子どもの時によくあるんですが、耳から無色透明な液体が出てきたことはありませんか?また、まれに大人になってからも、このような症状が出るケースもあります。
何か、液体が出てくること自体、とても驚いてしまいますが、このように耳から膿が出ることには、何か原因があります。
これらの主な原因として挙げられるのは、中耳炎と外耳炎でありまた、中耳炎でも種類があり、原因や症状によって分けられています。
この耳から出てくる液体は、「耳だれ」というのですが、無色透明なものもあれば、黄色っぽい液体や少しどろりとしたものや臭いのあるものもあります。そのような液体が耳から出てくるのは、一体何が原因なのでしょうか。
では、これらの症状を見ていきましょう。
耳から膿がでる原因
耳から無色透明な液体が出てくるのを耳だれ、若干黄色の液体を耳膿といいます。耳から膿が出るとということは、内部で炎症を起こしている証拠です。そして、それはほとんどが小学生以下の子どもに多いという統計も出ています。
子供が中耳炎や外耳炎になりやすいのは、その耳の構造からです。耳は、喉や口につながっているのですが、このつながっている耳管が、子どもは太くて喉や鼻への耳管が水平状態です。それで鼻をすすると、直接耳に影響を与えやすくなっているのです。
大人は、この耳管が細くて喉や鼻への耳管が少し上の下向きとなっています。そのような配置から大人は鼻をすすっても、耳にあまり影響が出ないようになっているのです。
これは顔の輪郭を見ても分かると思います。子どもは耳と目の位置がほぼ同じですが、大人になると、耳が若干上の位置になっているのがそれを示しています。
また、鼻をすすって細菌やウィルスが耳へと入りますが、耳垢がたまり外から菌が入り込むケースもあったり、外側から鼓膜にかかる耳道に傷がついて炎症を起こすケースもあります。
耳から膿が出る病気について
では、耳から膿がでる症状のある病気について紹介します。さらにその病気に関する対処法も紹介しますので一緒に見ていきましょう。
中耳炎
細菌やウィルスにより、中耳の部分に炎症を起こしてしまうものです。中耳は鼓膜の内側辺りであり、炎症を起こしている部分から膿が出てきます。
この部分は非常にデリケートなので、感染しやすいのが特徴です。発熱を伴うこともあり、放っておくと耳が聞こえにくくなる突発性難聴や、内耳にも影響が出るので速やかに医師の診断を受けることが望ましいと思います。
主に風邪などをひいた後にかかるケースが多いようです。風邪で増えた菌が耳の中にまで侵食し発病します。これらの症状は、膿が出き切ると痛みも和らぐようです。ですから、出ている側を下にして、横になるのがいいかと思います。腫れの症状のピークは1週間ほどで、熱や痛みのピークは2〜3日間ほどになります。しかし、痛みが引いても完治したわけではありません。その後膿が抜けきるまでは聞こえが悪くなるなどの症状が続きます。膿が出切って聞こえが戻れば完治となります。しっかりとした検査で完治を確認するためには聴力検査お行います。
特に子供に発症するケースが多く見られます。これは、子供が風邪にかかりやすいことや最初に説明した子供の鼻に繋がる耳管と中耳までの管が平行に太く繋がっていることが関係しています。特に1歳〜10歳までの子供に発症の確率が高く、その後は成長につれて可能性は低くなります。
・対処法
この場合は、抗生剤で炎症を抑える治療となります。炎症を抑える薬を炎症部分につける場合もあります。
風邪などをひいた時は要注意です。鼻水が出て力を入れてすすったり、鼻をかむときにも力を入れてしまうと、菌が耳管を経由して内耳に到達してしまいます。
それでも、子どもはそのように注意を促しても、あまり聞き入れることがないことがほとんどです。そういった場合は、大人がこまめに観察してあげるしか方法はないでしょう。
小学校を卒業するまでは風邪を引いたら中耳炎の可能性を視野に入れておき、内科で風邪の治療を行うのではなく耳鼻科で風邪の治療を行うようにすれば症状の悪化は防げるでしょう。
中耳炎については、中耳炎が大人に現れるとどんな症状?治療方法も紹介!の記事を参考にしてください。
慢性化膿性中耳炎
中耳炎を起こし、膿がたまると、鼓膜を突き破って外へ膿が出てきますが、中耳炎が治ると自然に鼓膜もふさがります。しかし、この中耳炎が完治していない時や中耳炎を繰り返してしまうと、鼓膜がふさがらずに慢性的に膿が出てしまいます。これが慢性化膿性中耳炎です。この場合もやはり、発熱を伴うこともあり、痛みも若干出ます。
鼓膜の穴(穿孔)から菌が侵入したことにより耳の穴がじくじくしてきて耳だれ(耳漏)が出てきます。鼓膜の穴が軽度の場合は難聴の症状も軽度におさまりますが、長期間の症状により細菌感染が広がり内耳にまで影響が及ぶと感音難聴を引き起こし、耳鳴りなどの症状が出て難聴の症状はさらに悪化します。
・対処法
とにかく中耳炎を完治させることが重要となります。通常の中耳炎と同じように、抗生物質などの薬で炎症を抑えるので、それほど心配することはないかと思いますが、慢性化膿性中耳炎の場合は、最悪の場合、鼓膜回復手術等が必要な場合があります。
一度中耳炎にかかったら、その後の経過はよく観察しておくことが重要です。痛みを伴わないと発見しづらいものなので、変に耳をいじっていたりおかしな動きがある場合に対処した方がいいでしょう。
特に、風邪をひいたときなどは中耳炎や慢性化膿性中耳炎の再発の可能性が高まりますので、その際の注意が必要です。
急性中耳炎の時にしっかり症状を完治させておくことが最も有効な予防法です。痛みが無くとも完治はしていないので、医者でしっかり完治を確認してもらいましょう。
また子供だけに発症するわけでなく、高齢者の発症も増えています。高齢者の患者の場合も症状の管理がしっかり行き届かない事が原因で症状の悪化に繋がり手術に発展する場合が多くあります。初期の治療であれば保存治療で抗生物質の投与と経過観察でしっかり治療する病気なので保存的治療で治療が行えるうちにしっかり治すことを心がけましょう。
滲出性中耳炎
子供に発症しやすい中耳炎の一つです。中耳炎は痛みの症状が出やすいですが、この滲出性中耳炎は痛みや発熱といった症状が出ないこともあります。
耳の鼓膜の奥には本来は空気が溜まっていてこの圧力を調整することで正常に音を感知しています。しかし、この中耳腔に炎症性の液体が溜まることで滲出性中耳炎の症状が現れます。
これは、比較的弱い炎症が耳管内を通って中耳腔に届くことで、炎症が起き中耳腔から炎症性の水分が細胞から滲んできます。本来はそれらは耳管の働きで鼻に流れていくのですが耳管が正常に働かないことで中耳腔に溜まった状態になってしまいます。急性咽喉頭炎、風邪、アデノイド肥大、副鼻腔炎などの症状が耳管の働きを鈍くする可能性があります。
特に大きく確認される症状は難聴で、話す声が大きい、テレビの音が大きい、耳によく手を当てる、呼んでも返事をしない、風邪や鼻腔炎などの症状を患っている場合は、もしかしたら滲出性中耳炎である可能性があります。
老人性難聴に含まれます。
対処法
滲出性中耳炎の治療には、耳だけでなく耳、鼻、喉の3点の治療が必要になってきます。鼻腔内や喉は出来るだけキレイな状態に保つ必要があります。内服薬などで粘膜の異常分泌を減らしたり、炎症の軽減を図ります。
耳管に空気を通し、液体を排出し耳管の機能を改善します。もしくは鼓膜を切開し、液体を吸引します。何度治療を行っても液体が溜まってしまう場合にはチューブを入れておき成長するまで観察を行っていきます。
普段の生活では、鼻腔炎や風邪などの症状が出ないように食生活や、運動や手洗いうがいなどの予防手段によってしっかり免疫力を高めるとともに病気の予防をしていくことが重要になります。
再発しやすい病気なので長期間に渡る治療と通院が必要になります。根気よくしっかり治療を行っていきましょう。
癒着性中耳炎
慢性中耳炎中の一つで慢性中耳炎の内10%程の割合で観測される確率の少ない中耳炎です。鼓膜が内側に凹み、中耳側にくっつくことで発症するもので滲出性中耳炎から移行するケースが多い特徴があります。
主な症状は鼓膜が正常に振動しないことによる難聴です。症状が起こっている片耳での難聴の症状が出ることが多く、両耳での発症は稀です。鼓膜が振動しないのでかなり強い程度での難聴が起こります。
対処法
鼓膜切開し鼓膜を一旦剥がしてから、正しく張り直す鼓膜形成手術を行います。さらに耳小骨の破壊が確認される場合は鼓室形成術の手術も必要になってきます。
しかし、この病気は耳管の働きが弱くなって起こることが多く、手術を行っても再発する可能性があります。まずは、癒着性中耳炎にならないように、幼少期の中耳炎の初期の症状のうちにしっかり治療を行っていくことが重要になります。
真珠腫性中耳炎
耳管の内部の方へ、鼓膜が何らかの影響で入り込んでしまい、中耳炎を起こす症状です。その形が真珠のように膨らんでいることから、このような名前になっています。
症状が進んでしまうと、難聴やめまいや顔面神経麻痺などを引き起こす恐れがあります。早めの対処をしないと膨らみが成長してしまいます。滲出性中耳炎や癒着性中耳炎を初期に起こすことで続いて起こる場合もあります。
傾向としてよく鼻をすする人がかかりやすい病気です。
慢性中耳炎よりも重い病気で、このまま放置してしまうと最悪の場合、脳膿瘍や髄膜炎に発展する可能性があり、結果死亡に繋がる可能性も出てきます。
・対処法
この場合は症状がかなり進行しているので、手術が必要となります。薬等で痛み等は緩和しますが、この病気は治りません。ほとんどが手術による治療となります。耳の内部はある意味、脳にも近いので、慎重な治療と診断が必要となります。
側頭骨ターゲットCTによる検査が必須になります。内視鏡や拡大耳鏡や手術用顕微鏡を用いて患部の状態を詳しく観察する必要があります。
手術にはかなり熟練した技術を必要とし、難聴の障害が術後に残る可能性も多くあります。最近では手術の改良が進み、難聴の症状が改善しつつあります。
術後にも再発の可能性が十分ありますので一定期間での来院が必要になるでしょう。特に鼻の啜り癖のある人はその指導も含めて行っていく必要がります。
粉瘤
耳の中ではなく、耳の外にできる良性の腫瘍のことです。耳たぶや耳の裏などに出来ることが良くあります。この粉瘤を圧迫すると中から膿が出て来る場合があります。
アテロームとも呼ばれ基本的に害はないですが、へそと呼ばれる開口部から出る臭い膿が出るので気持ち悪いことと、そのへそから菌が侵入することで痛みを伴う場合があります。
これは、皮膚の下に何らかの理由で嚢胞と呼ばれる皮膚の袋のようなものが出来ることで、そこに古い角質や皮脂などが溜まって大きくなっていきます。
対処法
粉瘤は切除しない限りは、自宅でのケアや薬などで無くなることはありません。特に炎症が起きてしまっている場合には炎症を繰り返すと厄介なのでまずは抗生物質や抗菌剤や膿を出すことで炎症を緩和させていきます。
2ヶ月ほど様子を見て手術を行っていきます。粉瘤のへそ中心に小さく皮膚を切開し袋を取り除きます。その後皮膚を縫合する小切開摘出術が行われます。
基本的に害はないですが、炎症が起きてしまわないうちや大きくならないうちに取ってしまうのが良いでしょう。皮膚科や形成外科を受診しましょう。
外耳炎
鼓膜から耳の外側の部分を外耳と呼びますが、この部分が傷などで炎症を起こしたものです。耳かきや指等で引っ掻いた傷が元となるケースが多いようです。
まれにその部分に細菌が入り込み、腫れたり熱を帯びたりすることもあります。また、化膿して膿みのかたまりができ耳の入り口が腫れることもあります。
・対処法
熱を帯びたり腫れている場合は、かなり悪い状態です。抗生物質で対処することになりますが、治りかけのときにその傷の部分がかさぶたとなり痒くなることもあります。
この場合は気をつけないと、かさぶたが剥がれて出血する場合もあり、完治が遅くなることもあるので注意が必要です。外耳炎については、外耳炎の治し方を紹介!症状によって変わる治療方法とは?の記事を参考にしてください。
予防法
耳が炎症を起こさないための予防方法を紹介します。
鼻をかむときの注意
鼻をかむときに勢いよくかむと鼓膜への圧力がかかり、その際に細菌やウィルスが耳管へ入り込み炎症を起こします。よって、鼻をかむときは力一杯にかまないで、やわらかくかむことが重要です。鼻水が出にくいといって、力を入れないことです。
また、鼻をかむことが原因となると言うことは、鼻水を出ないようにすることも予防法の一つです。風邪などをひかないようにすること、またアレルギー等の対策にも気を遣うことも重要な予防法となります。
耳掃除の際の注意
こまめに掃除したい気持ちもわかりますが、実際にはあまりしない方がよいということが言われています。ある耳鼻科医は、絶対に耳掃除はしないといっています。これは極端でも、それほど、耳掃除は慎重にしないといけないことを意味しています。
つまりは、非常にデリケートな場所なので、用心した方がいいということです。また、頻度も2週間に一回とか、1ヵ月に一回とかでいいかと思います。
耳掃除は確かに気持ちいいかもしれませんが、毎日することは避けましょう。そして、耳道に傷をつけないようにすることです。一生懸命にきれいに取ろうと、ごりごりと耳道をこすることは避けて、ソフトに耳掃除することが望ましいでしょう。
また、お風呂に入ったときに、耳道を石鹸等で洗う方もいますが、これも厳禁です。間違って内部に石鹸や水が入り込んだり、また石鹸などに入ってる化学物質が耳道にかぶれを引き起こす可能性があります。
だからといって、耳の掃除をまったくしないというのも問題です。それは、耳の垢がたまりすぎるとその垢に菌が付着し、その影響で炎症を起こすからです。確かに清潔感を持つことは重要ですが、注意していただきたいと思います。
まとめ
いかがでしたか。
耳掃除も慎重にしたほうがいいことはわかりますが、実際いろいろな影響が出てきます。また、場所が場所だけに、これもまた慎重に対処した方がいいということがわかります。けして放っておかず、早めの対処をしてください。
特に耳は安全面でも問題があります。耳の病気で聞こえにくくなっていると、車など危険が近づいているのに気づかないと事故のもとにもなります。そのことにも注意しながらの対処をしていくことと、ならないように気をつけることも大事かと思います。
耳から膿が出る以外にも、耳が聞こえにくくなる症状や、耳鳴り、平衡感覚が取りづらくなるなど耳から来る症状は様々あります。メニエール病や聴神経腫瘍と言った病気の可能性もあります。より高音域からの難聴が始まる老人性難聴など耳の病気は様々です。
しっかり治療を行い、難聴などから来る二次災害を防いでいきましょう。
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