新生児仮死とは?症状や原因、後遺症の可能性について紹介!

女性にとって妊娠して出産するというのは、一生のうちでも最も大きなイベントです。赤ちゃんが生まれた瞬間はお母さんだけでなく、家族みんなが幸せを感じる瞬間です。赤ちゃんにとっても、この世を初めて感じる素晴らしい時なのです。

しかし、すべての赤ちゃんが無事に生まれてくるとは限らないのです。なかには、トラブルをかかえて生まれてくる赤ちゃんも少なからずいます。

「新生児仮死」も、そのトラブルの一つです。”仮死”という言葉から、呼吸しない、泣かないなどの状態を想像しますが、具体的にどのような状態なのでしょうか?

それでは、新生児仮死の症状や処置、原因、後遺症などについて詳しく述べていきます。

新生児仮死の症状と、判定法を解説!

赤ちゃん足

生まれたばかりの、赤ちゃんが仮死状態であるというのは、何をみてどう判断されているのでしょうか?詳しい症状の解説と、判定基準を述べてみようと思います。

産声が聞こえない!

赤ちゃんは、生まれると少ししてから「おぎゃー」と泣き始めます。

この世で初めて肺呼吸した時の産声のことを、「第一啼泣(だいいちていきゅう」と言います。この声を聴くとお母さんもホットして、赤ちゃんが無事に生まれたと安堵する瞬間です。

しかし、生まれてすぐに泣かない赤ちゃんがいます。お母さんは、すぐに赤ちゃんが泣き始めないと不安にかられることと思います。

すぐに泣かない赤ちゃんは、呼吸していないのでしょうか?もしかして仮死状態ということなのでしょうか?

赤ちゃん産声を上げる理由

お母さんの体の中にいた時の赤ちゃんは、羊水に浸かって肺の中はその羊水で満たされているのです。

生まれて、初めてお母さんの体の中から出てきた赤ちゃんは、口から羊水を吐き出した後、空気を吸い込むことにより、肺胞を広げて、羊水を吐き出します。このときに「おぎゃー」と産声を上げるのです。

しかし、上手に羊水を吐き出せなかった場合は、空気が行ったり来たりしてコポコポと音がすることがあります。

そこで、通常は吸引器で羊水を吸い出し、肺呼吸できるように促してあげます。それでも泣かない場合は、赤ちゃんの足をもって逆さにして、背中やお尻を叩いたりして泣かせます。もし、うまく羊水を吐き出したとしても、泣かない場合がありますが、肺呼吸していればとりあえず安心です。

しかし、そのような措置をしても泣かない赤ちゃんがいます。酸素をうまく吸い込めない状況であるといえます。何らかの原因で、このように赤ちゃんが仮死状態で生まれてくることを、「新生児仮死」といいます。

アプガールスコアとは?

聞きなれない言葉でしょうが、以前は母子手帳の出産の記録に、この”アプガールスコア”が書かれていたこともあったようです。

これは、医師などが、生まれた赤ちゃんの健康状態を点数化して表しているものです。点数化することによって、生まれた時の赤ちゃんの状態のみならず、今後の治療の必要性や予後の予測をたてるのに大切な役割を果たします。

5つの項目があり、10点満点で赤ちゃんの元気度を点数化しています。この点数の高い低いによって、新生児仮死の見極めとなっています。

それでは、アプガールスコアについて詳しく述べてみようと思います。

アプガールスコアの5項目

①Appearance「皮膚の色」

②Pulse「心拍数」

③Grimace「刺激に対する反応」

➃Activity「筋緊張」

⑤Respiration「呼吸」

以上の5項目の頭文字をとり、アプガースコア(APGAR score)と呼ばれます。

アプガースコアのによる判断

アプガールスコアは、生後1分後と5分後に判定します。それぞれの項目の点数を合計し判定されます。

①Appearance「皮膚の色」

  • 全身蒼白、チアノーゼがみられる。[0点]
  • 体幹がピンク、手足の先がチアノーゼ[1点]
  • 全身ピンク色[2点]

②Pulse「心拍数」

  • なし[0点]
  • 100以下[1点]
  • 100以上[2点]

③Grimace「刺激に対する反応」

  • 反応なし[0点]
  • 顔をしかめる[1点]
  • 泣く[2点]

➃Activity「筋緊張」

  • だらりと弛緩している[0点]
  • 手足を少し動かす1点]
  • 手足を活発に動かす[2点]

⑤Respiration「呼吸」

  • 呼吸なし[0点]
  • 不定期で弱い[1点]
  • 強く呼吸している[2点]

・判定

  • 重症仮死(第2度新生児仮死)[0~3点]
  • 軽症仮死(第1度新生児仮死)[4~6点]
  • 正常[7~10点]

新生児仮死判断後の処置とは

赤ちゃん手

アプガースコアによって、新生児仮死の赤ちゃんへの対処が変わります。そして新生児仮死と診断されると、素早い措置が必要になります。

新生児仮死について、一般的な対処法を解説します。

保温

まず、体温を保つために保温します。

生まれた時の羊水で体中が濡れているため、赤ちゃんの体の熱がどんどん奪われていきます。それを防ぐため、ラジアントウォーマーという保温器のベットに置いたり、温めていたタオルで水分を拭いたりして、体から熱を逃がさないようにすることが、何よりも大切です。

気道確保

新生児仮死と判断されたら、すぐに赤ちゃんをうつ伏せにして、肩枕にして気道を確保します。気道が詰まっているときは、口や鼻、喉などの気道の吸引を行い、気道を確保します。

呼吸刺激

乾いたタオルなどで赤ちゃんの背中や手足を優しくこすることにより、皮膚に刺激を与えます。これで呼吸ができなければ、さらには、足の裏などを軽くたたくなどの措置がなされます。

これでも、呼吸できなければ人工呼吸をする場合もあります。

蘇生後の管理

新生児仮死の原因を探り、呼吸、循環、血糖、電解質などの管理をします。

新生児仮死の原因を解説!

妊娠

原因はいくつかありますが、”へその緒(臍帯)”と”胎盤”に関する原因が大半を占めます。以下にその2つの原因について詳しく解説してみます。

へその緒(臍帯)が原因?

臍帯陥巻絡

いわゆる、へその緒が赤ちゃんに絡まっている状態です。臍帯異常の一つですが、比較的よく見られるトラブルです。

全分娩の約20%程度にみられます。へその緒が、赤ちゃんの首に巻いついていることが、全体の80%ほどにみられます。他に手足や胴体に巻きつくことがあります。

1回の巻きつきは、医師や助産師が出産時にそれほど大変ではなくはずすことができます。しかし、2回以上の巻きつきがあると、分娩自体のリスクが高くなります。

なかには、その巻きつきにより低酸素状態になり、新生児仮死状態を引き起こすこともあります。

臍帯下垂・臍帯脱出

出産時の破水前に、赤ちゃんの頭より先に、へその緒が下がってきてしまうことを臍帯下垂といいます。

また、破水後にへその緒が出てきてしまうことを、臍帯脱出と言います。全分娩の0.5%から0.8%程度と言われており、比較的まれな症例です。

原因としては、おなかの中の赤ちゃんの姿勢に問題がある場合、羊水過多症、児頭骨盤不均衡、低出生体重児分娩、多胎妊娠などがあげられます。へその緒が長い場合も起きると言われています。

臍帯脱出が起きると、へその緒が子宮壁と赤ちゃんの間に挟まり、へその緒の血流が止まります。そうすると、赤ちゃんに急速に酸素の供給ができなくなり、低酸素状態になり新生児仮死の状態になることがあります。 

胎盤血行障害が原因?

妊娠高血圧症

お母さんに、妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる場合、または高血圧とたんぱく尿を伴う症状が出た場合は妊娠高血圧症と判断されます。妊娠中のお母さんの体調管理において、医師から最も口を酸っぱくして注意されることです。

この妊娠高血圧症は、重くなると胎盤機能が衰え、赤ちゃんに送り出される血液が少なくなって、十分な酸素と栄養が赤ちゃんに補給できなければ、新生児仮死の原因となります。

過期妊娠

妊娠持続期間が満42週以上の妊娠のことを言います。原因は不明で、全妊娠の2%程度に見られます。

胎盤の機能が低下して、赤ちゃんへの酸素や栄養分の供給が悪くなります。

また、赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるときは、おしっこはしますが、ウンチはしません。しかし、過期妊娠になると赤ちゃんがウンチをして羊水に浮遊することがあります。

赤ちゃんが、このウンチを呼吸と一緒に吸い込み、肺に入ってしまうことを胎便吸引症候群と言います。

そうすると、なかには呼吸障害を引き起こし低酸素状態が続き、新生児仮死になる場合があります。

子宮内胎児発育遅延

胎児の発育が遅れている状態をいいます。全出生の5%がこの子宮内胎児発育遅延と言われています。

原因としては、妊娠高血圧症や染色体異常、先天性奇形、臍帯や胎盤の異常などがあります。子宮内胎児発育遅延は、一つの原因ではなく、多数の原因が絡み合って発育を阻害しているようです。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、まだ赤ちゃんが子宮にいるのに、胎盤が子宮からはがれてしまう状態のことを言います。全妊娠の0.44から1.33%程度と言われています。

胎盤がはがれると出血し、赤ちゃんへ酸素と栄養分がいきわたらなくなります。こうなると、赤ちゃんの命だけでなく、お母さんの命も危険にさらされます。できるだけ早い、病院での措置が必要です。

新生児仮死から回復!後遺症の心配は?

母子

新生児仮死は、いったん回復してもその後になって後遺症が出る場合もあります。

一般的に、後遺症はアプガースコアが低いほど早く出てくると言われています。もし、赤ちゃんが1歳を過ぎるまでに症状が出現しないのであれば、後遺症が残ることは少ないようです。

赤ちゃんの脳への影響

新生児仮死は、呼吸器系、循環器系などの障害が後遺症として残る場合があります。脳への障害を引き起こす可能性もあります。

妊娠時、分娩時のさまざまな原因で赤ちゃんが酸素不足になると、脳細胞が影響をうけて、知能障害や全身の運動障害を引き起こします。

また、その他の合併症として、心不全、けいれんなどがあげられます。

まとめ

新生児仮死で生まれたとしても、適切な治療がされれば後遺症も残らずに健康に成長することができます。

出産は、時として予想だにしないことが起こります。かといって、へその緒が巻きついて生まれたとしても、その原因ははっきりしません。したがってお母さんが悪いということはないということです。また、アプガースコアは、医師の見解であり10点満点ということはあまりないことなのです。

気にするなというのは、難しいことかもしれませんが、お母さんがゆったりとした気持ちで過ごすことが、おなかの赤ちゃんや生まれてきた赤ちゃんにも幸せなことといえるでしょう。

  
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