口臭、体臭ってとても気になりますよね。自分では気づかないことが多く、電車などで隣の人から避けられているようで、傷ついたことはありませんか?
ところで魚臭症という病気を聞いたことはありませんか?口臭、体臭はもちろんご存知でしょうが、魚臭症は聞いたことがないかもしれません。
魚のにおいがする病気?臭いがきつい症状?など想像される方もいるかもしれませんが、実は魚臭症は、普通の口臭、体臭とは原因が全く違うのです。
以下に、魚臭症について症状や原因、対処法について詳しく述べていきます。
魚臭症ってどんな病気?症状について詳しく解説!
魚臭症は別名、トリメチルアミン尿症と呼ばれます。
魚臭症はどのような臭いがして、症状はどのように進んでいくのかを詳しく解説します。
魚臭症の症状について
魚臭症は、口臭や体臭が魚の腐ったような臭い、腐った卵のような硫黄臭がする病気です。また尿や汗からも同じ臭いがします。
自分で気づくことは少なく、他人から指摘されて初めて認識することが多いようです。
体臭以外の症状はほとんどありません。したがってこれまであまり取りざたされない病気でした。数年前にテレビで取り上げられたことで、初めて人々が関心を持つようになったようです。
それまで、体臭と言えば不潔な状態と単純に結びつけてしまうことが多かったようですが、テレビなどで一般に知られることにより、魚臭症は病気の症状として少しは認識されるようになりました。
魚臭症の強烈な臭いのために、仕事や人間関係に大きな影を落とし、精神的に影響を受けることもあります。
どんな人が発症?
魚臭症は症例が非常に少なく、世界中でも患者数は数千人程度です。男性よりも女性が多く発症すると言われています。
子どもから大人までの様々な年代で見られます。
魚臭症の原因とは?発症のプロセスを探る!
魚臭症は、トリメチルアミン尿症とも呼ばれます。これは代謝異常の一種で非常に珍しい症状です。
原因としては、先天性のもの、肝機能の低下や肝機能障害により発症する後天的なものの2つがあります。
また、口臭の原因として挙げられる病気の中で遺伝が原因として考えられるのは唯一、この魚臭症です。以下で詳しく原因について述べてみます。
魚臭症とトリメチルアミン
魚臭症による臭いのもとは、トリメチルアミンという物質です。
食べた物は、食道や胃を通って小腸に運ばれ、腸内細菌によって分解されます。その際、魚のような臭いのするトリメチルアミンという物質が発生します。
魚臭症の発症のプロセスを知ろう!
通常であれば、トリメチルアミンを分解し無臭化する、肝臓にある酵素が働くことにで、魚のような臭いは体外へ漏れることはありません。
しかし、遺伝的な原因で肝臓にある酵素が欠如していたり、肝機能の低下やホルモンのバランスの変化により酵素そのものの作用が低下していると、トリメチルアミンをうまく分解できません。
このように体内に残ってしまったトリメチルアミンは、血液の中に取り込まれ全身を巡ります。
そして、トリメチルアミンを含んだ血液が肺に届くと、呼気に混じって外へ排出されます。このようなプロセスを経て、口臭が魚の腐ったような臭いがする、魚臭症を発症します。
魚臭症かも?その診断方法とは?
魚臭症という病気は、口臭、体臭以外にほとんど症状がないのが特徴です。
さらに自分でその臭いに気付くことが難しく、そのまま放っておくと、年齢が上がると臭いがさらに強くなる傾向にあります。一般の病院でも診断が難しい場合もあります。
それでは、魚臭症なのかどうかを確認するには、どのような方法があるのでしょうか?
尿の臭
自分で体臭の変化を確認することで、魚臭症であるかどうかを確かめる方法があります。
最も簡単に知る方法は、尿の臭いです。健康な尿の臭いは体内にある毒素のアンモニアを含んでいるので、アンモニア臭がするのが普通です。しかし魚臭症の場合は、尿が魚の腐ったような臭いがします。
これは先に述べたように、魚臭症の原因であるトリメチルアミンが、分解されないで最終的には尿とともに排出されるためです。
したがって、尿が臭う状態が続くことがあれば、魚臭症の疑いがあります。
尿検査キットで調べる
自分で尿の臭いを嗅いでみる以外に、もっと確実な診断ができる方法はあるのでしょうか?
最近では、魚臭症かどうかを検査し、その可能性を数値で表すことができるようになりました。
魚臭症について研究をしている、昭和薬科大学の山崎浩史教授が、魚臭症かどうかを調べるための尿検査を行っています。
病院で尿検査をするのではなく、ホームページより尿検査を申し込みができるようです。そうすると尿検査用の検査キットが自宅に届きます。以下に検査の詳しい方法を解説します。
尿検査の仕方
送付されてきた検査キットの検査方法です。
尿を採取する前日に、トリメチルアミンを含んでいる食品である、イカ、タコ、エビ、肉、卵などを食べます。その後トリメチルアミンが無臭化できているか、つまり無臭化効率を調べる方法です。
検査キットが送られて来たら、2日分の朝の尿を取り冷蔵保存します。それから、綿棒で口の中を擦り一晩乾燥させます。この2つの検体をクール便で返送すれば、後日、結果がメールで送られてきます。
検査結果
検査結果は、尿の中のトリメチルアミンの占める割合で判定されます。つまり尿がどれだけ無臭化できているかを判定しているものです。
以下にその結果の判定基準を解説します。
・90%以上
トリメチルアミンの分解は普通の状態です。もし口臭、体臭で悩んでいるのであれば、トリメチルアミン以外が原因の可能性があります。
・70%~90%
分解する能力が一時的に下がってると思われますので、しばらく時期をおいて再検査が必要です。それほど問題はありません。
・70%未満
魚臭症の可能性があります。しかし断定はできない状態ですので再検査が必要です。
・40%未満
臭いの原因がトリメチルアミンの可能性があります。
知っておくべき、魚臭症の対処法とは?
魚臭症の対処法としてはどのようなものがあるのでしょうか?
これまで述べてきたように、魚臭症の原因である、トリメチルアミンを体内で増やさない事が重要です。特効薬なども特にないため現在は、食事制限による対処法が最も有効とされています。
トリメチルアミンは食事に含まれる、コリン、レシチン、トリメチルアミンオキシドと言う成分が変化して発生します。
したがって、食事療法によって、避けるべき食材にはどのようなものがあるか、以下で述べていきます。
また、症状緩和に役に立つと言われている、サプリメントについても解説します。
避けたい食材
コリンを含む食材
加工肉や、内臓の肉などの肉類、卵、豆類、豆腐、カリフラワー、ブロッコリー等に多く含まれています。
これらのコリンを含む食材は、人間にとって大切な栄養素なので、制限をしすぎることもよくありませんので注意が必要です。特に、胎児、乳幼児は脳や神経系の発達に多くのコリンが必要です。もちろん妊婦も欠かすことができません。
1日の摂取量の目安は、男性550mg、女性425mgですので、必要な分は摂取し、過剰な摂りすぎは避けましょう。
レシチンを含む食材
卵、納豆、小魚、ウナギ、ごま油、コーン油等に多く含まれています。
ダイエットサプリなどに含まれている成分です。
レシチンは、遺伝子情報や体の再生活動を担っている細胞を覆っている細胞膜を構成する成分です。脂質の一つで、体を動かすエネルギー源となります。
また、人間の脳の30%程度がレシチンの働きで活動しているので、レシチンが不足すればイライラや睡眠障害、集中力の低下などを引き起こす可能性もあります。
1日の摂取量の目安は、1000mg~5000mgですので、必要な分は摂取し、過剰な摂りすぎは避けましょう。
トリメチルアミンオキシドを含む食材
イカ、タコ、エビ、カニなどの頭足類、甲殻類等に多く含まれています。
一般的に魚介類は臭いと結びつきやすいようです。トリメチルアミンが含まれた食物が直接体に入ることで、臭いが発生しやすくなります。
魚介類は日本人が大好きな食物でもありますし、特に刺身などの生食で食卓に並ぶことが多いと思います。
体のためにも有効な成分がたくさん入っていますが、魚臭症を発症している人にとっては避けたい食物です。
サプリメントで症状改善
魚臭症のような症状があっても、なかなか病院に行くのも…という人には、原因となる食材を避けることがまず大切です。
その他、サプリメントなどで予防や改善できることがありますので、代表的なものを紹介します。
銅クロロフィリンナトリウムの摂取
銅クロロフィリンナトリウムは、腸内の臭いを吸着させる物質です。
葉緑素であるクロロフィルを鉄で安定させたものであり、口臭予防サプリとしても販売されています。
銅クロロフィリンナトリウムを摂取することで、魚臭症の臭いが少なくなる効果があります。
活性炭の摂取
活性炭を飲むなんて、大丈夫だろうかと思うかもしれませんが、魚臭症の症状の改善に有効と言われています。
銅クロロフィリンナトリウムと同様に、サプリメントとして一般に販売されています。
体内に蓄積されたダイオキシンを排出させる効果もあるとされ、魚臭症の臭いなどの症状を和らげると言われています。
まとめ
魚臭症は、治療法が確立されておらず、今のところ食事療法やサプリメントなどでの対処療法が有効とされています。
職場や学校など、閉鎖された空間で過ごすことが多い現代人において、臭いは対人関係に影響を与える重要なことだと言えます。
特に学校などで、強いにおいがする子供が仲間外れにされたり、いじめられる原因にもなりえます。ただし、子どもの魚臭症の研究によると、成長に伴い、症状が改善する傾向にあるようです。6歳でほぼ改善したという報告もあります。
まずは、無理のない食事制限などで様子をみて、症状が改善しなければ専門医に相談し、検査を依頼するなどしましょう。