突然、背中から腰にかけて激痛が生じ、風邪のような寒気や発熱がある・・・これは、化膿性脊椎炎かもしれません。
化膿性脊椎炎とは、脊椎(背骨)が細菌に感染して発症する病気です。細菌は、脊椎から離れた場所(遠位部)から血液やリンパ液で運ばれてくることもあります。脊椎に隣接する臓器や組織から細菌感染が波及して、発症することもあります。
化膿性脊椎炎は免疫力が低下していると、発症しやすくなります。進行すると、骨が破壊されます。中高年に多い病気です。
化膿性脊椎炎の原因と症状、治療法と予防法についてお伝えしますね。
化膿性脊椎炎とは、どんな病気?
化膿性脊椎炎とは、脊椎(背骨・脊柱)に細菌が侵入して(感染して)、炎症を起こし、膿が溜まる(化膿する)病気です。骨髄まで感染が進んでいる場合は、「化膿性骨隨炎」ともいいます。
40~50代の中高年、免疫力の低下する高齢者に発症しやすいと言われます。
化膿性脊椎炎は、胸椎・腰椎に起こることが多く、頸椎に起こることは少ないようです。腰痛の原因となる病気です。
[化膿性脊椎炎の原因菌]
化膿性脊椎炎は、脊椎が細菌感染して起こる化膿性炎症疾患です。原因となる病原菌は、黄色ブドウ球菌や緑膿菌が多いようですが、真菌(カビの1種)も原因菌となることがあります。
大腸炎・肺炎・扁桃炎・胆嚢炎・卵巣炎などの原因菌が感染して、化膿性脊椎炎を起こします。
結核菌
肺から結核菌が血液によって運ばれ、脊椎に侵入して感染症を引き起こすことを「結核性脊椎炎」「脊椎カリエス」といいます。結核性脊椎炎(脊椎カリエス)も胸椎や腰椎に生じやすく、頸椎に生じることはまれです。
結核菌により椎体が破壊され、椎間板に病巣が広がります。進行すると、椎体内に乾酪壊死(かんらくえし)が生じ、椎体の周囲に膿が溜まります(膿瘍の形成)。
[化膿性脊椎炎の感染経路]
化膿性脊椎炎は、脊椎とは離れた遠位部の臓器や組織から血液やリンパ液によって運ばれてきた細菌に感染して起こる場合と、脊椎周辺の臓器・組織の感染性炎症が広がってきて細菌感染が起こる場合があります。
また、外傷や注射針など、外から直接細菌が侵入する場合もあります。
血行性感染
脊椎とは離れた遠位部の臓器や組織が細菌感染して化膿性炎症を起こすと、その原因菌が血液やリンパ液とともに流れてきて、脊椎に侵入します。
脊柱の静脈は複雑な血管網を形成しています。この静脈血管網は、身体の各部位の静脈や門脈とつながっています。しかも、静脈には逆流を防ぐ弁がないので、血液の逆流にともなう転移性感染をしやすくなっています。
胆嚢炎・大腸炎・肺炎・扁桃炎などの原因となる細菌が、脊椎に感染して化膿性炎症を起こします。
泌尿器系・生殖器系感染症からの感染
泌尿器系疾患の膀胱炎や婦人科系疾患の卵巣炎など、脊椎周辺の臓器や組織の感染症が広がって、原因となる細菌が脊椎に侵入して化膿性脊椎炎を起こします。
原因となる細菌は血液やリンパ液で脊椎に運ばれるので、血行感染の中に入れる場合もあります。
外部からの直接感染
脊椎や椎間板の手術を受けたり、椎間板の造影検査など、針を刺したり、切開したりする検査を受けたりすると、外部から直接細菌が侵入して、感染症を起こすことがあります。
薬物乱用者・薬物依存症の人が汚染された注射針を使用して、化膿性脊椎炎を起こすことがあります。
血管カテーテルや尿道カテーテルの留置から、化膿性脊椎炎を発症することもあります。
[脊椎の構造]
ヒトの脊椎は、頸椎・胸椎・腰椎・仙椎・尾椎の30個の椎骨で形成されています。
頸椎は前彎、胸椎は後彎、腰椎は前彎して、全体としてS字状を描き、二足歩行に適した形になっています。
椎骨
椎骨は、前方(腹部側)にある円柱形の椎体と、後方(背側)にあるアーチ型の椎弓からできています。椎弓の関節面には棘突起があります。
椎体と椎弓の間にある隙間を椎孔といいます。椎孔を脊柱管が通っています。脊柱管の中には脊髄という神経束があります。脊髄の周りを軟膜・クモ膜・硬膜が護っています。
椎骨と椎骨は関節でつながっています。椎骨の間には弾力性のある椎間板があります。椎関節や椎間板のおかげで、直立する身体を支え、身体を前後左右に曲げることができます。
椎間板
椎骨と椎骨の間には、クッションの役目をする椎間板があります。
椎間板は、侵入した細菌が繁殖しやすいので、感染症が起こるのです。
[化膿性脊椎炎の症状]
症状には、急性と慢性があります。どちらも、背部痛と腰痛があります。
急性化膿性脊椎炎の症状
突然、背中から腰にかけて激しい痛みが発生します。患部を叩くと、疼痛が生じます。痛みは、時間の経過とともに強くなります。
風邪のように寒気がして、発熱します。体温が38℃を超えることもあります。熱は、午前は低く、午後に高くなる傾向があります。
安静にしていても痛みがあります。腰や背中を動かさなくても痛みます。痛みが激しいので、夜中に目が覚めることもあります。背中を前後に曲げることができなくなります。
慢性化膿性脊椎炎の症状
慢性化すると、痛みはそれほど強くなくなります。慢性的に背中や腰が痛みます。幹部を叩いたり押したりすると、疼痛があります。
発熱しても微熱程度です。
麻痺症状
細菌が骨髄まで感染すると、骨髄は血流が豊富なため、細菌がさらに増殖します。膿が溜まって膿瘍ができ、骨の血流を妨げて骨壊死(こつえし)を引き起こします。
脊椎がつぶれ、脊髄の周囲に膿が溜まって、脊髄を包む硬膜を圧迫します。そのため、脊髄腔を通る神経が圧迫され、脊髄麻痺が起こります。感覚障害(知覚障害)、下肢のしびれや麻痺など運動器系の機能障害が生じます。
細菌が脊柱管に侵入すると、急速に麻痺症状が生じます。
合併症
最も怖い合併症は、「感染性心内膜炎」です。
疣腫(ゆうしゅ)という細菌や真菌の塊が心不全症状を引き起こします。進行すると、最悪の場合、死に至る可能性があります。
[化膿性脊椎炎を発症しやすい人]
化膿性脊椎炎は、現代では、それほど多くの人に発症する疾患ではありません。免疫機能が正常であれば、細菌が侵入しても、感染症を発症することが少ないのです。
しかし、いろいろな理由で免疫力・抵抗力が低下していると、細菌感染が起こりやすくなります。
免疫力が低下する病気にかかっている患者
糖尿病・肝硬変など重篤な肝疾患・悪性腫瘍(癌)・骨髄疾患・膠原病などにかかっている人は、免疫力が低下するので、化膿性脊椎炎を発症しやすくなります。
長期間の血液透析やステロイド剤の服用
長期間、血液透析を受けている患者や、ステロイド剤を服用している患者は、感染症を起こしやすくなります。
感染症にかかった人
大腸炎・肺炎・胆嚢炎・卵巣炎・膀胱炎など細菌感染症にかかった人は、原因菌が血液やリンパ液によって脊椎に侵入する可能性が高くなります。
高齢者・中年層
加齢とともに免疫力は低下します。65歳以上の高齢者だけでなく、40~50代の中年層も要注意です。
過労状態・ストレス過多・体温の低い人
仕事続きで休みが取れず、睡眠不足で過労になっている人や、不安や重責でストレスが溜まっている人、栄養バランスの悪い食事や不規則な生活を続けている人、運動不足の人は、免疫機能が低下する傾向があります。
平均体温が低く、35℃台以下の人は、血行が悪くなり、免疫力が低下して、様々な病気を発症しやすくなります。感染症にかかりやすくなります。
化膿性脊椎炎の診断と治療
化膿性脊椎炎の診断は、画像診断・血液検査・細菌検査の結果に基づいて下されます。
脊椎カリエス(結核性脊椎炎)や癌の脊椎転移と症状が似ているのですが、治療法が異なるので、診断は慎重に行われます。識別は難しくありません。
治療は、薬物の投与による保存療法と安静が主になります。病気の進行状況や麻痺症状によっては、外科的治療が必要になります。
[受診するのは、何科?]
化膿性脊椎炎の診断・治療は、整形外科で行います。
椎体の感染症や病変はわかりにくいので、専門医の診療が必要です。風邪のような症状(悪寒や発熱)があっても、背部や腰部に激しい痛みがある場合は、内科ではなく、整形外科に行きます。整形外科専門の病院でも、整形外科のある総合病院でもかまいません。脊髄外科専門医のいる病院がベストです。
ただ、糖尿病や膠原病などの疾患がある人は、内科医との連携治療が必要になります。
悪性腫瘍(癌)が発生している人は、たいてい集学的治療を行っています。「集学的治療」とは外科療法・放射線治療・免疫療法・化学療法・ホルモン療法など、癌の治療法を組み合わせて行い、治療効果を上げることです。
ですから、総合病院で診療するので、化膿性脊椎炎を発症した場合も、同じ病院の整形外科へ行くようにします。
[化膿性脊椎炎の診断]
椎体の破壊や圧潰、変形が画像でわかります。血液検査や細菌検査によって、診断が確かなものになります。
画像診断
Ⅹ線検査やMRI検査の画像で、脊椎の形状や状態を確認します。
(Ⅹ線検査)
病原となる細菌(病原菌)が、血液やリンパ液とともに椎骨静脈叢を通って椎体終板に達すると、化膿性脊椎炎を発症します。椎体軟骨終板の静脈に病巣が発生し、椎体全体に広がって、膿瘍(膿が溜まる)を形成します。
椎体終板から発症するので、発症後2~3週間で、椎間板の隙間が狭くなること、椎体終板の破壊が、X線画像で見られます。病気の進行とともに、椎体の不整や骨の新生、骨硬化が見られるようになります。
ただし、単純X線検査では、早期には症状を捕らえることができません。
(MRI検査)
MRI検査は、化膿性脊椎炎の早期発見に有用です。単純X線写真に病変が映らない初期でも、椎体や椎間板の変化や膿の有無を捕らえることができます。膿瘍が脊髄を圧迫している様子もわかります。
MRIには、T1強調画像とT2強調画像があります。化膿性脊椎炎の場合は、T1では低信号、T2では高信号になります。
MRIでは、傍椎体の軟部組織の変化もとらえることができます。結核性脊椎炎より、化膿性脊椎炎の方が、異常信号の境界が不明瞭で、造影効果が強く均一になります。膿瘍壁も厚く、不整です。
(CT検査・PET)
CT検査も有用です。癌検査で注目されているPET検査でも、化膿性脊椎炎を発見できます。ただし、PETは、健康保険を適用できません。
血液検査
血液検査では、白血球の増加やCRP値の上昇が見られます。
白血球は免疫システムの主役ですから、細菌が侵入すると、細菌を破壊・排出しようとして、増加します。
CRP値は、C反応性タンパクの血中量を示します。C反応性タンパクは、炎症や細胞損壊に反応して上昇します。
細菌検査
病巣そのものや血液中の菌の検査を行って、診断を確定します。
病巣に針を挿入して細胞を採取し、細菌検査を行います。
類似症状の疾患との識別
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)と癌の脊椎転移とは、化膿性脊椎炎と症状がよく似ています。画像検査・細菌検査で識別します。
結核性脊椎炎では、画像検査で、骨破壊部で乾酪壊死(腐骨)が見られます。細菌検査で、結核菌が検出されます。
癌の脊椎転移では、画像検査で、椎弓の根部が不鮮明になります。
[化膿性脊椎炎の治療]
治療方法は、主として保存的治療です。抗生物質など薬剤を投与する薬物療法と安静化です。
疾患の治療経過により手術的治療(外科的治療)を行うことがあります。
整形外科で診断・治療を行いますが、手術治療の場合は、脊髄外科専門医に相談することをオススメします。
治療期間
化膿性脊椎炎が治癒するまでには、6~12ヶ月程度かかります。人によっては、もう少し長くかかることもあります。
「寝たきりになるのでは?」「二度と元のように動けないだろう」という強い不安に、多くの患者さんが悩まされるようですが、多少腰痛が残ったり、運動の機能障害が少し残ったりしても、必ず治ります。焦らないで、気長に治療することが大事です。
保存的療法
化膿性脊椎炎の主な治療方法は、手術をしない保存的療法(保存療法)です。薬物療法・安静・高気圧酸素治療などです。
(薬物療法)
炎症の原因となる原因菌に応じた抗生物質を投与します。菌によって抗菌薬の効き目が違うので、原因菌を特定して、適正な抗生物質を選択することが大事です。
入院して、2~3週間程度、抗生剤を点滴します。その後、2~3ヶ月間、抗生剤を内服します。薬剤投与により、菌の増殖を抑えます。
炎症の状態によって退院しますが、退院後も抗菌薬(抗生物質)の内服を続けます。1ヶ月2回程度通院をします。
(安静)
入院して抗生物質を点滴するとともに、悪化を防ぐために、身体を動かさないようにベッドの上で安静にします。身体を動かさないようにするために、体幹装具で体幹を固定します。
体幹ギプス固定や腰椎コルセット、頸椎カラーなどで、体幹が動かないようにします。体幹ギプスや腰椎コルセットは、抗生物質を内服している間、装着を続けます。
退院しても、痛みはすぐに消えません。半年くらい、腰椎コルセットや体幹ギプスを装着していることが多いようです。
(高気圧酸素治療)
高気圧酸素治療は、専用機械の中に入って、高気圧の酸素を吸入し、白血球の免疫機能を高め、殺菌力を増強する治療方法です。細菌の増殖を抑え、白血球の攻撃力を高め、抗生物質の効力を増強します。また、軟部組織や骨の損傷部の回復を促進する効果もあります。
外科的治療(手術的治療)
抗生物質が効かなかったり、膿が溜まってしまって改善されなかったり、化膿性脊椎炎が進行し、膿(膿瘍)が脊髄神経を圧迫して運動器系の麻痺症状や感覚障害が起きたり、脊椎の骨が破壊され、形状の変化が見られたりする場合は、手術が必要になります。
治療経過を見ながら、早めに外科的治療を受けることも大事です。
(膿の除去)
手術で、感染部位から溜まっている膿をかき出します。「膿瘍ドレナージ」といいます。
化膿した病巣を取り除いて、患部をきれいに洗浄します。細菌を完全に除去します。
(骨固定術・骨移植)
骨の破壊が進んでいる場合は、患部を取り除いて洗浄し、細菌を完全に除去した後、脊椎を固定したり、自身の他の部位の骨を移植したりします。
痛みの緩和
化膿性脊椎炎の主症状は腰背部の疼痛です。安静にしていても痛むので、身体を動かしたりすると、痛みはさらに激しくなります。
治療期間中は、痛み止め(鎮痛剤)を内服したり、点滴に加えたりします。
骨が変形してしまうと、保存療法で治癒した後も痛みが残ることが多いようです。その時は、ペインクリニックに相談することをオススメします。
化膿性脊椎炎の予防とリハビリテーション
化膿性脊椎炎の予防方法は免疫機能を上げて、免疫力を増加することが第一です。
高齢者、糖尿病など生活習慣病が持病になっている人は、感染症を発症しやすいので要注意です。
[化膿性脊椎炎の予防方法]
免疫力を増強して、細菌や真菌を撃退できるような体にすることが、大事です。免疫力が低下するような疾患、糖尿病や膠原病、重篤な肝疾患、免疫異常・免疫不全に罹っている人は、その治療を怠らないことです。
①免疫機能を低下させる持病を治療する
特に糖尿病など生活習慣病は、適切な治療を怠らなければ、病気は軽快し、進行して重篤な状態にはなりません。感染症を防ぐこともできます。
②免疫力を増強する
規則正しい生活をして、十分な休養と良質な睡眠をとります。ストレスを溜めないようにして、ストレス発散の方法を見つけます。
栄養バランスの良い食事を規則的に摂ります。軽い運動(散歩やストレッチなど)を定期的に行います。毎晩、ゆっくりとお風呂につかります。こうすることで、血行が良くなり、免疫機能を担う白血球が全身に行き渡るようになります。
③手洗いとうがい
細菌感染の予防の基本は、手洗いの徹底とうがいです。手洗いを徹底することで、大腸炎や気管支炎、肺炎など感染症を防ぐことができます。これらの原因菌が、脊椎に血行感染することを防ぎます。
④風邪を軽く見ない
「風邪は万病の元」です。鼻や喉など上気道が細菌感染による炎症を起こすと、気管支炎や肺炎になることがあります。重篤な感染症が、化膿性脊椎炎を引き起こします。
風邪は軽症のうちに、完全に治してしまいます。
⑤腰痛・背部痛を素人判断しない
中高年に腰痛や背部痛は付きもののようです。ほとんどの中高年が腰の痛み、背中の痛みに悩まされています。そのため、湿布薬やマッサージなどで、痛みをごまかすことが多いようです。
しかし、腰痛や背部痛の背後には、化膿性脊椎炎をはじめ、結核性脊椎炎や癌の脊椎転移など重篤な病気が潜んでいることが、よくあります。素人判断をしないで、整形外科の診療を受けることをオススメします。
⑥痛みがあれば、すぐ病院へ行く
痛みは、身体の組織や臓器からのSOSです。腰でも背中でも、腹でも胸でも頭でも、痛みがあるのは、どこか具合が悪いのです。すぐに病院に行くようにしてくださいね。
[リハビリに焦りは禁物]
化膿性脊椎炎を発症すると、身体を少し動かしただけでも、背中や腰に疼痛が生じます。抗生物質を投与しながら、安静にしていることが、基本的な治療です。
感染症が改善されて退院しても、痛みが残ることが多いようです。痛みのために、思うように身体が動かせず、日常生活にも支障をきたします。
「このまま寝たきりになるのではないか?」「二度と元のように動けないのではないか?」という不安に悩まされる患者さんが少なくありません。
しかし、現在は効力の高い抗菌薬がいろいろ開発されています。多少の腰痛が残ったり、激しい運動ができなくなったり、疲れやすくなったりすることはあっても、必ず治癒します。気長に薬を服用して、少しずつリハビリを続けるようにしてくださいね。
ギプスやコルセットを装着して安静にしていると、若い人でも筋肉が衰えて、足や体が動かしにくくなります。中高年になれば、なおさらです。焦らないで、少しずつ手足や身体を動かすようにして、気長にリハビリに取り組むことが、回復につながります。
まとめ 免疫力が高ければ、化膿性脊椎炎は怖くない
化膿性脊椎炎は、脊椎に細菌が感染して生じる化膿性の炎症です。脊椎の胸椎や腰椎に発症しやすい細菌感染による疾患です。40~50代、高齢者に多く発症します。
背中と腰に疼痛が生じ、急性期には悪寒・発熱など風邪のような症状になります。病気が進行して、溜まった膿が脊髄を圧迫すると、下肢がしびれたり、麻痺したりという運動系の機能障害や感覚障害が起こります。
原因菌は、黄色ブドウ球菌や緑膿菌などありふれた常在菌です。真菌が病原菌になることもあります。これらの細菌は、血液やリンパ液によって、脊椎から離れた部位、あるいは、脊椎周辺の臓器や組織から運ばれて、脊椎に侵入し、椎体終板に到達して発症します。扁桃炎・胆嚢炎・肺炎・大腸炎・膀胱炎・卵巣炎などから病原菌が運ばれるのです。血行感染といいます。
また、椎間板の造影検査や脊椎手術などで、外部から菌が直接脊椎に侵入して発症することもあります。
脊椎の周辺や椎間板は、細菌が増殖しやすいのです。
治療は、抗生物質の投与と安静という保存療法が主になります。保存療法の治療経過を見て、改善しなければ外科的治療(手術)を行います。現在は、効果の高い抗菌薬がいろいろ開発されているので、化膿性脊椎炎は治癒できます。
化膿性脊椎炎は、免疫機能が正常に働き、免疫力や菌に対する抵抗力が高ければ、発症しないですみます。
化膿性脊椎炎の発症は減少傾向にありましたが、現在は、糖尿病など免疫機能低下をともなう生活習慣病を患う人に発症することが増えています。また、免疫力の衰える高齢者にも発症することが多くなっています。
風邪のような症状があっても、背部痛や腰痛が激しければ、すぐに整形外科を受診します。早期に発見して、抗生剤を投与して安静にしていれば、骨が破壊されたり変形したりする前に、治すことができます。
まず、免疫力を高めるようにして、細菌感染を起こさないようにすることが大事です。
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