スティーブンス・ジョンソン症候群とは?初期症状・原因・治療法について!

スティーブンス・ジョンソン症候群という病気を聞いたことはありますか?

スティーブンス・ジョンソン症候群は、誤解を恐れずに簡単にいうと「ものすごく酷い薬疹」です。身体中の皮膚と粘膜に紅斑や水疱(水ぶくれ)ができ、水疱が破れて表皮が剥がれ、とても痛くて辛い病気です。全身状態が急に悪くなり、命を落とすこともあります。

この病気は、一旦「気付けば」、診断は難しくありません(びまん性紅斑進展型TENを除く)。しかし、稀な病気であるため、気付かないまま時間が過ぎてしまい、重症化してしまうことがあります。

この記事は、スティーブンズ・ジョンソン症候群について、専門的なことまで、できるだけ分かりやすく記載し、一人でも多くの方にこの病気を知っていただくことを目的にしています。

この病気に「気付く」方が一人でも増えることを願っています。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症

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冒頭で触れたように、スティーブンズ・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:以降、SJSと略)も中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:以降、TENと略)も、「ものすごく酷い薬疹」です。

スティーブンズ・ジョンソン症候群:SJSとは?

SJSは、皮膚と粘膜と眼に症状が出ることから、皮膚粘膜眼症候群とも呼びます。

高熱や全身倦怠感などの症状と共に、口唇・口腔・眼・外陰部などの粘膜や皮膚粘膜移行部に重症の粘膜疹を伴い、全身の皮膚にも、紅斑・びらん ・ 水疱が多発し、表皮の壊死性障害を認める疾患です。薬剤や感染症などがきっかけとなって、アレルギー反応のような免疫異常がおこり、重篤な症状が出現すると考えられています。

SJSの多くは、医薬品(市販薬や処方された薬を問わず)が、原因と考えられています。また、単純ヘルペスウイルスなどのウイルスやマイコプラズマ感染に伴い発症することもあります。

中毒性表皮壊死症:TENとは?

TENは、SJSの表皮剝離症状が体表面積の10%を超える重症型のものです。ライエル症候群(Lyell syndrome)、または、中毒性表皮壊死融解症とも呼びます。

TENは、初めから、急激な経過でTENとして発症するものもあれば、SJSからTENに進展するものもあり、更にはびまん性紅斑からゆっくりTENに進展していくものもあります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症は違う病気なの?

SJSとTENは基本的に同じ病気だと考えられています。原因も治療法も同じです。主な違いは水疱、びらんなどの表皮剝離体表面積(10%未満がSJS、10%以上がTEN)と致死率(SJSは致死率3~10%、TENは致死率20〜30%)です。

この二つをまとめて、SJS/TENと呼んだり、重症多形滲出性紅斑(erythema  exsudativum multiforme major)と表現することもあります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症のはじまり方と症状

片目 充血

SJS/TENは非常に稀な病気で、人口 100 万人当たり年間 1~6 人しか発現しません。つまり、SJS/TENという病気があるということを知っていても、実際に見たことのある医療従事者はとても少ないのです。一方、一旦、その可能性を疑えば、びまん性紅斑進展型TENを除いて診断自体はそれほど難しくなく、早期治療が可能です。

「これって、もしかしたらSJS/TENでは?」と気付く方が一人でも多く存在すれば、この病気になっても助かる確率が高まります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症のはじまり方(1)

厚生労働省がオンライン上に掲示している公式マニュアルによれば、SJS/TENを疑わせる初発症状は以下の赤文字に記載したとおりです。

何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。

「高熱(38℃以上)」「目の充血」「くちびるのただれ」「のどの痛み」「皮ふの広い範囲が赤くなる」がみられ、その症状が持続したり、急激に悪くなったりする


厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル

  • スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)
  • 中毒性表皮壊死症(中毒性表皮壊死融解症) (ライエル症候群、ライエル症候群型薬疹)

より引用

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症のはじまり方(2)

多くのケースが薬剤性によるものと考えられているSJS/TENですが、内服後すぐに発症するとは限りません。上述の厚生労働省のオンラインマニュアルの中には「1ヶ月以上経ってから起こることもあります。」という記載があります。

また、SJS/TENでは医薬品をやめても、症状が増悪が続くことがあります。SJS/TENを疑わせる症状が見られた時には、1ヶ月以上経った薬も含めて、「服用した医薬品の種類、 服用からどのくらいたっているのか」についての情報があると、診断の助けになります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症の症状

眼の症状

眼は眼球結膜が充血したり目やにが出たりする他、角膜上皮や結膜上皮が欠損し、時には失明に至ります。

なお、SJSでは眼の症状は必発ですが、TENでは眼の症状があまりはっきりしない「びまん性紅斑浸潤型TEN」があります。

粘膜や皮膚粘膜移行部の症状

粘膜や皮膚粘膜移行部(口唇、口腔粘膜、鼻粘膜、外陰部、尿道、肛門周囲など)には、有痛性の粘膜疹が多発し、水疱が破れてびらんになり、壊死出血し、血痂もみられます。上気道粘膜や消化管の粘膜まで症状が出て、呼吸器症状や消化管出血などを起こすこともあります。

皮膚の症状

皮膚には、痛みを伴う赤〜紫色の紅斑がみられます。水疱も多発し、破れた箇所はびらんになり、表皮は壊死出血します。少し触っただけで表皮が溶けるように剥け落ちる部分もあります。

表皮を失った皮膚は、真皮がむき出しになり、細菌などに対してのバリアを失った状態ですので、重篤な感染症を起こすことも稀ではありません。敗血症になることもあります。

これらの症状はまるで体が溶けるかのように一気に進行することもあれば、普通の薬疹に見えるものからゆっくり変化することもあります。

皮膚粘膜眼以外の症状

皮膚粘膜ならびに眼以外の臓器では、肺、消化管、腎臓の症状が報告されています。肺では、肺炎や間質性肺炎が約23%に合併することが報告されています。重篤化した場合は急性呼吸促迫症候群に至ることもあり、肺炎合併例では人工呼吸器も使われます。

消化管症状は、下痢、血便、小腸潰瘍などを約10%合併します。消化管症状のあるSJS/TEN 患者は致死率が高いと報告されています。

腎臓では血液循環量の減少によって腎前性腎不全が起こることがあります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症の原因

口薬先に触れたように、SJS/TENの原因は、薬剤性のものが多いのですが、一部のウイルスやマイコプラズマ感染に伴い発症する例があることも知られています。また、最近の研究で遺伝的因子も無視できないということがわかってきました。

スティーブンズ・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症の原因と推定される医薬品

SJS/TENの原因と推定される薬剤やきっかけになった薬剤として、抗菌剤(抗生物質など)、風邪薬(解熱鎮痛薬/非ステロイド性抗炎症薬含む)、抗てんかん薬が多く報告されています。その他、痛風治療薬、消化性潰瘍薬、睡眠薬、抗不安薬、高血圧治療薬など広範囲にわたります。

SJS/TENを起こしやすいと分かっている薬はありますが、起こさないと分かっている薬はないので、どの医薬品によっても発生しうると認識した方が、判断を誤らずに済みます。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症に関与すると思われる感染症

一部のSJS/TENの発症には、単純ヘルペスウイルス、EBウイルス、デングウイルス、肺炎マイコプラズマなどの感染症がきっかけになっていると考えられています。

また、溶連菌などの細菌感染の関与について指摘する論文もあります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症の発症リスクに関連すると考えられるHLA

近年、SJS/TENの発症リスクと関連するヒト白血球抗原タイプ(HLAアリル)が、少しずつですが報告され始めました。これらのHLAアリルをもつ人が、当該薬を使用したからといって、必ずしもSJS/TENを起こすとは限りませんが 、参考にはなります。

風邪薬(成分の詳細不明)     :HLA-A*02:06(日本人の約9%)

抗てんかん薬(ゾニサミド)    :HLA-A*02:07(日本人の約3%)

抗てんかん薬(カルバマゼピン)  :HLA-A*31:01(日本人の約9%)

抗てんかん薬(フェノバルビタール):HLA-B*51:01(日本人の約9%)

HLAは白血球の血液型です。現在、HLAは、白血球だけではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布して、ヒトの免疫に関わっていることが明らかになっています。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症の発症機序

白血球 少ない

はっきりとした機序は解明されていません。しかし、この病気に罹った人の粘膜や皮膚を顕微鏡で見ると、ある種の白血球(リンパ球や組織球系の細胞)が表皮と真皮の境界部に浸潤していることがわかります。また、浸潤したリンパ球が、活性化された細胞傷害性Tリンパ球(CD8陽性T細胞)であることなどから、SJS/TENの発症は、なんらかの免疫学的機序(III型アレルギーに近い反応)によるものと考えられています。

原因と推定される医薬品が多岐にわたることや、感染症などもきっかけになること、白血球抗原タイプ(HLAアリル)によってこの疾患に罹りやすい人がいることなども、免疫学的機序のの関与と矛盾しません。

スティーブンズ・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症の検査と診断

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SJS/TENには、診断を助けるための診断基準(ガイドライン)があり、一般的には、それに沿って検査や診断を進めます。ガイドラインには鑑別診断が必要な似た病気についても、記載があります。

スティーブンズ・ジョンソン症候群の診断基準

日本皮膚科学会の診断基準(2016年度)の一部をご紹介します。日本皮膚科学会のSJSの診断基準には、主要所見と副所見のほか、確定診断の条件や鑑別診断についてまで網羅されていますが、ここでは割愛します。

主要所見(必須)

1.皮膚粘膜移行部(眼,口唇,外陰部など)の広範囲で重篤な粘膜病変(出血・血痂を伴うびらん等)がみられる.
2.皮膚の汎発性の紅斑に伴って表皮の壊死性障害に基づくびらん・水疱を認め,軽快後には痂皮,膜様落屑がみられる.その面積は体表面積の 10%未満である.但し,外力を加えると表皮が容易に剝離すると思われる部位はこの面積に含まれる.
3.発熱がある.
4.病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める
5.多形紅斑重症型を除外できる.

診断

副所見を十分考慮の上,主要所見5項目を全て満たす場合,SJS と診断する.初期のみの評価ではなく全経過の評価により診断する.


日本皮膚科学会ガイドライン重症多形:重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症 診療ガイドライン より抜粋転載

中毒性表皮壊死症の診断基準

日本皮膚科学会の診断基準(2016年度)の一部を転載します。SJS/TENは基本的には同じ病気ですが、診断基準は異なります。

主要所見(必須)

1.広範囲に分布する紅斑に加え体表面積の10%を超える水疱・びらんがみられる.外力を加えると表皮が容易に剝離すると思われる部位はこの面積に含める.(なお,国際基準に準じて体表面積の10~30%の 表皮剝離は,SJS/TENオーバーラップと診断してもよい)
2.発熱がある.
3.以下の疾患を除外できる.

  • ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
  • トキシックショック症候群
  • 伝染性膿痂疹
  • 急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)
  • 自己免疫性水疱症

診断

副所見を十分考慮の上,主要所見 3 項目の全てを満たすものをTENとする.全経過を踏まえて総合的に判断する.


日本皮膚科学会ガイドライン重症多形:重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症 診療ガイドライン より抜粋転載

スティーブンズ・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症と似た病気(鑑別診断の必要な病気)

チェック

SJS/TENと見た目がよく似ており、鑑別の必要な病気を挙げました。以下の病気のうち、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は、症状も似ているだけでなく、SJS/TENと治療方針が全く異なる上、致死率も高いので、その鑑別は特に重要です。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcus scalded skin syndrome:以降SSSSと略)と、SJT/TENの治療は真逆に近く、SSSSも致死率の高い病気です。

一般的なSJS/TENとSSSSの区別は、1)SSSSでは紅斑、水疱、表皮剝離のある場所が間擦部(首や腋の下など、皮膚がこすれる場所)に多い、2)SSSSではびらんからの滲出液が少ない、3)SSSSでは口腔粘膜や眼にはあまり症状がないことなどから区別します。

しかし、びまん性紅斑進展型TENとSSSSの鑑別は難渋します。なぜなら、びまん性紅斑進展型TENでは、滲出液が比較的少ない紅斑から始まり、早期には口腔粘膜や眼の症状がないこともあるからです。TEN自体が稀な上に、びまん性紅斑進展型TENは更に少ないことから、びまん性紅斑進展型TENは皮膚科専門医であっても実物を見たことがない場合が圧倒的に多く、鑑別の難しさに拍車をかけます。

診断に迷った場合は、皮膚凍結標本による迅速病理診断が必要になります。

多形紅斑重症型

多形紅斑重症型(erythema multiforme major)は、SJS/TENの総称である重症多形滲出性紅斑(erythema  exsudativum multiforme major)と名前も症状も似ていますが、別物です。

違いのポイントは、1)粘膜病変は軽度で、重篤な眼病変や口腔病変はないこと、2)著明な全身倦怠感や食欲不振などの全身的な重篤感がみられないことです。紅斑は全身というより手足に多く分布します。

SJS/TENとは違う病気ですが、早期には鑑別が難しいことがあります。多形紅斑重症型なら、放っておいても自然治癒しますが、判別に迷ったらSJS/TENとして治療を開始します。

トキシックショック症候群

トキシックショック症候群は、敗血症の一種で、短時間で急に症状が進行します。患者の半数がタンポンを利用している女性で、残り半数は熱傷(やけど)からの細菌感染や蜂窩織炎などの局所感染によるものです。突然の高熱を伴って発疹や発赤が出る点がSJS/TENと似ている上に、どちらも非常に稀な病気なので、この病気の可能性も念頭に置いて診察を進める必要があります。

SJS/TENで表皮がはがれ落ちると熱傷と同じ状態になりますので、SJS/TENにトキシックショック症候群を合併することもあります。

伝染性膿痂疹

所謂、「とびひ」で、子供に多い病気です。身体中の皮膚に膿疱を伴う痂皮ができます。膿疱ができる前の皮膚は紅斑に似に発赤が出ますが、その紅斑がSJS/TENに似ています。治療がほとんど真逆であるため、SJS/TENとの鑑別が重要です。

急性汎発性発疹性膿疱症

SJS/TENと並んで、「ものすごく酷い薬疹」です。高熱(38℃以上)、皮ふの広い範囲が赤くなる、小膿疱が出る、全身がだるい、食欲がないなどの初期症状がSJS/TENと似ていますが、治療も似ているので、迷ったらSJS/TENとして治療を開始します。

自己免疫性水疱症

自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡の総称)は、皮膚基底膜に対する自己抗体が、皮膚を傷害し、皮膚に水疱やびらんを作る病気です。水疱やびらん、表皮剥離などの症状がSJS/TENに似ています。治療も似ているので、迷ったらSJS/TENとして治療を開始します。

スティーブンズ・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症の治療

入院

厚生労働省のマニュアルには、SJT/TENの治療法が薬の種類や量まで詳しく掲載されています。また、日本皮膚科学会の診療ガイドラインには、未だ薬事承認で許可されていない最新の治療法まで記載してあります。

ここでは、医師から説明を受けた際に、私たちがより良く理解できるよう、一般的な治療についての情報を掲載します。

1.疑わしい薬の中止

まず、疑わしい薬を中止します。

抗てんかん薬は中止しづらい薬剤ですが、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールはSJS/TENを起こしやすく、この3つは構造も似ていてお互いに交叉反応を起こすため、抗てんかん薬を変更するよりは中止して経過をみた方がよいと考えられています。

中止しても、症状が進行してしまうのがSJS/TENの特徴ですが、疑わしい医薬品を全てやめないことには治療は始まりません。

2.全身管理

皮膚の剥離部位が多い場合は、体からの滲出液で脱水や低栄養状態になりやすく、症状がますます悪くなります。また、広範囲の皮膚炎では、水疱やびらんがなくても、予想以上に水分やタンパク質、電解質などが漏れ出しています。

したがって、補液や電解質、栄養管理による全身管理を始めるとともに、いつでも薬剤を点滴できるように血管を確保しておきます。始めから中心静脈にラインをとることもあります。

さらに、表皮を失った箇所は感染症に弱いので、熱傷(やけど)の措置と同様の感染予防策をとります。

3.局所管理

眼や唇・外陰部などの粘膜や皮膚など、症状のある箇所の保護を行います。

SjS/TENでは角膜上皮の損失や、粘膜障害による失明/視力障害がおこるので、早急に眼科医師に指示を仰ぎます。全身へのステロイド投与に加え、ステロイド点眼やステロイド眼軟膏を用いたり、抗生物質の点眼を行ったりします。眼球の癒着の見られる場合には、点眼麻酔下に硝子棒を用いて機械的に瞼球癒着を除去する必要のあるケースあります。

皮膚や口唇・外陰部など粘膜の有痛性の滲出性紅斑や水疱・びらん部分は、シャワーや微温湯よく洗い、ワセリンやアズレン含有軟膏などの油性基剤軟膏を伸ばしたガーゼや創傷被覆材等で湿潤被覆します。 水疱は原則として除去しませんが、水疱蓋が融解して感染が起こりやすくなった場合には、除去します。びらん部分に感染がみられる場合には、抗菌剤含有軟膏などを使うこともあります。

これらの処置は熱傷処置に準じて無菌的に行います。また、可能であれば病院の熱傷専門治療室で治療を行います。

4.ステロイド全身大量投与(賛否あり)

ステロイドの全身投与には、未だ賛否両論ありますが、早期治療としてのステロイド全身大量投与は大方の合意を得られつつあります。

重症例、急激悪化する症例、皮疹が軽度でも失明の恐れのあるような場合には、ステロイドパルス療法(通常の10倍以上のステロイドを1時間で点滴注射し、これを3日間続ける療法)を行います。

しかし、広範囲のびらんと水疱を伴うもの、ウイルス感染に加え細菌感染が関与すると考えられるものに関しては、ステロイド大量投与もステロイドパルス療法も行わない方がよいと考えられています。

5.高用量ヒト免疫グロブリン静注療法

重篤な感染症の併発が危惧される場合、高用量ヒト免疫グロブリン静注療法を行います。重症例でステロイド療法と併用して、この療法を行う場合もあります。有効な場合には,投与終了前から回復傾向がみられることもあります。

6.血漿交換療法

ステロイド療法で症状の進行がくい止められない重症例や重症感染症がある場合は、血漿交換療法を行うことがあります。通常、2回の施行で効果がみられますが、回復傾向が 十分でない場合は、さらに追加することもります。

カテーテル刺入部からの細菌感染や、施行後の免疫グロブリン低下による感染症などの合併症の可能性があります。

まとめ

このような長文を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

この記事を読んでくださった方が、「お薬を飲んで1ヶ月以内に、高熱や、両目の充血や、唇のただれや、喉の痛みや、紅斑が出てきたら、SJSやTENの可能性がある」ということを、頭の隅に置いておいていただければ嬉しく思います。

SJS/TENはとても珍しく、その存在は知っている医師であっても、一生のうちに見ることがあるかどうかはわかりません。極端に言えば、初見で見落とすことがあっても、医療過誤として責められないくらい稀な病気です。けれども、SJS/TENの可能性に気付いて、そのつもりで診察すれば、一部の例外を除いて、診断はそれほど難しくなく、早期治療につなげることができます。

ご家族やご自身にSJS/TENの可能性がある症状があったら、「スティーブンス・ジョンソン症候群の可能性はありますか?」と、医師や薬剤師にご相談ください。調べて損はありません。

  
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