カリウムは体の浸透圧に大きく関わる成分で、むくみに関係があるというのは良く知られた話です。通常であれば摂取しすぎても問題ないミネラルなので、気をつけて積極的に摂取するようにすると良いでしょう。
様々な病気、生活習慣により血中のカリウムが減ってしまうと、低カリウム血症という症状におちいってしまう場合があります。カリウムは腎臓や筋肉などたくさんの器官に関わっています。放置すると神経や呼吸筋にまで影響が及ぶ恐れがあるので注意したい症状です。
カリウムが少なくなってしまう原因と、低カリウム血症に近い状態になりカリウムの摂取不足になった時にカリウムを効率的に取り入れる方法についてまとめました。
カリウムとは?
カリウムとはアルカリ金属元素の一つで、人体に欠かせないミネラルです。ナトリウムとともに細胞の浸透圧を維持し調整する役割を持っており生命活動の維持を担うと共に、ナトリウムの排出を促し血圧の上昇を抑える働きも持っています。腎臓に溜まりやすい老廃物が排出されるのを促す働きもあり、腎臓の健康や体内の老廃物の排出に大きく関わっています。
また、神経の働きを保ち筋肉の収縮をコントロールしているのもカリウムです。
上記の通り、カリウムと関係の深い栄養素にナトリウムがあります。カリウムの作用として体内のナトリウムを体外に排出する働きがあり、ナトリウムを摂取しすぎるとカリウムは減少してしまいます。また、カリウムが減少すると細胞内のカリウムはナトリウムと置き換わってしまいます。
- ナトリウムが増える→カリウムは減る
- カリウムが増える→ナトリウムには変化なし
- カリウムが減る→細胞内のカリウムはナトリウムに置き換わる
という仕組みになっています。
体内のカリウムは、その大部分、98%程度が細胞の中にあります。血液中など細胞の外に含まれるカリウムはごくわずかで、そのバランスが保たれていないと細胞の働きがうまくいかなくなります。
カリウムの過不足により起こる症状
カリウムは多すぎても少なすぎても体に悪影響です。
高カリウム血症
一般的にはカリウムの過剰分は尿として排出されるので、取り過ぎて心配する必要はありません。ただし、腎臓の機能に障害がある場合は調整がうまくいかなくなる場合があります。
腎不全によりカリウムの排出機能が衰えている場合や、副腎に病気がありアルドステロンの分泌が低下している場合、カリウムを薬剤などにより大量に摂取した場合などに起こりえます。アルドステロンはステロイドホルモンの一種で、腎臓からのナトリウム排出を抑制する働きを持っています。
血中のカリウム濃度が高くなることによって筋力が低下し、不整脈が起こり心臓マヒにつながる場合もある恐ろしい病気です。
高カリウム血症に関連する病気として以下のものが上げられます。
代謝性アシドーシス
「アシドーシス」は体内が酸性に傾く病気です。分解された時に酸になる物質や薬の摂取によって起こる他、代謝の異常、腎臓機能の低下により起こる場合もあります。
高血糖
インスリンには腎臓でのナトリウム吸収を促す効果があります。インスリンが高くなるとナトリウムが吸収されすぎてカリウムが減る、インスリンが低くなると逆に血中のカリウムが増加する傾向があります。
ジゴキシン中毒
ジゴキシンは心不全の治療薬の一つで、心臓の働きを強くする効果があります。心臓の収縮力を強める古くある薬で現在でもよく使われるものですが、中毒になりやすいという副作用を持っています。
繰り返しになりますが、健康な人であれば余分なカリウムは排出されます。腎臓に病気のある人だけ気をつけて下さい。
低カリウム血症とは
高カリウム血症とは逆に、血液中のカリウム濃度が低下してしまう病気です。
主な症状
カリウムが低下した場合に影響を受けるのは筋肉と消化管、腎臓、神経系であり、影響によって以下のような症状が現れます。
- 筋肉:筋力低下、筋肉痛、足のつり、四肢麻痺
- 消化管:嘔吐、便秘、腸閉塞
- 呼吸器系:呼吸筋麻痺
- 腎臓:多尿、多飲、排泄異常
- 神経系:麻痺、自律神経失調
軽度の場合無症状なことが多く、若干の高血圧や不整脈が見られる程度です。しかし重症化すると四肢の麻痺や呼吸筋の麻痺、不整脈、腸閉塞が起こります。
低カリウム血症の検査方法
まず低カリウム血症の疑いがある場合は身体のどの部分で問題が起こっているか調べる必要があります。まずは、血液検査によって低カリウム血症かどうかを診断することができるのですが、さらにそこからその原因がどこから来るのか調べる必要があります。
大きく分けて体内のカリウムが減少する原因は3つあります。一つ目は食事によるカリウムの摂取量が少ないこと、2つめは腎性の原因で尿により排出されるカリウムの量が多いこと、3つめは腎外性の原因で血液中のカリウムが細胞に取り込まれてしまうことです。
拒食症を患っている人や下痢や嘔吐が長期間続いている人や副腎皮質の病気や甲状腺機能亢進症の人や利尿作用のある薬を飲んでいる人や副腎皮質ホルモンの影響で腎臓内のカリウムが失われる場合もあります。
これらの原因を調べるために血液検査の他にも腎機能検査や副腎皮質ホルモンの検査、消化管の検査、心電図や腹部のX線検査等の検査を行って詳しい症状と原因の検査を行っていきます。
これら全てを行うわけではなく、まずは血液検査と尿検査や問診などで、食事や薬や点滴などでのカリウムの摂取量と体外に排出されるカリウムの排出量のバランスを見てから、異変などが見られる点をあらかじめ検討をつけて検査は行われます。
低カリウム血症が関連する病気
低カリウム血症の原因となりうる病気は、カリウムの摂取が足りなくなるものとカリウムが体外に流れ出してしまうものの、血液中のカリウムが他の細胞に取り込まれてしまうものの3種類に分けることができます。
カリウムの摂取自体が不足している
食事や点滴や薬などでのカリウムの摂取が不足していることが原因でカリウムが不足しているケースがあります。具体的な原因となる症状や現象について見ていきましょう。
拒食症
神経性やせ症とも呼ばれる摂食障害です。何か精神的な問題があり食欲がなくなるもので、自動的にカリウムの摂取量自体が少なくなるため低カリウム血症を起こしやすくなります。
特に10代や20代の女の子での発症患者が多く、精神的なストレスの他にダイエットがエスカレートすることで拒食症になってしまうケースもあります。過剰な食事制限や偏食がきっかけとなって拒食症が始まっていきます。低体温、味覚障害、思考力低下、生理不順などの症状が現れます。
拒食症になってしまった場合はまずは心療内科、精神科、心理カウンセラーなどによる治療を行います。
飲酒
大酒飲みの人の場合もカリウムの摂取量が不足する場合があります。
アルコールは胃や腸の内側を損傷し、栄養素の吸収自体を阻害する可能性があります。また膵臓の働きを抑制することにより栄養素の分解を送らせる作用や、肝臓への負担が生じます。
また、アルコールには利尿作用があるため、排尿によって同時にカリウム、ナトリウム、リン酸、カルシウムなどの栄養素が失われてしまいます。
どうしても飲みたいという場合であれば、赤ワインにはカリウムが含まれていますが利尿作用と打ち消し合ってしまうようです。お酒はほどほどに抑えるようにしましょう。
尿の中にカリウムが流れ出してしまう病気
尿内にカリウムの成分が流れ出てしまう病気を紹介します。
アルドステロン症
高カリウム血症の部分でも触れたアルドステロンに関する病気です。アルドステロンは副腎(腎臓のそばにある内分泌器官)で作られますが、作られすぎると体に悪い影響を与えます。
主に副腎の腫瘍をもともとの原因としていることが多く、アルドステロンの濃度が上がると水分を貯蓄する方向に体が傾き、尿の中にカリウムが失われてしまうため血中のカリウム濃度が低くなってしまうのです。
血圧の上昇、脱力感、麻痺などが症状で、治療はまず副腎に腫瘍があればそれを取り除くことが第一で、多くの場合は手術だけで改善します。腫瘍でない場合は副腎を部分的切除し、薬でコントロールします。
クッシング症候群
クッシング症候群も副腎皮質の病気です。難病に指定されており、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれます。
コルチゾールというホルモンには血中のナトリウムを保持する働きがあります。クッシング症候群になるとこのコルチゾールが大量に作られてしまい、ナトリウムの保持能力が高まる替わりにカリウムが尿の中に流れ出してしまい、低カリウム血症を招きます。
主な原因は下垂体腺腫(脳腫瘍の一種)であることがほとんどなので、手術で下垂体腺腫の治療を行うのが最善とされています。
顔がむくみ、皮膚が薄くなる、皮下出血しやすくなるなどの症状が出て来て、治療をしないでいると高血圧や糖尿病、免疫低下による敗血症などを起こす可能性があるため一刻も早く治療を行うよう呼びかけられています。
細胞の中にカリウムが取り込まれてしまう病気
細胞内にカリウムが取り込まれてしまう病気について紹介します。
アルカローシス
前述のアシドーシスと対になる症状です。血液のpH値がアルカリの方に偏ってしまうものをアルカローシスと呼びます。もととなる病気は様々で、利尿薬を飲んでいる場合や先天的に腎臓に問題がある(バーター症候群・ギデルマン症候群などがあります)場合などの可能性があります。
重度になると頭痛や痙攣の発作、低カリウム血症を併発することによる脱力を起こすことがあり、早めに治療する必要があります。
甲状腺機能亢進症
バセドウ病ともいわれる病気です。甲状腺はせのどぼとけの下、気管の前にあるもので、血液中へのホルモン分泌や代謝を正常に保つ働きを持っています。様々な病気が起こりえますが、そのうち甲状腺機能亢進症は甲状腺の働きが大きくなりすぎるものを指しています。
甲状腺機能が亢進すると交感神経が刺激されて緊張した時と同じような症状が出ます。動悸、息切れ、疲れやすさ、手の震えなどが主な症状です。
代謝が亢進するため、カリウムイオンが細胞内に取り込まれてしまい血中のカリウム濃度が下がってしまうことが低カリウム血症につながるとされています。
詳しくは、甲状腺機能亢進症の症状をチェック!原因や治療方法も紹介!を読んでおきましょう。
低カリウム血症の治療と予防
低カリウム血症は、まずは経口療法(内服薬)で治療されています。
また、元となっている病気がある場合はそちらを治療する必要もありますが、どちらを先に治療すべきかについては病気の種類や症状によって異なるので、医療機関で診察を受けるようにしましょう。また、状況によって点滴を行うことがあります。
低カリウム血症と言われる状態に既になってしまっている場合、単純にカリウムの多い食材を採るだけでは改善しない場合もあります。カリウムは摂取し過ぎて悪いことはない(腎臓の病気がある方は別なので要注意です!)なので、以下にカリウムを含む食品をまとめました。
カリウムを含む食べ物
カリウムは野菜や果物、豆類に多く含まれています。一日の目安は男性で2500mg、女性で2000mg程度です。
普通に食事をしていれば欠乏することはまれですが、夏場など大量に汗を欠いた場合や、利尿剤を使っている場合などは尿と一緒にカリウムが出てしまうことがあるので、気をつけて食べものから摂取するとよいでしょう。
野菜
100gあたりで最も含有量が多いのはパセリ、また、唐辛子やニンニクなどにも多く含まれます。
とはいえパセリだけ100gも食べられるものではないので、もう少し量を食べやすい野菜に着目するとほうれん草やたけのこ、芽キャベツ、カボチャなどがおすすめといえるでしょう。
その他にもアスパラガスやミニトマトやオクラやにらや水菜や小松菜などにも含まれているため、基本的な野菜をバランスよく食べていれば問題ないでしょう。
魚介
魚介類も全般的にカリウムの多いグループです。さわら、かんぱち、あじなどに多く含まれています。干しえびや煮干しにも多いのですが、こちらの場合ナトリウムの含有量も増えてしまうので注意が必要です。
するめであれば1枚で大体一日分の半分を摂取できる計算になります。
豆類
豆類のうち、カリウムを多く含むのはピスタチオ、アーモンド、ぎんなんなどです。ピスタチオ100gに含まれるカリウムは970mgと、野菜や魚と比べても含有量はかなり多く感じられます。
ただし、ピスタチオを100g食べようとすると大体80粒くらいを食べなければならず、なかなかつらそうです。他の食品の補助として食べるのがよいでしょう。
海藻
海藻も豆と同様、100gあたりのカリウムはかなり多いものの一度にたくさん食べられるものではないという難しさがあります。
海藻でカリウムを摂取する場合、あおさやわかめをみそ汁の具にするような使い方が便利です。ただしこちらもナトリウムを多く含む場合があります。
注意すべき食べ物
一点注意すべき食べ物として上げられるのが甘草です。漢方薬などに含まれるもので、甘みを持つものですが、甘草に含まれる成分が低カリウム血症を引き起こす場合があります。
甘草に含まれている成分が腎臓内の副腎皮質ホルモンの働きを活発にすることで尿によってカリウムを大量に放出してしまう事があるのです。
普通に食品として存在することはあまりありませんが、漢方薬を飲んでいる方はカリウムの過剰排出に注意して下さい。
まとめ
人間の体は、常にあちこちでバランスを保つことによりうまく機能しています。
たとえばナトリウムとカリウムはバランスが崩れるとむくみや腎臓の問題を引き起こすものです。低カリウム血症になってしまう原因は様々なので、もし心当たりのある病気があれば早急にそちらを治療することが必要になります。
また、既に腎臓に問題のある方でなければカリウムはちゃんと排出されるので、多めに採っても問題ありません。
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