全身麻酔の副作用について、余り関係ないと思われる方も、おられるかも知れません。何かの大きな手術をするときに、必ず全身麻酔がかけられます。全身麻酔をかけて手術をして成功しても、麻酔が戻らなくなる例もあります。私が若いとき入院していた時に、そのような方に出会いました。
手術は大成功でしたが1週間たっても麻酔がとけず、その後私は退院したので、分かりませんが、そのような事もないとは言い切れません。手術をするのに全身麻酔は当たり前と、思っておられる方も、そのような時もあることを頭に入れて、おかれるのも良いのではないでしょうか?全身麻酔の副作用について調べてみました。
全身麻酔とは
現在では麻酔の技術も進歩して、全身麻酔はお子様から大人まで幅広いく行われています。術後にはどうしても合併症が起こります。その合併症について自ら知ることが大切です。副作用の症状は数時間から数日で軽減されます。
全身麻酔とは薬を脳に作用させて、手術の安全性のために行うもので、患者が痛みを感じさせないために行うものですが、副作用として、軽い吐き気が起こることがあります。死亡するケースがないわけではありません。
麻酔の種類
麻酔には全身麻酔と、局所麻酔があります。全身麻酔は意識がなく、局所麻酔は意識があります。
麻酔は何故するの?
麻酔を何故するのかと言いますと、手術でのストレスを取り除くためのものです。薬を使って痛みや身体の反射をおこさせず、一時的に脳や脊髄神経、手足の末梢神経まで、後遺症を残さないで、神経の働きを抑制させます。
手術をしても無意識、無痛、動かない、体の反射を起こさないなど、薬の麻酔薬を使用して維持でき、痛みや身体の反射を起こさないですむため行うのです。
全身麻酔は何故するの?
開腹手術や腹腔鏡手術をする場合、麻酔をかけずにやるとその痛みで、手術がスムーズにできません。全身麻酔をする意味はこのような手術の場合、痛みを伴う大きな刺激やストレスを受けても、無意識、無痛、体は動くことはありません。
しかも痛みやストレスを受けた記憶は全く残りません。麻酔薬を使って全身麻酔は、患者を痛みやストレスから守り、手術をスムーズに行うことが出来るのです。
全身麻酔
全身麻酔は内臓などの開腹手術や、美容整形などするときに行われるものですが、その場合は殆ど全身麻酔が行われます。これは脳に薬を作用させて、一時的に脳を眠らせ意識をなくさせます。全身麻酔の場合は、脳を眠らせているので、脳が痛みを感じる事がないため、全身に痛みを感じません。
全身麻酔は比較的大きな手術で用いられます。患者さんのストレスは出血の量や手術の部位や時間で決まります。腹や胸を開ける手術、脊椎、顔面や頭部、及び脳の手術など患者さんのストレスは並大抵のものではありません。全身麻酔ではそれを意識をなくして、痛みを感じず、筋肉がゆるみ、有害な自律神経の反射が出ない状態にして、手術をスムーズに行える体制を整える事が出来るのです。
局所麻酔
局所麻酔の場合は、歯とか、手の怪我とか、その部分の痛みは感じませんが、脳が痛みをキャッチできますので、それ以外のところに刺激を加えると、痛いと感じます。意識がある状態が局所麻酔です。局所の痛み止めをするわけです。
局所麻酔が行われるのは、抜歯、皮膚表面のできもの、婦人科の病気、虫垂炎、痔、下肢の骨折などです。局所麻酔は意識を保ったまま、末梢神経に局所麻酔薬を注入して、局所の鎮痛をなくす麻酔法です。
局所麻酔には表面麻酔や浸潤麻酔や伝達麻酔があります。
- 表面麻酔は局所麻酔薬をスプレーして、噴霧する麻酔です。胃カメラや大腸ファイバーなどのような、のどや肛門を表面麻酔することで、ストレスが少なく無痛手技を受ける事ができます。
- 浸潤麻酔は粘膜や皮膚の下に麻酔薬を直接注入して局所を麻痺させます。抜歯や小さな傷を縫うときに使用される無痛治療の麻酔です。
- 伝達麻酔は脊髄神経や太い神経の近くまで針を進め、局所麻酔を注入します。
全身麻酔のメリット
手術における麻酔医
全身麻酔のメリットは手術中に何も聞こえなくて、痛みがないため何の不安を感じずにすみます。患者さんの安全に加えて、専門の麻酔医が付き添ってくれて、患者さんの全身状態をモニターを使って手術が終わるまで管理します。
その為に外科医も、外科手術そのものだけに専念することができて、手術をスムーズに終わらせることが出来るのです。
全身麻酔におけるリスク
局所麻酔に比べて全身麻酔で使用する、薬剤の種類はどうしても多くなります。その為に薬の合わないのがあって、アレルギーを起こすリスクがあり、アレルギー反応がでて危険な時もあります。しかし麻酔に関するリスクは、日本麻酔学会のデーターでは、10万例に1例だそうです。専門の麻酔医が手術中管理していますので、何かあれば色々な対処法を見つけ出し、対処してくれます。
私はその10万例の1例の患者さんに、遭遇したのでしょうね?可なり前の事ですので、医療は目覚ましく進歩していますから、近代では危険は余りないのかもしれません。
理想的な全身麻酔
理想的な全身麻酔の特色は、副作用ではありません。全身麻酔をして元に戻る無痛、健忘、無意識、不動状態を達成した時、痛みを感じる事も無く、自分が意識しない間に手術が終わり、嫌な記憶も残らない特色が、全身麻酔にはあるのです。外科医は麻酔によって身体を動かすことのない患者を前にして、とても手術が行いやすく、また安全にスムーズに手術を受ける事が全身麻酔を使用することで出来るようになるのです。
全身麻酔の合併症
全身麻酔で頻度の高い合併症は色々あります。
まずのどの痛み、声のかすれ、腰痛、頭痛、吐き気、めまい、目の違和感、術後の震えなどがありますが、これは理由を聞けば納得できるものばかりです。
軽い合併症
喉の渇き
喉の渇きの感じが残るのは、麻酔の前に唾液分泌を少なくする注射をするため、術後でも喉の渇きを感じる事があります。
喉の痛み・声枯れ
一過性ですが喉の痛みや声枯れが起こります。これは全身麻酔で人工呼吸をするために、鼻あるいは口から気管に細い挿管チューブを通すので、声帯や喉に炎症を起こすためです。数日で治まるようです。
頭痛・めまい
麻酔後に頭痛がしますが時間が経過すると、回復していきます。これは麻酔薬や医療用麻薬が原因でこれは、手術から身体を守るために投与されたものです。
吐き気・嘔吐
吐き気、嘔吐がしばしば起こりますが、吐くこと自体心配はありません。手術前に飲食をしないよう予防します。
寒気・発熱
体温調節の機能が一時的に麻酔によって低下するため、起こりますがこれも時間と共に回復してきます。全裸のまま手術を受けるので、全身麻酔薬の作用で、体温を保つ作用が低下します。体温が出血や水分の蒸発で低下して、麻酔から覚めると脳が低体温を感知して、体温を上げるため筋肉を震わせて一気に温度を上げます。体の震えが止まらなくなることがあります。
腰痛
腰痛が起こるのは、手術中に身動きができないため、麻酔が覚めてから腰痛を自覚するようになります。同じ姿勢を何時間も続けているために起こるものです。
目の違和感
全身麻酔は身体を動かさないだけでなく、瞬きも一切できません。その為半開きまぶたで麻酔がかかった場合、開いた目の角膜が乾燥して、麻酔から覚めた時に目の違和感が起こります。
中程度の合併症
歯が抜ける
唇のきずや腫れ、歯がぐらぐらしていたり、口を大きく開けない人に良く起こるそうで、チューブを気管に入れるときの、器具を使ったときの操作で起こります。
歯がぐらついているなどの症状がある場合は、担当医にあらかじめ伝えておいた方が、術後に誤って歯が抜けて気管に入って、重症な誤嚥性肺炎になることもあります。
血圧低下
出血量に応じて、血圧が低下します。反射的に低血圧や高血圧を引き起こすことが、手術操作で起こることがあります。麻酔医はその場合でも即座に高すぎる血圧にも治療薬で、点滴や輸血、血圧を上げる薬で低血圧に対応します。
手足の神経麻痺
神経障害が手術中に身動きが、取れない状態の為起こることがあります。体を動かさないことでおこる、体のしびれ、手足の神経麻痺などがおこる場合があります。神経が手術中に圧迫されていておこります。
重い合併症
肺炎
誤嚥性肺炎が起こることがあります。手術中とか手術直後に、胃の中の内容物が気管内や肺に入り肺炎がひどくなることがあります。
アレルギー
薬が麻酔をするときに合わなくて起こる場合があります。軽いアレルギーや蕁麻疹などで済むものや、呼吸困難やショック状態になることもあります。
肺塞栓症
手術中ただ横たわっているので、下肢の血流停滞が起こり、血管の中で血液が固まりやすくなり、これが肺にとんで、肺の中で詰まると、突然重症なショック状態がおこります。この様な症状になる人は、肥満、喫煙習慣、下肢静脈瘤、経口避妊薬の服用などのリスクがある人が多いです。
悪性高熱症
遺伝性なものですが2万から6万人に1人の割合で、麻酔によって筋肉が硬直して、高熱をだして危険なショック状態になります。一度発生すると10%の死亡率があります。5万人に1人の割合です。家族で悪性高熱を出した人がいないかチェックです。
死亡
全身麻酔の最も重症な合併症は死亡、心臓停止、脳障害が起こることです。危険性の心臓停止に直結する、肺血管を血の塊が閉鎖する肺塞栓症は、10万人に3人の割合です。
無気肺
全身麻酔の手術をした時に、良く起こるのが無気肺と言った合併症です。無気肺には2つの状態が起こります。詳しくは、無気肺って何?原因・症状・治療法を知ろう!呼吸が乱れだしたら要注意?を読んでおきましょう。
呼吸の運動の抑制
呼吸が小さく浅い呼吸に変化します。これは術後の創部の痛みからくるものです。
肺胞の損傷
手術中に入れる気管内チューブの刺激などにより、抹消の気管支が塞がり肺胞と外気との流れがスムーズにいかなくなり、肺胞内に空気がなくなってつぶれた状態になります。肺胞は二酸化炭素と酸素を交換する小さな部屋で、血液によって交換がおこわれます。
無気肺は術後36時間以内に発症し、術後1週間前後で術後肺炎は発症することが多くなっていて、無気肺が放置されると分泌液内で、細菌が繁殖し重症な合併症を引き起こします。
麻酔の方法
麻酔の方法には2つの方法があります。
吸入麻酔法
麻酔ガスを吸うことで麻酔する方法です。注射に抵抗のある子供とか、パニック状態の患者さんには、吸入麻酔法が選択されます。
代表的な麻酔ガスは、セボフルランやイソフルランで軽く鼻を突くような臭いがするガスを吸入します。
静脈麻酔法
点滴から麻酔薬を注射して麻酔をする方法です。点滴が受けられる患者さんには、数秒で意識を取り除ける点滴に麻酔薬を入れます。
代表的な静脈麻酔薬は、ディプリバンです。この薬は患者さんの、薬の血中濃度を年齢体重から予測して、投薬量が決定できる専用器で注入される方法の静脈麻酔法です。
I田先生の麻酔
I田先生の麻酔
手術30分前に、全身麻酔と硬膜外麻酔を使って麻酔を効きやすくするための、筋肉注射をします。これは手術室に入っての緊張を取るための注射です。注射の嫌な人は飲み薬もあります。
副作用を抑えるために、使う薬の量を最低限にします。例えば全身麻酔を10使うよりは5使って他の麻酔薬を5にする方が、副作用が少なくて済みます。
ひだまり病棟ブログ
ひだまり病棟ブログで麻酔の先生I田先生と患者がよく話し合って、麻酔を受ける事の大切さを知らせています。手術を受けるときに看護婦さんも、手術室で笑顔で迎えてくれて、酸素マスクをして子宮筋腫手術を受けたそうです。
やはり手術を受けるときは、患者の要望を聞いてくれる病院で受けるほうが良いと書いてます。
麻酔の専門医
医師の中には深い知識をもつ専門医がいますので、覚えておくと良いでしょう。そして手術前に麻酔医の先生とよく話し合うことも大切です。もし不安な場合は麻酔科医師や、麻酔指導医に直接話を聞けるかどうか確認すると良いです。
麻酔科医師は厚生労働省認定の、麻酔の知識、麻酔の技術を持つ先生です。また麻酔指導医は麻酔科の専門の勉強を積み重ねた、本麻酔科学会認定の試験に合格した医師です。
医師と患者の麻酔の確認
確認のポイントは患者の身体についてです。
- 呼吸器系呼吸器疾患有無で、気管支喘息や慢性閉塞性肺炎疾患などがないか確認します。
- 循環器系循環器疾患有無で、虚血性心疾患や不整脈などがないか確認します。
- アレルギーの有無で食品やハウスダスト、花粉症がないかなど確認します。
- 血縁者の悪性高熱などの全身麻酔による、副作用反応がないか確認します。
気管支喘息が最後に起こった日により、手術が延期されることもあるそうです。
小児・子供の麻酔
麻酔の技術進歩と麻酔科医の技術もとても進歩してきているため、小児・子供だからといって、大人より極端に危険性があるわけではありません。
小児・子供の麻酔の注意
お母様方が極度に不安に思うと、子供が連鎖しますので、麻酔科医の技術によるところが多いですが、冷静にお母様方が対応することが大切です。
子供の場合現在では大きな手術をしないで、保存療法や装具療法で治療を行うのが一般的になっています。赤ちゃんや小児の場合、ある程度体力が付く年齢まで、待つのが一般的です。しかし全身麻酔をする緊急の手術が、必要となるケースが無いわけではありません。呼吸器系や血圧が不安定な子供の場合、全身麻酔によるリスクがあることを、頭に置いておかなければいけません。
子供の場合は局所麻酔で出来る手術でも、動いたり手術を目の前にする危険性から、全身麻酔で安全に手術を行うこともあります。子供が意識を持ったまま手術を行うことは、とても危険性を伴います。その為には全身麻酔をすることで、危険を回避できるのです。
麻酔薬について
麻酔をするときの麻酔薬には鎮痛剤、鎮静剤、筋弛緩剤の3種類の薬剤をバランスを取って投与します。筋弛緩薬は喉の筋肉を弛緩させて、チューブが入りやすくするために欠かせません。
また手術中長時間同じ姿勢を維持させるための体位や、手術中の呼吸・血中酸素濃度などを保持するために、欠かせないのが筋弛緩剤です。
鎮痛薬・鎮静薬
筋弛緩薬は呼吸抑制され、人工呼吸管理が必要となり、麻薬などの強力な鎮痛薬の使用なども全身麻酔には使われます。
手術後は筋弛緩から回復させる薬剤を投与して、覚醒、自発呼吸を確認して、人工呼吸の気管挿管を抜いて、病室へ運ばれていきます。鎮静薬は眠たくなる薬で、目覚めや回復も量により調節できます。
麻薬拮抗性鎮痛薬
筋弛緩薬を拮抗する薬が麻薬拮抗性鎮痛薬で、これを投与して手術から覚醒、自発呼吸ができる。鎮痛薬も入っているので、痛みにも対処できます。
麻薬性鎮痛薬や硬膜外麻酔などの局所麻酔薬と併用して、プロポフォールが用いられます。肝臓で代謝が早く麻酔の導入にも維持にも使われます。
まとめ
如何でしたでしょうか?全身麻酔の副作用についてお解り頂けましたでしょうか?私は手術は2回ほどやりましたが、余り考えずにやっていました。と言うか担当医の先生を信頼して、手術をしましたが、術後は普通に目覚めるのは当たり前のように思っていました。
でも現実に1週間眠り続けその後は聞いていませんが、そのような事もあると言うことは、頭に入れておりました。手術するには麻酔のリスクを良く理解しておくことが大切です。
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