赤面症とは?症状や原因、治し方を知ろう!ただの赤面との違いは何?

赤面症という症状をご存知でしょうか?字面からも想像できる通り、人前に出ると緊張し過ぎるあまり、顔が赤くなってしまう症状のことです。

人前で緊張することで顔が赤くなるという経験は誰にでもあるものですし、顔が赤くなるという体の反応も誰にでも生じる正常な反応です。しかしながら、日常生活で友人や同僚といった身近な人との間でも、顔が赤くなったりすると、色々と不都合が起きること場合があります。

そこで、今回は赤面症という症状についての概要をまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。

赤面症とは?

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そもそも赤面症とは、どのような病気なのでしょうか?

赤面症とは?

赤面症とは、対人恐怖症の症状の一つとされ、主に他人と関わる場面において過剰な緊張や不安が生じることで、顔が赤くなってしまう状態や症状のことを言います。そして赤面症は、赤面恐怖症とも呼ばれることがあります。

ただし、精神医学において、赤面症・赤面恐怖症という病名は存在しません。次いでに言えば、対人恐怖症も対人状況に不安や恐怖を感じる状態や症状のことです。このような赤面症や対人恐怖症は、精神医学上の診断名では社交不安障害(社会不安障害)という疾患・病気で現れる症状のことなのです。

対人恐怖症

対人恐怖症は、主に他人と関わる場面において過剰な緊張や不安が生じることで、相手に不快感を持たれたり、嫌がられると自分自身で考えてしまい、対人関係を避けようとする状態や症状のことです。

そして、人前で症状が現れることに不安や恐怖を感じて、その不安や恐怖に意識が集中してしまうことで、さらに症状が悪化するという悪循環を招きます。

対人恐怖症の代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 赤面症(赤面恐怖症)
  • 表情恐怖症:自分自身の表情に自信が持てず、不安に感じてしまいます。
  • 視線恐怖症:他人や自分の視線が気になってしまいます。
  • 醜形恐怖症:自分の顔立ちに劣等感を覚えて、他人の目が気になります。
  • 吃音症:人前で話すことに過剰な緊張が生じて、どもってしまいます。
  • 多汗症:人前で汗が異常に出ることに恐怖を感じ、余計に汗をかいてしまいます。

社交不安障害(社会不安障害)

社交不安障害は、主に他人と関わる場面において、相手の目を意識しすぎることによって、強い不安や恐怖を感じるために対人関係を避けるなど、生活に重大な支障を及ぼす精神障害のことです。

アメリカ精神医学会による「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM)は、精神障害の分類の基準を示しますが、日本精神神経学会の訳語が以前の社会恐怖から、社会不安障害を経て、社交不安障害に変更されています。

赤面症と赤面の違い

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人は誰でも緊張して顔が赤くなることがあります。通常の赤面と赤面症の違いは、どこにあるのでしょうか?

通常の赤面

赤面は、人間の無意識的な行為の一つで、何らかの理由により顔が紅潮する現象のことです。

人は誰しも緊張したり、恥ずかしいと感じたりすることがあります。その結果として、顔や耳が赤くなることは、誰にでも生じる身体反応です。このような感情的理由によって無意識的に顔が赤くあることもあれば、体調不良による発熱や飲酒の場合のように生理現象として顔が赤くなることもあります。また、単純に暑いから顔が赤くなるという環境に原因がある場合もあります。

通常の赤面と赤面症の違い

このような感情的理由による赤面と赤面症の違いには、大きく分けて次のような2つの違いがあります。

  • 顔が赤くなる閾値(いきち)が低い
  • 赤面になることに不安や恐怖を感じる

顔が赤くなる閾値(いきち)が低い

閾値とは、境目になる値という意味の言葉です。顔が赤くなる閾値が低いとは、顔が赤くなる基準値が通常の人より低い、すなわち通常の人より顔が赤くなりやすいということです。

人は人前に立つと、誰しも緊張したり、恥ずかしいと感じたりします。その結果として、顔や耳が赤くなることは、誰にでも生じます。

通常の人ならば、たくさんの人の前で発表やプレゼンテーションをする際に、緊張で顔が赤くなることがあるでしょう。これは、通常の赤面と言えます。これに対して、普段の生活で顔を合わせる友達や同僚との関係でも、緊張して赤面するとなると、顔が赤くなる閾値が低いと言わざるを得ません。このような場合は、赤面症の可能性があると言えます。

赤面になることに不安や恐怖を感じる

通常の赤面と赤面症の最大の違いは、赤面症の人は顔が紅潮することに不安や恐怖を感じることです。つまり、人前で自分の顔に紅潮が現れることで、相手にバカにされる、あるいは軽蔑されるといった不安や恐怖が生じるのです。

そして、その不安や恐怖から赤面しないように意識が集中してしまうと、さらなる緊張や不安が高まって症状が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

赤面症の原因

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それでは、このような赤面症の症状は、どのような原因で生じるのでしょうか?

顔が赤くなるメカニズム

緊張、不安、恐怖などを感じると、自律神経(交感神経と副交感神経)のうち交感神経が活性化するとされています。そして、交感神経が優位になると、動悸が激しくなったり、呼吸が浅く速くなったり、手や足が震えたり、発汗したりといった身体の変化が生じます。

赤面も、このような身体変化の一つと考えられています。

交感神経優位と赤面の矛盾点

このように交感神経が優位になったことで、赤面が生じるとなると矛盾が生じます。

その矛盾とは、交感神経が優位になると脳や心臓などの重要臓器への血流が増加しますが、末梢血管は収縮して血流が悪くなるため、手足は冷えて顔面は血色が悪くなるのが論理的であるにも関わらず、赤面が生じることです。

実際に、発熱の場合や周囲の環境が暑い場合は体温を放熱するために末梢血管の血流が良くなっていますし、飲酒で血流が良くなることも一般的に知られています。また、恐怖を感じると顔が真っ青になると言われるように、交感神経が優位になると顔は赤くならないはずです。

このように赤面症において顔が紅潮するメカニズムは、明確に解明されていないのです。

愛知医科大学の菅屋教授の仮説

この矛盾点を解消する仮説が、愛知医科大学の菅屋教授によって提起されています。

その仮説とは、交感神経が活性化すると脳や心臓などの重要臓器に血流が集中することで、脳温も上昇してしまいますが、脳温が上昇し過ぎると脳細胞がダメージを受ける為、顔面の毛細血管を拡張して血液を冷却して脳温を下げようとしていると考えるものです。

実際に仮説を検証する実験で、赤面する前後の脳温変化を測定すると、赤面と同時に脳温が少し下がるという結果が得られたそうです。

ただし、この検証実験の被験者数が少ないことから、現在のところ、あくまで仮説にとどまるものとされています。

赤面症の原因

人は誰でも人前に立つと、多かれ少なかれ緊張したり、恥ずかしいと感じたりします。とすると、ただ単に人前に立つことが赤面症の理由とは言えません。

ですから、赤面症の人が赤面することに不安や恐怖を感じるようになった理由こそが、赤面症の原因と言えるでしょう。

また、顔が赤くなる閾値が低くなる要因も、赤面症の原因になりうると言えます。

赤面することに不安や恐怖を感じる原因

赤面することに不安や恐怖を感じる理由は、人によって様々です。

例えば、子供の頃に顔が紅潮していることをからかわれた体験がトラウマになっていることが理由かもしれません。

また、他人の反応が読めないという不安が理由かもしれません。そのような不安があるために、必要以上に自己主張を抑制したり、赤面や多汗といった現象を気にする自意識が過剰になったりするのかもしれません。

さらには、日本に存在する恥の文化によって、潜在意識の中に赤面することが恥ずかしいことだと植え付けられていることが理由かもしれません。実際に、対人恐怖症は日本において特に顕著な社交不安障害としてDSMに記載されています。

このように、いずれも赤面することを否定的に捉えていることが、不安や恐怖といった負の感情に繋がると言えるかもしれませんね。

顔が赤くなる閾値が低くなる原因

顔が赤くなる閾値が低くなる原因として考えられるのは、上記の不安や恐怖から赤面しないように意識が集中して、さらなる緊張や不安が高まって症状が悪化するという悪循環が繰り返される中で、徐々に閾値が低下したことです。

また、交感神経が活性化しても、当然ながら現れる身体変化の程度に個人差が生じます。その個人差が生じるということは、体質的や性格的に赤面しやすい人がいるとも言えます。つまり、顔が赤くなる閾値が低くなる要因として、体質的に赤面しやすかったり、性格が緊張しやすかったりということも考えられるのです。

赤面症の診断

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このような赤面症ですが、通常の赤面と治療すべき赤面症を、どのように区別して診断するのでしょうか?

赤面症の診断

何度も言いますが、緊張して顔が赤くなることは、正常な身体反応で病気ではありません。

それに対して、治療すべき赤面症であると診断するには、DSMをもとに作られた社交不安障害の診断基準に当てはまるかの検討が必要です。

そして、そのような検討と医師の知見から、医師の総合的な判断によって診断されます。一部ネット上には、自己診断チェックリストというものがありますが、あくまでも参考にすぎず、診断は医師が行うものと留意が必要です。

ちなみに、社交不安障害の診断基準(赤面症に合わせた基準)は、次の通りです。

  • 人前で他人から注目されていると考えると、緊張・不安・恐怖を感じる
  • 自分でも過剰な緊張・不安・恐怖だと思う(自分でも赤面が過剰だと思う)
  • その緊張・不安・恐怖を回避あるいは我慢をしなければならない状態(赤面に対する他人の評価に不安や恐怖を感じるので、それを避けたい状態)
  • その緊張・不安・恐怖によって、社会生活が妨げられたり、強い苦痛を感じる(赤面によって日常生活に支障が生じ、強い苦痛が生じている)

受診すべき診療科は?

赤面症は顔が赤くなる症状ですが、当然ながら皮膚科ではありません。

赤面症は、社交不安障害という精神障害の一症状ですから、精神科(精神神経科・心療内科など)を受診する必要があります。

赤面症の治療方法

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では、赤面症になってしまった場合には、どのような治療法があるのでしょうか?

精神療法が基本

赤面症の治療の基本になるのは、精神療法です。そして、精神療法には、次のような3つの代表的な治療法が挙げられます。

  • 暴露療法
  • 認知行動療法
  • 森田療法

暴露療法

暴露という言葉の意味には、秘密や悪事をあばくという意味の他に、覆いの無い露天にさらされるという意味もあります。暴露療法の暴露は、後者の意味で使われています。

これを踏まえ、暴露療法は、敢えて苦手な状況に自分自身をさらすことで、その状況に徐々に慣らしていこうとする治療法です。暴露療法は、精神障害の原因を見極めて、適切な行動をとれるように修正・改善していこうとする行動療法の一つなのです。

要するに、緊張することで顔が赤くなる閾値を高めるため、あるいは赤面することに不安や恐怖を感じないようにするために、人前に出る状況を意図的に作り出して、徐々に慣れていこうとするものです。

そして、徐々に慣れるには、簡単な状況から負荷を段階的に上げて、その負荷を克服し成功体験と自信を積み上げるステップを踏む必要があります。

ただし、苦手な状況に自分をさらすわけですから、赤面症の人たちには苦痛が伴います。方法を誤れば、余計に症状を悪化させる危険もありますから、治療者である医師やカウンセラーの指示に従うことが重要です。

認知行動療法

心理学における認知とは、物事の判断や解釈をする過程のことを言います。人は、全ての物事を客観的に捉えているわけではなく、人それぞれの考え方や信念を通して物事を捉えて、その上で判断や解釈をしています。

赤面症の人は、赤面することを否定的に捉えて判断や解釈をしているというわけです。客観的に見ても、赤面することは決して悪いことではありません。

ですから、赤面することをネガティブに捉える認知過程を、修正していくことが認知行動療法なのです。認知行動療法も、暴露療法と同様に、行動療法の一つです。

森田療法

森田療法は、精神科医の森田正馬先生が、1919年に提唱した精神療法のことです。

森田療法は、赤面するという身体反応と緊張・不安・恐怖という感情は自然なもので異常ではないと考えます。それに対して、赤面するという身体反応に意識が囚われることが問題であって、治療の対象であると考えます。

森田療法を簡単に言ってしまいますと、赤面することは自然で仕方がないことだと受け入れて開き直ることで、結果として赤面する不安や恐怖に意識を囚われることが無くなり、連鎖的悪循環を断ち切ることができると考えるのです。

薬物療法は補助的

赤面症をはじめとする対人恐怖症を根治することができる薬剤は、存在しません。あくまでも赤面症治療のベースは精神療法です。

しかしながら、緊張・不安・恐怖といった感情を緩和させる薬剤は存在します。このような薬を補助的に用いることで、精神療法の効果発現をサポートできるのです。

ちなみに、用いられる薬剤は、抗不安薬、抗うつ剤、漢方薬などです。

場合によっては手術療法も

赤面症の治療で、場合によっては手術療法が選択されることがあります。赤面症のほとんどは、赤面することに不安や恐怖を感じる精神的なものですが、稀に体質的に交感神経が活性化しやすく赤面しやすい人が存在します。そのような体質の場合、胸部交感神経遮断手術によって、第二交換神経節を切除すると、赤面症の症状が解消するとされています。

ただし、精神的な問題もある場合は、手術によっても根治するわけではありませんので、注意が必要です。

民間療法について

赤面症について検索すると、赤面症の克服法・対処法や克服ノウハウというような民間療法が体験談とともにサイトで紹介されています。例えば、アロマセラピー・イメージトレーニング・自己暗示などといった方法です。

たしかに、赤面症の人の中で、民間療法の効果があった人がいるのかもしれません。しかしながら、民間療法のほとんどが医学的に実証された治療法ではありません。そもそも、人の心や気持ちはそれほど単純なものではありませんし、また体質的なものが原因の場合は神経系が関与しているのです。

したがって、これらの克服法実践では、赤面症の治療にならないと言って良いでしょう。赤面症の治療は、あくまでも専門の医師の指導の下で行うことが肝要です。

まとめ

いかがでしたか?赤面症についての概要をご理解いただけたでしょうか?

たしかに、赤面することは誰にでも経験があることですから、赤面症という症状についても軽く考えてしまうことがあるかもしれません。

しかしながら、赤面症の人にとっては、日常生活に支障が生じるほどの苦痛が伴います。つまり、赤面症の人にとっては、その症状のせいで人生が狂わされていると言ってもいいでしょう。社会人ならば会議にも参加できないかもしれませんし、学生ならば普通の学生生活もできません。

ですから、赤面症という症状について軽く考えずに、精神障害の一つと考えて治療するようにしましょう。また、そのような治療には周囲のサポートも必要ですから、周囲の皆さんも赤面症という症状に理解を深めていただければと思います。

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