照れた時に顔がぽっと火照るのは愛らしい仕草の代表です。また、強い怒りを表現する際に顔が真っ赤になるのは漫画などでもおなじみの表現です。これらの一過性のほてりは、緊張やストレスからくる体の正常な反応です。
ところが、常に火照った状態が続く人や、頻繁に顔が火照るという人は、もしかすると体の不調や病気など、体調の変化の前兆かもしれません。火照りの症状によって考えられる原因と、それぞれの対策を紹介します。
顔が火照る原因とそれぞれの特徴
顔が火照る原因さまざまです。ここでは原因と症状の特徴を紹介します。
緊張・ストレス
顔が火照る原因で最も身近なものが、緊張やストレスです。自らの意志でコントロールするのが難しく、緊張やストレスで頻繁に顔が赤くなる症状は赤面症と呼ばれています。
人間の体は緊張したりストレスを感じるとすると鼓動が早くなって血流を増大させ、筋肉に力が入ります。それは体の自然な防衛本能で、これから起こることにすぐに対処できるよう、体が準備を始めているのです。
人前でプレゼンを行うとき、気になる人と話すときなどに顔が赤くなり、いわゆる「アガる」のは、普段と違う状態に置かれたためにおこる緊張状態が原因です。また、強い怒りを感じて顔が真っ赤になるのは、不都合が生じた際に感じるストレスが原因です。
風邪・病気
風邪や病気で発熱した場合に、顔や頭に火照りを感じます。この場合は、特に自覚症状を感じるのが空気に触れている頭や顔というだけで、体全体の体温が高くなります。
また、ウイルスが入り込み扁桃腺が腫れた場合や、おたふくかぜなど、首周りに症状が出る病気の場合も、症状が軽いうちは顔が火照ることが多いようです。
冷え性
手足が冷えているにも関わらず顔だけが火照っている状態の事を「火照り冷え」と言います。
冷え性の人によく見られる現象です。手足などの末端が冷えることで、体は周囲の気温が低いと判断します。すると生命活動を維持するために重要な役割を果たしている内臓や脳など、体の中心部分を温めようとします。
そのために手足の血管を細くして血流を制限し、代わりに体の中心部分に血液を集中させます。そのため、顔への血流が増え、体温が上昇することで火照るのです。
日焼け
日焼けとは太陽の発する紫外線で皮膚がやけどを負う状態の事です。サンバーンとも呼ばれ、酷い場合は水泡が発生します。紫外線によって皮膚の組織がダメージを受け、発熱を引き起こします。
強い日差しに当たった直後から症状が現れ、特にその日の夜間に発熱がひどくなるため、火照りや引き攣ったような痛みによって、睡眠に影響が出ることがあります。
詳しくは、日焼けが痛い時の対処方法は?影響や注意点も紹介!を読んでおきましょう。
自律神経失調症
自律神経とは、呼吸、脈拍、消化、吸収、排泄、体温管理など、内臓や血管の働きに作用する神経です。意思とは関係なく働き、生命活動を維持する働きを担っています。
自律神経には交感神経と副交感神経という二種類の神経系が存在し、互いに影響しあっています。健康な状態では両方のバランスが取れていますが、疲れやストレス、過度なダイエット、睡眠不足、不摂生な生活などが原因で、バランスが崩れてしまうことがあります。その結果、様々な体の不調が引き起こされますが、その中でも血管系のバランスが崩れた場合に、火照りや多汗症を引き起こします。
更年期障害
40代、50代の女性に多い火照りの原因が、女性ホルモンの乱れによって引き起こされる更年期障害です。自覚症状には個人差がありますが、酷い場合は着替えが必要になるほど上半身から汗が噴き出すこともあります。そのほか、動悸、息切れ、イライラ、耳鳴り、高血圧、強い不安感などの症状が併発します。
女性は閉経の時期が近くなると卵巣で作られる女性ホルモンが減少します。しかし、脳は今までと同じ量の女性ホルモンを作るように命令し、必要量に満たない状態が続くことでホルモンバランスを乱してしまいます。
バセドウ病
バセドウ病とは、甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって代謝が良くなりすぎる病気の事です。
気温が低いにも関わらず顔が火照るなど、全身の温度が高くなる傾向にあります。ひどくなると真冬に薄着をしていても汗をかいたり、動悸が激しくなったりします。また、手足が震える、暑さに極端に弱くなる、どれだけ食べても体重が減るなど、日常生活に支障が出る場合もあります。
甲状腺ホルモンは女性ホルモンとも関係が深く、女性の場合は月経不順、無月経などの症状が現れることもあり、そこから発覚することも多い病気です。過労、出産、ストレスなどが原因と言われていますが、はっきりとしたことは分かっていない病気です。
詳しくは、バセドウ病の初期症状とは?チェックする方法を紹介!を参考にしてください!
原因別の対策
上記では、一過性のものから病気まで、いろいろな原因を紹介いたしました。ご自身の症状に当てはまるものはありましたでしょうか?
以下では、それぞれの症状の解決策を紹介します。
緊張・ストレス
緊張やストレスによる一過性の火照りは、誰にでも起こりうる現象です。また、意思でコントロールすることが難しいため、効果的な治療というものはありません。しかし、ある程度の対策を講じることは出来ます。
深く深呼吸をする
緊張やストレスを感じると交感神経が優位になり、体温が上がったり動悸が早くなります。呼吸を落ち着けることで昂った交感神経が安定し、火照りも落ち着きます。同時に目を閉じると効果が高まります。
全身の力を抜く
緊張は筋肉の硬直とそれに伴う体温の上昇を引き起こします。こもった力を抜くことで、緊張も共にほぐれます。ストレッチの可能な環境であれば、首をまわしたり、手首や足首を振ってみるのも効果的です。顔面の場合は特にあごの力を意識して抜きましょう。
準備をする
プレゼンや発表、人と話す場合など、準備が出来る場合は出来る限りの準備をしておきましょう。そうすることで気持ちに余裕ができ、人前でのアガリを改善することが出来ます。赤面症の克服のためには、心のゆとりや自信が非常に大きな効果を発揮します。
風邪・病気
風邪や病気で熱が出た場合、頭に冷たいタオルや氷を乗せることが一般的と思われています。しかし、体は発熱によって体内のウイルスに打ち勝とうとしています。
ですので、体を冷やすことは逆効果です。早めに医療機関で診察してもらい、休息時は出来るだけ首から下をあたためて安静にしていてください。ただし、熱が39℃以上になる場合は体の器官までダメージを受けるため、解熱剤を服用したり、脇や首などに冷たいタオルを当てて熱を下げてください。
発熱による発汗は体温を奪います。汗をかき始めたらこまめに衣類やシーツを取り換えるといいでしょう。
冷え性
冷え性によるほてりを改善するには、冷え性自体を改善する必要があります。冷え性に効果的な方法を紹介します。
筋肉量を増やす
筋肉は全身の血行を良くするポンプの役割を担っています。筋肉量が増えると血流が良くなり、全身の体温が上がるため、冷え性の改善に効果的です。
マッサージをする
腕や足のマッサージは血行を良くし、血管の隅々まで血液が流れるのを助けます。血行が良くなることで代謝も良くなり、美容や健康にも良い効果をもたらします。
指や手首、足首を動かす
末端の冷えには手や足の指を握ったり開いたりするだけでも効果があります。また手首や足首をゆっくりと動かすことで、先端への血行が良くなります。ただし、激しく振ると先端への血流が阻害され、逆効果になるので注意してください。
血行を促進する食べ物を取る
食物には体を冷やすもの、温めるもの、どちらでもないものがあります。ニンジン、カボチャ、ショウガなど、色が濃い野菜や、根っこの部分の野菜、冬が旬の野菜は特に体を温める効果が高いです。意識して取り入れることで冷え性の改善につながります。
日焼け
日焼けは軽度の火傷ですので、日焼けで顔が火照る場合は早めに冷やすことが大切です。水で顔をあらう、タオルで包んだ氷を肌に当てるなどが効果的です。
また、皮膚の水分が奪われ敏感になっているため、過度な刺激はしない方がいいでしょう。洗顔時に強くこすったり、目の粗いタオルを使うのは控えてください。冷やしたあとは化粧水などでしっかりと保湿すると日焼けのダメージを最小限に抑えられます。
男女にかかわらず、日焼けはシミ、そばかす、しわ、テカりなどの原因になります。
自律神経失調症
自律神経失調症は、病院で効果のある薬を処方してもらうことが出来ます。自覚症状がある場合は早めの診療をお勧めします。
自律神経失調症に最も効果のある予防は、規則正しい生活や正しい食生活を心がける事です。また、ストレスを溜めすぎないことも大切です。とはいえ、仕事などの都合で十分な睡眠がとれなかったり、運動不足になったりすることもあるかと思います。健康的な生活を意識することは大切ですが、それを気にしすぎて逆にストレスを溜めないようにしましょう。
軽いストレッチや、意識して油を控えたりビタミンを多く含む食事をとる生活をすることで改善が見込まれます。熱中できる趣味を見つけ、普段から気力を保つことも効果的です。
更年期障害
更年期障害は症状が多岐に渡るため、こちらも何らかの自覚症状がある場合は早めの診療をお勧めします。
治療方法も様々ですが、近年はホルモン注射によって女性ホルモンを補充するのがメジャーです。注射のほかには漢方薬やピルなどでホルモンバランスを安定させる方法もあります。
40~50代は体の転換期ともいわれ、病気が多くなる時期です。思わぬ病気が潜んでいる場合もありますので、定期的に健康診断を受けましょう。日ごろから体調に気を使うことで重症になるのを防ぐことが出来ます。
バセドウ病
バセドウ病と診断された場合、治療は投薬によるものと、手術によって甲状腺を取り除くものがあります。
投薬は甲状腺ホルモンの生成を抑える薬や、甲状腺組織自体を減らす薬を服用することで甲状腺の働きを正常に戻します。適量を見極めることが大切なため、医師の診察と相談が必要です。
手術で甲状腺を取り除く場合は全摘出が主流です。甲状腺自体が無くなるため、甲状腺の働きを補てんする薬を永続的に服用する必要があります。
まとめ
一概に顔の火照りといっても、さまざまな可能性があります。
一過性のものであっても顔が熱くなるのは気になりますし、病気であれば早めに原因を特定しなければ重症化する恐れがあります。症状がひどい場合は一人で悩まず、早めに専門医の診察を受けましょう。