乾燥溺死とは?症状や原因、対処法や予防法を知ろう!赤ちゃんや老人に多いのはなぜ?

子供が海やプール、風呂から上がって、しばらく何もなかったかのように見られていても、実は、水を気管や気管支に詰まらせて死に追い込まれている可能性があります。これによって、乾燥溺死をする子供や赤ちゃんが絶えません。

では、どういった事が原因で乾燥溺死するのか、これによりどういった症状が出現するのか、前兆や予防法、対処法も押えておきましょう。

乾燥溺死とは

プール

まず、溺死する当たって、溺水するので、その溺水について説明をしていきます。また、溺水は4種類に分類されます。わかりやすいように、どう違うのかをおさえておきましょう。

そして、乾燥溺死が何故、問題視されているのかを説明していきます。

溺水と溺死の種類

まずは、「溺水」という言葉があります。これは、「溺れている」、「溺れていた」という状態です。ここから、何らかの処置をして助かった場合は「溺水」となり、死に至った場合は「溺死」と言います。溺水・溺死に関するものは4種類に分類されています。それらを以下に、述べます。

引用元は、一般社団法人広島県医師会の「応急処置を必要とする呼吸器症状と疾患・溺水の発生機序による分類」となります。以下に記す「溺水」を生じた時、結果的に死に至ると「溺死」とされます。

・乾性溺水

Dry drowingとも言います。液体の刺激によって、反射的に喉頭や気管支に痙攣(けいれん)を生じます。肺の中には水分は認めれません。

口頭や気管支に痙攣が生じるのは、水を吸い込んだことが刺激となり、喉頭にある声門や気管支が閉じようとするためです。この反射は、肺や気管・気管支に異物が侵入することを防ぐための防御反応です。この反射が過反射になると、反射部位が痙攣を生じて声門などを完全に閉塞します。

すると、肺に水を吸い込まない状態で、酸素や二酸化炭素といった空気の交換をできなくなり、呼吸が全くできなくなって低酸素状態に陥り、意識を消失したり、死に至ります。よって、「乾性」と呼びます。

これは、水場でそのまま起きるのではなく、水場から出て時間が経過してから、体内(口腔内や喉に滞留している)の水が移動し、喉頭に痙攣を引き起こします。イメージは、水場にいないのに、溺れ、溺水・溺死をする、といった感覚です。

乾性溺死は、老人にも起きやすいですが、赤ちゃんや子供に起きやすいとされています。

・湿性溺水

Wet drowingとも言います。水などの液体が肺胞内に入り、窒息を起こします。通常、一般的によく言われる溺水で、頻度は高いです。

乾性とは異なり、痙攣が生じるほどの反射が生じない場合は、意識を消失した際に気道が開き、気道を大量の水などの異物が侵入し、気管・気管支を通って肺の中にも侵入します。すると、肺胞で酸素や二酸化炭素の交換ができなくなります。これによって、呼吸困難となり、意識を消失したり、心肺停止・呼吸停止といった状態に陥ります。このことより、「湿性」と言われます。通常の事故で多いのが湿性です。

これは、不慮の事故などで、水場で溺れて水を飲み込んで起きます。

・immersion syndrome

冷水に浸った瞬間に、副交感神経が反射して心肺停止を起こす状態です。氷水であれば、急速に体温が下がるため、脳は保護されるケースがあります。この場合、心肺停止が、蘇生可能と言われる10分間を超えて続いても、脳が保護されているため蘇生できます。

しかし、後遺症として意識不明となり、植物状態を維持するといった大きな弊害が起きる場合が残る可能性があります。意識を取り戻すことができる可能性は低いと言えます。

・二次溺水

Secondary drowingとも言います。アクシデントが起きた時に症状は一時的に軽快します。しかし、時間を経て水が移動し、数時間後や数日後に、肺水腫や肺炎といった急性の呼吸器疾患を引き起こして悪化する状態が二次溺水です。早い場合には、1時間後に症状が出現します。

つまり、水の中にいる際に、何らかのアクシデントが生じて、症状が軽度であっても、溺水や溺死に繋がる場合は、二次性のものと捉えられます。乾性でも湿性でもありません。

・過去の例

アメリカの少年の1件が実例で挙げられます。10際の少年は、市民プールでの遊泳から帰るとベッドで昼寝をしていましたが、約1時間後に母親が見に行くと、顔中が泡だらけになるほど、口から白い泡をたくさん吹きだして亡くなっていた、という事故が起きています。日本でも、起きている事故であり、非常に注意が必要となっています。

なぜ赤ちゃんや子供、老人に多いのか?

赤ちゃんや子供に溺死が多いのは、口に水分を含んだ時、特に、水中に入った時に水を誤飲しない様にするための喉頭の反射が、まだ不十分なためです。大量の水を飲むような場面では特に注意が必要です。

老人の場合は、喉の筋力が低下傾向にあり、筋肉以外の身体組織も老化しているため、機能が十分に稼働していないと、反射も不十分となり、誤嚥などによって肺に水分などの異物が入りやすくなります。これによって、溺死をする場合があります。

・日本では特に高頻度

日本では、海外の先進国と比較すると、高頻度で乳幼児の溺死事故が起きています。特に、乳幼児はつかまり立ちができるようになる年です。つかまり立ちをして家庭の浴槽へ転落・転倒をして溺水・溺死する事故が多く起きています。

・日本と海外の違い

日本には、風呂に入る際には浴槽に浸かるという生活習慣があります。それに比べ、海外ではシャワーのみの利用や、家庭に浴槽が無い所もあります。そして、毎日風呂に入る習慣はありません。よって、日本の方が、風呂場での溺水・溺死事故が多いのです。

乾燥溺死の対処法・予防法

プール 浅い 大人と一緒

乾燥溺死は、体内で起きている事なので、外からいつものように見ているだけではわかりません。

しかし、赤ちゃんや子供の様子を見ていて気づけることや、それに対して何らかの対応や予防をしていく事は可能です。

では、どういったことに着目していくと良いのか、対処や予防をしていくにはどういった方法があるのかを見ていきましょう。

子供の様子の変化を捉える

ママやパパといった大人が、普段の子供の様子と比較をしながら、注意をして変化を捉えていくことが大切です。それに気づけるように、赤ちゃんや子供を日頃からしっかり見ていく必要があります。これが一番の対処法・予防法となります。

乾燥溺死の前兆に注意!!直ぐに病院へ行きましょう!

赤ちゃんや子供が水から出た後に、「いつもより疲れている様子・態度」、「極度の眠気が起きている」、「呼吸困難になる」といった症状が見られる場合、注意が必要です。

これは、溺水や溺死が起きる前兆の症状とも言えます。こういった様子が見られる際には、直ぐに医療機関に駆け込むか、救急車を呼びましょう。

緊急の処置が必要

無呼吸状態は、約8~10分間続きます。その10分以内に的確な処置を行うと、蘇生して助かる確率は90%です。

自宅にいる時に異変に気づいたら、救急車を呼び、すぐさま人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生術を行い、心肺停止しないようにしましょう。

救急車を呼ぶ

赤ちゃんや子供の異変を察知した時には、様子を見るのではなく、直ぐに病院などの医療機関に駆け込み、医師に診てもらいましょう。

死ぬか・生きるかの問題なので、直ぐに救急車を呼ぶ必要がある場合もあります。救急車に連絡した際には、直ぐに対応できるように乾性溺水の可能性がある事を伝えましょう。大人が臨機応変になって対応をしていきましょう。

赤ちゃん・子供の心臓マッサージの基本方法

水が原因で起こる事故により、気管や気管支、そして肺へ水が浸入すると、酸素と二酸化炭素の空気交換が不可能となり、呼吸困難、呼吸停止、心肺停止といった症状を引き起こします。これによって、溺死しないように、心臓マッサージの基本方法を押えておきましょう。

なお、大人の心臓マッサージの場合は、力を入れて体重をかけながら行います。しかし、赤ちゃんや子供に対しては異なります。では、乾燥溺死の多い赤ちゃんや子供に対しては、どういった方法をとると良いのか、基本方法を説明します。

・新生児

押す場所は、乳首の高さよりも一横指(指1本分の太さ)の分、下へ下げた位置です。押す指は、中指と薬指を使います。

その指で、赤ちゃんの胸の厚みの1/3の深さまで、くぼむような強さで押します。回数は、120回/分の速さで押します。 

・1歳未満の乳幼児

新生児同様、乳首の高さから一横指分、下に下げた位置を押します。使う指は、中指と薬指です。

新生児の時と同様、この2本の指で胸の厚みが1/3の深さまで、くぼむような強さで押します。回数は、100回/分と、新生児よりも少し遅めの速さで押します。

・1歳~8歳未満の子供

子供の場合は、胸骨の下半分を押します。片方の手の平の付け根当たりを使って押します。赤ちゃんと同様、胸の厚みが1/3の深さにくぼむような強さで押します。回数は、100回/分の速さで押します。

・注意すべき点

注意すべき点は、新生児や1歳未満の乳幼児といった赤ちゃんに心臓マッサージを行う際に使う指です。中指と薬指以外の指は使わないことです。親指と人差し指は、指の中でも力が入りやすい指です。

これらを使ってしまうと、赤ちゃんの胸を押す時に力が強く加わり過ぎてしまうため、使ってはいけません。小指は、一般的に指の中では日頃から最も注意が向きにくく、あまり使われていないため、力が入りにくいです。

よって、赤ちゃんの胸を押すにも十分に押せない可能性があります。よって、この時に使う指は、力が過剰にかかり過ぎず、弱すぎない中指と薬指を使います。

呼吸器疾患を予防する

乳幼児は特に、免疫力が不十分です。ウイルス性の病気や気管支喘息、誤嚥による肺炎によって心肺停止する恐れもあります。親の喫煙が原因となることもあります。これらによって、気管支の機能が低下し、炎症が生じたりすると、さらに溺水や溺死をしやすくなります。

こういったことがないように、手洗いやうがいをする、マスクを着ける、禁煙をするといった配慮が必要です。

いつ起こるか分からないということを念頭におく

溺水や溺死は、スプーン1杯の水さえも、通る場所を間違えて気道に入って起こる可能性があります。これは、ニューヨークの医学専門家であるルイス博士が取材の際に言った言葉です。

よって、プールなどの水遊びだけでなく、食事中や風呂、少し水分補給をした時など、家の中にいても起こる可能性があることを念頭におきましょう。

あらゆる場面で注意が必要

母乳やミルクを飲む時、食事、水分補給、風呂、銭湯、洗濯機、プール、海、河原、水鉄砲などの玩具を使うといった水遊び、あらゆる場面・状況で注意が必要です。

外だけではなく、家庭の中でも起こります。日頃から子供がどういった様子なのかをしっかり見て、終わった後も気を抜かないようにしましょう。

・セルフチェック

まず、赤ちゃんや子供の身体の状態をチェックしておきましょう。胸痛、全身の倦怠感、疲労、強い眠気、発熱、咳、痰、白・ピンクの泡状の痰が出るか出ないか、冷汗、呼吸苦、気管支喘息のような喘鳴(ゼーゼーとした呼吸)、呼吸困難、横になると苦しいかどうか、チアノーゼ(唇や身体の皮膚の血流が悪くなって、赤紫色や紫色になるなど、血色が悪くなる)、アレルギー様の過敏な症状、といった症状の有無をチェックしましょう。

泡は、何故ピンクなのかと言うと、肺水腫では白以外にもピンクの泡もあるためです。この色の痰が出たら肺水腫になる前兆という場合があり得ます。

もし、こういった症状が出ている場合には、一刻も早く医師に診てもらいましょう。

・水遊びの場

プールや海に行く子では、泳げるようにしておくと安全性は高まります。また、泳げない場合は、波のある場所や腰まで浸かるような深い場所などは身体が流されやすいなど、溺水・溺死の原因となります。泳ぐことが得意であっても、事故に繋がるケースは多いです。油断はせず、危険なので避けましょう。水遊びの際には、大人が子供の近くで一緒にいることで、危険を回避しましょう。

また、溺れかけて水を飲んだ場合や、咳き込んだ場合には、その日、その後の水遊びは中止しましょう。万が一のためにも、屋内で休息をとって様子を見ましょう。

・泳ぐ場合はプールを選択する

予防・対策と言っても、完璧に対処することは困難です。泳ぎたいときは、なるべくプールを選んでみましょう。学校やスイミングのスクール、市民プールといった、消毒など管理を徹底している環境であれば、溺水した際の症状の進行を抑えることができます。

管理が行き届ききっていないようなプールや、汚染率の高い水場、浸透圧が高い海水・湖・河川では、誤飲してしまった時の弊害が大きいです。注意をしましょう。

・特に風呂場は要注意!!

最初の方にも述べた通り、日本は、乳幼児が風呂の際に溺水・溺死する事故が高頻度で起きています。入浴後、直ぐに湯を抜く家庭も少ないという報告もされています。

なるべく浴槽での危険を回避するためにも、子供が乳幼児の歳の頃は特に注意をして、「湯は早めに抜く」、「風呂場の鍵は閉める」、「浴槽の蓋はしっかり閉めておく」、といった配慮をしましょう。そして、子供がどこにいるかを、常に注意して見ている必要があります。

・洗濯機に注意!!

風呂だけではなく、意外にも洗濯機にも注意が必要です。家庭によっては、エコのために風呂の湯を再利用して洗濯物の洗濯に使う場合があります。洗濯機に水を溜めておいてあるようならば、危険は大きいです。

子供が洗濯機をのぞき込まない様に、「洗濯機の近くに踏み台を置かない」、「洗濯機に水を溜めておかない」、「洗濯機の蓋は閉めておく」、といった配慮をしましょう。

・洗面所や台所に注意!!

洗面所や台所も、小さな子供はのぞき込むことができます。のぞきこんでバランスを崩して水の中に顔が使ってしまった時点で危険です。洗面所や台所でも、「水を溜めこんでおかない」、「踏み台を近くに置かない」、といった事に注意をする必要があります。

・子供が眠りにつく時の注意点

昼寝や夜眠る際には、寝室など遠い場所で寝かせるのではなく、必ず大人の目の届く範囲で、様子を見ることができる場所を選びましょう。

・乳幼児突然死症候群に注意

乳幼児は、乳幼児突然死症候群(SIDS)によって、乾性溺死するケースが多いです。これは、眠っている間に、誤嚥した異物が気道や気管支を通ることや、大人の不注意で睡眠中に子供を圧迫して窒息させてしまうといった原因が考えられています。また、うつぶせに寝ている時に起こる場合が多いという結果が出されています。

予防としては、赤ちゃんを「仰向けに寝かせる」、「一緒に眠る際には、赤ちゃんは親と話してベビーベッドの上で寝かせる」、「ベビーベッドの空間には余裕をもたせる」、「都度、寝方や身体の状態をチェックする」、といった配慮が必要となります。

詳しくは、乳児突然死症候群は何故起きる?考えられる原因を知って予防しよう。を読んでおきましょう。

まとめ

救急搬送

家庭には多くの危険があることがわかってきます。特に、乳幼児はつかまり立ちができ、つかまり歩きもできるようになると、様々な危険が想定されます。大人視線で見ると、どうともないことが、赤ちゃんや子供にとっては大きな事故に繋がりかねません。

常日頃から、子供の状態をチェックするようにし、少しでも様子がおかしいと気づいた場合には医師に相談するようにしましょう。ちょっと何気ないことが、「死」に繋がる可能性があります。油断大敵です。

関連記事として、

よだれかぶれの赤ちゃんに注意!原因や症状、治療法を知ろう!赤ちゃんの肌の手入れ方法は?

新生児仮死とは?症状や原因、後遺症の可能性について紹介!

陰嚢水腫は赤ちゃんに多い?症状や原因、検査方法を知ろう!治療した後の予後は?大人にも発症することがあるの?

これらの記事を読んでおきましょう。

  
/* */
  
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする