体の生命活動に必要な物質は様々あります。その中でもミネラルは内臓活動を支えたり、体を状態を安定させるといった重要な役割があります。なければならない成分なのですね。
そんなミネラルの一つであるカリウムが高値になってしまう病気が高カリウム血症。症状が進行すると、時として命の危険がある病気です。
では、この高カリウム血症はどのようにして起こるのでしょうか。またその治療法や予防法についても詳しくみていくことにしましょう。
高カリウム血症とは?
この病気は冒頭でも述べたように、血液中のカリウム値が高くなってしまう病気です。カリウムの基準値は3.5〜5.0mEq/Lですが、5.5以上となると高カリウム血症と診断されます。血液検査でしばし発見されることがあります。
ちなみに「mEq」はミリイクイバレントと呼びます。ミリは1000分の1。mEqはある溶液の中に電荷を持った粒子がいくつあるのか、という指標です。
高カリウム血症の症状とは?
高カリウム血症を発症すると以下の症状を招くことがあります。
不整脈
脈のリズムに何かしらの異常を発症するのが不整脈です。脈が遅いものを徐脈。早いものを頻脈。不規則な脈拍を期外収縮と呼びます。高カリウム血症ではこのうち頻脈を好発します。
高カリウム血症を発症すると心臓の興奮後の回復時間が短くなります。つまり、脈拍が速くなるということ。さらに症状が進行すると心臓内での電気信号の伝達が悪くなり、最悪の場合、心不全に陥ります。
不整脈については、不整脈の原因とは?症状や治療方法も合わせて紹介!を参考にしてください!
神経症状
カリウムは心臓の活動以外にも神経伝達にも必要なミネラルです。高カリウム血症を発症すると、この神経伝達がうまく行われず、神経障害が起こります。
具体的には四肢の麻痺、しびれ、異常感覚などです。症状が進行するほど、自由が効かなくなるため、症状発症時には早急な対応が必要でしょう。
吐き気・嘔吐
高カリウム血症で起こるわかりやすい症状は吐き気や嘔吐です。動悸やしびれとともにこれら症状がみられたときは注意が必要でしょう。
そのほかの症状
高カリウム血症ではそのほか強い倦怠感、脱力等の症状も起こります。力が入らなくなったり、倒れてしまうということもあるのですね。
症状が進行すると突然意識を失い、自分ではどうすることもできないなんてこともあります。そうならないためにも、普段から高カリウム血症を予防することが大切です。
高カリウム血症の原因とは?
血液中のカリウム濃度が高くなってしまう、高カリウム血症。この命の危険もある病気の原因とはなんなのでしょうか。具体的には以下のことがあげられます。
腎臓疾患
腎臓は血液をろ過し、尿を排出するという役割があります。そしてもう一つ、体内のミネラルバランスも整えるという役割も持っています。高カリウム血症は腎臓に何かしらの異常が起こると発症することがあります。
例えば腎不全は腎臓機能が停止してしまう病気です。腎臓内にはろ過をする糸球体という網状の組織がありますが、これが根詰まりを起こしてしまうと老廃物を排出できず、腎不全となります。
腎不全の診断としては、通常の腎機能より30%以上の機能低下が認められる場合です。また、慢性腎不全に移行した場合、腎臓の回復は不可能といわれています。
カリウムは摂取しすぎても、腎臓がきちんと働いている限り、高カリウム血症になることはありません。反対に腎不全など、腎機能の低下を招く病気を発病すると、高カリウム血症のリスクが高まるのです。
薬の服用
病気の治療のために薬を飲んでいる。これは病気治療では当たり前の風景ですが、時として高カリウム血症を招くことがあります。
薬の中にはほかの治療のためにカリウムを含んでいるものがあります。このような薬を複数種類、多量に服用している場合、高カリウム血症を発症することがあります。
特に高齢者では高血圧や関節痛の薬を飲むことがありますよね。それぞれの症状に対して薬を飲まなければなりませんから、必然的にその量も多くなります。結果、カリウムが多くなってしまうのです。
アシドーシス
私たちの血液のpHは7.4±0.05の範囲で保たれています。この範囲でpHを保つことが体の健康状態を維持する条件の1つです。しかし、血液のpHが何らかの原因で酸性に傾いてしまうことがあります。これをアシドーシスといいます。
アシドーシスが起こると、血液中の水素と細胞内になるカリウムが交換されます。カリウムは血液中に放出され、これをきっかけとして高カリウム血症になってしまうことがあります。
アシドーシスは腎臓病のほか、呼吸器のガス交換機能の低下、糖尿病などが原因として起こります。他の病気と合併することがあるため、注意が必要です。
インスリン欠乏
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンの一種です。血糖値を下げるという大きな役割がありますが、カリウムを細胞内に移動させるという役割もあります。ちなみに血糖値を下げる唯一のホルモンです。
インスリンが欠乏すると、血液中のカリウムは正常に細胞内に取り込まれなくなってしまいます。そのため、血液中のカリウム濃度が上昇。高カリウム血症の原因となるのですね。
インスリンは膵臓でしか産生されないホルモンです。そのため、膵臓を疲弊させる生活習慣が膵臓機能の低下、そしてインスリン欠乏を招くのです。
その他の原因
高カリウム血症では基礎疾患の他にも原因があります。それは一時的な体調不良、潰瘍などの消化管からの出血などがあります。
カリウムを含む食材の過剰摂取が原因?
高カリウム血症を招く原因として言われているのが、カリウムを含む食材を大量に食べることです。しかし、症状を招くほど食材を食べることはなかなか難しいのかと思います。
全く病気のない健常者の人が、カリウムを含む食材を大量に食べることで高カリウム血症を発症するのは考えにくいでしょう。それだけの量を食べるのも、胃袋の大きさから考えて難しいです。
ポイントは腎臓に何かしらの病気を抱えているかどうか。血液中のカリウムは腎臓でろ過され、余分な分は尿として排出されます。このとき、腎機能が低下していればカリウムが体内に残ってしまい、病気を招くことがあるのです。
カリウムのとり過ぎに注意しなければならないのは、こういった基礎疾患がある人であり、普通の病気のない人は過度に心配する必要はないでしょう。
カリウムの過剰摂取については、カリウムを過剰摂取した時の症状は?予防方法も紹介!を読んでおきましょう。
高カリウム血症の治療
高カリウム血症になってしまったとき、早急な治療が必要です。では、具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。
薬物療法
血液中のカリウムの濃度を直接・間接的に下げる効果のある薬剤を服用することで症状を治療していきます。以下の薬があります。
利尿薬
利尿を促すことで、カリウム排出を促進します。
重炭酸ナトリウム
血液中のカリウム濃度を下げる効果があります。
陽イオン交換樹脂製剤
カリウムが体内に吸収されるのを抑える効果があります。
カルシウム製剤
症状による心臓への悪影響を防ぎます。
血液透析
高カリウム血症を発症ののち、緊急性が高く、薬物療法で改善がみられない場合、血液透析を行うことがあります。血液を人工的にろ過し、血液中のカリウムを洗い出します。
血液透析後はしばし、いくつかの症状を発症することがあります。倦怠感、吐き気、頭痛。ひどい場合では痙攣といったこともみられます。
食事療法
カリウムを含む食材を避けることで治療を行なっていきます。カリウムは野菜や豆類などに豊富に含まれます。摂取量には十分注意する必要があるでしょう。
基礎疾患の治療
高カリウム血症ではそれ単体で発症することはあまりありません。先ほど述べた原因でも腎不全やインスリン欠乏などが合併し、症状を招きます。
このため、根本的な高カリウム血症の治療は、その背景にある基礎疾患の治療がポイントです。治療が長期化することもありますから、十分な覚悟が必要かもしれませんね。
例えば腎不全は高血圧や高血糖が引き金になることがあります。更に言えば高血圧は塩分のとりすぎ。高血糖は糖質のとりすぎが原因です。
このため、総合的な食事改善が治療に必要です。塩分や糖質を控え、なるべく質素な食事をする。腎機能を少しでも回復させるために必要なことです。
インスリン欠乏もまた食事の改善が基本的な治療です。インスリンは糖質を摂取すればするほど分泌されますが、その分、膵臓も疲弊します。その状態が続けばやがて膵臓機能が低下し、インスリン量も減少します。一つの病気が新たな病気を招く。高カリウム血症はその例の一つでしょう。
高カリウム血症を予防する
重篤な症状を招くことがある高カリウム血症。その主な原因は腎臓機能の低下やインスリン欠乏です。また、多量の薬の服用も症状を招く原因です。
これらに共通することは生活習慣に密着しているということ。腎臓機能の低下は高血圧、高血糖が原因ですし、インスリン欠乏も同様です。薬の服用もまた生活習慣が原因で起こる病気によるものです。
つまり、高カリウム血症を予防するためには、生活習慣を改善することが第一歩といえます。それは特に食事がポイントになるでしょう。普段食べているものが、私たちの健康を左右するのです。
高血圧の予防
血圧が高いことは腎臓に負担をかけ、やがて機能を低下させてしまうことがあります。腎臓には血液が集約してしますから、その圧力が高いと疲弊してしまうのは当然ですよね。
高血圧を予防する第一歩は減塩です。日本食は塩辛いことが一つの特徴ですが、摂生することで過度な塩分摂取は予防することができるでしょう。
反対に現代ではお金を出せばなんでも食べ物を食べることができます。塩分が多く入っているラーメンなどの麺類なんかは特に注意が必要です。
減塩対策の一つは香辛料を使うことです。それは辛味のある唐辛子をいれてみたり、胡椒などを使ってみるなどです。例えば味噌汁の味噌を薄味にして、食べる前に唐辛子を入れるというのも立派な減塩対策です。
高血糖の予防
高血糖は日常的な糖質の過剰摂取が原因で起こります。先に述べたように、なんでもお金を出せば食べられる時代のある意味弊害と呼べる部分なのかもしれません。
高血糖の予防では、炭水化物や糖質を減らし、一方でタンパク質や脂質の量を増やすことが大切です。ご飯の量を減らし、お肉や野菜、魚を食べるということですね。
また、ついつい食べてしまう菓子パンやお菓子。特にいつもテーブルにお菓子が置いてあれば注意が必要です。ついつい手が伸びてしまい、糖質を摂取してしまうなんてことがあるでしょう。
薬を飲まないために
高齢になってくると、体の調子が悪くなって、薬を飲むなんてことがあります。しかし、体はどんどん悪くなっていき、薬の量が増えていくなんてこともあるかもしれませんよね。
薬を飲んで体調不良を治す、というよりは薬を飲まないように体調管理をすることが大切なのだと思います。あれこれと薬ばかりに頼ってしまうと、高カリウム血症を始め様々な症状を招くことがあるでしょう。
健康の基本は食事、運動です。体によい食事を食べ、体力を低下させないために運動をする。これらを習慣化できていれば、薬から卒業することはそう難しいことではないでしょう。
予防は身近なことの少しの改善
高血圧にしても高血糖にしても、生活習慣の積み重ねによって起こるものです。人の2倍ご飯を食べれば、それだけ身体に負担がかかりますから、病気になるリスクも高まります。
ただ、一方でちょっとしたことに気を配るだけで、病気は容易に回避することができます。それこそ、塩分より香辛料を使うなどが効果的です。
自分がどうして病気になってしまったのか。そういったことを考えていくと、とても身近な習慣にたどり着きます。その習慣を改善すれば、高カリウム血症を始め、あらゆる病気を予防することができるのだと思います。
低カリウム血症とは
高カリウム血症の反対の状態、低カリウム血症についても少しみておきましょう。この症状はそんなの通り、血液中のカリウム濃度が低下してしまう状態です。
症状は高カリウム血症に似たような症状を発症します。それは脱力感、倦怠感、嘔吐、四肢の麻痺などがあげられます。症状進行に伴って、重症化しますので注意が必要です。
低カリウム血症の原因は食事からのカリウム摂取量が足りなかったり、嘔吐や下痢など胃腸内容物の排出が頻繁に起こるケースが主です。また、インスリンの分泌過多によってカリウムが細胞内に取り込まれ過ぎてしまい、カリウム濃度が低くなるということもあります。
これらを起こしてしまう原因としては大量の飲酒、感染症等による下痢、利尿剤などが考えられます。短期間で体の水分が減ってしまうというときは注意が必要かもしれません。
低カリウム血症の基本的な治療はカリウムの摂取です。それは錠剤として摂取したり、食事をきちんと食べるなどが主な治療になります。その他、原因がある場合はその治療に専念することで低カリウム血症を改善することができます。
低カリウム血症については、低カリウム血症について!症状や原因、関連する病気を紹介!を読んでおきましょう。
高カリウム血症をどう考える?
体の中にあるミネラル・カリウムのバランスが崩れてしまうことで起こる高カリウム血症はとても危険な症状の1つです。症状の進行に気づかず、そのままにしてしまうと命を落とすこともあるからです。
ただ、一方で高カリウム血症を発症するまでの過程で病気に気づくことはできるかもしれませんよね。特に原因である腎不全やインスリン欠乏は初期症状としてあわわれることがあります。
腎不全であれば尿に顕著な症状が現れます。尿を排出した際、トイレの水に泡ができていたり、その気泡がなかなか消えないというようであれば、腎臓に異常があるかもしれません。
インスリン欠乏を起こす糖尿病や高血糖も同様の症状がみられます。尿の泡立ちのほか、尿の匂いが甘くなるなんてことも初期症状としてみられます。
また、食生活で偏りがある人も注意でしょう。高カロリー、低栄養の食品を食べている人ほど、生活習慣病を発症しやすいです。これは高カリウム血症だけではなく、他の病気を招く原因です。
このような、いわゆるジャンクフードを習慣的に食べているようであれば、その先にあるのは病気かもしれません。食生活を見直す必要があるでしょう。
まとめ
高カリウム血症は基礎疾患によるものや、薬の服用によっても起こります。高齢になるほど体に不調が出るものですが、病気を発症してしまうと高カリウム血症のリスクが高まることもあるでしょう。
そうならないために大切なのは、やはり普段から健康に気を使うということ。具体的には食事や運動をおろそかにしないということでしょう。その判断も難しいことではないと思います。
命の危険もある高カリウム血症。それから身を守るために、健康を意識し、体のためなる生活習慣を取り入れていくようにしてくださいね。