ふと気がついたときに、口の中がカラカラに渇いているなんていうことありませんか? すぐに水を含んだり食事をしたりすれば元通りになる状態なら安心ですが、もしその状態が長く続いていたり、何をしても渇いている状態に変わりがないと不安になりますよね。
ここでは「口が渇く」原因とそれによって起こる可能性のある状態や疾患を見てみましょう。あなたのその「口の渇き」は大丈夫ですか?
ドライマウスとは
「ドライマウス」は別名「口腔乾燥症」ともいい、唾液の分泌が減少して口の中が乾燥する状態をいいます。
また口の中の乾燥以外にも
・舌が痛い
・食べものの味がよくわからない
・口の中がネバネバする
・口臭がする
・乾燥食品が食べづらい
などさまざまな症状を伴うことがあります。
日本では約3000万人ほどがかかっているといわれます、その多くは中高年の女性といわれていましたが、最近では若い人にも増えています。また、65歳以上の3割程度がいつも口の乾きを自覚しています。また、お年寄りの多くは年とともに唾液腺の機能が低下し唾液の分泌が少なくなる、というのが主な原因といわれています。
単なる一時的な「口の渇き」であれば、水を含んだり食事をしたりして解消されますが、もし同じような状態がつづくようであれば、「ドライマウス」であると見てよいでしょう。
なぜ口の中が渇くのが良くないのでしょうか?
まずは、口の中にある唾液の役割についてみてみましょう。
唾液は、舌下腺(ぜっかせん)耳下腺(じかせん)顎下腺(がくかせん)、などの唾液腺から分泌されています。個人差がありますが、量は成人で1日に約1.5リットルにもなります。
その唾液には
・自浄作用や抗菌作用
・消化吸収を促進する
・粘膜を守る
・味覚を鋭くする
など健康を維持するための重要な役割を果たしています。
そのため何らかの原因でその唾液の分泌量が減ると、役割が果たせなくなり身体の中の色々なところに、障害として症状や疾患が出てくるのです。 たとえば、細菌が肺に入ってしまう誤嚥性肺炎などの全身疾患につながることもあります。
また、口が渇くと口の中が荒れやすい状態になっているので、粘膜や舌の痛みが発生しやすくなります。 また唾液の役割である口の中の自浄作用が失われることで、歯周病になり口臭が強くなります。
他にも唾液が少なくなることで食べ物を上手に喉に運びにくくなり、うまく飲み込めないなどの症状が出ることがあります。
日常生活で考えられる原因と対処法
ではそんな口が乾く原因について紹介します。
口呼吸
普段から口を開けて呼吸をしている人、就寝時口呼吸をしている人やいびきなどの原因で口の中が渇くようになります。
対処法は、耳鼻科などの医療機関に相談してみましょう。鼻の疾患が原因のいびきや口呼吸の可能性もあります。
薬の副作用
利尿作用のある薬や不整脈の薬、抗うつ剤の薬、胃薬の一種によっても口の渇きを起こすことがあります。
お薬の処方を受けている医療機関に相談してみましょう。対応するお薬や対処法などを教えてもらえます。
喫煙
タバコの煙に含まれるニコチンやタールなどの有害物質により身体の血行が悪化します。そうなることで、唾液の分泌機能が正常な状態よりも低下して唾液分泌量が減ります。
対処法は、禁煙しかありません。
精神的ストレス
唾液の分泌は、自律神経によってコントロールされています。緊張したり過度なストレスを受けたりすると交感神経が優位な立場になり、唾液の分泌が抑制されます。
反対にリラックスしているときは、副交感神経の働きが優位に立つので唾液はよく分泌されます。よって過剰なストレスは、口の中が乾く原因になります。
対処法は、ストレス解消を心がけましょう。 好きな音楽を聴く、ぬるいお風呂に長めに入る、アロマや好きな香りを身近に置く。読書をする、美味しいものを食べるなど、自分の好きなことを日常生活の中で取り入れるようにしましょう。意識的にストレスから自分を遠ざけることも必要です。
口の渇きと疾患の可能性
虫歯や歯周病
今まで唾液の自浄作用で保ってきた口の中の衛生が保たれなくなると、虫歯菌や歯周病菌が発生して、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。また、その影響で口臭がきつくなったりします。口臭で注意してほしいのは、必要以上に気にすることです。そのことがストレスとなる場合も多く、さらに状況を悪化させます。気になったら歯科医院へ受診して相談するのが一番です。
対処法は、虫歯になりやすくなった、など今までとは違う口の中の環境変化に気がついたら、まずは歯科医院へ受診してみましょう。口の渇きとあわせて相談すると良いでしょう。
糖尿病
糖尿病の典型的な症状に、
・やたらと喉が渇く
・多量の尿が出る
・何もしないのに体重が落ちてくる
という症状があります。 これらの症状に思い当たることがあれば、すぐに対応の医療機関に受診しましょう。
腎不全
慢性腎不全が進行すると人工透析が必要になりますが、人工透析により体内の余分な水分が取り除かれることで、結果ドライマウスが起こる場合があります。対応の医療機関に相談しましょう。
唾液腺の疾患
唾液を出す元になる唾液腺に炎症や腫瘍ができたり、唾液腺の細胞が老化すると唾液の分泌機能が低下して分泌量が減ります。その結果ドライマウスになることもあります。
可能性のある場合は、医療機関に相談しましょう。
シェーグレン症候群
あまり聞き慣れない病名ですがこの「シェーグレン症候群」とは、自己免疫疾患です。自分の身体の中の細胞に異常な免疫反応を起こして、自分自身を異物とみなし攻撃する自己免疫疾患の一つです。原因ははっきりと分かっていません。
涙腺や唾液腺の組織が破壊され、涙や唾液の分泌量が少なくなってしまうので口や目が渇きます。また全身の分泌腺の働きも低下するため、体のいたる所に乾燥症状がみられることがあります。 口の渇きとともに汗が出にくくなったり、皮膚が乾燥したり、鼻が乾いたりするようなことが気になり始めたら、可能性を考えて見ましょう。
この疾患の判断には、血液検査や炎症反応をみます。また唾液腺の造影検査を受けたり、眼科で涙の流出検査、そして唾液腺の組織検査です。原因も不明なことが多いので特別な治療はありません。
対処法としは、目には点眼薬、口の渇きに関しては唾液腺を刺激し唾液を出すようにする薬が処方されます。また水分補給や保湿にも心がけましょう。人工唾液スプレーやジェル、軟膏などが処方されます。
また唾液が少なくなることで、口の中の自浄作用が落ちるために虫歯になりやすくなります。口の衛生に気をつけるようにしましょう。歯磨きのほか、うがいなど常に清潔に保つように心がけることも大切です。
脳梗塞や脳出血による口のまわりの筋肉の麻痺
脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が起きると、口の周りの筋肉が麻痺してしまい、唾液の分泌量が減ることがあります。
対処法は、もしそのような大病の可能性であるなら、早急に医療機関に相談してみましょう。
まとめ
いかがでしたか?
単なる口の渇きだけでは済まされないほど、唾液の役割は重要であることがわかりましたね。
またその口の渇きをほおっておくことで、重要な疾患を見逃しかねないこともわかりました。自分の口の渇きが単なる生活習慣から来るものなのか、それとも身体の疾患からくるものなのか、あやふやな自己判断はせずに対応の医療機関に受診することをオススメします。
また、日常生活から症状を和らげるように生活習慣の改善もオススメします。
近年、ドライマウス研究会が設立され約4200人の歯科医師がドライマウスに苦しむ人の対応に当たってくれています。もし悩んでいるようでしたらドライマウスカウンセラーに相談してみるのもいいと思います。