悪性リンパ腫という疾患をご存知ですか?血液の3大悪性腫瘍といわれるこの疾患のこと、治療法、生存率などをまとめてみました。
この記事の目次
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫という疾患をご存知でしょうか?
悪性リンパ腫は、白血病、多発性骨髄腫と並ぶ、血液の3大悪性腫瘍といわれています。血液の中にある免疫細胞であるリンパ球ががんに変異してしまった悪性のがん疾患です。
悪性リンパ腫を発症すると、リンパ節やリンパ管ががん化して腫れたり、しこりのような状態になったりします。
このような血液のがんは、以前は不治の病として知られていましたが、今は放射線や化学療法など最新の医療技術によって、治る可能性のある疾患として理解されるようになってきました。この悪性リンパ腫は、リンパ球ががんに変異したものなので、リンパ節などにできるほか、全身を巡る特徴から、リンパ節以外にも臓器など全身どこにでも発症する可能性のあるがんです。
自覚症状のないまま進行することが多く、日頃からの健康意識の状態によって発見率が決まるといわれています。また高齢になるほど発症率も高くなりますので、日頃からの定期検査などが重要となります。
日本での発症は、年間約13,000人ほどが発症し、9,500人ほどが亡くなっています。高齢になるほど発症率はあがりますが、稀に若い人や子供にも発症することがあります。
リンパ球
では、悪性になる前のリンパ球についてみてみましょう。
リンパ球とは、白血球の一種です。リンパ球の細胞には、
・T細胞(キラーT細胞、サプレッサーT細胞など)
免疫細胞の司令塔のような働きをします。また自分で増殖し、その場に駆けつけ直接害となる細胞を殺したりします。
・B細胞
身体に入った異物を次回から排除するために、抗体を作る細胞です。
・NK細胞
常に全身を回っていて、身体に害となる異物を発見すると、T細胞の指令を受けなくても直接攻撃する細胞です。
このような細胞があり、それぞれの役割に沿って働いています。
そのため、人間の身体は医療機関にかからなくても軽い病気を治したり、異物を自分で排除したりできるのです。これが免疫と呼ばれる自己防衛のシステムです。
悪性リンパ腫は、このような機能を持つリンパ球ががん化することによって、免疫機能に異常をきたします。すると全身の免疫機能が低下することになります。これが悪性リンパ腫の怖さでもあります。
そしてこのような状態の発見には、自覚症状が無いため、外見からでは分からないことが多く、血液検査やCT検査などでの発見となります。そのため日頃からの定期検査や体調管理などが早期発見や治療のかぎとなるのです。
悪性リンパ腫の特徴
悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫という大きく分けて2種類に分類されます。
日本の悪性リンパ腫は、その90%が非ホジキンリンパ腫です。その症状は、全身のリンパ節が腫れたり、肺付近のリンパ節が腫れる、腹腔内のリンパ節が腫れるなどの症状を引き起こします。進行すると、腫瘍が大きくなり、全身にさまざまな症状を引き起こします。
さらに非ホジキンリンパ腫には、T細胞型とB細胞型という2つの分類もあり、そのほかに進行速度や悪性の度合いによってその種類は30種類以上といわれています。日本では、このB細胞型が多くを占めています。
発症場所では、約30%程度がリンパ節以外の臓器などで発見されており、特に胃に発生していることが多いそうです。原因はヘリコバクター・ピロリという胃潰瘍の原因菌が影響していると考えられています。そのほか細菌や遺伝なども影響していると考えられているようですが、直接のはっきりとした原因は分かっていません。そ
んな中、近年この悪性リンパ腫を発症する患者が増加傾向にあるようです。
悪性リンパ腫の症状
では悪性リンパ腫の症状とはどのようなものなのでしょうか?
悪性リンパ腫は、全身を巡るリンパ球ががんに変異したものですから、全身どこでもできる可能性があり、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。その中でも、代表的な症状としては、
- リンパ節が腫れる
- リンパ節にしこりのようなものができる
- 発熱や全身、または各部の痛みを感じる
- 全身の倦怠感や体重の減少
- 全身のかゆみ
などの症状が現れることがあります。痛みや発熱など直接的な症状として現れた場合は自覚することも出来ますが、多くが自覚症状がなく、その異常に気がつかないで進行してしまうということです。
気づいたときには手遅れなどにならないように、日頃からリンパ節などを触ってしこりや腫れの確認をするなどの行為を心がけてみるのも良いと思います。早期発見は早期治療、治癒につながります。
悪性リンパ腫の原因
悪性リンパ腫の原因は、はっきりとしたことは分かっていません。日本の発症率の高い、胃での悪性リンパ腫では胃潰瘍の原因菌といわれるリコバクター・ピロリという菌やその他の細菌、またはウィルス、遺伝などの影響も考えられていますが。特定されていないのが現状です。
つまり、日常生活でのさまざまな要因が原因になる可能性もあるということです。そのため、日頃から生活習慣や食生活、定期的な健康診断や健康についても日頃から一人ひとりが認識して行動することを心がけることが発症を防ぐことにつながります。さらにがん検診など、特定の検診を年齢や生活習慣や仕事の状況などによって定期的に受けるのもよいかもしれません。
悪性リンパ腫の検査方法など
悪性リンパ腫の診断には下記のような検査を行います。
①触診
悪性リンパ腫の症状としてリンパ節の腫れやしこりのようなものができるという症状があります。これを実際に触診で確認して診断します。
②骨髄検査
骨髄などの組織を一部採取し、骨髄まで進行していないかどうかを調べます。
③生検
この検査では、腫れたり、しこりのあるリンパ節を実際に一部採取して顕微鏡などで調べます。直接がん細胞かどうかを調べることができる、もっとも重要な検査です。さらにこの検査では、がんの種類や悪性の度合いなども知ることが出来るので、今後の治療法や方針などを決めることができます。
④腫瘍マーカー検査
血液検査の一種です。特定の数値が上昇しているかどうかなどの判断をします。
⑤CT検査やMRI検査、超音波検査などの画像検査
全身をよく見ることができる検査です。リンパ節の腫れやしこりの大きさ、腫瘍の場所などを全身で見ることができます。
悪性リンパ腫の進行度
がんの進行度には、ステージという言葉が使われます。がんの大きさや広がり方、転移の有無などによって、ステージIV までの分類がされています。
ステージI
がんの発生が一箇所のリンパ節の場合。
ステージII
横隔膜を境に上半身か下半身どちらかであること。または2箇所以上のリンパ節に発症している。
ステージIII
がんが横隔膜の上半身、下半身ともに発症している。
ステージIV
がんがリンパ節以外の臓器や骨髄、血液などに拡散している、または初期にできたがん細胞から遠い箇所にも転移している
このような症状の違いによって、ステージが分けられていて、そのステージによって治療法やその後の生存率なども変わってきます。
悪性リンパ腫の治療法
悪性リンパ腫の治療法には大きく分けて3つあります。
- 化学療法
- 放射線療法
- 造血幹細胞移植
悪性リンパ腫は、全身を巡る血液リンパ球ががん化したものですから、一般のがんの治療のように切除してすべてを取り除く方法は出来ません。なので、まずは化学療法や放射線による治療方法がとられます。
さらにこの悪性リンパ腫にかぎっては、化学療法や放射線療法が効果を上げやすいといわれていて、その両方を併用することで治療をスムーズに進めることができます。そのため、現在では治る可能性のある疾患としても知られるようになりました。
しかしこのような併用治療でも効果があまり出ないときには造血幹細胞移植が行われることがあります。造血幹細胞とは、骨髄にある細胞で、血液の元になる細胞を作る細胞です。造血幹細胞は増殖力が強い細胞で知られています。
造血幹細胞移植とは、自分の造血幹細胞をあらかじめ採取し、保存した後、全身のがん細胞を徹底的に死滅させ、その後造血幹細胞の機能を失ったところに保存しておいた自身の細胞を移植し、元に戻します。すると、この細胞は増殖力が強いのですぐに増殖し、元通り血液を生産することができるというわけです。自分の造血幹細胞が機能しない場合は、ドナーといわれる他者の造血幹細胞を提供してもらい、移植するという手段もあります。
悪性リンパ腫の再発
悪性リンパ腫の治療においては、完治という言葉は使わないそうです。寛解(かんかい)と表現されます。悪性リンパ腫に限らず、その他のがんにおいても、状態によっては再発の危険性が高いといわれています。さらに治療によって100%がんが消滅したと証明できないのが現状でもあります。そのため、症状の改善や腫瘍の消失などによって、がんが確認できなくなった時点で、寛解(かんかい)という表現をします。
寛解(かんかい)というのは、症状が無く、病状をコントロールできている状態を示すものです。しかしそのような状態でも、再発の可能性は無いといえないのが現状です。
悪性リンパ腫の再発は約2年以内にしている人が8割から9割と高く、反対に治療後3年以内に再発が認められなければ、その後の再発率は低いといわれています。そのため、治療後3年という括りがとても大切な期間です。再発を予防するためには、治療後にも定期的に抗がん剤などの投与を行うことが多く、さらに定期検査では、血液検査やCT検査も併せて行います。
悪性リンパ腫の生存率
悪性リンパ腫の生存率には、がんの種類、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫によって違うといわれています。
多くのがんの生存率、5年生存率でみてみましょう。
ホジキンリンパ腫
- ステージ Iでは、約90%
- ステージ IIでは、約80%から90%
- ステージ IIIでは、約65%から80%
- ステージ IVでは、約40%から65%
非ホジキンリンパ腫
- ステージ Iでは、約70%から90%
- ステージ IIでは、約70%から80%
- ステージ IIIでは、約50%から70%
- ステージ IVでは、約50%から65%
このように分けられています。
悪性リンパ腫はその種類も多く、一概には言えないと思いますが、おおよその部分ではこのような結果となっていることを理解しておくと良いでしょう。自分の発見したときのステージを考えて目安として考えてみてください。
またステージが進んでいても、治療方法や患者との治療の相性などによって生存率も上がってくることが分かっています。だからステージが上がっていても落ち込む必要はありません。適切な治療を受けることで生存率は上がっていきます。そのためには、患者や周りのサポートする人と、医師が適切な協力関係を結び、適切な治療を行えるような体制を作ることが必要です。
まとめ
いかがでしたか?悪性リンパ腫のこと、治療後の生存率などは病状の発見状態や治療方法、再発の防止法などでずいぶんと違いが出ることがわかりました。5年、10年後の生存のために、日頃から気をつけて検査を受けることも大切です。
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