壊死性リンパ節炎の症状・原因・治療法とは?診断基準を知って勘違いしないようにしよう!

壊死性リンパ節炎(組織球性壊死性リンパ節炎、亜急性壊死性リンパ節炎)という病気をご存じですか?

「壊死性」という言葉のイメージから、かなりの重篤な病気が想起されますが、実は予後良好な良性の病気です。とはいえ、壊死性リンパ節炎は30代までの女性に多く発症する病気で、首のリンパ節が腫れて心配な思いを抱いている方もいるでしょう。

そこで、壊死性リンパ節炎についてまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。

リンパ節とは?

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リンパ節という言葉は、良く聞きますよね。でも、リンパ節の役割や仕組みを説明するとなると難しいと思います。そこで、壊死性リンパ節炎を理解するにあたり、リンパ節の知識が必要になりますので、簡単にまとめてみたいと思います。

血液と血管の仕組み

人は、無数の細胞によって構成されています。

全身の細胞が活動していくために必要な栄養素や酸素を運ぶのが動脈の血液で、その動脈血液の通り道が動脈血管です。また、全身の細胞で生じた老廃物や酸素が消費され変化した二酸化炭素を回収するのが静脈の血液で、その静脈血液の通り道が静脈血管です。

この血管は、全身の隅々まで毛細血管として張り巡らされていますが、全身の細胞一つ一つとつながっているわけではありません。毛細血管と細胞の間に間質液(組織液)という体液が存在し、毛細血管との物質交換を仲介しています。

ですから、毛細血管の壁は薄くなっていて、動脈の血液の栄養素や酸素は水分に溶けたまま、動脈毛細血管から間質液に染み出して移動します。逆に、細胞で生じた老廃物や二酸化炭素も間質液を通じて静脈毛細血管の中に浸透して回収され、腎臓などで浄化されて最終的に心臓へ戻っていきます。

リンパ管の仕組み

ただし、動脈から間質液に染み出した水分が全て静脈に戻るわけではありません。その静脈に戻らなかった水分は、間質液から毛細リンパ管に吸収されます。

リンパ管は、血管と同様に全身に張り巡らされていて、その中をリンパ液が流れています。リンパ管は、毛細リンパ管を起点として、静脈と同じように徐々に太いリンパ管に集約されていき、最終的には静脈血管につながり血液の中に水分を還流します。血管との違いは、血管が動脈から静脈へと循環しているのに対して、リンパ管は毛細リンパ管を起点に間質液を回収して静脈に戻す一方通行となってる点にあります。

そして、リンパ管は、静脈血管に寄り添うような形で張り巡らされているのが特徴です。

リンパ節とは?

このようなリンパ管には、各所に2㎜~30㎜(3㎝)程度の大きさのそら豆状の膨らみがあります。これが、リンパ節と呼ばれるもので、全身に600個前後あります。

このリンパ節には、血管が通っていて動脈は毛細血管にまで分かれて動脈毛細血管から静脈毛細血管に変わります。そして、毛細血管が集合して最初にできる細い静脈(後毛細血管細静脈)から特別に分かれた高内皮細静脈がリンパ節を通っています。

骨髄の造血幹細胞で作られた白血球の一つであるリンパ球は、血管を循環して高内皮細静脈の壁を通り抜けることでリンパ節に入り、リンパ液の一部となります。

リンパ節は、このリンパ球が中心となってリンパ液を濾過する役割を果たしています。すなわち、リンパ液が運んできた細菌やウイルスといった異物を、免疫担当細胞の一つであるリンパ球が処理するのです。

ちなみに、代表的なリンパ節として、耳下腺リンパ節、頸部リンパ節(くびのリンパ節)、鎖骨リンパ節、腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)、腹部リンパ節、鼠径リンパ節、膝窩リンパ節(ひざのリンパ節)などがあります。

リンパ液の役割

リンパ液は、あくまでも毛細血管から間質液に染み出した水分がリンパ管に回収されたものです。

このリンパ液は、リンパ管からリンパ節を経ることで免疫担当細胞であるリンパ球を取り込みます。

その結果として、リンパ液は血液に戻らなかった老廃物の運搬の他に、細菌・ウイルスといった異物を処理する免疫の役割も担っています。

そして、リンパ液はリンパ管を通り、最終的にリンパ球や水分を血液に戻すのです。

壊死性リンパ節炎とは?

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では、壊死性リンパ節炎とは一体どういう病気なのでしょうか?

リンパ節炎とは?

リンパ節炎は、何らかの原因によってリンパ節が炎症を起こした病変です。そして、リンパ節炎では、リンパ節の腫れ、痛み、発熱などの症状を伴います。

リンパ節炎は、その原因によって次のような種類に分類できます。

  • 細菌性リンパ節炎
  • 結核性リンパ節炎
  • 化膿性リンパ節炎
  • ウイルス性リンパ節炎
  • 壊死性リンパ節炎

壊死性リンパ節炎とは?

壊死性リンパ節炎は、数あるリンパ節炎の中でも、原因不明のリンパ節炎です。主に頸部リンパ節が腫れて、痛みや発熱を伴います。また、白血球の数が減少し、リンパ節の中に

リンパ球の崩壊壊死が見られます。

ただし、壊死性リンパ節炎は良性の病気で、死に至るような病気ではありません。

壊死性リンパ節炎の別名

壊死性リンパ節炎は、組織球性壊死性リンパ節炎、亜急性壊死性リンパ節炎とも呼ばれます。

また、壊死性リンパ節炎を1972年に最初に発見した福岡大学の菊池昌弘教授の名前から「菊池病」、1972年に別途報告した東京大学の藤本吉秀教授の名前と合わせて「菊池・藤本病」とも呼ばれます。

壊死性リンパ節炎の症状

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次に、壊死性リンパ節炎では、どのような症状が現れるのでしょうか?

壊死性リンパ節炎の症状

壊死性リンパ節炎の症状は、次の通りです。

  • 扁桃腫大を伴う上気道症状
  • 有痛性の頸部リンパ節腫大
  • 白血球の減少
  • 不規則な発熱
  • 一過性の発疹
  • その他の症状(頭痛、倦怠感、頸部リンパ節以外のリンパ節腫大など)

扁桃腫大を伴う上気道症状

扁桃は、以前に扁桃腺と呼ばれていた咽頭入り口にある粘膜部分のことをいい、小さなリンパ節の集まりで構成されています。そして、扁桃腫大とは、要するに扁桃が腫れて通常より大きくなっている症状です。

呼吸器の別名を気道といいます。呼吸器は呼吸に関与する器官のことで、上は鼻や口から、下は気管支と肺までのことを指します。ですから、上気道は鼻や鼻腔、口や口腔から喉頭までのことで、下気道は喉頭の下の気管から、気管支、肺のことを指します。

その上で上気道症状とは、上気道に現れる症状のことで、具体的には扁桃腫大を含め、口の中の違和感、腫れ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどといった風邪のような症状のことです。

この扁桃腫大を伴う上気道症状は、壊死性リンパ節炎の前駆症状、つまり初期症状として現れます。

有痛性の頸部リンパ節腫大

扁桃腫大を伴う上気道症状が現れると間もなく、頸部リンパ節が炎症を起こし腫れます。そして、ほとんどの場合で頸部リンパ節の炎症は痛みを発します。

この頸部リンパ節腫大は、首の片側のみに発症することが多いのですが、両側ともに炎症が発生して腫れることも度々あります。

白血球の減少

壊死性リンパ節炎では、血液検査をしてみると、ほとんどの場合において白血球数の減少が見られます。この白血球が減少した状態が、数日から多いときには数十日にわたって続くとされます。症状が回復すると、白血球の数も自然と正常値に戻るとされています。

稀に赤血球、白血球、血小板という全ての血球細胞が、全体的に減少する汎血球減少という症状が現れる場合もあります。

不規則な発熱

扁桃腫大を伴う上気道症状が現れると、その前後から38度以上の発熱が見られます。この発熱は約1週間程度続き、場合によっては1ヶ月近く熱が下がらない症例も見られます。熱が下がっても、再発熱することも良くあるようです。

逆に、発熱を伴わない症例も多々あり、発熱は壊死性リンパ節炎の典型的な症状とまでは言えないようです。

一過性の発疹

壊死性リンパ節炎の約10%程度の症例で、皮膚に一過性の発疹が見られています。

その他の症状

上記のような症状の他に、頭痛、全身の倦怠感、多関節痛などが発生することもあります。

また、稀に頸部リンパ節の他に、わきの下にある腋窩リンパ節、大腿部の付け根にある鼠径リンパ節などが腫大することもあります。

壊死性リンパ節炎の症状についての統計的特徴

壊死性リンパ節炎の発症は女性に多く、女性の発症数は男性に比べて1.6倍にのぼります。そして、小児から50才代まで幅広い年齢層での発症が見られますが、その中でも10代から30代での発症数が極めて多いのです。

したがって統計データは、壊死性リンパ節炎が30代までの若年女性に多く発症することを示唆しています。ただし、小児の発症に限ると男児の発症のほうが多いことも統計データは示唆しています。

また、研究報告によると、壊死性リンパ節炎の発症は欧米では稀であり、日本をはじめとする東アジアに多い病気であることもわかっています。

壊死性リンパ節炎の原因

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このような症状を発症する壊死性リンパ節炎ですが、前述の通り、原因は不明とされています。様々な方面から研究が為されていますが、現段階で明確な原因の証明はされていません。

細菌やウイルスによる感染症との関連について

原因不明の壊死性リンパ節炎以外のリンパ節炎は、細菌かウイルスによる感染が原因となっています。

細菌性リンパ節炎やウイルス性リンパ節炎は、文字通り何らかの細菌やウイルスが原因となっています。結核性リンパ節炎も、結核菌という細菌感染が原因です。さらに、化膿性リンパ節炎は、細菌性リンパ節炎が進行したものです。

このことから、様々な細菌やウイルスとの関連性が研究されましたが、現在のところ明確な関連性を示したものはありません。

自己免疫疾患との関連について

全身性エリテマトーデスという全身の臓器に原因不明の炎症が起こる病気があります。全身性エリテマトーデスは、自己免疫疾患の一種です。

この全身性エリテマトーデスと前後して、壊死性リンパ節炎が発症する例があるという研究報告があったことから、両者の関連性が疑われましたが、現段階で明確な関連性は証明されていません。

壊死性リンパ節炎の診断と検査

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頸部リンパ節の炎症による腫れ、発熱などは、壊死性リンパ節炎以外のリンパ節炎や病気にも見られます。では、どのように壊死性リンパ節炎と診断するのでしょうか?

壊死性リンパ節炎との鑑別が必要な病気

リンパ節が腫れる病気は、とても多くの種類があります。そこで、壊死性リンパ節炎と区別する必要がある、リンパ節腫大が見られる代表的な病気は次の通りです。

特に、壊死性リンパ節炎は悪性リンパ腫と間違えられることが多いと言われています。

壊死性リンパ節炎の診断方法

壊死性リンパ節炎の診断方法には、次のような検査が必要です。

  • 問診
  • 血液検査
  • 腹部超音波検査(腹部エコー検査)、胸部X線検査
  • リンパ節生検

問診

リンパ節腫大が見られる病気は、上記のように多くの種類があります。そのため、リンパ節の腫れに気づいた経緯、前駆症状の有無、既往歴、全身の症状か局所の症状かなどを詳細に聞き出すことが壊死性リンパ節炎と他の病気との区別につながります。

リンパ節腫大の発症経緯などについて

リンパ節の腫れが3㎝を超えると悪性の可能性が高いとされており、悪性リンパ腫や白血病が疑われます。また、リンパ節の腫れが長期間にわたり進行し、無痛性の場合は、悪性リンパ腫や結核性リンパ節炎を疑います。

一方、リンパ節の腫れが数日程度で急に現れ、有痛性の場合は、細菌性リンパ節炎、ウイルス性リンパ節炎、壊死性リンパ節炎などを疑います。また、これらのリンパ節炎では、発熱と上気道症状が前駆症状として現れることが多いとされます。

既往歴について

結核の既往歴があれば、結核性リンパ節炎が疑われます。自己免疫疾患の既往歴があれば、全身性エリテマトーデスが疑われます。

ペットの飼育歴から猫の飼育が判明すれば、細菌性リンパ節炎の一つである猫ひっかき病が疑われます。

全身症状か局所症状か

症状が全身性の場合は、悪性リンパ腫、白血病、ウイルス性リンパ節炎の可能性が高いとされています。一方で、症状が局所にとどまるリンパ節の腫れの場合は、結核性リンパ節炎の疑いが高いとされます。

血液検査

血液検査を行うと、血液に含まれる成分や抗原・抗体の有無などから様々な病気の可能性を推測し絞り込むことが可能となります。血液検査は次の3種類に分類されます。

  • 末梢血検査(いわゆる普通の血液検査)
  • 血清学的検査
  • 生化学的検査

末梢血検査

末梢血検査は、いわゆる普通の血液検査で、白血球、赤血球、血小板の数などを調べます。

白血球の数の減少が見られると壊死性リンパ節炎を疑うことになりますが、汎血球減少の症状は壊死性リンパ節炎の他にも白血病や自己免疫疾患などでも見られます。

白血球の中に異型リンパ球の出現があれば、ウイルス性リンパ節炎の一つである伝染性単核球症の可能性があります。

血清学的検査

血清学的検査は、採取した血液の中に含まれる抗体の有無や抗体の量を調べるものです。外部から細菌やウイルスなどの異物が侵入すると、免疫システムによって異物それぞれに対応する抵抗物質として抗体が体内で作られます。この抗体の有無や量から、各種の病気の感染を判断します。

自分の細胞を攻撃してしまう自己抗体がみつかれば、自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデスが疑われることになります。

生化学的検査

生化学的検査は、採取した血液の中に含まれるタンパク質や血糖などといった様々な成分を分析するものです。

それぞれの成分が基準値や正常値と比較して多いのか少ないのかを調べ、複数の成分データから総合して疑われる病気を医師が診断していきます。

超音波検査(エコー検査)、胸部X線検査

超音波検査や胸部X線検査などによる画像診断で、壊死性リンパ節炎と他の病気の区別を行うこともあります。

壊死性リンパ節炎では、リンパ節の腫れの中に壊死した部位が確認されることがあります。ただし、画像診断において、必ずリンパ節内に壊死を示す徴候が確認されるわけではないことには注意が必要です。

その意味では、これらの画像診断は他の検査方法を補完する位置づけといえます。

リンパ節生検

リンパ節生検とは、腫れたリンパ節から組織サンプルとして一部の細胞を切除し、そのサンプルを病理医が顕微鏡で調べる検査のことです。

リンパ節生検には、手術のように医師が執刀する直視下生検と、医師がリンパ節に細い針を刺して針で少量の細胞を採取する針生検があります。

1ヶ月以上リンパ節腫大が続いたり、数日の間に急にリンパ節の腫れが大きくなり発熱などを伴う場合は、悪性リンパ腫との区別の必要性からリンパ節生検が行われます。

壊死性リンパ節炎に見られる特異所見

リンパ節生検によって壊死性リンパ節炎に特異な所見として現れるのものがあります。

組織球とリンパ球の増殖

まず、腫大リンパ節に壊死巣があり、その中には組織球とリンパ球が増殖しています。

組織球は、白血球の一つである単球が血管外に出てマクロファージという免疫細胞に変化したものが身体の各組織や臓器に定着した血管外細胞で、体内に侵入した異物や老廃物を捕食して処理する免疫担当細胞です。

ですから、腫大リンパ節には、組織球とリンパ球という免疫担当細胞が集結しているのです。

顆粒球(好中球など)が見られない

一方で、顆粒球(好中球や好酸球など)、リンパ球、単球で構成される免疫細胞の白血球ですが、その大半を占める顆粒球が腫大リンパ節に見られないのです。

顆粒球は細菌やウイルスを特に捕食して処理する免疫担当細胞です。

壊死性リンパ節炎の診断

問診、血液検査、超音波検査などから他の病気を除外していき、それでも診断がつかない場合にリンパ節生検を行うという流れで診断されます。

他の病気との詳しい鑑別・区別については、リンパ腫の良性、悪性の違いは?症状や原因についてを読んでおきましょう。

壊死性リンパ節炎の治療と再発可能性

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壊死性リンパ節炎は原因が不明なため、原因を除去して根治することができません。したがって、対症療法が中心になります。

壊死性リンパ節炎の治療

壊死性リンパ節炎の治療は、対症療法が中心になります。原因不明ですが、少なくとも細菌やウイルスが原因ではないため、細菌やウイルスを殺す抗生物質(抗生剤)は効き目がありません。

発熱や頸部リンパ節の痛みに対しては、非ステロイド系の抗炎症鎮痛解熱剤を用います。高熱が続いたり、頸部リンパ節の痛みが強いなど症状が重篤な場合は、ステロイド系の抗炎症鎮痛解熱剤を投与します。

適切な治療がなされれば、1~3ヶ月で治癒します。

壊死性リンパ節炎の再発可能性

壊死性リンパ節炎は原因不明であるため、再発可能性を否定することはできません。また、全身性エリテマトーデスの併発や移行などにも気を配る必要があります。

まとめ

いかがでしたか?

壊死性リンパ節炎自体は、原因不明ではあるものの良性で、適切な治療をすれば1~3ヶ月で治癒する予後良好な病気です。

ただし、悪性リンパ腫との鑑別が難しいと言われています。ですから、頸部リンパ節が腫れて、高熱が続くような場合は早めに医師に相談して検査を受けるようにしましょう。

  
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