アニサキス症の症状とは?治療方法や予防方法も紹介!

「アニサキス」をご存知でしょうか?あまり聞き慣れない言葉ですが、実はこれ、寄生虫(線虫)の一種なのです。成虫はクジラやアザラシなどの哺乳類の消化器内で生息していますが、幼虫は、サバやアジ、イカなどの内臓に生息しており、これらの魚介類が死亡すると、筋肉の部分に移行します。

本来、人間の体内では生息できないアニサキスが、私たちの体内に入ることで、「アニサキス症」という食中毒を起こします。ではなぜ、体内に入るのか?──そうです、日本人特有の食文化である「魚介類を生で食べる」ことに原因があるのです。

そこで、ここでは、アニサキスが引き起こす食中毒「アニサキス症」について、その症状、予防策について、詳しくご紹介いたします。

アニサキス症とは?

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アニサキス症とは、日本でもかなり昔からある病気で、現在でも増加傾向にありますが、原因となる寄生虫がアニサキスであると確定されたのは1960年代のことです。

お刺身やお寿司など、生で魚介類を食すことから、日本でのアニサキス症の発症数は、諸外国に比べても圧倒的に多く、また、生鮮食料品の輸入体系が時代とともに変化してきたことも、発症増加の原因になっていると言われています。

過去のデータによると、9月~12月に発症例が多数見られ、冬の食中毒の一つであるとも言えるでしょう。

さて、それでは、アニサキス症とは、どのようにして発症するのか、早速見ていきましょう。

アニサキスの幼虫について

私たちの体内に入って、中毒症状を起こすアニサキスの幼虫は、長さ2~3cm、太さは0.5~1mm程の白く太い糸のような形状をしており、サバ、アジ、イワシ、カツオ、サンマ、サケ、イカ、イナダなど、私たちの食生活に身近な魚介類の内臓に生息しています。

市販の魚介類でも、時々、肉眼で肝臓の表面にとぐろを巻いているのを確認できることがあります。しかし、魚介類が死亡すると、お刺身の部分として使用される筋肉部分に移行し、潜り込んでしまうため、お刺身やお寿司などを食べた際に、気付かぬうちに、体内に入れてしまう場合があります。

アニサキス症が発症したら…

アニサキスの幼虫がいる生の魚介類を、加熱調理せずに食べてしまうと、体内に入ったアニサキスが胃壁や腸壁に潜り込みます。

魚介類を口にしてから8時間以内、多くは3~4時間後に症状が発症すると言われています。お刺身やお寿司を食べたあとに、腹痛や吐き気などの症状が出た場合には、すぐに病院で受診しましょう。

また、アニサキス症が判明した場合には24時間以内に最寄りの保健所に知らせなければなりません。アニサキスを寄生した魚介類を提供したお店などは、この場合、3~4日の営業停止処分になることがあります。

症状と治療法について

アニサキス症は、人体のどの器官に幼虫が寄生しているのかによって、病状が若干異なります。また、「劇症型」と「軽症型」があり、劇症型の場合は、幼虫を摘出しても消化管の痙攣や収縮が治まらず、軽症型の場合は比較的軽い症状で済みますが、幼虫が消化管の外へ出ようとすると、急激に症状が悪化する場合があります。

いずれの場合も、病院での対処が必要です。アニサキス症には、以下のような症例があります。

<胃アニサキス症>

文字通り、これはアニサキスの幼虫が胃に到達し、胃壁の粘膜を破り、潜り込もうとすることによって、発症するケースです。アニサキス症の約9割が、この「胃アニサキス症」と言われており、生の魚介類を食べてから、約2~8時間で発症します。

通常の胃痛とは痛み方が異なり、針で刺すような激しい痛みが上腹部に周期的に出てきます。そして、嘔吐や悪心、発熱などの症状が見られます。このような症状が見られた場合には、すぐに受診が必要です。

治療としては、内視鏡でアニサキスを取り除く治療法がありますが、アニサキスは胃液によって1週間程度で死んでしまうので、幼虫を摘出できなくても内服薬等で治療する場合もあります。

<腸アニサキス症>

腸アニサキス症の場合は、胃の場合と異なり、発症までに数時間、長い場合には1週間程度時間を要することもあります。症状としては、腹痛、嘔吐、悪心の他に、腸閉塞や腸穿孔を併発することもあり、その場合には手術が必要になります。

腸アニサキス症の診断は困難なため、X線や超音波検査での診断に加え、抗アニサキス抗体などの血清学的診断を併用して、調べます。

寄生虫による症状であると判断された場合には、胃とは異なり、幼虫の摘出ができないため、鎮痙薬などを用いて対処療法を行いながら、幼虫が死亡、あるいは吸収されること待つしかありません。

先にも述べましたが、アニサキスそのものは、基本的に人体内では長く生息できないため、命に別状はありません。

<消化管外アニサキス症>

この症例は希ですが、幼虫が消化官を突き抜けて、消化管外の腹腔、胸腔、肺、腸間膜、リンパ節などの皮膚下のあらゆる所に入り込むケースが、これにあたります。

症状は、幼虫が潜り込んだ場所によってそれぞれ異なりますが、腹壁皮下に入り込んだ場合には、肉芽腫という腫瘍を作ってしまうこともあります。

消化管外アニサキス症の診断は難しく、ほかの疾患だと思ってその処置にあたっていたら、寄生虫が発見されたというケースもあるのです。

治療法としては、入り込んだ箇所によっても異なりますが、メベンダゾールという駆虫薬の内服が一般的に知られています。しかし、「効果的」と言える駆虫薬は、現段階では見つかっていないようです。

<アニサキスアレルギー>

これは、子供よりも大人に多く見られるアレルギーで、大人になってから急にアニサキスアレルギーになったというケースも多々あります。

アニサキスアレルギーで最も厄介なのが、生食でも、加熱調理されたものでも、「アニサキスが寄生している魚」を食すだけで、アレルギー反応が起きてしまうという点です。加熱調理によって、若干症状が軽くなる場合もあるようですが、人によって異なります。

症状としては、身体のかゆみ、蕁麻疹、腹痛、吐き気、などのアレルギー症状が現れ、ひどい場合には、呼吸困難や血圧降下、むくみなどのアナフィラキシーショック症状を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

このような症状が出たら、早急に受診し、アレルギー疾患治療をしてもらう必要があります。

アニサキス症を予防しよう!

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せっかく魚介類の美味しい国に生まれたのですから、必要以上に神経質になるのではなく、しっかりと予防して、食事を楽しみたいものです。

それでは、アニサキス症の予防策について、早速見ていきましょう。

鮮度の良い魚介類を選ぶ

まず、魚介類を選ぶ際には、鮮度の良いものを選ぶことが基本です。魚の場合だと、以下のような点で鮮度を見分けることができます。

  • 目の色が白く濁ったり、血が混じっていない、済んだ色をしているもの
  • えらぶたを開けたときに、えらの色が白っぽくならず、鮮やかな赤い色をしているもの
  • 青魚は青く、赤魚は赤い、というように体の色つやがよいもの
  • ウロコが剥がれすぎず、きれいに揃っているもの
  • 腹部に弾力があり、魚を持ったときにハリがあるもの
  • 魚体が切れて内臓が出ていないもの など

できれば生食は避けるのがベストですが、それも寂しいものですので、とくにお刺身で食す場合には、上記のような項目を参考に、鮮度の良い魚を選ぶと良いでしょう。

購入後は、4℃以下の保存で、内臓から筋肉の部分にアニサキスが移行することをある程度防げるので、低温保存を心がけましょう。

また、魚介類を購入した際には、すぐに内臓を取り出すなどの下処理を行ってください。内臓は生で食さないということも、予防策の基本と言えるでしょう。

目視

アニサキスは、比較的大きな寄生虫のため、肉眼でも確認することが可能です。魚介類をさばく際には、内臓や、内臓周りの背骨周辺の筋肉に、丸い糸のようなものがないか、あるいは、線状の白っぽい物体がないか、確認しましょう。発見した場合は、それらを除去すれば、食べても問題はありませんが、完全に取り除くのは困難だと言われています。

また、アニサキスアレルギーの人は、熱を通しても、幼虫が寄生する魚を食べるだけで、アレルギー症状が発症するので、発見した場合は、もったいないですが、この時点で魚を処分しましょう。

加熱

アニサキスの幼虫は、加熱することで死滅させることができます。70℃以上の場合は瞬時に、60℃では約1分加熱することで、死滅します。目視で、幼虫を発見した場合はとくに、除去後も生で食さず、必ず加熱調理して食べることをおすすめします。

冷凍

アニサキスの幼虫は、-20℃以下で24時間以上冷凍することでも死滅させることが可能です。しかし、家庭用の冷凍庫では、冷凍庫内に食品などを保管しすぎていると、庫内の温度が-20℃まで下がらないことがありますので、注意が必要です。

改めて、自宅の冷凍庫の保冷温度について確認し、庫内を整理整頓しておくことも大切です。

生食は避けたほうが良い魚

アニサキスが、内臓ではなく筋肉の部分に寄生している可能性が高い魚がいます。サバや、天然のサケ(秋サケ)、ニシン、タラなどがその代表的な鮮魚です。これらを生で食べるのは、できるだけ避けたほうが安心でしょう。

その他の注意点

昆布締めや、酢で締めたもの、塩漬け、わさびなどは、殺菌してくれるイメージがありますが、アニサキスの幼虫はこれらでは死滅しません。

また、加熱や冷凍以外の予防策として、「よく噛むこと」があげられる場合もありますが、アニサキスの幼虫は、外傷に弱い反面、かなりの弾力があるため、真意のほどは定かではありません。

よく噛んで食事をすることは、大切なことですが、過信しすぎず、必ず目視などで確認することを心がけましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アニサキス症が発症しやすい肌寒い季節こそ、お刺身と熱燗での一杯がたまならないのに…と思う人もいるのではないでしょうか?発症数が増加傾向にあるとは言え、食事の楽しみもまた、捨てがたいものです。

とくに生食には気をつけた方が良い魚は、必ず下処理をするなど、あまり神経質にならない程度に、基本的な予防策をしっかりと行って、命の恵みをありがたく、美味しくいただくことができるように工夫することも、料理の楽しみの一つかもしれません。

  
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