「最近、食後に胸焼けがひどくて・・・」あるいは「最近、食欲がなくてあまり食事を摂れていない・・・」などと、お悩みの方はいらっしゃいませんか?
そんな方、もしかすると、ただの食欲不振ではなく、実は「胃アトニー」かもしれません。
今日は、そんなお悩みを抱えている方のために、胃アトニーについてお話ししたいと思います。
胃アトニーとは
それでは、胃アトニーとは一体どのような病気なのでしょうか?
まずは、辞書でその定義を確認しておきましょう。
胃アトニー
胃壁の筋肉の緊張の減退した状態。蠕動(ぜんどう)運動も減退していることが多い。体質、胃の過度の使用、他の胃腸疾患等により生ずる。胃下垂にしばしば伴う。
空腹時の胃の大きさは正常だが、食物摂取後著しく大きくなる。治療は消化のよい高カロリー食を、消化のしやすい形態に調理し、1日5〜6回に分けてとるようにし、水分をひかえる。
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定義によると、胃アトニーとは、どうやら胃の筋肉の力が衰えてしまい、胃の蠕動運動も衰えてしまっている状態のようですね。
蠕動運動とは、筋肉の収縮波が徐々に移行する方の運動のことで、ミミズなどの移動、また、高等動物が腸の内容物を送るのも、この運動によります。
胃アトニーは、胃下垂から発症することが多いようです。
胃下垂とは、胃の下端は普通へその下2〜3㎝にあるのですが、それを超えて下がっている状態をいいます。体格の細長い無力性体質の人に多く、腸や腎臓などの他の臓器下垂(内臓下垂)を伴うことが多いとも言われています。
それ自体は病気ではなく心配はないのですが、胃アトニーを伴う場合も多く、食事の不摂生で胃炎を生じやすいので、水分、不消化物、油脂の過食は避ける必要があります。また、胃拡張となることも多く、胃が異常に拡大した状態になります。
一般に食欲低下、嘔気、嘔吐、胃部飽満感などの消化不良性の苦痛を訴え、暴飲暴食によって起こるとされていますが、胃癌や胃潰瘍の瘢痕などのために幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)や閉塞(へいそく)が起こって、胃の内容物がたまり、胃が拡張した状態を指します。
また、胃の自律神経の機能失調により、胃液や嚥下(えんげ)した空気により拡張することも併せて胃拡張と言います。
胃アトニー時に軽度に認められますが、特に心配はありません。
ただ、胃下垂や胃拡張などといった症状から、胃酸過多や無酸症を引き起こすことも少なくなく、重篤な疾患の原因となる場合があります。
それについては、次節でお話ししましょう。
胃アトニーの原因
胃アトニーは、長身痩躯(ちょうしんそうく)のやせ形の男性に多いことが指摘されています。
もちろん、女性でも出産を繰り返した方や、腹部の手術を受けた方などにも発症します。その原因は、明確に詳(つまび)らかにはされていないのですが、以下の原因が挙げられます。
- 暴飲暴食
- 極度の過労
- 過度のストレス
暴飲暴食
暴飲暴食は、言うまでもなく、胃に負担をかけます。
不規則な時間帯に食事をとる、脂分の多い、消化にあまり良くない食事をとり続ける、など枚挙にいとまがありません。
食事に、個人の嗜好が反映されることは、ある程度仕方のないかもしれませんが、食事は身体にとって大切な活動でもあるのです。食事は、毎日規則正しく、栄養バランス良く摂取することが肝要です。
極度の過労
過労もまた、胃アトニーの原因となると言われています。毎日、1日15時間程度の仕事をこなしていると、人には自然と疲労が蓄積されていき、休む暇もありません。疲労が蓄積されていくと、当然胃も弱っていきます。
働くこと自体は、決して悪いことではありませんが、最近はやりのブラック企業などにお勤めの方は、ご注意された方が良いですね。
過度のストレス
人は過度のストレスにさらされ続けると、心だけではなく、肉体的にも疲弊していきます。
その結果、胃も弱ってしまいます。そのメカニズムはこれからお話ししますが、胃の筋肉の力が弱まっていき、胃下垂、胃アトニーとなり、その後さらに重篤な病気にかかる可能性が高まってきます。
極端なストレスは、精神的に辛いだけではなく、肉体的にも良くないのです。
胃酸過多と無酸症
胃が、これらの原因にさらされると、胃の中で食べ物がたまっていきます。すると、胃酸過多あるいは無酸症を誘発し、なおかつ消化不良を起こしてしまうので、胃にとっては非常に有害な状態となります。
胃酸過多とは、胃の細胞から塩酸が過剰に分泌される状態をいいます。胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎などにも伴いますが、20歳から40歳の男子に多く、精神的過労により発することが多いとされています。
食後2〜3時間後の胃不快感、胃痛。検査により高酸度を示すので、刺激物を控え、アルカリ剤によって塩酸を中和する各種制酸剤や、胃液の分泌を抑える作用のあるアトロピン(ロートエキス)などが有効と言われています。
また、無酸症とは、逆に、胃液の酸度の極度に低下または消失する症状を言い、過酸症(胃酸過多)の対となる症状です。慢性胃炎、胃癌、胃アトニーのほか胆嚢炎、虫垂炎、悪性貧血の場合などに起こります。
みぞおちに種々の不定愁訴があり、胃酸検査で調べます。
なお、遊離塩酸だけが欠乏する無塩酸症と胃液分泌が極度に低下する胃液欠乏症とに分けることがあり、塩酸を補い、ペプシンの働きを活発にする塩酸リモナーデを投与する治療が必要となります。
胃アトニーの原因にはこのような原因があり、その結果、胃壁の筋肉力が低下し、胃の蠕動運動が弱まってしまいます。すると、胃アトニーはさらに胃潰瘍や胃癌といったさらに重篤な病気にかかる可能性が高まってしまうのです。
胃アトニーの症状
胃が下がり、胃壁の筋肉の低下から消化不良を起こしてしまう胃アトニーですが、その主な症状には以下のようなものがあります。
- 飽満感
- 食後のむかつき・嘔気
- 食欲不振
- 冷え症
飽満感
お腹が張ったような感覚にとらわれるようになります。
少量の食事でも満腹を感じるようになってしまい、食事量もさほど多く摂ることができません。本来、補うべき栄養分を補給することすらままならなくなります。
食後のむかつき・嘔気
食事を摂った後に、胸などにむかつきを覚え、不快感を感じるようになります。気持ちが悪くなり、ときには、嘔吐や嘔気も伴います。
自然と、食事を摂取すること自体に嫌悪感を覚えるようになり、箸が遠のきます。
食欲不振
飽満感を覚えるようになり、食後に胸のむかつきや嘔気・嘔吐を伴うようになると、当然のことながら食事を摂取しようとする気持ちが徐々に薄れてきます。
食事自体に嫌悪感を覚えているので、食事を摂取すること自体を避けようとしてしまいます。その結果、食欲不振に陥り、食事を摂ることが難しくなってきます。
冷え症
胃が下腹部に下がると、胃が冷えてしまいます。その結果、冷え症になりがちです。
子宮や前立腺も冷えてしまうために、不妊症や排尿にも支障をきたすようになります。
胃アトニーの治療法
胃アトニーは、胃のレントゲン検査でバリウムを飲んで診断します。胃アトニーと診断されると、その後は胃アトニーの治療となります。
基本的に、胃アトニーは手術などの外科的療法ではなく、薬の内服などによる内科的療法となり、主な治療法は以下の通りとなります。
- 食物療法
- 薬物療法
- 漢方療法
食物療法
胃アトニーの基本的な治療は、食物療法となります。
1日の食事を5回から6回に少量ずつ分け、1度に摂取する分量を減らして食事を摂取することで、胃に対する負担を軽減します。また、なるべく水分の摂取を避け、消化しやすい、豆腐や湯葉、白身魚などのタンパク質を摂取するようにします。
さらに、ソラマメは胃の筋肉を強める作用があります。炭水化物では、うどんやそうめんなど消化に良い食事を摂取するようにします。
薬物療法
基本的に、薬物による胃アトニーの治療はあまりないのですが、胃腸の働きが悪く、便秘がちの場合には、下剤や消化剤などを処方して服用し、胃の消化を促進して排便を促します。
漢方療法
胃アトニーの漢方療法では、さまざまな薬剤が用いられていますが、その中でも代表的な漢方薬をご紹介します。
- 六君子湯(りっくんしとう)
- 平胃散(へいいさん)
- 茯苓飲(ぶくりょういん)
六君子湯
胃を丈夫にする漢方薬で、胃に異物感を覚え、多くの食物を摂取できず、太りにくい体質の方向けのお薬です。
すぐに、疲れを感じるような、疲れやすい方に最適です。
平易散
胃アトニーに直接効能のある漢方薬です。
軽症の胃アトニーで、腹部に飽満感を覚えている人などに向いています。
茯苓飲
胃で振水音が聞き取れ、胃酸、胃液が上がってくるような場合、または胸焼けやげっぷを伴うことが多くある場合に用いられます。
おわりに
ここまで、お話ししたとおり、胃アトニー自体はまだ深刻な病気ではありませんが、胃酸過多や無酸症といった原因から消化不良を引き起こし、ひいては胃潰瘍や胃癌などを発症する可能性のある症状です。
前述した食物療法や漢方療法に加えて、以下のことを心がけましょう。
- 適度な運動
- 整体に通う
- 良い姿勢と骨格バランス
適度な運動
適度に運動することは、人の身体にとって、とても大切なことです。適度な運動や食欲を増進させ、美味しく食事をいただく源でもあります。近所の公園の散歩でも構わないので、少しずつ身体を動かすようにしましょう。
整体に通う
整体に通うことで凝り固まった身体をほぐしてもらいます。
硬くなった身体は、胃腸などの内臓にも負担をかけることになるので、なるべく身体をリラックスさせてゆったりとした心持ちで居られるような身体作りを心がけましょう。
良い姿勢と骨格バランス
日頃から、姿勢に気を配り、良い姿勢を保つようにしましょう。
骨格バランスに配慮することで、胃腸などの内臓に過度の負担をかけることないようにしましょう。
最後に、
「たかが、食事ぐらいで・・・」ではなく、「されど、食事」ということを肝に銘じましょう。「医食同源」という言葉があります。食事をとるということは、医術でもあるのです。
あなたも、早速、今日から規則正しい、バランスのとれた食生活を送ってみてはいかがでしょうか?
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