結膜弛緩症という病気を知っていますか?これは、歳を取れば誰でもなる可能性のある目の病気の1つです。自覚症状がドライアイや眼精疲労に似ている為、誤って診断されることもあると言われています。「目がよく乾く」や「涙が止まらない」「目がゴロゴロする」といった症状感じているのにも関わらず、歳のせいだと諦めていませんか?
病気に関する一般知識をつける事で、誤診を防止したり、正しい治療を受けられることにも繋がります。ここでは、結膜弛緩症について詳しくご紹介します。
結膜弛緩症について
結膜弛緩症という病気は、字のごとく「結膜が緩む」事です。しかし、そうは言ってもなかなか想像しづらいと思います。
ここでは、結膜弛緩症は一体どんな病気なのか、また、結膜とは何か、結膜の働きについてもこちらでご紹介します。
結膜弛緩症とは?
近年、パソコンやスマホなどを仕事に取り入れる事が普通になってきている為、その分目にかかる負担は増え、それに比例して眼病にかかる人が増えてきています。目がかかる病気はたくさん挙げられますが、今回紹介する結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)という病気も眼疾患の1つです。
この病気はドライアイと関係が深いと注目を集めている病気で、結膜がたるんだり緩んだ状態を作ります。主に眼瞼縁上や下眼瞼縁上などの位置にたるんだものがシワとなり、比較的にご高齢の方がかかりやすい病気ですが、若い方でも発症し男女ともに起こります。
結膜とは?
結膜とは、眼球の白目の表面覆う粘膜のことで、黒目の表面は角膜と呼ばれています。この結膜の働きはウイルスや細菌、ゴミなどの異物から目を保護することです。抗菌作用がある粘液や涙液を分泌させて、眼表面に潤いを与えながら守っています。
この結膜はもともと適度にゆるみがあり、上下左右に動かす眼球運動をスムーズに行う事に役立っています。このゆるみが通常よりも強くなった場合に、結膜弛緩症と判断されます。たるんだ結膜は下まぶたに沿っていたり、更にたるみが強い場合は角膜部分にのりあがってしまう場合もあります。
また、目とまぶたに隙間があいているとゴミなどの異物が入り込んでしまい、目は病気に犯されてしまいます。その為、眼球とまぶたの間はピッタリと癒着することなく、外部と眼球内部を分ける仕組みが必要で、この役割を持っているのが結膜です。
結膜は目が開いている時は常に外部にさらされている状態なので、異物がたまりやすく、水分や湿度、栄養があることから細菌やウイルスの好む環境になっています。その為、結膜炎などのウイルス感染の病気は、結膜がかかりやすい病気1つです。
結膜弛緩症の原因と症状、診断方法
結膜弛緩症は自覚症状は、ドライアイや眼精疲労などに似ており、自覚症状のみでは区別がつきづらいと言われています。ここでは、どんな症状が起こるのか、また、原因や診断方法についてご紹介します。
主な症状とは
結膜がたるんだからといっても、全く症状を感じない人もいます。病院を受診するポイントは目に不快感があるか、もしくは自己チェックでたるみが確認できるかどうかで判断しましょう。結膜のゆるんだ部分を弛緩結膜(余剰結膜)といい、この部分が動くので、異物感を感じるようになります。
患者の多くは「目がゴロゴロする」「目がショボショボする」「何かに挟まっている感じ」といった表現をする方が多く、痛みを感じる人は少なく目の中に不快感を感じます。黒目にかかってきた場合は、「何か目に触れてる」と感じるようになり、さかさまつげではないのに、睫毛があたるように感じます。
弛緩結膜になると、涙目になります。通常健康の方の場合は、目の上にある涙線で涙が作られ、目頭に位置する涙点から鼻へと流れるようになります。しかし、弛緩結膜にかかるとシワによってこの涙の流れがふさがれてしまい涙がたまるようになり、涙目になったりいっぱいになると外にこぼれる為、勝手に涙が流れるようになります。頻度としては1日の中で時々起こる程度です。一日中あふれている場合は、鼻涙管閉塞症の疑いがあります。
一方で、たるんだ結膜が涙をふさいでしまうため、他の場所に涙液が行き渡らなくなり、ドライアイなどの症状を引き起こします。まばたきをしても上手く行き渡らずに、角膜に小さな傷を作る原因になります。その他、下記のようなものが主な症状になります。
主な症状
- 目の異物感、眼不快感 、ゴロゴロ、ショボショボ
- ドライアイ
- 涙が流れる、涙目になる
- 目薬がすぐにあふれる、目薬が目に溜まったままになる
- 目のかすみ
- 結膜下出血
結膜下出血とは?
結膜下出血とは、結膜下の小さな血管が破裂して出血を起したものです。その為、白目部分がベッタリと絵の具を塗ったように赤く染まるのが特徴です。充血のように血走ったようなものとは異なるので、鏡をみたらビックリしたり、周りから指摘されて気付くことも多いです。
これは、くしゃみやせき、過度の飲酒、月経、外傷、炎症、血液疾患、水中眼鏡の締め過ぎなど様々な原因で引き起こります。しかし、頻繁に繰り返して起こるようであれば、弛緩結膜の疑いがあります。弛緩結膜は過剰に動くため、結膜の毛細血管が引っ張られる為、結膜下出血を引き起こしやすくします。
結膜下の出血は眼球内に血液が入り込むことはないので、視力が低下するといったことはありません。特に自覚症状を感じることはありませんが、ゴロゴロするなどの不快な症状を感じる人もいます。見た目にビックリしますが、見た目ほどたいした事ではありません。
出血は1週間~2週間ほどで自然と血液が吸収されて小さくなっていきますが、強いものだと2ヶ月ほどかかると言われています。瞳は目立つ部分でもあるので、この状態になると、一刻も早く治したいと思う人が多いです。1週間以上かかる場合は眼科に行って、止血薬を投与や結膜下注射などを行ってくれる場合もあるので、相談しましょう。
詳しくは、結膜下出血の原因とは?症状と早く治す方法を紹介!を読んでおきましょう。
注意点
弛緩結膜の症状は特に目立ったものがない為、症状から疲れ目や眼精疲労などと判断される場合もあり、点眼薬を処方される場合もあります。しかし、結膜弛緩症は結膜がたるんでいる状態のため、点眼液で症状が緩和される場合もありますが、根本的に解決をしなければ完治は難しいです。
また、ドライアイの症状に点眼薬を過剰に使用すると、悪循環に陥る場合もあります。その為、薬を処方してもらって効果がないなと感じた場合「歳だからしょうがない」と諦めるのではなく、疑って別の病院も受診するようにして正しく診断してもらいましょう。
原因とは
結膜弛緩症の原因は、ハッキリとは解明されていませんが、年齢とともに増加傾向にあり、加齢性の変化が関係している考えられています。また、ドライアイや眼瞼炎が起因する可能性もあると言われています。
加齢が原因
一説によると、眼球が上を向くことでたるみが生じると言われています。人はまばたきをする度に目が上を向く仕組みになっており、この現象をベル現象と呼びます。人はまばたきを1日に1万回~2万回行う為、上を向く回数が多いです。また、寝ている間も眼球は上を向いた状態になっているので、私たちが意識していないところで上を向く回数は多いと言えます。
この瞬目やベル現象、眼球運動による結膜に対する摩擦や炎症により組織が壊れていくことが原因ではないかと考えられています。これに加えて年齢を重ねるにつれて、修復機能が追いつかなくなり、眼球よりも下側にある結膜の組織が剥がれてくることで、結膜がたるんでくると言われています。
60歳以上の98%は結膜が伸びているという報告もあることから、年齢とともに伸びてしまうのは自然なことだともいえます。しかし、日常生活に異常がでるようであれば、我慢せずに眼科を受診しましょう。
コンタクトレンズ
コンタクトレンズの装着は悪化要因になると言われています。コンタクトレンズは酸素や栄養を届ける妨げになるので、眼球への負担が大きくなります。日常的にコンタクトレンズを使用している場合は、乾きやすくなったり、摩擦がおきて結膜の負担が大きくなる事で、症状が悪化すると言われています。
若い頃からコンタクトレンズを使用している人が、高齢になった時に、結膜弛緩症になる確率も高いと報告されています。コンタクトレンズを使用している方は、きちんとコンタクトレンズの使用時間を守り、目薬を使用して目が乾かないように気をつけたり、栄養をあたえたり、十分に休ませることを心がけることが予防に繋がります。不快な症状が現れてくると、日々のストレスにもつながるので、病院を受診して治療しましょう。
診断方法とは
結膜弛緩症は、涙液層の安定性の低下や瞬の摩擦といったドライアイのメカニズムと非常に似ている部分があります。その為、ドライアイと区別するためには涙液のフルオレセイン染色液を用いたり、ブルーライト、涙液量検査(涙液メニスカス測定)、上皮を観察することが正しく診断するのに重要になってきます。
結膜弛緩症がある場合に、フルオレセイン染色液を用いて強く瞬目を行うと、涙液が通る下の方では弛緩結膜が見られたり、涙液メニスカスが途絶える様子が確認できます。また、結膜嚢円蓋部を確認したり、上眼瞼を介して眼球膜をこすり降ろすようにして見ていくと、上方の結膜弛緩のシワを確認することが可能です。
下記で紹介する自分で出来るたるみチェック方法でまずは確認してみて、たるみが見られるようであれば、眼科医にその旨を伝えましょう。
自分で出来るたるみのチェック方法
まず、指を下瞼に添えてアッカンベーの状態にし、下瞼の内側が見えるようにします。次に、指を少し押しながら上に持ち上げます。下まぶたの縁に透明の膜のようなものが出てきた場合は、結膜がたるんでいる証拠です。
結膜弛緩症の治療方法について
治療方法は大きく分けて、点眼治療と手術療法の2つあります。
症状が比較的に軽い場合は、点眼治療を行い様子を見ますが、症状が重い場合や点眼治療に効果がない場合は手術を検討します。ここでは、治療方法についてご紹介します。
点眼治療
点眼治療は、症状の緩和を目的として行われる治療法の為、完治することはできません。しかし、結膜弛緩症の症状はゴロゴロするなどの自覚症状の為、手術を決断する人は少なく点眼治療が一般的な治療方法となっています。
「人工涙液」と呼ばれる塩化カリウムや塩化ナトリウムを配合した成分は、涙にとても似ており、涙の代わりに乾いた目に潤いを与えることができます。ドライアイ対策に有効で、処方箋なしでもドラッグストアで購入することが可能です。
また、「ヒアルロン酸点眼薬」は目の表面に涙を行き渡りやすくして、結膜の傷を治すために用いられます。こちらに関しては処方箋が必要で、他の目薬と併せて使う場合は5分ほど間隔を取る必要があるなど、使用上の注意があります。
その為、眼科を受診して使用方法もきちんと確認しておきましょう。この薬の副作用は少ないですが、敏感肌の人は稀にかぶれてしまう場合もあるので、点眼後に皮膚についた液はすぐにふきとるようにしましょう。
他にも、充血や炎症がおきている場合は、「抗炎症薬」を用いる可能性もあります。炎症を抑えてかゆみや痛み、充血などの症状を抑制することが可能です。こちらに関しても処方箋が必要となり、ステロイド点眼薬と非ステロイド点眼薬の2種類あります。効果が強いものはステロイド点眼薬、比較的に作用が弱いものは非ステロイド点眼薬です。
手術治療
点眼治療で改善が見られない人の場合は、手術療法を用います。自覚症状を伴う人の場合はまずは、人工涙液を用いたドライアイ治療や、ステロイド点眼などの点がん治療を1ヶ月~3ヶ月ほど行って効果がなく、日常生活に支障がでている場合は眼科医と相談して手術を検討するのがオススメです。
手術が効果的な症状は「異物感」「流涙」「再発性結膜下出血」などです。手術をすれば根本的な治療ができ、とてもキレイに直すことが出来ます。手術法は「炭酸ガスレーザー」と「切除方法」、「縫着法」の3種類あります。
従来はメスを使って切除していましたが、炭酸ガスレーザーの方が手軽でメスを入れないという理由から好む患者も増えてきています。縫着法は手術時間が長くなりますが、術後の異物感があるものの効果は高いと言われています。治療費用は、場所によって異なりますが、手術代のみで3割負担の方の場合は、片目7500円~1万円ほどで受けることが出来ます。
炭酸ガスレーザー
手術は、点眼麻酔で炭酸ガスレーザーを使用して行います。炭酸ガスレーザーは、止血しながらメスを使わずに結膜を切除する方法です。傷口がとてもきれいで痕が残らず、眼瞼や結膜に手術として取り入れられています。結膜弛緩症の場合の手術時間は5分程度です。
この炭酸ガスレーザーによる治療法は、翼状片、老人性眼瞼下垂、結膜弛緩症、内反症、疣などにも取り入れられている方法です。
切除方法
手術方法は、目の表面にある、たるんだ部分を切除する方法で、局所麻酔下で15分程度で終わる簡単な手術なので、日帰り手術が可能です。メスを入れると思うと怖いイメージがありますが、触るのは目の表面だけで、眼球にメスを入れることはありません。
切り離した結膜をその表面にしわやひだを残さないようにしながら強膜につけて、瞬きをした時の摩擦を改善したり、涙液の流路である涙液メニスカスを作り出します。手術のポイントとなるのが、「下涙点」と「半月ヒダ」および「涙丘」の3つの位置関係です。例えば涙点が涙丘に近い場合は涙丘の量を減らしたりしないと流涙の症状を改善することができなくなります。
切除した後は糸で縫合する為、手術した後は糸の異物感がありますが、1週間ほどで異物感もなくなってきます。また、術後は充血も見られる場合がありますが、こちらも1週間ほどでよくなります。傷跡はほとんど残らず、手術痕を見た目で判断するのは難しいくらいに傷は薄くなります。手術をした患者の再発の可能性は絶対にないとは言い切れませんが、再発した例は今まで報告がないと言われています。
縫着法
癒着法と呼ばれる手術方法は、切除せずにゆるんだ結膜を本来の位置に縫い付ける方法です。たるんだ部分の結膜を奥に引っ張って延ばし5箇所の場所に縫い付けます。手術時間は20分~30分で出来ます。メスを入れないで出来る方法なので、安心だという患者さんもいます。
おわりに
結膜弛緩症は年齢を重ねるにつれて、誰もが発症する可能性のある目の病気です。しかし、ドライアイや眼精疲労などと診断されてしまう場合もあるので、正しく診断してもらうことが重要です。
点眼薬は症状の緩和を目的としているため、根本的な治療は出来ません。手術をすればキレイに治すことができ、自覚症状も感じなくなります。歳をとったから仕方ないと諦めずに違和感を感じるようであれば、別の病院を受診するなどして、原因を正しく突き止めるようにすることが重要です。
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