難読症というのをご存じですか?難読症は身近に多いことではないので、聞きなれない方もたくさんいると思います。
普段、何事もなく話したり、言葉自体は理解しているのに文字の読み書きになると上手く朗読出来なかったり、文字もしくは数字を逆に書いてしまうなど、言語活動に不自由さがある人のことを難読症といいます。
難読症の症状はそれそれ個人によって症状や特徴が異なります。今回の記事は難読症について、原因と対処法、治療法を紹介します。
難読症とは何か?特徴と原因を紹介
難読症は他にも失読症、ディスレクシア、識字障害、読字障害とも呼ばれ学習障害の一種とされています。この難読症とはどのような特徴があるのでしょうか?
また、その原因も調べてみました。
難読症について
難読症は1884年にドイツの眼科医ルドルフ・ベルリンによって報告されました。知能や一般的な理解力は特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害を難読症といいます。書かれた文字を読むことができず、また読めてもその意味まで分かっていない状態を指します。
【特徴】
- スラスラ朗読できない、または読めない
- 読み間違いが多い
- 文章または文字を飛ばして読んでしまうことがある
- 左右がひっくり返った字(鏡像文字)を書いてしまう
- 勝手に字を作ったり、字体が変形する
- 黒板の字の書き写しが難しい
- 見たばかりの字が覚えられない
- 音と記号である文字のつなげる能力(音韻認識)が乏しい
- 文字の形や構成している部分を正しく認識できない
- 文字が動いたり、踊ったり、かすれて見えたりする
また、難読症の人は感想文など思った言葉を正確に文字にすることができない「書字表出障害」や単純な計算が出来ない「算数障害」を伴うことが多いようです。
難読症の原因とは?
原因は未だ詳細な研究が進んでおらず明確にされてはいません。しかし、科学者によると生まれつき脳や中枢神経に何らかの機能障害が発生しているものとされています。
医師によっては6番染色体および15番染色体との関連が原因ではないかと憶測する人や、後頭葉の病変、半球の異常との関連を指摘する人もいます。第1度親族の遺伝性の確率が高いともいわれているようです。
難読症は知的障害や感覚障害、社会性や情緒障害などの他の障害や不適切な環境(望ましくない教育や文化の違い)からも生じますが、そのような他の障害や環境から直接生じるものではないとされています。
発症率
最近では難読症も広まってきているようですが、まだまだ認知度は低く難読症の子に対して偏見を持ったり、理解がなかったりしています。日本ではまだまだ関心の低さが伺えるようです。
アメリカが最もこの症状に対して先進的ですが、人口の約10%~15%が難読症などの学習障害を持っていると調査結果が出ています。日本では文部省が行った4万人を対象とした調査で、通常学級に在籍する児童のうち5%~8%が難読症や他の学習障害を持っているとの報告があるようです。
この調査から、クラスの中に数人は必ず発達障害を持った子がいることになります。
他の学習障害
学習障害の一種、難読症ですが上記にも記載したように他の学習障害(書字表出障害や算数障害)を伴うケースもあるようです。
他の学習障害についても詳しく解説します。
・書字表出障害
綴り方や句読法、書体や文章の構成が苦手なのが特徴です。
「は」と「わ」や「お」と「を」の区別がつかなかったり「め」や「ぬ」、「わ」や「れ」などの形の似た文字を間違えたりします。また、小さな文字「っ」や「ゃ」の書き抜かしや書き間違いもみられます。
書字表出障害は主に学齢期に全体の約4%が発症すると言われ、女の子より男の子の方が3倍も発症率が高いとされています。小学生の頃に症状が現れることが多いようです。原因については難読症と同様に、脳や中枢神経の異常、6番染色体と15番染色体との関連、後頭葉の病変、半球の異常、第1度親族の遺伝性の可能性が高いとされています。
・算数障害
計算が遅く、また不正確なのが特徴です。授業などで習ってもそれを思い出して計算したり適用するのが困難な症状です。また、簡単な足し算や引き算、掛け算など覚えたり計算するのも同年代よりも遅いとされています。
算数障害は主に学齢期に全体の1%が発症すると言われ、男の子より女の子の方が発症率が高いとされています。原因については右半球の障害で、主として後頭葉領域とされています。また、遺伝因子に一部関連があるようです。
・難読症の有名人
ハリウッドスターのトム・クルーズが自ら難読症(ディスレクシア)と公表したことによりこの障害の知名度は高まったそうです。
他にもキアヌ・リーブスやジェニファー・アニストン、オーランド・ブルーム、ジャック・ホーナー、キーラ・ナイトレイ、スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・エジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・アインシュタイン、ジョージ・パットン、ルイス・ハミルトンなどがいます。
難読症の対処法と治療法
難読症は訓練次第では、高校や大学に進学出来るまで改善するといわれています。では、どのような対処法、治療法があるのか、詳しく調べてみました。
難読症の対処法
難読症はその症状に対しての周囲の認知度の低さから、「頭が悪い」「少し変な子」「親のしつけが悪い」などと誤解されたり、理解を得られなかったり、偏見を持つ人が多いようです。知能には問題がないのに、文字が読めない、文章が理解できないなどで一番悩んでいるのは本人です。
周囲がしっかりと難読症のことを理解し、サポートするのが何よりも大切なのです。学校にもよりますが、教師のサポート次第で普通学級で過ごす方も大勢います。
まずは症状をしっかり理解し、周囲の大人達や学校の教師とコミュニケーションをとっていきましょう。また早期発見も大切です。気付かず過ごしていると周囲の偏見からいじめやひきこもり、うつ病などの二次的な問題が発生する可能性があるので注意しましょう。
難読症の治療法
難読症の治療法への取り組みは既に本格的に始まっており、簡単な治療法としては漢字カード視写ノート、音読などがあります。他にも米国の「Fast ForWord」という聴覚的能力を訓練するコンピュータープログラムもあるようです。
訓練によっては児童の読み能力が向上したなどの結果がでています。他にもいろんな治療法を「身近に出来る治療法」と「専門的な器具を使った治療法」に分けて調べてみました。
【身近に出来る治療法】
- 見やすいフォントやサイズ、行間を充分に空けるなどの工夫をする
- 漢字については一つずつ文字を見せる
- 行ごとに文章または文字を隠して窓をつくってみせる
- 文字と音を関連付けて覚えさせる(最初は文字単位の音声を録音し、聞かせる。慣れてきたら音節、単語と拡大していく
- 色眼鏡を使って読みの向上を図る(黄色、または青色の色眼鏡を一定期間着用することにより30%の児童の読みの能力向上がみられたとされています)
【専門的な器具を使った治療法】
・タブレット機器用いたICT教育を取り入れる
ICT教育とは、情報通信技術(ICT)の利用、活用方法を教育の一環として取り入れた教育のことです。具体的にはタブレット型端末、ノートパソコン、電子黒板をも教育を指します。
・「Fast ForWord]というコンピュータープログラムを取り入れる
このプログラムはアメリカのタラル教授とガブリエル教授が開発したもので、30年以上の神経科学研究にもとずく学習加速プログラムです。
音韻意識や音素の認識、流暢さ、語彙、理解、作業メモリや構文など良い読者になる方法を学ぶための技術である、読者技術と重要な言語を強化するため、視覚的能力から訓練するものでこのプログラムを使用した児童によっては読み能力が向上したとの結果が出ているようです。
・サポートツールを使用する
ウェブページやテキストなどを人口音声で読み上げてくれるソフトウェア(TTS)を使用することによって、言語の理解力と向上を図ります。
専用のインターネットサイトから、ソフトをダウンロードすることで使用することができます。
・教科書バリアフリー法
拡大教科書、点字教科書、DAISY教科書を作成しているボランティア団体等の負担を軽減する目的で、2008年9月に施行した法律です。教科書出版社が文科省にデジタル化した教科書データの提供が義務づけられています。
小学校から高校までのデジタル教科書であれば入手することが出来ますが、個人でのデータ提供への申請は出来ないので、学校の先生や団体に所属する人に文科省に申請してもらうことになります。
難読症の支援や参考文献
【支援機関について】
NPO法人 全国LD親の会
全国数十か所の支援センター
※「全国各地の診断相談機関(pdf)」サイトを参照して下さい
【参考文献】
「怠けてなんかない!ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難LDの子どもたち」(品川裕香)
「ディスレクシアでも大丈夫!」(藤堂栄子)
「僕は、字が読めない。読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年」(小菅宏)
「小学生の読み書きスクリーニング検査ー発達性読み書き障害(発達性dyslexia)検出のためにー」(宇野彰、春原則子、金子真人、Wydell,Taeko N)
「LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)-子どもたちの「学び」と「個性」」(上野一彦)
まとめ
難読症は広まってきたとは言え、まだまだ周囲には認知されていないのが現状です。そのまま気付かず放っておいたり、間違った指導をすると自己評価の低下に繋がりうつ病や不登校、ひきこもりなどの二次的な問題が起こる可能性があります。
難読症の子にとって、どのような環境で、どのように治療、改善していけば一番良いか両親や周りの大人たちがサポートし合っていきましょう。
是非、本記事を参考にして下さい。