耳から血が出る、と聞くととんでもない大事故を起こしたかのように聞こえますが、身近な問題で言うと耳掃除をしすぎて耳から血が出たという経験をしたことはないでしょうか?
血が出るまで掃除をする必要はそもそもないのですが、それ意外にも日常生活から炎症に繋がり、耳から血がでてくる可能性がある病気もあります。
耳は外側についている器官ですが、内側はかなり複雑な作りになっており脳や顔面など神経の多い部分に近接しています。病気を放置してしまうとめまいや難聴などの症状にもつながる可能性があるため、早めに対策した方がよい部分です。
耳から血が出た場合にどのような病気の可能性があるかについてとそれぞれの症状や原因や対策方法などについてまとめました。もし耳から血が出てしまっている場合はこれらの問題の可能性があることを知り、しっかり治療していきましょう。
人間の耳の構造について
耳から血が出てしまうという事が発生している場合、非常に重大な病気や脳に障害が起こってしまったのかと心配になりますが、耳のどの部分から血が出ているのかで危険度や重篤なレベルが変わってきます。
まずは耳の構造に付いて知っておき、どの部分から出血が発生する可能性があるのかを知っておきましょう。
耳の構造、それぞれの階層と役割について
耳は外側から耳介、外耳、中耳、内耳に分かれています。それぞれの役割は以下の通りです。
耳介
音波を集める部分。外から見えている「耳」はこれにあたります。耳介は軟骨と皮膚で出来ていて動物によっては体温調節機能などを持っている器官になります。
小さな毛細血管も沢山通っているので、皮膚表面が傷ついてしまったりすると出血してしまうことがあります。
外耳
外耳道と鼓膜までの耳の穴の事を指します。音の振動を伝える部分で、ここも皮膚と軟骨でできています。(耳介と外耳道の入口3分の1は軟骨でできており、そこから奥は軟骨で出来ています。)
鼓膜の部分は半透明の膜になっており、ぴんと張っている部分とたるんでいる部分があります。耳かきなどでこの外耳道を傷つけてしまうことで出血が発生してしまいやすい傾向があります。
中耳
鼓室と呼ばれる部分です。鼓膜には三つの耳小骨があり、この骨の振動が内耳に伝わる仕組みになっています。鼓膜の振動は三倍になって内耳につながるようになっており、振動を増幅させる働きをしています。
中耳は耳管と呼ばれる喉に繋がる器官とつながっており、ここで内圧の調整をして正常に音が内耳に伝わるように調節しています。血や耳垂れに血が混ざっている場合は中耳炎や外傷性鼓膜穿孔などの病気が考えられます。
内耳
聴覚と平衡感覚を司る器官です。蝸牛と前庭に分かれています。空洞にリンパ液が満たされており、この液体が振動によって揺れて感覚細胞に電気信号が伝わります。
また、三半規管は回転を感知するので、この部分が過敏すぎたり神経が損傷するとバランスが取りにくくなります。
これらのルートを通って音が脳に伝わり音を聞こえる(認識している)仕組みになっており、耳から血が出る場合はこの道のどこかから出血しているという事になります。鼓膜の向こう側は無菌状態なので、鼓膜に傷がついたせいで出血している場合は、内側に菌が入り込んで炎症を起こし出血につながっている事が考えられます。
耳から血が出る病気
耳から出血が起きる可能性のある病気について代表的なものをまとめました。症状や引き起こってしまう原因から自分の症状と考えられる症状についてセルフチェックしていきましょう。
もし、当てはまる問題が発生していると考えられる場合は、しっかり耳鼻科での治療を行っていきましょう。
外耳道炎
耳から鮮やかな血が出る場合は、そのほとんどが外耳道の炎症・外傷によるものと考えられます。耳掃除などで外耳道に傷が付くとそこに耳あかがたまり、細菌に感染して炎症を起こします。これが外耳道炎の主な原因になります。
基本的には耳垢は外耳道の3分の1までの手前の部分にしか発生しないのですが無闇に奥まで耳かきを突っ込んでしまうことで発生しやすくなっています。
耳の周りや耳の穴を押すと痛む場合が多く、かゆみが出る、耳が詰まっている感じがするなどの症状が併せて出る事があります。
特に粘質性の水分を多く含んでいる耳垢がよく出る人に発生しやすい傾向もあります。耳垢が湿っている人は極力優しく耳かきを行うよう心がけましょう。
急性中耳炎
耳だれに血が混ざる形で出血した場合、急性中耳炎が疑われます。
鼓膜の内側に炎症が起きている状態で、肺炎球菌、インフルエンザ菌などによって起こる事があります。耳だれ意外には耳の痛みが症状として現れる事が多く見られます。
鼓膜に穴が開いている状態や、傷がついている状態でプールなどに入ると水の中に含まれている菌が中耳に侵入し炎症を起こし中耳炎が発生します。
慢性中耳炎
血と膿みが混ざっている場合は慢性中耳炎の可能性があります。急性中耳炎が慢性化したもので、繰り返し症状を再発し、治りにくい傾向があります。
聞こえが悪くなる場合もあります。中耳炎の際に起きた鼓膜の穴が塞がらずに残っている状態です。
鼓膜の再生が遅れて聴力が弱くなるため聞こえが悪くなり、細菌も入りやすくなります。慢性中耳炎のうち、耳から血が出る可能性がある中耳炎に以下の物があります。
・滲出性中耳炎
鼓膜の奥にある空間に液体が溜まっている状態で、痛みや熱が出づらい傾向があります。耳の中でできた液が溜まっているので音が聞きとりづらくなり、耳の中でがさがさ音がする等の症状があります。耳から出る液に血が混ざる事があります。
・穿孔性中耳炎
鼓膜に穴が空いたままになってしまう病気です。急性中耳炎や浸出性中耳炎の炎症が長引くことでこちらに移行する事があります。痛みはなく、難聴が発生し音が聞こえづらい、耳だれが起きるなどの症状が出ます。
・真珠腫性中耳炎
鼓膜の一部が内耳側に凹む事で袋状になり、そこに真珠種と呼ばれる白い塊ができる病気です。鼻をすする癖がある人に起こりやすい病気です。
真珠種は炎症を起こすと炎症性の物質を作ります。この物質に骨を溶かす作用があるため、周りの耳小骨などに影響を及ぼし耳だれが起こります。めまい等の合併症を起こす事もあります。
この病気で起こる耳だれには破壊された骨の成分が含まれているため、悪臭を伴うという特徴があります。
中耳炎についてその他に記事にこちらの記事もありますので、あわせて参考にしてみてください。
慢性中耳炎の場合は風邪などをきっかけに何度も中耳炎を繰り返しますので、手術的治療を行って病巣の清掃や中耳腔の形状を整えるなどの治療を行う必要があります。
日帰りでも行える手術になりますので、近くの手術可能な病院を探して治療を行っていきましょう。
外傷性鼓膜穿孔
鼓膜が破れたという状態で外からの圧力や外的な衝撃や刺激などによって鼓膜が破れてしまう症状で、鼓膜に穴が空いてしまうことで内耳に向かて菌などが侵入しやすくなり、外傷性鼓膜穿孔性中耳炎などの症状に繋がってしまいます。
この症状が発生している場合は、耳からの出血の他に難聴の症状や疼痛(とうつう)やめまいが発生する場合もあります。
鼓膜が破れた瞬間には強い痛みが発生し、出血が確認されることもあり、更に音が聞こえづらくなります。水の中に入っている様な感覚で全く聞こえない状態ではありませんが、音がぼんやりとして聞こえづらくなります。
衝撃や大きな音などによって鼓膜が破れてしまった場合は衝撃の際に一緒に耳小骨まで傷つけてしまう場合もあり、この場合は伝音性難聴だけでなく感音性難聴まで発生させてしまうこともあります。
感音性難聴は脳に音の信号を伝える段階で、音を情報に変換する期間に損傷が発生している為に正確に脳に信号が伝わらないことで発生してしまう難聴になります。
出血が発生している場合は音の感じ方が正常かどうかもあわせて確認してみましょう。
側頭骨骨折
即頭骨には様々な神経が走っており、平衡感覚や聴覚などを担っています。そのためここに衝撃が加わって骨が折れると様々な症状が出ます。
代表的なのは顔面神経麻痺、耳の聞こえの悪さです。内耳の骨が骨折して出血する場合や、細菌に感染して膿がでる場合もあります。
頭蓋骨の骨折ですが、耳から血が出ているからといって致命的な重症の場合とは限りません。逆に、耳から血が出ていないから軽症であると判断する事はできません。見た目の症状の重い・軽いに関わらず、すぐに医療機関を受診するようにして下さい。
耳のがん
非常に稀ながんですが、耳の癌という病気があります。数少ない耳の癌の症例ですが、その大半が中耳にできるものです。中耳は専門的な道具を使用しないと肉眼ではなかなか見えない部分なので、早期発見が難しいと言われています。
また、内耳の近くには顔面や脳など神経の多い部分が沢山存在しているため、転移が起きた場合に歩行障害や視力や嗅覚障害などの障害につながる可能性もあります。
吐き気やめまい、難聴、耳の痛み、膿みや血を含んだ耳だれなどの症状が代表的とされています。
予防と対策
耳から出血が確認された場合に出来る対策法や、出血を発生させないために普段から出来る予防法などについて紹介していきたいと思います。
対策法と予防法を行って症状の発生や症状の拡大を防いでいきましょう。
免疫力を高める
耳から血が出る症状は、炎症によるものが多くあります。免疫力を高めておく事が耳の炎症をおさえるための予防対策と言えるでしょう。
食事でしっかり栄養を摂って、耳の周辺の皮膚の免疫力を向上させて、炎症などの問題が発生してしまう事を予防しましょう。
栄養失調によっても中耳炎の発生率が上昇してしまいます。特に有効な栄養素としては青魚から取れる脂肪酸です。中耳炎の治癒にも貢献する栄養素になります。またいちごなどのフルーツ類も豊富にビタミン類を含んでいますので栄養補給には最適な食材になります。
これらの食材を積極的に摂取して炎症などの症状に強くなりましょう。
耳かきをやりすぎない
また、もともと耳の奥のごみは顎の動きで勝手に落ちて行くと言われています。そのため耳掃除は耳の入口から1cm程度の所まででよいと言われており、あまり奥までこするのはよくありません。
耳から血が出てしまっている場合の対策としては、「そっとしておく」事が挙げられます。耳掃除をしている途中に傷をつけてしまったような場合でも、血が出た時点で掃除はやめる必要があります。また、耳の中の皮膚は非常に薄いので、出た血を綿棒で拭き取ろうとするのも傷を悪化させてしまいます。
耳だれが出ている場合は綿球などで押さえ、耳の外に垂れないようにします。1cmくらいの綿球を使い、テープなどで止めて適宜取り替えます。無理矢理綿棒で拭き取ったりするのはよくありません。
耳かきの適切な頻度としては2週間〜1ヶ月に1回のペースが適当になります。耳かきを行いすぎると耳垢が完全になくなってしまい、虫が入り込みやすい環境になるというデメリットもあります。
耳垢は虫が嫌がる臭いを発しているので虫よけの効果もあります。なので、無闇に耳垢を全て取り除こうとするとゴキブリや蜘蛛や蟻などが侵入してしまう事がありますので注意しましょう。
実際に耳の中に蜘蛛が巣を張っていたという怖い事例もありますので要注意です。
プールや入浴中に耳の中に水が入らないように気をつけよう
プールは控え、入浴の際も耳に水が入らないよう気をつけましょう。もし専門の先生からの許可が出るほどに症状が安定している場合には問題ありませんが、専門家に見てもらっていない状態で自己判断で耳の中に水が入ってしまう行動は取らないようにしましょう。
水の中には沢山の菌が潜んでいます。その菌が耳の中に入ってしまうと、炎症を強くしてしまったり、痛みを強く発生させてしまう事もあります。
もし耳から出血している場合は耳に水が入ってしまわないようにしましょう。
病院でしっかり検査
珍しい例ではありますが耳のがんの可能性もなくはないので、心配な場合は医療機関での診断を受けましょう。中耳炎の場合などは鼓膜の穴を塞ぐ治療や、溜まった水を抜く治療などが行われます。
圧力の差によって耳の中に押し込まれていた鼓膜が変な所にくっついてしまうといったケースもあるので、早めに検査を受けて治療を開始していきましょう。
症状が進行し重症化してしまったり、慢性化してしまった場合は治療が困難になるとともに治療費、時間が更に上乗せされ、難聴などの後遺症が残ってしまう可能性もあります。
症状を甘く見て、治療を怠り生涯に渡って残る後遺症に繋げないようにしましょう。
様子を見る場合でも1〜2日経っても痛みが引かない場合は病院で必ず検査を受けましょう。もし痛みが引いても原因がはっきりしていない場合もしっかり病院で検査しましょう。
まとめ
耳から血が出るという経験はなかなかなく、外耳道炎の場合でも結構な量の血が出て来ると言われています。そのため脳が溶けて出て来た!とびっくりしてしまう方もいらっしゃるようですが、多くは耳のどこかの炎症なのでそれほど心配はいらない、というのが一般的な意見のようです。
ただ、耳がある側頭部はたくさんの神経が通っている部分の近くで、非常に複雑な作りになっているため、あまり重症になるとめまいや耳鳴り、難聴など日常生活に支障を来す場合があります。特に難聴は放置しておくとどんどん治りが悪くなるとも言われるので、どちらにせよはやめの医療機関受診が大切といえるでしょう。
また、耳は思ったよりも奥が広く、自分でははっきりと症状が分かりづらい部分です。不調は放置せずにこまめなチェックを心がけましょう。
また、病気ではありませんが、一番単純に「耳かきが鼓膜に刺さる」という例もあります。耳掃除は無理せず深追いせず、周りに人がいない所で行うようにして下さい。
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