることが重要で、血清Na値、血糖値、BUNから血漿浸透圧を推測します。尿比重から尿浸透圧を推測しながら、浸透圧測定を同時に行って診断します。
細胞外液量が低下しているときは、低ナトリウム血症の判断は、皮膚や粘膜の乾燥や、血圧低下、脈拍の増加などで行います。浮腫みがあれば細胞外液は増加、病歴がなければ細胞外液は正常と考えて、尿中のナトリウム濃度を調べます。
血液検査
低ナトリウム血症の診断は、血液の中のナトリウム濃度を測定する、血液検査の結果により血液検査だけでなく、色々な検査を総合したうえで判断を下します。
尿検査
低Na血症は水の増加Naの喪失によるために起こるので、細胞外液の量と尿のNa濃度を見ると病態の判別がしやすく、細胞外液量により増加・正常・減少の3つに分けられても、判断は難しいです。
細胞外液量が増加していると、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、腎不全などの浮腫の疾患でみられ、これは体内総水分量の増加の方が、体内総Na量の増加より上まっている状態です。
細胞外液の評価は問診、理学所見、検査所見を総合的に総動員して判断します。+-10%の範囲では細胞外液は正常と考えます。
腎性と腎外性の喪失の区別は細胞外液量低下の場合、尿中Na濃度を測定することで判別します。原因不明の低Na血症を見たときは、一度は特に高齢者の場合は、副腎不全を疑う必要があります。
低ナトリウム血症の治療
- ナトリウムが減少している場合は、塩化ナトリウムを補充しますが、48時間以内に25mEq/l以上のナトリウムを補充すると、橋中心髄鞘崩壊症(きょうちゅうしんずいしょう)をおこすことがあるので、注意が必要です。
- 水中毒のように、水過剰の場合は水分制限を必要とします。
- 細胞外液が過剰になると、厳重な水制限と水排出促進が必要です。またナトリウム摂取量の制限や排出量の促進が必要となります。
特定の利尿薬ヒドロクロロチアジドなどの、サイアザイド系の利尿薬を使用すると、低ナトリウム血症の、ナトリウム濃度が危険なほど低下して、思い症状が現われる時があります。
重症・中等症の治療
重症や中等症の場合Naを高張食塩水を使って補正して、ODS(浸透圧性脱髄症候群)の発生を予防するため、補正するスピードに注意を払わなくてはなりません。ODSの発生を防ぐための補正の速度は24時間で9mEq/l未満で、48時間で18mEq/l未満にします。
症状がある場合は水分調節と、Na補正が早めに必要です。また精神症状や痙攣が見られるような重篤な低Na血症の場合は、緊急なNa補正が必要となります。
細胞外液量欠乏の場合は、腎性Naまたは腎外性にNaが喪失した時に見られます。利尿薬使用時には腎性Na喪失が見られ、嘔吐や下痢の時には腎外性Na喪失が見られます。
血漿浸透圧、尿電解質濃度、体液に注目して治療をするのが低ナトリウム血症です。
軽症の治療
低ナトリウム血症の軽症の場合、めまいや歩行障害、記銘力低下などや症候性ではない場合はきちんと病態を調べて、病態の把握をして病態にあった治療を行っていきます。
- 細胞外液量増加型の場合だと水、Na制限したり、利尿薬など使用します。
- 細胞外液正常型な場合だと水制限を行います。普通多くの場合800ml/日以下に制限します。
- 細胞外液減少型の場合だと、Naを補充します。Na補充には高たんぱく食や高塩分食、0.9%の生理食塩水の投与などします。また病態に応じては、フルドロコルチゾン(フロリネフ)の投与を行います。
低ナトリウム血症の治療には水分制限や、利尿薬の使用停止は症状により役に立ちますが、重度の低ナトリウム血症は緊急性を要するので、薬物の使用や輸血などの療法が必要となります。
低ナトリウム血症になりやすいのは、高齢者の女性に多いのですが、利尿薬のループ利尿薬よりも、サイアザイド系利尿薬で起こりやすくなります。
細胞外液欠乏のナトリウム血症
相対的低張な輸液製剤投与があり、細胞外液量が低下し、生理的ADH分泌刺激がある場合に発生して、発生頻度はとても高いです。
有効循環血漿量を維持するため、生理的食塩水を投与します。有効循環血漿量を補充し生理的食塩水を投与すると、ADH分泌も抑制されるとともに、血清Na値の改善を行うことが期待できます。
細胞外液欠乏のNa血症
有効循環血漿量を維持するため、生理的食塩水を投与します。相対的に低張な輸血製剤が投与され、細胞外液量低下があり、生理的ADH分泌刺激により発生し頻度は高いです。
有効循環血漿量を、補充し生理的食塩水などを投与すれば、ADH分泌も抑制されて、血清Na値の改善を期待することが出来ます。
細胞外液量が正常の低ナトリウム血症(SIADH)
水制限で症状が軽微な場合は行います。過剰な自由水を除去するため水分貯留が、顕著なSIADHではラシックスを投与します。
低ナトリウム血症の予防
低ナトリウム血症の予防には、病気や薬については専門的な予防が必要となりますが、私たちが低ナトリウム血症の予防をするには、運動の時と熱中症で起こる場合があります。
マラソンの予防
マラソンなどの運動をするときは、ナトリウム濃度が0.1~0.2%の食塩水などを摂取して、なおかつ水分摂取量を注意して、練習中に低ナトリウム血症になる、体重の増加が起きてないかチェックしながら、練習をすることが大切です。
またマラソンなどは、喉が渇いたら水分を取るほうが、低ナトリウム血症の回避と、脱水症状の予防を同時に行えるそうです。
夏の熱中症の予防
夏の熱中症を予防するには、普段よりも若干塩分を多く取っておくと良いです。健康な人は塩分が多く身体の中に取り入れても、排尿で排泄されます。しかし塩分が身体の中で少なくなると、筋肉等から塩分を引っ張りだしてこないと、身体を正常に保つことが出来ません。
その為Na量が少なくなると、上に書いたような症状が出てきます。そして低ナトリウム血症の症状になりますので、汗を掻いて身体の水分の喪失量が多いときは、塩分と一緒に水分補給をすることを忘れないで、脱水症状にならない様注意しましょう。
まとめ
如何でしたでしょうか?低ナトリウム血症は放置すると、本当に危険な状態になります。私たちの身体がこのような、水分と塩分の電解質のバランスにより、保立てれいるということを頭に入れておくことです。
水だけを補給すれば大丈夫と言う、誤った考えを浸透させてはいけません。水分量とNa量が崩れただけで死に至ることもあるので、とても注意が必要に思います。
病気を抱えておられる人は、利尿剤一つで危険になることもありますので、良く担当医に説明を聞いて、対処されることが必要となってきます。
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