耳の下に痛みや腫れ、さわるとグリグリとしたシコリのようなものに気がついたことはありませんか?特にシコリのようなものがあると、一体何なのかと不安になりますね。体に不調を感じて内科でお医者さんの診察を受けた時のことを思いだしてみて下さい。
聴診器で心音や呼吸音を聞かれたり、胸や背中をトントンと叩かれたり、目や喉のチェックを受けるのは診察の定番ですが、その定番の1つに首もとや耳の下あたりを触ることがあります。
お医者さんは何をチェックしているのでしょうか?今回は、耳の下には何があるのか、触ることにより何がわかるのか、また痛みの原因について紹介していきます。
この記事の目次
耳の下について
内科でお医者さんの診察を受けると、両側の耳の下から首筋にかけて何かを探すような診察を受けられたことがあると思います。これは、耳の下にあるリンパ節に腫れやシコりがないかどうかをチェックをしているのです。
しかし、耳の下にあるのはリンパ節だけではありません、耳下腺(じかせん)という大唾液線の1つもあるのです。これらは大変近くに位置しますが、役割は全く異なります。それでは、リンパ節・耳下腺について詳しく見ていきましょう。
リンパ節
まず、リンパとは「リンパ管」「リンパ液」「リンパ節」から形成されています。「リンパ管」は、体内に張り巡らされている血管に沿うようにして網の目のように張り巡らされています。「リンパ液」とはその「リンパ管」を流れています。
「リンパ管」は、血管からしみ出した血漿(けっしょう)と呼ばれる栄養源を回収するのですが、同時に老廃物や細菌なども入ってきます。そんな時にフィルターの役目をしているのが、こぶのような形をした「リンパ節」です。
体内に約800個あるといわれるリンパ節ですが、それを通る度、リンパ液の中の異物がろ過され、浄化されたリンパ液は、心臓に戻っていきます。リンパ節のもう1つの役割は、細菌やウィルスなどを撃退し、感染から体を守ることです。細菌やウイルスを撃退するのは、白血球の一種である「リンパ球」です。
この「リンパ球」(B細胞)は、骨髄で作られ成熟した後、骨髄を出て、リンパ節を通り熟成し増殖していきます。このリンパ球が細菌・ウィルスと戦っている時、リンパ節が腫れたり、シコリができたりするのです。ただし、悪性腫瘍の場合でもリンパ節が腫れることがるので、注意が必要です。
耳の周囲にあるリンパ節は、耳下腺リンパ節と呼ばれ、耳下腺部の表層に位置するリンパ節群です。耳の前あたりから首筋にかけて多く点在しています。
耳下腺
耳下腺とは、3つある大唾液腺の内、一番大きなもので、唾液を分泌する腺です。耳の前あたりから耳の下にかけて位置します。大唾液腺の中でもっとも炎症を起こしやすい腺です。
耳の下に位置する、リンパ節、耳下腺の働きについて理解していただけましたでしょうか。耳の下が痛いという症状は、これらの「リンパ節」・「耳下腺」が関係し、痛みの他にも腫れやシコリなどのサインを出しているということです。
耳の下が痛い原因
では、耳の下に痛みを感じる場合は、どのような原因が考えられるのかを紹介します。
*風邪(リンパ節)
風邪の菌に対する免疫活動が活発になったことにより、耳下付近のリンパ節の腫れ、痛みが生じます。しかし、これはリンパ節がしっかりと活動している証拠です。感染症が治まれば、腫れや痛みは自然に引いて行きます。
人によって、リンパに腫れや痛みなどの症状が出やすい人とそうでない人が居ます。昔にリンパの手術などをした人は、リンパ液が溜まりやすかったり、何かと体調が悪くなるとリンパに影響が出ることがあります。
対処法
対処法としては原因となる風邪ウィルスの対処治療を行い、原因であるウィルスを一刻も早く死滅させる事が重要です。軽度の場合は、時間経過とともに体調が回復すれば治っていきます。
1週間〜1ヶ月と高熱や腫れの症状がいつまでも治らない場合はリンパを切除するなどの手術が必要な場合もあります。大人になってからの症状は重症化しやすかったり、妊婦に症状が出れま胎児にも影響を与えます。
腫れや痛みに対する対処は、冷やすことが有効です。濡らしたタオルや、アイスノンなどをタオルで包み優しく冷やすことで腫れや痛みの症状が和らぎます。
リンパに関する詳しい記述は
・悪性リンパ腫の生存率って?種類や症状、再発の可能性について
こちらの記事を御覧ください。
*頸部リンパ節炎(リンパ節)
細菌やウィルスなどによる、咽頭・扁桃などへの炎症によるものです。痛みの他に発熱、腫れの症状も出ます。
口内からのウィルスや菌からの感染や悪性腫瘍からの転移などの可能性が考えられます。先立つ症状として口内や喉の痛みや発熱などの症状が見られる場合はそれらが原因と考えられます。
症状が見られる喉付近から菌が侵食するので、首から顎まわり、耳の後ろあたりが腫れることが多いです。
対処方法
対処方法は風邪の時と同様で、まずは原因となる病巣の除去が最優先になります。感染が確認される部分の菌、ウィルスによる炎症に対する治療を行っていきましょう。
炎症が起こり熱を持つので冷やすことで症状が軽減します。
*悪性リンパ腫(リンバ節)
本来細菌やウィルスを撃退する働きをするリンパ球が無制限に増え、腫瘍になったものです。痛みを伴わずに、首や脇のリンパ節が腫れます。医療機関での早めの診察をお勧めします。
悪性リンパ腫の特徴は痛みが無いことと、腫れた部分が固いことです。また発熱の症状も起こらないことがほとんどです。放置してしまうとリンパの流れに乗ってどんどん腫瘤が増えてしまうので、早めに治療を行うことが重要です。
対処法
悪性と思われる腫瘤が確認された場合は早めに病院で診断してもらう事が重要となります。急激な体重の減少や、倦怠感、弾力のない固い腫れなどの症状が確認された場合は病院での診察を受けましょう。
受診する病院は内科で構いません。行きつけの病院かもしくは設備の整った大きな病院での診断をおすすめします。正確な診断には生体検査や髄液検査やレントゲンやCTでの画像検査などを用いて行われます。転移のリスクを抑えるためにも早期発見早期治療が望まれます。
*甲状腺がん(リンパ節)
甲状腺の腫瘍にも時々癌があります。頸部リンパ節の腫れ、首の前が腫れてきたら、出来るだけ早く耳鼻咽喉科で診察を受けて下さい。
甲状腺は喉仏のすぐ下にある器官で甲状腺ホルモンという日常での生活に必要なホルモンを分泌しています。若年からお年寄りまで広く発症する可能性のある病気です。遺伝、放射線の被曝、ヨードの不足などが原因と言われています。チェルノブイリ事故後周辺住民に甲状腺がんの患者が急増したと言う背景もあります。
対処法
比較的進行が遅いがんでもあり、治療が行いやすくきちんと処理をすれば予後の経過も良いがんでもあります。
甲状腺がんと診断された人の5年後の生存率は92%とがんでの生存率としては非常に高くなっています。基本的には手術での治療が基本的な手段で、甲状腺や転移が確認されるリンパなどの摘出を行います。
*外耳炎(リンパ節):
外耳道に傷がつくことによる炎症です。耳の痛みやかゆみを感じ、耳鳴りなどにもなります。外耳は鼓膜までの耳の穴のことです。耳掃除や汚い水が耳の中に入ってしまうことで耳の中に炎症が起きやすくなります。
外耳炎については、外耳炎の治し方を紹介!症状によって変わる治療方法とは?の記事を読んでおきましょう。
対処法
耳かきの回数を減らすことやヘアスプレーや整髪料が耳の中に入ってしまわないように気をつけましょう。
普段外耳に何ら問題や異常がない人は、2〜3日経過を観察すれば自然治癒してしまいます。もし3日ほど経っても症状が回復しないようなら耳鼻科に掛かりましょう。外耳での炎症が悪化する可能性は0ではないですが、極めて稀です。
痛みが少ない場合はそこまで心配する必要はないでしょう。また、子供が痛みを訴える場合は耳かきをあまり行わないようにしましょう。子供の耳かきは必要ないという医師も居るくらいです。耳垢には虫を寄せ付けない効果もあるため、綺麗にしてしまうと逆効果なこともありますので注意しましょう。
*急性中耳炎(リンパ節)
中耳炎の中で一番多く、小児が特にかかりやすいのが特徴です。急に鼻や喉から侵入した細菌による中耳の炎症で、耳の痛み、発熱、耳だれなどの症状を伴います。風邪などをきっかけに子供が発症しやすい病気でもあります。鼻や喉と耳は細い管で繋がっています。
中耳の空気圧を変えたり耳に水が溜まらない為にある管なのですが、ここから細菌感染が起こります。早くても1ヶ月の治療期間が必要な厄介な病気です。
中耳炎については、中耳炎が大人に現れるとどんな症状?治療方法も紹介!の記事を参考にしてください。
対処法
症状が出始めてからの3日間は激しい痛みに襲わえます。冷やすことも効果的ですが、この期間は特に痛みが強いので、無理をせずに痛み止めなどの薬を飲みましょう。
次第に流れてくる膿は、鼓膜に穴が空いて流れてきたものです。無理に出そうとする必要はありません。無理に排出しようとすると中耳に逆流する恐れや外耳を傷つけ症状が悪化する可能性があります。また状態を倒すと痛みが増す事があります、しばらくは寝ることが辛くなるでしょう。そんな時は座った状態で楽になるまで様子を見ましょう。
鼻すすりの癖がある人は中耳炎に掛かりやすくなります。慢性中耳炎の原因にもなりますのでこの癖の改善を目指しましょう。
病院では、鼻水や耳垂れの除去や抗生物質や痛み止めなどの薬の処方や経過観察、必要であれば耳管通気療法や鼓膜の切開やチューブを入れる処置などが行われます。
治療は長引くことが考えられるので、根気強く通院を行いましょう。
*滲出性中耳炎(リンパ節)
鼓膜の奥にある中耳腔に滲出液(炎症により、障害を受けた血管からもれ出た血漿成分からなる液)が溜まる病気です。特に3歳〜10歳ごろまでの子どもに多くみられ、子どもの難聴の一番の原因として挙げられます。
痛みが無いことが多く、子供がなかなか呼んでも返事をしない場合に実は滲出性中耳炎だったというケースもあります。中耳炎から進行して滲出性中耳炎になるケースが多く、元となる中耳炎の症状をしっかり治すことでこの病気に発展することを防げます。
鼻すすりの癖がある子どもが特に発展しやすいので、この癖を早い段階で治していきましょう。
*真珠腫性中耳炎(リンパ節)
慢性中耳炎の一部です。鼓膜の一部が中耳腔側にへこみ、そこに耳あかなどがたまり、名前のごとく真珠のような白い塊ができる病気です。進行してしまうと、髄膜炎や脳腫瘍などの合併症も現れますので、気をつけなければなりません。
この中耳炎も鼻すすりが大きな発生原因となります。
*慢性中耳炎(リンパ節)
中耳腔に生じた炎症や感染が、慢性化すると鼓膜に穴があき、細菌が乳突洞・乳突蜂巣というまわりの骨の空洞に住み着く状態をいいます。
慢性中耳炎の場合は中耳炎が慢性的にかかっていると思われますので慢性に進行してしまう前に完治させる事が重要です。
*内耳炎(リンパ節)
中耳にできた真珠腫や内耳の周りからの細菌感染、ウィルス感染が原因となり炎症が広がります。耳鳴り、難聴、吐き気など症状がでます。
内耳は蝸牛や三半規管などの神経がある部分でより脳に近い器官になります。中耳炎の症状のある人がなりやす居傾向があります。
対処法
内耳炎は原因となる中耳炎などの炎症を先に治療しなくてはいけません。慢性中耳炎持ちの患者に対しては、手術によって中耳炎の治療を行う必要があります。
原因となる中耳炎の症状を長引かせることや、慢性的に発生させることが大きな原因となるのでこれらの病気の治療を速やかに行い予防に努めましょう。
*虫歯(リンパ節)
虫歯を放っておくと、菌が歯茎などに悪影響を与え、ついには、リンパ節にまで及び、腫れや痛みを起こします。
リンパの腫れによって、耳の後ろの痛みが引き起こされますが、その根本は虫歯の可能性があります。特に奥歯の虫歯が関係することが多いです。
対処法
原因となる虫歯の発生を抑えることと虫歯の治療を行うことが最優先です。この場合でも腫れてしまった部分を冷やすことが効果的です。
虫歯になりやすい原因としては、唾液の分泌量が少ないことや歯磨きが出来ていないことが考えられます。食後の歯磨きをしっかり行う事や、唾液が少ないと感じた場合は飴を舐めるなどして唾液で口内を殺菌するよう心がけましょう。
*口内炎(リンパ節)
口の内部、周辺の粘膜などに生じる炎症の総称です。できる場所によって名前が違います。歯茎にできれば「歯肉炎」、舌なら「舌炎」、唇は「口唇炎」と言います。原因は、疲労や免疫力の低下、ウィルス・細菌の増殖、物理的刺激(入れ歯や頬の内側を噛むなど)やアレルギーによるものなどがあります。口内炎については、喉に口内炎が出来る原因とは?予防方法も知っておこう!の記事を読んでおきましょう。
*怪我(リンパ節)
切り傷、擦り傷などから雑菌が入り、炎症をおこしてリンパ節が腫れることもあります。傷が深い、動物に引っ掻かれたり、噛まれたりした時は、すぐに病院で治療を受けて下さい。
*急性リンパ節炎(リンパ節)
リンパ節の炎症で、風邪のような症状が現れます。発熱を伴い、耳の下や首などのリンパ節が腫れ、痛みます。
*風疹/三日ばしか(リンパ節)
発熱の後、発疹を生じます。耳の下、頸部のリンパ節が腫れることもあります。
*急性耳下腺炎(耳下腺)
耳下腺の炎症が原因です。頬の内側にある唾液線の出口より細菌が入り込み、食事などの唾液分泌時に耳下腺への痛みを生じます。
*急性化膿性耳下腺炎(耳下腺)
耳下腺への細菌性感染により腫れが出ます。
*流行性耳下腺炎/おたふくかぜ(耳下腺)
2〜3週間の潜伏期間を経て発症します。ムンプスウィルスにより耳下腺が感染し、片側、あるいは両側の耳下腺の腫脹を特徴とします。この病気で最も多い合併症は、髄膜炎で、その他に睾丸炎、卵巣炎、難聴なども認められます。おたふく風邪については、おたふく風邪は大人でもなる!症状や似ている病気を紹介!の記事を参考にしてください。
*反復性耳下腺炎(耳下腺)
耳下腺や顎下線の腫れが数ヶ月から1年間隔で反復して起こります。
*耳下腺腫瘍(耳下腺)
腫瘍が耳下腺の中にでき、腫れを生じます。腫瘍は大部分が良性のものですが、まれに悪性化することもあるので、手術することをお勧めします。腫瘍は、大きくなっていくこともあるので、耳の下にしこりが長く続く時は、診察を受けて下さい。
*顎関節症
もし腫れや熱を持つなどの症状がなく、物を噛む時に痛みが増す場合は顎関節症の可能性が考えられます。大きな口開けられず、あくびや食事が困難になったり、かみ合わせが悪い場合に発生しやすい関節症です。
頬杖をつく行為や、片側のみで噛むなどの噛み癖も原因の一つです。開口時に音がなる場合や、口の開け閉めに引っかかりがある場合は、痛みが出る前に改善法を取ったほうが良いでしょう。
対処法
この場合は、熱を持っているような炎症が起きていない限りは、温めることで症状が和らぎます。温度によっては30分以上温めると低温やけどの可能性がありますので、温め方には注意しましょう。
またマッサージを行うことも有効です。痛みの出るポイント付近を優しく指でマッサージしましょう。
病院での治療では、噛合せを良くするために、歯列矯正を行ったり、マウスピースを使い改善を図ることや、外科的手術で骨を削るなどして治療を行います。
症状の度合いによって治療方法と治療費にも大きく変動がありますので、症状が軽いうちに治療を行うようにしましょう。
まとめ
耳の下の痛み・腫れ・シコリ、耳の下で一体何が起こっているのか、わかっていただけましたでしょうか?いつも無いシコリをふっとした拍子に触り、ドキッとすることもこれからはないことと思います。「リンパ節」にしろ「耳下腺」にしろ、痛みを感じたり、腫れ、シコリがあるというのは、何らかの炎症が起こっているというサインです。
風邪のように放っておいても自然に治るものから病院での治療を必要とするものまで様々です。必要以上に怖がる必要はありませんが、症状が悪化したり、長引く時は、速やかに治療を受け、回復に努めて下さい。
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