アラビアガムという言葉は聞き覚えがある方もいるのではないでしょうか?食品添加物の一種で、コカ・コーラに含まれていることから、健康志向の方などに広く知られている物質です。
この記事では、アラビアガムはどのようなものなのか、そしてどのような食品に含まれているのか、危険性は高いのかどうかなどをご紹介していきます。
この記事の目次
アラビアガムってどのようなものなの?
アラビアガムといって明確にどのような製品なのかを説明できる方は少ないのではないでしょうか。食品添加物であるアラビアガムの正体を説明していきます。
アラビアガムは天然物質の1種
アラビアガムは、マメ科アカシア属のアラビアゴムノキという植物からできる物質です。
アラビアゴムノキの樹皮に傷をつけると樹液のように、分泌物がでてきます。この分泌物はアラビノガラクタンと呼ばれており、その正体は水溶性の食物繊維です。この分泌液自体の主成分は多糖類であり、炭水化物の1種です。
この分泌物を乾燥させたものから作られるのがアラビアガムです。触ってみるととても強い粘りを持っている物質なので、その特性を利用してさまざまな食品に添加物として利用されています。
水に対してとても溶けやすい
アラビアガムの特徴の一つに溶解性がとても高いというものが有ります。水に溶かすとあっという間に溶けるため、加工は比較的簡単だと言われています。
水に溶ける前は少し透明性を持った琥珀色をしています。水に溶かしたあとの水溶液はとても強い粘り気を持っているため、炭酸飲料などの材料を混ぜるための乳化安定効果を狙って使用される場合も多くあります。
日本国内では食品添加物として分類されている
日本国内では厚生労働省が既存添加物として定めているリストに入っています。日本で長い間使用実績があるとともに、広く使用されており、食品添加物としても有名な物質です。食品添加物事典にも載っており、事典食品添加物として制定されています。
特徴としては、なにより科学的に生成されているわけではなく、天然添加物であることです。
ほとんどが外国産
アラビアガムを分泌するアカシア属セネガル種は日本のアカシアと同じアカシア科であり同属植物ですが、種類が違うため、日本での生産は難しいといわれています。
現在出回っているアカシアガムの世界での輸出量の半分はスーダン共和国であり、その生産規模は他の国に比べると頭一つ違うと言われています。
食べ物にとろみを持たせることができる
アラビアガムのなによりの特徴は粘性、つまり粘り気があることです。この特徴を利用して、飲み物やゼリー、アイスクリーム、シャーベットといった冷たいお菓子や調味料にまで使われています。主な目的としては、とろみを持たせるために使用されています。
また、食品だけではなく葉酸サプリといったサプリメントにも増粘剤として使用されています。この時も同様に粘性やとろみを付ける目的で使用されているようです。
人によっては注意が必要なこともある
アラビアガム自体は急性毒性といった、体内に入れた途端毒性を発揮する強い毒の成分は弱いため危険性は低いものの、アレルギーを起こしやすい方は要注意です。
特にアラビアガムが含まれている錠剤を飲んだせいで逆に発熱や関節痛などを起こしてしまうことがあります。危険度は低いものの、喘息や鼻炎などにつながることもあるため、人によっては食品にアラビアガムが含まれていないか注意しておくのも重要です。
アラビアガムは何に使われているの?
食品添加物であるアラビアガムですが、一体どのような食品に含まれているのでしょうか?また、何が目的で含まれているのかをみていきましょう。
甘みのあるお菓子や炭酸飲料などにとろみをつける
あめやガム、キャラメルやチョコレートといったどこかとろみや粘り気のあるお菓子や、アイスクリームにアラビアガムは使われています。自分で材料を買ってきていちからこれらのお菓子類を作ったとき、なんだかとろみが足りずにぱさっとした感じに仕上がったという経験があるかたもいるのではないでしょうか。
これはもちろん技術などの差もありますが、アラビアガムを使用しているかどうかという点でも違いがでているということができます。
アラビアガムをどのような目的で使っているのかというと、まず材料に粘り気やトロミをつける効果を期待しています。また、増粘安定剤以外にも大量に作るときに混ざりにくいいくつもの材料を均等に混ぜ合わせるために、乳化安定効果を狙って乳化剤として使用されています。
乳化安定性とは、分子や原子が互いに分立せず、安定して存在する特性です。これによって、ばらばらだった材料が一つに均等にまとまります。
子供用に売られているお菓子にも使用されている
明治のマーブルチョコレートなどはお菓子として子供に限定せずいろいろな世代に食べられています。しかし、実はアラビアガムは子供用のキシリトールガムなど、子供にターゲットを限定した商品にも使用されています。
もちろんこのガムや他に含まれているお菓子などを食べたからといってすぐに何かしらの悪い影響があるとはいえませんし、アラビアガムを含むものを食べてアレルギーをこれまでに発症していない場合はこれからもアレルギーを起こす可能性は低いといえます。
ただ、体にいいものでもないので気になる方は、裏の原材料名をこまめにチェックしてみるのもいいかもしれません。
コカ・コーラにとってはなくてはならない材料
炭酸飲料の中でもコーラ系飲料、特にコカ・コーラにアラビアガムが使用されていると聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
コカ・コーラの正式な作り方は企業秘密のため、世界に2人しか知るひとがいないと言われていますが、アラビアガムは材料の1つだそうです。実は、コカ・コーラの中でも多くを占めている甘味料である砂糖液は、他の材料である香料として使われているいろいろな種類の精油と普通では混ざらないそうです。
その為、アラビアガムはコカ・コーラを作る上において、材料を均等に混ぜるためになくてはならない添加物だと言われているそうです。
品質によってはワインの中に含まれている場合も
高価なワインの場合は純粋な材料のみで作られており、合成添加物などはふくまれていません。しかし、工場などでワインを大量生産する場合、安定剤食品のひとつとしてアラビアガムを使用する場合があるそうです。
ワインファンの中にはプライベートブランドの安いワインだとアラビアガムなどの添加物が使用されており、とてもワインではないという方もいるそうです。
アラビアガムの効果はどのぐらい大きいの?
さまざまな食品に添加物として加えられているアラビアガムですが、ワインに入っている場合と、入っていない場合はどのように変化するかみていくことで、アラビアガムの性質をみていきましょう。
色はあまり変わらない
アラビアガムはもともと天然樹脂であることから分泌物として固形状であるときから不透明な琥珀色をしています。
また、アラビアガムは水に溶けると透明水彩色になるため、添加食品自体の色はほとんど変化することはありません。その為、見た目にはなんら変化がないようにみえます。
香りはおおきく変化する
アラビアガムを入れたときに見た目は変わらないものの、香りはかなり変化します。
特にジャムや蜜のような濃いねっとりとした甘みのある香りになり、まとわりつくような強い印象をもちます。また、香りの密度も上がるため、より香りとしての印象は強くなります。
味わいを変化させる
アラビアガムは材料それぞれを混ぜ合わせて一つにする乳化安定効果があります。その為、ワインに加えると酸味や渋みをやわらげてまろやかな味わいにしてくれる効果があります。
ただ、その代わり素材本来の果実感であったりさわやかな新鮮さ、またワインの醍醐味である酸味は弱くなってしまうので、アラビアガムにたよりすぎでもあまり美味しい味わいにはならないということができます。
口当たりを変化させる
アラビアガムによって粘り気が増したワインはとろみがつきます。その為、アラビアガムを入れる前と比較して口当たりがなめらかになり、飲み込んだあとにも後味が残るような味わいであるということができます。
あまりさらさらしすぎると喉越しもすぐに消えていってしまうので、アラビアガムの配合に注意して、ちょうどよい粘度に調節するのが重要です。
また、粘度がでることでまったりとした口当たりになり、まとまりのある味わいに変化します。ただ、後味に酸味が残らずにすぐに消えていってしまうというデメリットもあります。
清澄作用がある
ワインの中に含まれているタンニンはタンパク質を沈殿させることで清澄を行うものの、それを防ぐ働きがあります。
アラビアガムはワインのなかに溶け込んでいくことで、タンニンがワインのそこに沈殿するのを防ぐ清澄作用を発揮します。これによってきれいに澄んだ見た目にも美しいワインが作られます。
アラビアガムに毒性はあるの?
天然素材から作られているアラビアガムですが、人間が摂取しすぎると害はあるのでしょうか?
また、害があるとしたらどのような毒性をもっているのでしょうか?
アラビアガムを摂取しすぎると当然害はある
アラビアガムの毒性は一般的に弱い部類に入ると言われています。人間が食べる食品に入れる前に、入念に動物を使って実験が行われます。
その際にマウスやラットといった動物が死亡したというデータが残っているものの、体の大きさの違いや、摂取した量が異なっているからという結論が言われています。毒性が弱いと言っても、アラビアガムには毒性が含まれているため、制限なくやみくもに摂取し続けると当然体に害がでます。
ただ、人間では毒を発揮するまでの量を摂取することはないため大丈夫だと言われています。
動物実験の場合多少の害はみられた
ラットやマウス、他にもうさぎなどで人間が食品添加物として使用する前に、何回にも分けてアラビアガムの毒性についての動物実験が行われています。
アラビアガムを何度も複数回に分けて与えると食欲不振や、出血をおこすほどの下痢、失禁などといった症状がみられることがわかっています。その為、決して毒性がないということはできません。
人間がアラビアガムを摂取すると副作用を起こす場合がある
アラビアガムを人間が体内に吸収すると、喘息や鼻炎などといった症状を引き起こすことがあるといわれています。
そのため、気になる方はアレルギー体質の方などはアラビアガムを摂取するのを少し注意してみてもよいですが、そこまで影響はないため、神経質になる必要はありません。
薬を飲むことによってアラビアガムの副作用があることがある
錠剤の中には、アラビアガムが含まれている場合があります。あまり日本国内で多い患者数ではありませんが、腎臓移植患者さんがこのアラビアガムを含む薬を服用すると、副作用によって熱がでてしまったり、関節に痛みを感じる、発疹を起こすなどの副作用を起こす場合があるといわれています。
特に、腎臓を移植したあとは、少しの変化でも危険などでよく飲む薬は医師と相談した上で服用していくのが重要です。
ガンを発症する危険性があがるといわれている
アラビアガムに含まれている成分のひとつに水溶性の食物繊維があります。水に溶けやすいため、体内にとりこまれたあと、広がりやすい物質であると言われています。
また、この食物繊維が本来はからだがなにごともなく排出する発がん物質を体に残しておく効果があるといわれているので、癌になる確率が上がると言われています。そこまで神経質になる必要はありませんが、過剰に摂取することがないように注意をするのが重要です。
食べ物以外にもアラビアガムが含まれている場合はあるの?
いくら食べ物を注意して選んだとしても、アラビアガムは絵の具など身近な文房具類にふくまれています。
特にお母さんたちは、子供が飲み込むことがないか心配な絵の具など、アラビアガムは何に含まれているかを説明します。
絵の具にふくまれている
アラビアガムは食品添加剤では有りますが、粘性があるために絵の具にも使用されています。絵の具の材料はその色にするために使用する色をもった粉末状の顔料に、その顔料を紙やキャンパスにつけておくために必要な接着剤でできています。
この接着剤は専門的に言うと、バインダーと呼ばれています。アラビアガムはこのバインダーとして使用されています。特に水彩絵具の場合、大抵はバインダーとしてアラビアガムが採用されています。
ただ、アラビアガム自体は輸入されているために単価が高く、一般的には使用されていません。その安い絵の具には代替品としてでんぷんの粉から作られたデキストリンが使われています。デキストリンとアラビアガムの値段の差は約20倍であり、アラビアガムが使用されている絵の具は高級な絵の具であるということもできます。
切手の裏のノリにも含まれている
アラビアガムは水に溶けやすいことから、少しの水分に反応してすぐに粘性を発揮します。しかし、乾燥しているときにはべたべたしないため、切手の裏側についているノリとしても使用しています。
切手をなめてつける人もいるかと思いますが、とても多い量を摂取しているわけではないので、気にすることはありません。ただ、人の手やさまざまな保管場所においてあるため、衛生上舐めるのはあまりおすすめしません。
他にもさまざまなものに含まれている
アラビアガムはその粘性を利用して、さまざまな部分で実は活用されています。博物館や植物園では植物標本をみることができますが、台紙に固定するテープのノリとして一時期はよく使用されていました。
ただ、今では大量に植物標本を制作する場合には熱で固定するタイプの合成接着剤を使用する場合が多く、アラビアガムを使用した植物標本は減っています。
他にもアラビアガムと抱水クロラールを主な成分としているガム・クロラール系封入剤はさまざまな面で使われています。特に、ダニやとても小さな昆虫を半永久的にプレパラートにする場合にはガム・クロラール液や、ホイヤー液を使用します。これらはすべてアラビアガムが含まれており、その特性をうまく活かしているといえます。
まとめ
アラビアガムはどのようなものなのか、少しでもわかっていただけたでしょうか?天然の食品添加物であり、その特性からさまざまな食べ物や、時には飲み物にもなくてはならない添加物として、広く使用されています。
また、それ以外にも薬の成分やサプリメント、またのりや絵の具の中にも活用されているため、意外と身近な存在であるということができます。
毒性があるからといってやみくもに避けるのではなく、アラビアガムとはどのような特徴を持って、どのくらい摂取したら悪いのかということをきちんと理解した上で、適切につきあっていってくださいね。
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