腹式呼吸の正しいやり方を知ろう!得られる効果が凄いの?

普段何気なく無意識に行っている「呼吸」について、意識したことはありますか?多くの方は、呼吸や呼吸法について意識したことが無いのではないでしょうか。一方で、歌うことが好きで発声法やボイストレーニングを習っている人や、最近流行しているヨガを実践している人にとっては、特に腹式呼吸法を身につけることが当たり前となっているでしょう。

実は、この腹式呼吸・腹式呼吸法は声量を上げたり、ヨガで瞑想をするためだけのものではなく、身につけることで心身ともに健康をもたらす効果があるのです。

そこで今回は、普段何気なく無意識に行っている呼吸の中でも、特に腹式呼吸・腹式呼吸法について、腹式呼吸のやり方や得られる効果をご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。

腹式呼吸・腹式呼吸法とは?

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そもそも腹式呼吸・腹式呼吸法とは、どのような呼吸方法なのでしょうか?

腹式呼吸のやり方や腹式呼吸法によって得られる効果を理解する前提として、まずは腹式呼吸に関する基礎的な知識をおさらいしたいと思います。

呼吸の仕組み

呼吸(外呼吸)は、肺の肺胞という部位において繰り返し行われる、口や鼻から取り入れた空気に含まれる酸素と血液が回収して運んできた二酸化炭素とのガス交換のことです。

この呼吸という動きは、気道を通じて肺に空気を出し入れする換気機能と酸素と二酸化炭素を入れ替えるガス交換機能の二つに大別されます。

呼吸の換気機能

呼吸における換気機能は、横隔膜あるいは肋間筋を収縮・弛緩させることで、肺を収納している胸郭を縮小・拡大させて空気の出し入れを行います。

横隔膜か肋間筋の動きによって胸郭が拡大すると、胸郭内部の空間である胸腔の体積が大きくなり、同時に胸腔内圧が低下することによって、胸郭の中の肺が膨らみ空気を取り込みます。

逆に横隔膜か肋間筋の動きによって胸郭が縮小すると、胸腔の体積が小さくなり、同時に胸腔内圧が高まることによって、胸郭の中の肺が縮んで空気を吐き出します。

呼吸のガス交換機能

呼吸の換気機能によって、取り込まれた空気中の酸素と血液が回収して運んできた二酸化炭素が、肺胞内で交換されることを呼吸のガス交換機能と言います。新たに酸素を取り込んだ血液は、身体の各組織に酸素を供給します。

腹式呼吸・腹式呼吸法とは?

腹式呼吸とは、呼吸の換気機能を働かせる際に、横隔膜を収縮・弛緩させることによって、胸腔体積を増減させる呼吸方法のことを言います。

つまり、横隔膜を収縮させることで、胸腔体積が増えると同時に胸腔内圧が低下し、胸腔内の肺が膨らみ空気を取り入れます。反対に、横隔膜が弛緩すると、胸腔体積が減少すると同時に胸腔内圧が高まり、胸腔内の肺がしぼんで空気を吐き出します。

横隔膜は胸部と腹部の中間に位置するため、腹式呼吸を行って横隔膜を大きく収縮・弛緩させると、横隔膜の直下に存在する腹腔が変形することになります。その結果として、腹式呼吸を行うと、横隔膜の収縮・弛緩に伴って、お腹が前方に膨らんだり、元に戻ったりを繰り返すことになるのです。

胸式呼吸・胸式呼吸法について

呼吸方法には、このような腹式呼吸・腹式呼吸法とは別に、胸式呼吸・胸式呼吸法が存在します。

胸式呼吸とは、呼吸の換気機能を働かせる際に、肋間筋を収縮・弛緩させることによって、胸腔体積を増減させる呼吸方法のことで、単に胸呼吸とも言います。

肋間筋は、胸部にある12対の肋骨の間に存在する筋肉のことで、肋骨の外側に存在する外肋間筋と肋骨の内側に存在する内肋間筋に分類されます。

そして、外肋間筋が収縮すると胸郭が広がって胸腔体積が大きくなり、胸腔内圧が低下するので、肺が膨らみ空気を取り込みます。一方で、内肋間筋が収縮すると胸郭は縮小して胸腔体積が小さくなり、胸腔内圧が高まるので、肺がしぼんで空気を吐き出します。

つまり、外肋間筋が収縮して息を吸う際には内肋間筋は弛緩しており、内肋間筋が収縮して息を吐き出す際には外肋間筋は弛緩しているのです。

腹式呼吸と胸式呼吸の使い分け

腹式呼吸と胸式呼吸は、明確に使い分けがされているわけではありません。

基本的に安静にしている平常時においては、横隔膜を使う腹式呼吸がメインとなって、時折サブ的に胸式呼吸が用いられます。平常時は、腹式呼吸による換気で7~8割は賄えるとされていて、胸式呼吸は深呼吸をするときなどに行われます。

一方で、運動時においては、腹式呼吸だけでは換気が間に合わず、胸式呼吸もフル回転して換気を行います。この際の胸式呼吸は、肋間筋だけでなく大胸筋・背筋・首の筋肉なども総動員して胸郭を広げようとするため、いわゆる肩で息をする状態となり、肩呼吸と呼ばれることもあります。

ですから、誰であっても呼吸運動として、腹式呼吸と胸式呼吸の両方を無意識的に行っているのです。

腹式呼吸法のやり方

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このように人間は呼吸運動として、自然に腹式呼吸と胸式呼吸を身につけており、それを状況に応じて無意識的に行っているのです。とはいえ、無意識的に行っている行動を、敢えて意識的にコントロールしようとすると、案外難しいものです。

そこで、普段は無意識的に行っている腹式呼吸を、意識的に自分のコントロール下に置く腹式呼吸法のやり方について、ご紹介したいと思います。

呼吸と自律神経の関係性

そもそも呼吸は、人間の生命の維持に不可欠な身体の運動機能です。このような人間の生命維持に必要不可欠な身体のの運動機能は、自律神経(交感神経と副交感神経)の支配下に置かれ、人が睡眠中であっても24時間休みなく働いています。呼吸運動・呼吸機能が自律神経の支配下にあるからこそ、人は意識をせずとも呼吸をして生存することができるのです。

人間の生命維持に不可欠な運動機能として、呼吸のほかにも心臓や血流などの循環器系や、胃・小腸・大腸などの消化器系の内臓機能も自律神経の支配下に置かれています。そして、原則として自律神経は自分の意思による制御・コントロールができないとされています。

しかしながら、呼吸器系だけは他の自律神経支配下の内臓機能と異なる点が存在します。それは、呼吸は基本的に無意識的に行われるものの、意識的に自分のコントロール下に置くことも可能であるという点です。

腹式呼吸法のやり方

今まで無意識的に行っている腹式呼吸を、敢えて意識的にコントロールしようとすると、案外難しいものです。最初は誰もが慣れていないことをするのですから、なかなか上手くいかないかもしれませんが、なるべく自分がリラックスできる場所で、心を落ち着けて練習して徐々に感覚をつかむようにしましょう。

まずは、仰向けに寝た状態で練習して、その後にイスに座った姿勢で練習してみると良いのではないでしょうか。

仰向けに寝た状態での練習方法

まずは、膝を立てた状態で、仰向けに寝ます。仰向けに寝た状態で練習をするのは、姿勢を正すのに余計な力を使わずに済むからです。そして、片手をお腹の上に置き、もう一方の手を胸に置きます。

このような準備が整ったら、軽く息を吐いた上で、鼻から5秒程度をかけて深く息を吸い込み、お腹の上の手が押し上げられるように、お腹を膨らませます。息を吸い込みながら横隔膜の筋肉が腹部のほうに広がっていくイメージを持つのポイントです。ちなみに、胸に置いた手は、胸呼吸になっていないかの確認の意味があります。

深く息を吸い終わったら、今度は吸った時の倍の時間をかけて、ゆっくりと口から息を吐いていきます。息を吐く時のコツは、一気に勢いをつけて吐くのではなく、ムラなく一定量の息を吐き続ける点にあります。そして、息を吐き出す時は、お腹を脱力させるようにへこませていき、横隔膜の筋肉が収縮していくイメージを持ちましょう。

重要な点は、息を吸う時は鼻からで、息を吐く時は口からということです。現代人には口呼吸をする人が増えているようですが、鼻から息を吸うことにも注意を払いましょう。

イスに座った状態での練習方法

イスには深く腰掛けずに、浅めに腰かけて背筋を伸ばすことで、姿勢を正します。猫背のように前傾姿勢になっていると、お腹の膨らむ余地が限られ、十分に息を吸うことができないからです。また、仰向けの状態と同じように、片手をお腹に、もう一方の手を胸に置きます。

このような準備が整ったら、息を吐くことから始めます。これは、重力が働く結果として、お腹が膨らみやすいので、お腹の膨らんだ状態からだと先に息を吐くほうがやりやすいからです。横隔膜が収縮して上方に上がるイメージを持ちながら、ゆっくりと時間をかけて、ムラなく一定量の息を口から吐き続けて、最後までお腹をへこませます。

次に、口を閉じて鼻から息を深く吸い込んでいきます。最初は難しいかもしれませんが、5秒程度の時間をかけて息を吸うようにしましょう。

注意点

このような練習法は、1回5~10分程度を目安にしましょう。慣れないうちから、腹式呼吸法の練習をやりすぎると、血液中の二酸化炭素濃度が低下し過ぎる危険があります。血液中の二酸化炭素が低下すると、手足の冷え・しびれ・めまい・頭痛などが生じる可能性があります。

練習途中で、気分が悪くなったり、クラクラした感じになったら無理をせずに中止しましょう。

腹式呼吸法で得られる効果

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それでは、このような腹式呼吸法を実践することによって、どのような効果が得られるのでしょうか?

そこで、腹式呼吸法の実践によって得られる効果について、ご紹介したいと思います。

自律神経の安定

前述したように生命の維持に必要な機能を、自律神経の交感神経と副交感神経が交互に働き24時間休みなくコントロールしています。通常は、昼間覚醒している時や運動時などに交感神経が優位になり、夜間睡眠している時やリラックス時などに副交感神経が優位となっています。

しかしながら、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスは、様々な要因によって崩れてしまいます。例えば、何らかの精神的ストレスに長い間さらされると、自律神経のバランスが崩れてしまうことがあります。自律神経のバランスが失われると、睡眠時でも交感神経が優位となって不眠症の症状が現れたり、酷い場合には自律神経失調症やうつ病となってしまうこともあります。そして、自律神経のバランスが乱れて交感神経が優位となっているときは、呼吸が浅くて速い傾向にあります。

このような自律神経のバランスが乱れて呼吸が浅く速くなっている場合に、意識して腹式呼吸法を実践することによって、交感神経が優位となっている状況から副交感神経が優位となる状況を生み出すことができるのです。つまり、自律神経と連動している呼吸を意識的に操ることによって、本来は自分の意思でコントロールできない自律神経に対して、呼吸法を通じて働きかけることができるのです。

ですから、腹式呼吸法の実践をすることで、乱れはじめた自律神経の安定を図ることができるのです。

ストレスの緩和とリラックス効果

ストレスと自律神経は、お互いに影響し合う密接な関係にあります。精神的ストレスは自律神経のバランスを乱す要因となりますし、自律神経の乱れがあると精神的なストレスを感じやすくなります。

いずれにしても、ストレスを感じつつある場合は、交感神経が優位となって自律神経も安定を失いつつあると言えるでしょう。

このようなストレスを感じる場合に、腹式呼吸法を実践することによって、呼吸が自律神経に働きかけて副交感神経が優位となる状況を生みだす効果があるのです。そして、副交感神経が優位となれば、心身がリラックス感を取り戻して、ストレスを緩和させることができるのです。

ですから、腹式呼吸法の実践をすることで、ストレス緩和効果とリラックス効果を得ることができると言えるでしょう。

具体例

例えば、緊張している時に深呼吸をして落ち着こうとするのは、このような理屈からくるものなのです。また、興奮時に一度深い腹式呼吸をして、リラックスすることは冷静さを取り戻し、より集中力を高めることにもつながります。

女性の更年期障害に見られるイライラ感などのストレスも、腹式呼吸をすることによって多少なりとも改善する可能性もあります。

姿勢の改善

腹式呼吸法を実践すると、横隔膜を大きく収縮・弛緩させることになりますから、横隔膜の直下に存在する腹腔が変形します。その結果として、横隔膜の収縮・弛緩に伴って、お腹が前方に膨らんだり、元に戻ったりを繰り返すことになります。

逆から見れば、猫背のように前傾姿勢の場合は、お腹が前方に膨らむ余地が限られますので、十分な腹式呼吸ができません。つまり、腹式呼吸法を実践しようとする場合、必然的に姿勢を正す必要があるのです。

ですから、腹式呼吸法の実践をすることで、姿勢を正す必要性に迫られ、猫背などの姿勢の悪さを改善することができるのです。

血流の改善

前述のように、腹式呼吸法を実践すると自律神経の安定を図ることができます。心臓や血液の循環といった循環器系も自律神経の支配の下にありますから、腹式呼吸法の実践によって自律神経が安定することにより、血液循環・血流も良くなることが期待できます。

また、腹式呼吸法の実践によって姿勢が改善されることも、血液循環・血流の改善に良い影響をもたらします。

このように腹式呼吸法の実践をすることで、血液循環・血流の改善が期待でき、肩こりの解消や冷え性の改善といった副次的効果も得られるでしょう。

便通の改善

腹式呼吸法の実践をすることで、自律神経の安定を図ることによりストレスが緩和されると、ストレス性の便秘症状が改善されることもあるでしょう。

また、腹式呼吸法は横隔膜を使う呼吸をすることで、お腹を前後させる腹筋も同時に使うことになります。この腹筋運動は、大腸に刺激を与えて蠕動運動を促進させることができます。

ですから、腹式呼吸法の実践をすることで、自律神経の安定や大腸の蠕動運動の促進を通じて、腸を活性化することができ便秘の解消といった便通の改善効果が期待できます。その上、腸の活性化は免疫力の向上・自己治癒力の回復・老化防止といった副次的効果につながる可能性があります。

ダイエット効果

腹式呼吸法の実践には、お腹を前後させる腹筋の使用を伴います。また、横隔膜も筋肉の一つです。そのため、腹式呼吸法の実践を通じて、お腹周りのインナーマッスルが自然と鍛えられることになります。

このようなインナーマッスルの強化は、基礎代謝アップが期待でき、エネルギーを消費しやすく痩せやすい体質へと変化させることができます。つまり、腹式呼吸法を長く継続して実践することは、痩せやすい体質を手に入れることができ、ダイエット法の一つとも言えるのです。

また、インナーマッスルの強化は、そのまま体幹を鍛えることともいえますから、腹式呼吸法の実践は体幹トレーニングでもあると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?腹式呼吸のやり方や腹式呼吸によって得られる効果について、ご理解いただけたでしょうか?

たしかに、私達は呼吸について、普段何気なく無意識に行っていて、意識することは多くありません。しかしながら、呼吸について意識して、特に腹式呼吸・腹式呼吸法を実践することで、心身ともに健康につながるのです。しかも、腹式呼吸法の鍛錬が、ダイエット方法にもなるのですから、嬉しい限りです。

ですから、冷え性・肩こり・便秘といった身体の不調の悩みをお持ちの方は、本記事をきっかけとして腹式呼吸法を身につけてみると、思わぬ効果が得られるかもしれませんよ。

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