頭を強くぶつけたり、転倒することなどで脳に損傷を受ける脳挫傷という病気。頭をぶつけた後に、痛みはあるけど、大丈夫と軽視していると、数日後に症状が悪化して、意識不明の重態な症状を招くかもしれません。
脳挫傷にはどんな症状が出たりするのかを事前に知っておくことで、重大な症状への予防も出来ます。ここでは、脳挫傷が起こる原因や詳しい症状、治療方法についてご紹介します。
脳挫傷について
脳挫傷の概要と、なぜ発症するのか原因を詳しくご紹介します。
脳挫傷とは?
脳挫傷とは、脳が何らかの大きな衝撃を受けて損傷する状態を言います。交通事故や激しいスポーツでの転倒し頭をぶつけておこる場合や、幼児などを「高い高い」などをして、脳を揺さぶることで脳内で脳が頭蓋骨に激しくぶつかり、損傷を起こす場合の2パターンあります。
脳は生命活動にとても大事な部分でもあるので、脳挫傷になった場合の意識不明などの重症な状態からの死亡率は44%、社会復帰は31%と言われており、死と隣り合わせの恐ろしい病状です。たとえ、生還出来たとしても後遺症が残るなど生活に障害が出てくる場合もあります。
年齢や性別に関係なく、脳に大きなダメージを与えることでなる病気です。
脳挫傷の原因は?
頭をぶつけておこる場合や、脳を揺さぶることで脳が頭蓋骨にぶつかり、損傷を起こす場合の2パターンあります。
■頭に激しいダメージを受け損傷する
- 車などの接触による交通事故
- 自転車やバイクなどの転倒
- 階段の上や建物の上からなどの高い場所からの転倒
- 高い場所から落とされた落下物にあたる
- 格闘技やアメリカンフットボールなどの激しいスポーツの際に頭を強打した
- 頭を殴られたり、蹴られるなどの暴行やいじめを受けた
上記のようなことが原因となり、強い外力が頭に直接かかることで、脳に損傷が起こります。
■脳を強く揺さぶられた為に損傷を受ける
体や頭部を強く揺さぶられて、頭蓋骨内で脳が頭蓋骨にぶつかり損傷を起こすことがあります。特に幼児などの頭蓋骨が柔らかいうちに「高い高い」などの頭を揺さぶるような事をすると、このような事態を招くことがあるので、注意が必要です。このような症状を「揺さぶられっ子」症候群と呼ばれ、生後6ヶ月以内の幼児に特に見られる症状です。
事故後、本人が何ともないと言っている場合でも、病院で頭部CT検査や頭部MRIなどを使って、脳出血や脳浮腫がないか検査してもらうことをおススメします。特に気分が悪いや何か異常な行動が起こったら、本人が正常な判断できない場合があるので、周りがすぐに病院に連れて行くなどのサポートをすることがとても重要です。
脳挫傷の症状
脳の役割は様々あるので、損傷した場所によって、症状が異なったり、複数の症状が出たりします。
ここでは、主な症状をご紹介します。
頭痛や吐き気、嘔吐
軽度の外傷であれば、あたった部分が痛いなどの症状だけですみます。しかし、脳の中が損傷している場合は、自分では判断つきにくいですが、下記のような症状が初期症状として現れるのが特徴です。
- 頭痛がどんどん悪化する
- 気分が悪い、吐き気や嘔吐が見られる
- ボーっとする
- 物が見えずらい
- 手足が動かしずらい
外傷で受けた痛み以外に、これらの症状が同時に起きたら、脳の中で損傷が起きている可能性が高いです。すぐに検査を受けることをオススメ致します。
けいれん
自分の意思とは別に筋肉が激しく収縮することで、小刻みに全身や体の1部が震えているような状態を痙攣と呼びます。
出血や外傷が原因となり、脳細胞の神経活動に異常をきたす為に起こすと考えられています。痙攣が起こった場合は、早期に対応する必要があります。
出血
交通事故や激しいスポーツでの転倒により、頭をぶつけて外傷をおこした場合、損傷した場所から出血が起こります。脳には、生命活動に必要な太い血管から細い血管も脳内に張り巡らされているので、外傷を受けると出血しやすく、壊死を起こす可能性があります。
脳挫傷の出血は、基本的には事故後すぐに発生しますが、高齢者の方や細い血管からの出血の場合は、数日~数週間経ってから、症状がでる可能性もあります。
一度、出血が落ち着いたとしても、再出血する場合も多くあります。その為、外傷を受けたということが分かっている方は、事故後は慎重に様子を見ることが必要です。頭痛や気分が悪いなどの症状がでた場合は、すぐに病院に行きましょう。
脳浮腫
足や腕をどこかに強くぶつけてしまった場合、後からぶつけた部分に腫れがみられることが多くあると思います。この状態と同じ症状が脳の中でも起こります。外傷を受けた場合に、脳内で腫れがみられ、その状態を脳浮腫と呼びます。
この状態になると、この腫れが頭蓋骨内の血管や神経などを圧迫し、頭痛や吐き気・嘔吐、うっ血乳頭などの様々な症状が引き起こされます。
意識障害
脳出血や脳浮腫が進行していくと、意識が朦朧としたり、混乱が起こります。脳は頭蓋骨に覆われていて、余分なスペースはありません。その為、血腫や脳浮腫が頭蓋骨内に溜まり圧迫し、柔らかい脳は小さなスペースに押し出されます。
このような状態が起こると、まず初めに意識障害が起こります。意識障害とは、周りからの呼びかけに反応を示さなかったり、時間や場所が分からなくなるなどの状況を正常に把握できなくなることです。その他に、幻覚や錯乱などの症状も見られる場合があります。
この状態になると、本人では異変に気付きにくく正常に判断できない可能性が高い為、本人が大丈夫と言っていたとしても、周りが異変に気付き病院に連れて行く判断をすることが重要です。
呼吸停止
上記の意識障害の状態を見逃すと、大量の血腫や脳浮腫による圧迫が更に進行し、脳の深部にある、呼吸や心臓などの生命活動維持している部分の機能に障害が出てます。
呼吸停止の後には、不整脈が起こり、血圧が下がり死に至ります。この呼吸停止の状態になると、治療を施したとしても、生還の可能性は非常に低くなります。
その他の症状
脳には、運動、感覚、 知性,感情,意志,意欲,創造力、言語、視覚、聴覚、記憶など様々な役割を担っています。その為、これらの役割を持っている箇所が損傷を受けると、各機能に支障が出てきます。具体的には、下記のような症状が現れる可能性があります。
- 体の全体や一部に麻痺が発生し、歩行ができないなどの運動障害
- 一部的に記憶がかけていたり、事故前のことを思い出せないなどの記憶障害
- 感情がコントロールできないなどの性格の変化
- 物の認識が正しくできない
- 学習能力や創造力の低下
- 意欲力の低下
- 言葉がうまく喋れないなどの言語障害
- 物が見えにくいなどの視力低下や失明
- 耳が聞こえずらいや聞こえない状態
損傷する場所や治療の遅れにより、上記のような様々な症状を起こす可能性があります。
脳挫傷の治療方法
脳挫傷は損傷した大きさによって治療方法が異なります。ここでは5つの治療方法についてご紹介します。
保存治療
出血、血腫を伴わなければ、保存治療方法を取り入れます。この保存治療方法では、脳圧降下薬という脳浮腫の腫れにより、頭蓋骨内にかかっている圧力を低下させる薬を点滴注射で投与して、症状を改善させます。
外科的手術
外科的治療では全身麻酔をして頭蓋骨を開いて、損傷した部分の血の固まりを取り除きます。
特に意識が混乱したり、朦朧としていたり、体の一部に麻痺がおこり体を動かせないという場合は、このような外科的手術が必要な可能性が高いです。
抗けいれん薬
脳挫傷を起こした場合に後遺症の1つとして問題となっているのが、けいれんです。けいれんを緩和させることが、患者さんの今後の生活のクオリティの向上に繋がります。
意識が朦朧としているなどの患者さんの意識が不安定の状態の時には、点滴注射や座薬を用いて、けいれんを抑える薬を投与しますが、意識が正常の場合は、内服で抗痙攣薬を服用します。
リハビリテーション
損傷した機能や麻痺が残った機能の改善をリハビリテーションで行います。リハビリテーション内に設備されている、体の機能改善に役立つ機械や道具を使って、日常生活に支障がでないように機能の回復させます。リハビリテーションは長期行う必要があり、すぐに効果が期待できるものではありません。
その他の治療方法
その他の治療方法として、オルゴール療法というものがあります。オルゴールの音楽の響き方に脳の血流を回復する周波数があり、神経とホルモンの分泌を正常にして心身ともに健康にするといった自然治癒方法の1つです。
脳挫傷を引き起こし後遺症を受けた患者さんで、今まで全然動かなかった人が「カノン」をオルゴールで出来るだけの時間聞いてもらったところ、声を出して笑うようになったなどの改善に向かうような報告例が挙げられています。外傷の部分の治療は終えて、リハビリに数年専念されている方でなかなか効果が見られない方は、このような方法も取り入れてもいいかもしれません。
脳挫傷の予防方法
外部からの刺激を受けないように、防具やヘルメットを着用し自分自身で頭を守ることや、幼児の頭を揺さぶらないことが重要です。
適切な防具やヘルメットの着用
適切な防具やヘルメットを着用し、頭を保護することが外傷を受けない一番の予防方法になります。特に、下記のような脳挫傷が発症してもおかしくない状況の際には必ず適切な防具やヘルメットを着用し、自身で身を守りましょう。
- 自転車やバイク、登山や洞窟探検などのレジャー体験時
- 階段の上や建物の上からなどの高い場所での職場時
- 落下物の可能性がある職場時
- 格闘技や剣道、柔道、アメリカンフットボールなどの激しいスポーツ時
子供の頭を揺さぶらない
子供の頭はとてもデリケートで、頭蓋骨は大人のように固くなく、柔らかいです。
子供が喜ぶからという理由で「高い高い」や体を揺さぶるような行為をすることは避けることが重要です。子供が1歳になるまではこのような動作の注意してください。
まとめ
気持ち悪い、頭痛がする、吐き気や嘔吐などの症状がでた場合、軽視したり見落としがちですが、頭を激しく打った際にこのような症状が同時に出るのは、脳内に異常が起きているサインです。
すぐ治るかなと思って放っておくと、すぐに命の危険を伴う重症になる可能性が高いです。脳挫傷はどれだけ早く気付くかが、生死の分かれ目ともいえると思います。特に、意識が朦朧としたり、意識が混乱した状態になると、自分自身で判断して病院にいくことは難しくなります。このような状態になった場合は、周りがきちんとした判断を行い、病院に連れていくサポートが必要です。
脳は生命活動に重要な箇所ということを忘れずに、大きな衝撃を受けたと分かっている場合は、病院にいって一度精密検査をして、事故後1ヶ月以内は慎重に様子を見ましょう。